魔王軍を辞めると決めた軍団長、女勇者の相棒となる。〜神の加護に焼かれても、怪しまれても正体を隠し通す〜

代永 並木

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2話 試しの期間

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 宿に泊まり、案を考える。
 勇者が持つ加護は、生半可な物理攻撃は効かない。
 接近しては焼かれる。
 となれば、有効打は中距離魔法。

「おや、まだ仕留められていないのですか?」

 報告を兼ねて、またアルルスと通信している。
 魔王に連絡を取ろうとしたが、また繋がらなかった。

「物理攻撃に耐性があル。魔法が有効な可能性あリ」
「魔法が得意な魔族の末席に加わる貴女なら、余裕のはずです」

 すぐに嫌味だと分かル。
 魔王側近のアルルスは、ボクを嫌っていル。
 理由は知らなイ。何かした記憶もなイ。
 だけど、魔王城にいた時から嫌味をよく言われていタ。
 今回援軍を呼べないのは、アルルスのせいの可能性も捨てがたイ。

「嫌味カ」
「いえ、そういうつもりではありませんよ」

 魔族は魔法が得意な種族が多い。
 魔族1人2人に当たれば、大体攻撃魔法が飛んでくる。

 だから、ボクは魔族の援軍を求めていル。
 だけど、アルルスは話を聞かなイ。

 まだ試していないことは多いが、今代の勇者の加護とボクは相性が悪いと分かる。
 そして、厄介な加護を持つ勇者が成長する前に、殺す必要があるとも理解した。
 あれは成長すると手が付けられなくなる。

「援軍を要請すル」
「ですから我々は忙しいのです。1人たりとも無駄に割くことはできません。それに国を巻き込んで殺してしまえばいい。簡単な話でしょう?」
「国ヲ?」
「軍団長ともなれば、一国を滅ぼすのはそう難しくないかと。おっと、会議がありますので」

 通信が切れる。
 言いたいことだけ言って切られた。

 ……国を相手取ル。

 ボクならば確かに可能。
 殺し切れる可能性もある。
 しかし、こちらが死ぬリスクが高い。
 人間種の大半は取るに足らないが、まれに怪物がいる。
 エルフやドワーフなどの人間種と協力している種族とも、戦うことになる。
 こちらの戦力はボクと精々近くの魔物、滅ぼす戦力としては足りない。

 国を相手取るくらいなら、全力で殺しに行く方が確率は高い。
 しかし、気付かれれば勇者の守りは、厳重になり暗殺が難しくなる。
 一撃で確実に葬る必要がある。

 ……無理。

 ボクと相性の悪い加護持ちの勇者を、他の魔族の援護なしで仕留めル。
 無理という感想が出てしまウ。
 相性の差を覆す手が少なイ。

 もちろん、仕留める手立てはあル。
 しかし、成功率が低イ。あるいは、失敗のリスクが高イ。
 魔王サマに伝えたいけど、アルルスに止められていル。
 そもそも、魔王サマと直に会話をしたのは、軍団長になって数回程度、魔王城に戻っても会話は難しイ。

「魔王軍辞めようかナ」

 ボクは誰もいない部屋でそう呟く。
 アルルスは頭が良い魔族。
 おそらく、ボクの話を聞いた時点でボク1人での暗殺は難しいと気づいている。
 それでもやらせようとしているのは、ボクを『始末』するつもりと考えられる。

 ……だとしたら魔王サマモ……

 今代の勇者の加護を知っていた場合、グルの可能性もあル。
 ボクが国を相手取れば、人間種側の戦力を減らしつつ、厄介者を排除できル。
 あくまで可能性、確実ではなイ。

「試ス」

 それから半月ほど情報を集めつつ、勇者殺しの策を講じる。
 勇者に関する情報は、ろくに得られなかった。
 街中で雑談がてらに話を聞くと、勇者の噂は聞いていてもどんな姿かも知らない者までいた。

 定期報告では、必ず魔王に連絡を取ろうと試みるが全てアルルスに繋がってしまう。
 アルルスに援軍、支援を求めても断られる。
 魔王軍側からの情報提供も一切なし。
 その上で、最後に嫌味を言われて通話を切られる。

 ストレス発散に使われてる気がすル。
 半月、街に来てから15日経っタ。
 余裕を持ってもう数ヶ月使いたかったが、情報は充分。
 その上、少し急がないと出遅れてしまウ。
 チャンスを逃すことは避けたイ。

「作戦開始」

 新たな作戦を実行する。
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