魔王軍を辞めると決めた軍団長、女勇者の相棒となる。〜神の加護に焼かれても、怪しまれても正体を隠し通す〜

代永 並木

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3話 ギルド

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 朝に宿を出て、ギルドに向かう。
 人混みに紛れて、普通に歩く。
 下手に隠れようとするより、自然体で歩く方が自然に見える。

「その串1本欲しイ」
「はいよ、ほら」

 出店で売られていた串焼きを購入する。
 焼かれた肉と野菜の匂いが鼻腔びこうをくすぐる。
 食べながら、ギルドへ向かう。

 冒険者の巣窟であるギルドに行くのは、リスクが高いが、そのリスクを踏むメリットもある。
 1日前にとある情報を手に入れた。
 それは、勇者が冒険者になったという情報。

 ……信ぴょう性は低イ。だけど、パーティに入り込めれば計画が進みやすイ。

 情報が確かか、これから確認するところ。

 半月の調査の結果、アルルスはボクを始末しようとしていると見えタ。
 露骨に、国を相手取るように促ス。
 失敗した場合、どうなるかをほのめかス。
 途中から援軍や支援に関しては、聞く耳すら持たなくなっタ。
 清々しいくらい、怪しさしかなイ。

「勇者を味方にすル」

 串焼きの串を噛み砕いて飲み込む。
 この国には勇者を殺す目的で来ていたが、その逆を行う。
 つまり、勇者の仲間となること。
 それ即ち、魔王軍への反逆行為。

 ボクは魔王軍に所属しているが、元々忠誠心は高くない。
 魔物や魔族というのは、基本的に野良で暮らすか魔王の配下になるかの二択。
 まれに例外がいる程度。
 だから、ボクにとって魔王軍は、都合が良かっただけ。
 故に命の危機を感じた今、魔王軍に居座る方がリスクになル。

「平常心、擬態は出来てル」

 扉を開きギルドの中に入った。
 ギルド内部では、冒険者達の様々な声が聞こえる。
 聞き取れる限りでも、色んな話をしていて統一性はない。
 中央付近に冒険者ではない人がいれば、目立ってしまうから端に移動する。
 だから、端に移動してから周りを見渡す。
 目的は勇者のみ、勇者の姿は既に確認済みだから見つけるだけ。

 ……居なイ。

 この場にいる全員の姿を見たが、今この場に勇者の姿はない。
 服装は当てにならないから、体格、髪型、髪色、顔の形を正確に見た。
 いないとなると接近ができない。

 ……ここにあまり滞在したくはなイ。

 何もせずに長く滞在していると、冒険者タチに怪しまれてしまウ。
 それはリスク、勘のいい奴に気づかれル。
 何日も通うのも危険ダ。
 何度も視界に入れば、歪みに気づかれかねなイ。

 適当に近くにあった椅子に座る。
 長く思考するのに座っていると楽。
 どうするべきかと思案する。
 何かリスクを回避できるものが必要

「冒険者になるべきカ?」

 冒険者になれば、ギルドに通っていても不自然ではない。
 多少、身元が怪しくても冒険者には成れるという話も聞いたことがある。
 その上、冒険者の肩書きがある方が怪しまれづらい。

 ……一度試すカ。この手の施設の場合、あそこに行けばいイ。

 カウンターが置いてある受付に向かう。

「どうしましたか?」
「冒険者になりたくテ、どうしたら良いかを教えて欲しいんス」

 顔を上げて、相手の目をしっかりと見ル。
 表情を笑顔に変えて、声の声量と抑揚を増やス。
 口調もゆっくり落ち着いた感じではなく、少し早くして人に近づける。

 視線を合わせると、受付の女性の顔がなぜか赤くなっタ。
 人間種特有の何かだろうカ。
 怪しまれたでなければ良いガ。

「冒険者登録でしたら、こちらの書類を書いてもらうことになっています」
「なるほどねェ、ここの理由ってなんでもいいノ?」
「はい、なりたい理由ですので、有名になりたいでも、金が欲しいからでも」
「それなラ」

 紙には名前や出身地、冒険者になりたい理由、役割希望などと並んでいた。

 ……名前はリアにするカ。出身地はソルキ、なりたい理由は金稼ギ、役割希望は前衛攻撃職。

 魔族や魔族に詳しい者に気づかれないように、名前を変えル。
 出身地は、聞いたことのある国の名前を選ブ。
 なりたい理由は適当。
 役割はボクのスタイルに合っている前衛。

「はい、確認します。出身地はソルキ王国ですね。はい、大丈夫です」
「他に書類ハ?」
「ありません。冒険者カードの説明だけです。あっ、ちょうどいいのでもう1人の冒険者希望の方と一緒に説明したいんですが大丈夫ですか?」
「もう1人? 問題ないヨ。2人同時の方が楽だもんネ」
「ご協力感謝します」

 ……冒険者希望なら気づかれなイ。

 受付の女性が呼んでくるというので、カウンターの椅子に座って待つ。
 数分後、受付の女性に連れられて、冒険者が来るがやってくる。

「遅れてすみません」
「いえいえ、忙しいでしょうし……隣失礼するね」
「どうゾ……エ」

 その姿をはっきりと見た瞬間、声が漏れた。

 隣の椅子に座った人物に、見覚えがあル。
 黒髪のこの世界の人間種とは、わずかに違う顔立ちをした青年。
 その姿、体格、顔の形は間違いなく勇者だっタ。





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