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2章天鬼鶏

社畜 巨大な魔物

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普通に湧く魔物以外には会わずに三階層の階段を上る

「上は居ないか」
「まだ分からない。油断はするな」
「入口で待ち構えているかもしれません」
「入口で……あぁ丁度嫌な記憶があるな」

再生持ちの魔物
あれは分身が入口で待ち構えていた
(待ち構えてるのは魔物の大群かそれとも……どちらも最悪だな)
三階層も強い魔物や大群は湧いてこない
そして何事も無く一階層まで着く

「一階層、ここを抜ければ入口だ」
「急ぎましょう!」
「後ろは来てる様子は無いな」

走って入口に向かう
普通に湧く魔物を次々と蹴散らしていく
そして入口が見える
前には何もいない
三人はホッとする
後は入口から出ればいい
報告すれば恐らく等級の見直しがされるだろう
あの大軍を考えれば5級程度では済まない
入口まで後十メートル程度に入った時一鬼は悪寒を感じる
強い魔物と対峙する時に感じるあの悪寒

「二人とも待て!」

一鬼は叫ぶ
一鬼の声に反応して二人は止まる
二人は感じていない
(鶏くんが気付いていない?)

「獅子神さん?」

何も起きない
(気のせい? いやあれは本物だ)

「私が先に行く。二人は後ろを注意して欲しい」
「……分かった」

二人は一鬼が何か感じたのだと理解する
ゆっくり歩いて向かう
そして入口のほんの1メートル程度の地面を踏む
すると天井から音がする
その音に蓮二が気づき炎を放つ
何かの腕が天井から現れ一鬼の身体を掴む
炎がその何かの腕を焼く
腕は焼かれた事で一鬼を離し暴れて一鬼に拳を叩き込む
槍で防御する
(少し重いくらいだな)
後ろに飛び退き腕から離れて二人と合流する

「腕?」

緑色の巨大な腕

「鶏君、助かった」
「……入口を塞がれた。あれは魔物?」
「魔物だと思うが……なんだあれは」
「腕があの大きさって相当デカいぞ」
「ここ一階層でそんな深くないんだがな。天井に潜んでたのか?」
「巨体なら寧ろ都合いい。腕をどうにか退かして滑り込めば」
「炎は効いてる。殺れる」

炎を放つ
腕は暴れているだけで炎を避けない
そのまま焼かれる

「浅い」
「天音」
「鎖よ縛って!」

五本の鎖が腕を拘束する
抵抗しているが鎖を破れない

「やっぱりそんな強くは無いか」

槍を突き立てる

「柩」

腕の内部で変形し穂が棘のように突き刺さる
形状を戻して引き抜く
腕は動かなくなる

「終わり?」
「ですかね?」

思ったより直ぐに倒して拍子抜けに思える
一鬼は違和感を感じる
悪寒を感じる程の相手はいつも強かった
こんなにあっさりと倒せるのは初めて
(まぁいい)

「よし行こう」

三人はダンジョンを出ようとする
腕は動かない
洞窟全体が揺れる

「なんだ?」
「地震!?」
「凄い揺れだな」
「ダンジョンかそれとも外もか。分からないがこの揺れは……」
「いや、外は揺れてない」
「なら洞窟か。何だこの揺れは」

三人はその場から動けない
それ程の揺れが起きている
入口から外を見る
外は揺れているようには見えない
天井に亀裂が走る

「天井に亀裂が! 不味い」
「揺れで動けないってのに」
「鎖よ!」

鎖で三人を縛り外へ引っ張ろうもするが腕が動き鎖を粉砕する

「嘘……」

先程あの腕は鎖を破れなかった
動きたとして鎖を粉砕するほどの力は無いと考えていた

「壊されたな。まじか」

蓮二が炎の盾を生成して守る
(ダンジョンの天井は……燃えないよな? 防げないか)

「助かる」
「各自防御を、僕の盾は多分瓦礫防げないから」
「瓦礫かぁ」
「吹き飛ばします」

天井が崩れ瓦礫が降り注ぐ
天音が風の短剣で風を巻き起こし瓦礫を吹き飛ばす

「天音ナイス」

揺れが収まる
そして魔物が降ってくる
巨大な魔物だ、腕はこの魔物の一部だったのだ
この場所では身動きが出来ないほど大きい

「緑色……待て待て」

魔物は黒いモヤを纏う
黒いモヤが濃いと弱い
薄くなり姿が鮮明になる程強い魔物となる
3級の魔物でも黒いモヤを纏う
目の前に現れた魔物は黒いモヤが全く無い
(モヤが無いのはダンジョンの主くらいだろ。あの魔物でも多少なりあったぞ)
硬い人型の魔物、あの魔物も黒いモヤはあった

「ダンジョンの主クラスって事か?」
「どう言う」

蓮二はその事を知らない

「黒いモヤあるだろ?」
「あるね」
「それが薄いほど強いんだよ基本、ダンジョンの主とか」
「あぁ……まじ?」

魔物が雄叫びをあげる
思わず耳を塞ぐ
地面が揺れダンジョンが広がる
大きな空間が誕生する

「ダンジョンの形状を変えた!?」
「こんな事あるんですね」
「くっそ、入口が遠くなった」
「何だこのダンジョン、異常過ぎる」

今まで聞いた事も体験した事も無いような出来事が起きている
大群、階段の長さ、そしてこの魔物

「戦うしかないか」
「あぁ……強さが分からない。油断せずに行くぞ」
「鎖よ縛って!」

五本の鎖で拘束する
(絞める)
鎖が魔物の体を絞め上げる
鎖が食い込む
魔物は両手を振って両手を縛っていた鎖を破壊して残り三本握り潰す

「鎖はダメですね。すみません」

(強くなれたと思ったのにこれじゃ)

「いや、充分だ。奴の力を見れた。鎖を一瞬で破壊出来る程の力を持つなら回避一択だな」

この魔物が鎖をもし破壊していなければ一鬼は回避より防御を取る選択をしていた
それは先程多少なり余裕を持って攻撃を防いだからだ
鎖を破壊するほどの力を持つとなればその認識は変わる

「鎖を破壊出来るなら力は4級相当か以上と見た方が良いよね?」
「そうだな、最低でも4級のダンジョンの主クラスと考えよう。あくまで最低がだからな」

強さはそれ以上の可能性がある
最大限の警戒をする

「了解」
「分かった」
「まぁここのダンジョンの主は元々倒す予定だったしその準備はしてる。……これ以上のイレギュラーは起きないでくれよ頼むから」
「異常なのが日常にすら思える。ダンジョンあんまり知らないからだろうけど」
「そう言えば鶏君は異常事態ばっかりだな」
「……寧ろ普通だったダンジョンあります?」
「話を聞く限りそんなダンジョンは記憶に無いな」
「配信者向きの運を持ってるな」
「それなら運がいいのかも」
「陣形は?」
「二人で攻めるぞ。鶏君行けるな」
「ご武運を、私は援護しますが今回は特にあてにはしないでください」

炎の腕を作り上げて槍を構えた一鬼と共に突っ込む
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