魔王軍を辞めると決めた軍団長、女勇者の相棒となる。〜神の加護に焼かれても、怪しまれても正体を隠し通す〜

代永 並木

文字の大きさ
5 / 6

4話 パーティ結成

しおりを挟む
「うん? どうかした?」

 ボクの漏らした声に気づいた勇者が、こちらを見る。
 しかし、視線が合った瞬間、勇者はすぐに顔を逸らした。

 ……怪しまれたカ? それとも見られたカ?

「あぁいヤ、前にレンガの落下に巻き込まれてたの見たから無事だったんだねト」

 咄嗟に言い訳を考えて言う。
 だいぶ、無理やりな言い訳。
 レンガの落下に巻き込まれたことと、今ここにいることは関係もない。

 ……動揺カ、不味いカ?

 ここで勇者に会うなんて想定していなかっタ。
 冒険者になった後に、こちらから接触を想定したから油断しタ。
 動揺が声に出ていないのがまだ救イ。

「あぁ、見られてたんだ。うん、偶然当たらなかったみたいでさ」
「それは良かったヨ」

 何とか今の言い訳で、切り抜けられた。

「お知り合いだったんですね」
「いや、知り合いではなくて」
「一方的に街で見かけたことがあっただケ、それよりも説明をお願いしたいナ」

 ボロを出さないように、すぐに話をそらす。
 特に広がる話でもなく、時間の無駄。

「わかりました、では説明をします」

 勇者と2人で冒険者カードの説明を受ける。
 色んな人向けの長い説明だった。
 簡潔に、身分証として使えること、無くしたら身分証ができなくなる、再発行には金と時間がかかる。

 カードの説明のついでに、パーティの説明もされた。
 最低、2人いればパーティが組めると。

 ……ならパーティを組む提案をすれバ……

 偶然の出会いから、パーティを組むというのは不自然ではなイ。
 むしろ、ちょうどいい理由付けになル。
 なぜ、勇者が冒険者になろうとしているかは分からないが、パーティを組まずにいるとは考えづらイ。
 見た限り、他に仲間がいるようにも見えなイ。
 絶好のチャンス。

「説明は以上です」
「ありがとうございました」
「ありがとネ」

 説明が終わり、席を立つ。
 どう話を切り出すかと考えていると、横から声がする。

「リアさん、パーティ組まない?」

 勇者にパーティ勧誘を受けタ。

 ……エ?

 今度は声に出さずに済んだ。
 振り返ると、勇者がこちらを見ていた。
 リアという名前は先程説明を受けていた際に、女性が言ったから知っていて不思議ではない。
 まさか、勇者側から勧誘を受けるとは思っていなかった。

 いや、知り合いがいなければ、偶然会った者と組むのは不自然ではなイ。
 先程の出来事に比べれば想定可能、有り得ル。
 むしろ、都合がいイ。

「いいのかイ? キミは人気者だろウ?」
「あぁ……知ってるんだ」

 勇者は少し目をそらす。
 先程とは違う逸らし方。

 ……今の質問は失敗カ。

 反応的に聞くべきではなかったかもしれなイ。
 これからパーティを組むつもりなのに、ここで印象悪くすると不味イ。

「あまり知られたくないことだったカ。無遠慮で済まなイ」
「いや、そうじゃなくて……あの空気がちょっと苦手でね」

 勇者は、苦笑いをする。
 異世界人という話から、こちらの世界に馴染めていないようだ。
 あるいは、人間種の持ち上げる扱いに慣れていないか。

「分かるヨ。慣れてないときついよネ」
「そうなんだよね。まだ時間かかりそう」
「ならそういう扱いはしないヨ。パーティを組もウ」
「良いのか?」

 勇者の顔がパッと明るくなる。
 断られなかったことが、嬉しいと表情からわかる。
 そこまで嬉しい理由は分からないが。

 表情の変化がわかり易すぎル。
 ちょろいナ、この勇者。

「ボクも組む相手、いないかラ」
「良かったぁ。1人で依頼受けるの怖くてさぁ」
「魔物討伐経験ハ? もしかしてなイ?」

 念の為に聞く。
 勇者なら魔王討伐のために、訓練を積んでいるはず。
 すでに召喚されてから1ヶ月近く経っていて、経験がないとは思えない。

「弱い魔物なら何体か……強いのはまだ」
「安心しナ。このランク帯なら依頼は弱い魔物だヨ」
「それは良かった。あぁ、俺の名前は獅子神ししがみ梓沙あずさ

 そう言って勇者は手を差し出す。
 握手だ。

 ……不味イ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました

ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...