婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として生きます!

羽山由季夜

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終章 貴方と共に

貴方と共に永遠を

 卒業式の前日。
 王立タイバス学園での最後の昼食時、食堂の奥に設けられた王族専用の個室で、従兄妹の双子の王子王女がリヴィアスに顔をずいっと近付けた。

「リヴィ、ラディウス王太子殿下からプロポーズされたんだって?」

 ニヤニヤと笑いながら、ルミナスがリヴィアスを肘で突く。

「う……うん」

 じわじわと顔を赤くし、リヴィアスは頷く。

「おめでとう、リヴィ。我がことのように嬉しいわ」

 オーロラが照れるリヴィアスの両手を持ち、嬉しそうに笑う。

「おめでとう、リヴィ。結婚式には僕達も行くから、招待してね」

「うん、ありがとう。ルミナ、オーラ。もちろん、日時が決まったら招待状を送るよ」

 少し頬を赤らめたリヴィアスは、照れたまま微笑む。

「ところで、卒業式の挨拶はルミナが言うの?」

「そうだね。双子の王子王女だと、僕が兄になるからね」

「もう、考えた?」

「一応ね。オーラにも、リュミ兄上にも見てもらったよ。第二王子だし、恥ずかしいことになりたくないしね。示しがつかない」

 肩を竦めながら、ルミナスは溜め息を吐く。

「ルミナ、挨拶でうっかり毒吐きそうだから、私もリュミお兄様も冷や冷やよ。本音と建前をわざと逆に言いそうだもの」

「そりゃあ、オーラとリヴィに秋波を送る有象無象が多かったからね。卒業後もするだろうから、牽制は必要だよね。流石に挨拶ではしないけど、卒業パーティーではするかもね。僕もオーラも識神の加護のことがあって、他国へ嫁ぐことは出来ないから」

「……そうなると、僕、よくエリスロースへ嫁ぐことが認められたよね……」

 ルミナスの話を聞きながら、自分の持つ加護を思い、リヴィアスは呟く。

「リヴィの加護は、国内関係なく影響するからだと思うわ。豊穣の女神の加護は、前まではレイディアンス辺境領、ブラカーシュ王家の所有の領地、エリスロース竜王国のプロミネンス公爵領しか影響がなかったのが、今では更に竜王家所有の領地にも影響しているんでしょう?」

「そうみたいだね」

 苦笑混じりに頷き、リヴィアスはティーカップに目を落とす。
 豊穣の女神の加護については、リヴィアス自身は詳しく分からない。
 書物等で調べる限りでは、その加護を持つ者が大事に思う場所に、他の場所と比べて少しだけ豊かにしたり、植物の成長速度を早める、と書かれてある。
 書物の通り、リヴィアスが生まれ育ったレイディアンス辺境領、従兄妹達が住むブラカーシュ王家所有の領地、エリスロース竜王国のプロミネンス公爵領は他の領地と比べて、豊かになった。
 ラディウスと婚約してからは、エリスロース竜王家所有の領地も他の領地と比べて、収穫量が増えて豊かになったとエリスロース竜王国のカエルム国王から話を聞いた。
 竜王国内の貴族や他国に勘づかれないように誤魔化しておくとカエルム国王から言われ、リヴィアスは申し訳なさを感じる。

「リヴィが何処にいても、加護の恩恵がブラカーシュにあるなら問題ないし、僕達王家は個人的にもリヴィが安心して笑ってくれる場所にいてくれるならいいんだ。父上もそう思ってるし、準王族だからと国に閉じ込める気はないよ」

「お父様は元々、リヴィが幸せなら、誰に嫁いでもいいって思ってたし、ラディウス王太子殿下との婚約は反対してなかったもの」

「まぁ、ミストラル叔父上の宿題があったからというのもあるけど……」

「それでも無事に宿題も達成したし、お父様も叔父様も認めざるを得なかったものね」

「リュミ兄上はラディウス王太子殿下を元々知っていたから反対してなかったし、叔父上はリヴィ溺愛だから、視界が狭まるよね……」

「傍から見て面倒な舅だわ……」

 自分の父と叔父がいないのをいいことに、ルミナスとオーロラは溜め息混じりに、リヴィアスを同情するように見る。

「二人からは父様のことそう見えるんだね。父様とアシェル様、とっても仲が良いよ?」

「「えっ」」

 リヴィアスの一言に、ルミナスとオーロラは従弟の背後に立つ侍女のライムを見る。
 二人もモノリスーーライムの事情を知っている上に、兄であり、ブラカーシュ王国の王太子リュミエールと叔父のミストラルと共に、識神の加護を使って、高位貴族の令嬢、侍女、護衛の教育、恋愛の気持ちを抱かない教育を彼女に施す手伝いをした。なので、リヴィアスの婚約破棄前より、今の方がライムと面識がある。

「……両殿下。リヴィ様が仰る通り、ミストラル大公殿下とラディウス王太子殿下は、とても仲良くなさってます。表面上では」

「……あー、そういうこと……」

「……水面下で牽制し合ってるのね。了解、理解したわ」

「むぅ……本当に仲良いのに……。一緒に食事したり、二人でお話もしてるよ?」

 口を膨らませて、リヴィアスは双子の従兄妹達を見る。

「それ、多分、リヴィの今後の守り方等を叔父上から詰められてるんだと思うな……」

「ラディウス王太子殿下個人と、エリスロース竜王家としてのね。一対一なのに、ラディウス王太子殿下にとっては圧迫面接ね」

「竜神の加護と戦神の加護って、どちらが強いのかな?」

「それこそ、矛と盾でしょ。一つしかない加護を推し量っても仕方ないわ」

「そうだね。まぁ、僕達としてはリヴィが幸せならいいよ。そうでなければ、親族として口出せばいいよ。それまでは叔父上に任せよう」

「両殿下、ミストラル大公殿下とあまり変わらないと思います……」

 頷き合う双子の王子王女にライムは苦笑し、リヴィアスは困った表情でティーカップに口を付けた。






 そして、次の日。
 王立タイバス学園の卒業式を迎えた。
 卒業式は滞りなく進み、ブラカーシュ王国の第二王子ルミナスが卒業生代表として挨拶をし、イリオス国王からの言葉があり、無事に終えた。
 そのまま、卒業パーティーへと続いた。
 卒業パーティーを行うホールには、卒業生、在校生、同伴の家族達が集まり、パーティー開始を待っていた。

「二年振りだな、リヴィ」

「……そうですね、グレイ兄様……」

 二年前のことを思い出したのか、兄のグレイシアが冷めた声音で呟くのを苦笑と共にリヴィアスは頷く。
 本当は婚約者であるラディウスに『卒業おめでとう』の言葉と同伴をお願いしたかったのだが、流石に隣国の王太子なので、王立の学園の卒業パーティーに呼ぶのが憚られ、リヴィアスは兄にお願いした。
 もちろん、ラディウスにもそのように説明して、了承を得ている。

(それに、絶対に有り得ないのは分かってるけど、もし、同伴をお願いして、アシェル様からも婚約破棄なんてことになったら、もう、僕は立ち直れない……)

 卒業パーティーがトラウマになったリヴィアスは、無条件に家族として守ってくれる兄に、二年前と同じように同伴をお願いした。

「ラディウス王太子殿下を呼ばなかったのは、正解だったかもしれないな」

「……え?」

 静かに辺りを見渡すグレイシアに、リヴィアスは不思議そうに見上げる。

「周囲がリヴィに対しての婚約破棄を期待している。ラディウス王太子殿下からリヴィを奪う気概もないくせに、他力本願で期待する、その空気が腹立たしい。ラディウス王太子殿下がいれば、怒りで竜の威圧を放っていたかもしれない」

 グレイシアが告げると、リヴィアスはゆっくりと目を見開く。

「グレイ兄様……僕は……」

 周囲の雰囲気に呑まれ、じわじわと広がる不安で、リヴィアスは無意識にラディウスから贈られたイヤーカフに触れる。ラディウスの魔力を必死に感じようとする。

「大丈夫だ。あの『陽光竜の王太子』がリヴィを手放すものか。兄として、まだ嫁がせる気はないが、ラディウス王太子殿下以外にリヴィを預けるつもりは私にはないよ」

 冷ややかな紺碧色の目を周囲に向け、グレイシアはリヴィアスの頭を撫でる。
 グレイシアの冷ややかな目に周囲の卒業生、在校生、同伴の貴族達の表情が青褪める。
 と、その時だった。
 ホールの後方から、ざわざわと声が広がってくる。
 ふと知っている魔力の気配を感じ、リヴィアスは兄と共に振り返る。
 そこには、卒業生、在校生、貴族達といった人集ひとだかりの中に、見覚えがある少し緩く波打っている癖のある金色の髪が見えた。

「……アシェル、さま……」

 同伴しないことを伝えたはずなのに、現れた婚約者を見て、急速にリヴィアスの指が冷たくなっていく。

(どうして、アシェル様が……? 信じたいのに、有り得ないって分かっているのに……)

 トラウマになってしまった二年前の出来事が脳裏に甦り、兄の腕を右手で強く掴んでしまう。

「リヴィ……」

 グレイシアが心配そうに、リヴィアスの震える手を撫でる。
 その間もラディウスは、リヴィアスの方へと真っ直ぐ進んでくる。
 リヴィアスとラディウスの様子を窺うように、辺りは静まり返り、二年前の婚約破棄の騒動を見たことがある者達の目が、興味深げに輝いていることに気付き、グレイシアが舌打ちをする。舌打ちに気付いた者達が青褪めている。
 そういった様子に目もくれず、ラディウスはこちらにやって来る。
 目の前に現れたラディウスは王太子然とした正装で、リヴィアスに微笑んだ。

「リヴィアス」

 普段から耳にする優しい声音で、ラディウスが愛称ではなく、リヴィアスの名を呼ぶ。

「は、はい、ラディウス王太子殿下……」

 同じ声音なのに、愛称で呼ばないラディウスに緊張して、リヴィアスは声が震えないように返す。

「ーー卒業、おめでとう」

「あ、ありがとう、ございます……」

 微笑むラディウスに、リヴィアスは静かにボウアンドスクレープで返す。

「王立学園の卒業パーティーだから、私を呼ぶのは他の生徒達にも緊張を強いてしまうからと同伴を兄君にすると貴方から連絡があったのに、リュミエール王太子から招待されてな。素直に来てしまった」

「え……そう、なのですか……?」

 想像してしまったことと返答が違い、リヴィアスは目を何度も瞬かせる。

「本当は貴方の晴れ姿が見たかったから。だが、貴方からの『お願い』だから、我慢するしかないと諦めていた。リュミエール王太子から招待はとても有り難かった」

 優しい声音と微笑みを向け、ラディウスはリヴィアスの冷えた左手を暖めるように両手で持ち、尚も続ける。

「貴方が二年前に受けた傷を、私ーー俺がこの場に来たことで、払拭して、上書きしたかったんだ、ヴィア」

 ラディウスの言葉に、リヴィアスは息を飲む。

(どうして、アシェル様は、隣国にいる僕が不安に思ってることを、欲しい言葉を、離れていても分かるんだろう……)

 竜神の加護で常人より五感が優れているが、流石に隣国にいるリヴィアスの想いをラディウスが感じ取ることは出来ないはずなのに。
 なのに、ラディウスはリヴィアスの密かな願いを叶えてくれた。
 呆然とリヴィアスはラディウスを見上げる。

「貴方の卒業パーティーを喜ばしい思い出にしたかったから、こちらに来ることを内緒にしていたんだが、伝えた方が良かったな。二年前を思い出させてしまったな。すまない、ヴィア」

「い、いえ。いいえ。僕は、アシェル様が来て下さって、『おめでとう』と仰って下さって、本当に嬉しいんです……。確かに、突然来られたので、二年前のことを思い出してしまいましたが、来て下さった理由も説明して下さいましたし、ウィキッド子爵令息とは逆のことをして頂いたので、嬉しいんです」

 静かに微笑み、リヴィアスはラディウスを見上げる。

「俺が、貴方を手放すと思ったのか?」

「……ごめんなさい。二年前を思い出して、不安になりました……」

 リヴィアスの素直な言葉を聞き、ラディウスを牽制するように隣に立つ兄の空気が冷たくなる。

「……これは、まだまだ俺の愛が足らないな。結婚式までに、今以上にもっと愛を貴方に囁かないといけないな、ヴィア」

 グレイシアの牽制を何処吹く風といった表情で流し、ラディウスはリヴィアスに顔を近付ける。

「は……ぇ……?」

 目を瞬かせ、リヴィアスはラディウスの言葉を徐々に理解したのか、じわじわと顔を赤くしていく。

「俺は貴方と共に添い遂げるつもりなんだが? ヴィアは違う?」

「違いません! 僕だって、アシェル様と同じです」

「それなら、もう、二年前の卒業パーティーなんて思い出すのは禁止だ。思い出したら、延々と愛を囁き続けるからな? 竜神の血筋の愛を舐めたらいけないぞ?」

 不敵に笑い、ラディウスはリヴィアスの左手の薬指に口で触れる。
 ラディウスの行動に、リヴィアスは驚いて顔が真っ赤になる。

「あ……ぅ……はい……」

 許容量を超え、リヴィアスは真っ赤な顔のまま何度も縦に首を振った。

「ヴィア、愛してるよ」

 周りの貴族達も、兄の目も気にせず、ラディウスは宣言通りリヴィアスに愛を囁く。

「ぼ、僕もです……」

 周りの視線を気にしつつ告げるリヴィアスの言葉に、ラディウスは満面の笑顔を浮かべた。








 それから半年後、リヴィアスはラディウスとエリスロース竜王国の王宮にある大聖堂で結婚式を挙げる。
 王太子の結婚式は本来なら一年以上掛かるはずなのに、学園を卒業して、半年で準備を整えたエリスロース竜王家の本気をリヴィアスは見た気がした。

「ヴィア。俺の生涯を掛けて、貴方に愛を誓うよ」

「僕もです。アシェル様」

 花が綻ぶような微笑みを浮かべ、豪華だが清楚な結婚衣装に身を包んだリヴィアスは、大聖堂の全能神と竜神像の前でラディウスと共に誓う。
 お互いに誓い合うと、大聖堂内にひらりと白と赤の花びらが舞う。
 結婚式に参加している者達も花びらに驚き、ざわめく。
 リヴィアスとラディウスも驚いて、花びらが舞う先に目を向けると、六人の姿が見えた。その中には、月の女神アリアンロッドと太陽神ベレヌスがいた。が、リヴィアスとラディウス以外からは、六柱の神に気付いていないのか何の反応もない。

「僕達に加護を下さった神様方……?」

「それと、恐らく全能神様だな。竜神と太陽神とは姉弟だから」

 ラディウスの言葉を聞き、リヴィアスは改めて六柱の神達に顔を向ける。
 アリアンロッドとベレヌスがにこやかに手を振っている。その隣で、ラディウスに似た金色の髪、真紅色の目をした恐らく竜神とリヴィアスと同じ天色の目をした恐らく豊穣の女神。
 更にその隣に鮮やかな緑色ーー常磐色の、リヴィアスと同じようにきらきらと輝く目をした、若草色の髪の恐らく薬神と光に反射して様々な色で輝く銀色の目、黒い髪の恐らく全能神がこちらを見ている。
 どの神も容姿が言葉では形容出来ない美しさだ。
 その神達がお祝いに来てくれたのだろうか。
 呆然としていると、リヴィアスに加護を与えた薬神、豊穣の女神、月の女神アリアンロッドが考えを読んだのか、同時に頷いた。

『リヴィ君、ラディウス君、結婚おめでとう。また祠で挨拶させて。返事は声に出さないで、頷くだけで大丈夫だから』

 アリアンロッドが代表して、リヴィアスとラディウスに声を掛けてくれる。
 言われた通りにリヴィアスとラディウスが頷くと、アリアンロッド達は手を振って消えた。同時に花びらも消えた。




 結婚式を終え、エリスロース竜王国の王宮のバルコニーへ、国民達に結婚したことを披露するためにリヴィアスとラディウスは向かう。
 バルコニーへ続く廊下で待機しながら、リヴィアスはコップ一杯の水を飲み干し、乾きを潤す。

「……神様方がお祝いして下さる結婚式、とても思い出に残りました……」

 一息吐きながら、リヴィアスは同じように水を飲むラディウスに話し掛ける。

「俺もだ。見守って頂いているのが畏れ多いが、有り難いな。神々が祝いに来る結婚式なんて、竜王家でも聞いたことがない」

 水を飲み干し、ラディウスは歩いたことで少し乱れたリヴィアスの前髪を整える。

「更には、俺とヴィアで一週間籠る祠で、また挨拶して下さるんだろう? 世界でもないことではないか?」

「そうですね。何か、御礼が出来ればいいのですが、何がいいでしょうか……」

「それは明日考えよう。今日は結婚式と今からの国民達へのお披露目後は、そんなことは考えられないからな」

 ラディウスは、にやりと不敵に笑う。

「え……? あ……っ!」

 きょとんとした後、すぐラディウスの言葉の意味に思い至り、リヴィアスの顔が真っ赤になる。

「可愛い……。それがついに、今日から俺だけのヴィアになるんだからな」

 結婚衣装の白い手袋を着けたまま、ラディウスはリヴィアスの顎を持ち上げ、親指で唇を撫でる。

「……アシェル様、まだ、少し待って下さい……。国民の皆様にご挨拶があるので……!」

 真っ赤な顔のまま、リヴィアスはラディウスから一歩退る。

「そうだな。その可愛い顔を国民達に見せるのは嫌だな。もう少し我慢する」

 名残惜しそうな表情で手を離し、ラディウスは頷いた。

「両殿下、そろそろ出番です。宜しいですか?」

 タイミング良く、リヒトが声を掛けてくる。

「ああ。行こう、ヴィア」

「はい、アシェル様」

 手を繋ぎ、リヴィアスとラディウスはバルコニーへと進んだ。









 『陽光竜の王太子』と呼ばれたラディウスは結婚後もリヴィアス以外に目を向けることもなく、生涯、彼を愛し続け、竜王となってからは国を更に発展させた。
 同じく『月華の君』と呼ばれたリヴィアスは結婚後、ラディウスに愛をされることで、過去に婚約破棄で負った傷も癒され、竜王妃として夫を支え、薬師としても国に貢献した。
 二人は子宝にも恵まれ、二男二女の子供が生まれた。生まれた子供達も優秀で、それぞれの分野で国を発展させることに貢献したという。
 そして、二人は子供達、孫達といった家族に囲まれ、永遠に離れないが如く、同じ日に人生の幕を閉じた。

「……父上の執念、怖すぎ!」

「それなら、母様もだよ。父様が強烈で気付かないけど、母様も父様と離れる気なかったし」

「性格は違うけど、結局、似た者夫婦だよね、お父様もお母様も」

「でも、そういう夫婦っていいよね。父上の母上への愛し方は好感しかないよ」

 二人の墓にお参りしながら、長男、長女、次女、次男の四人の子供達はわいわいと話す。墓参りの時はしんみりとしないで欲しいと愛する母から『お願い』されたからだ。

「……竜神の加護持ちに愛される訳だから、先日生まれたウチの子にも、二人の話はしっかり話しておこう。溺愛は程々にって。ウチの子は溺愛する方になるだろうし」

 国王になった父親似の長男が溜め息混じりに呟く。

「ああ、その子が竜神の加護を持って生まれたんだね。何なら、私達からもお父様達のこと話すよ?」

 次女が両親の墓に近付きながら、兄に声を掛ける。

「助かる……。逸話残しすぎなんだよ、この二人!」

「まぁ、母様は『月華の君』と呼ばれた美人だから、結婚してても皆、狙う訳だし、凄腕薬師だし、稀少な加護増し増しの歩く恩恵だから、父様も周囲に牽制するよね。逸話が残るのは仕方がないよ」

 長男が両親に対して吠えると、母親似の長女が慰めるように肩をぽんと叩く。

「……母上似のお前に言われてもな……」

「姉上も母上似だから、旦那さん大変そうだね」

 兄と姉達の話を聞きながら、次男はのんびりと呟く。
 そんな話を両親の墓の前でわいわい話しながら、四人は懐かしむ。

「でも、母上が父上と出会って良かった。ずっと幸せそうだったから」

 顔を綻ばせ、長男は呟く。
 両親から聞かされた、二人の出会いから結婚までの話は本になり、エリスロース竜王国とブラカーシュ王国中が知っている。そこから続く、様々な逸話も知れ渡っている。

「来世でも、二人共、幸せだといいね」

「……絶対、父上が母上を見つけて、猛攻撃して、また恋仲になる、に大白金貨を賭ける」

 次男ののんびりとした呟きに、長男が虚無な目で返した。

「それしか思い浮かばないね」

 長女は笑い、次女が頷く。
 四人に応えるように、周囲に柔らかい風が舞った。
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