残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。

具なっしー

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どうやら私、伝説の存在らしい

ツンデレ調香師

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「おい!ジュリアン!不敬だぞ!」
「は?あ、やべ」
「ジュリアンさん?仮にも聖女である俺の空ちゃんにその態度はないんじゃないかな?」
仮にも…解せぬなぁ。
「ま、まぁまぁ。突然呼びつけてしまったのは私の方だから大丈夫」
そういうとジュリアンさんと店員さんがぽかーんと驚いた顔をした。

「で?聖女様は俺になんのようですか?」
「あ、あのねこの2つの香水を気に入って購入したらどちらもあなたのだって聞いてどんな人なのかお話ししてみたかったの。」
「ふーん、こいつらか。そっか、やっと売れるんだな、これは俺がどちらも半年かけて作った傑作だ。なのにこの国の人間達鼻が馬鹿になってるから弱いとか地味だとか言ってきやがるんだ。」
「半年…凄いです!もうこの香りを嗅いだ瞬間からこれだ!ってなりました!繊細で奥深い、何重にも深みがある香り!大好きです!」
「!!??わ、わかってんじゃねぇか、で?これは誰に渡す香水なんだ?」
「え!?」
「だって、お前って感じがしない」
「え、え?そういうのもわかっちゃうんですか?」
「プロだからな」
「そうなの?空ちゃん?いったい誰に…あげるのもりなのかな?」
「えぇっと、あの、ほんとはお家に帰ってから2人を驚かせたかったんですが…ルシアンさんとアルトに私の選んだ香りをつけて欲しくて…こっちがルシアンさん、こっちがアルトです」
「ぐはっっっっっっ(女性がプレゼントを送るなんて、ありえない!そんなの貰ったことないよ。自分の匂いをつけたいだなんて!独占欲まで出してくれて嬉しい!あーでもこれ破壊力やばいわアルト…あいつ耐えられっかなぁ)ありがとう!空ちゃん。とっても嬉しいよぉ」
私は嬉しくてにまにましていた。
「あー…オレノコウスイが2人の仲を縮めたようでコウエイデス(棒)」
「いや、思ってないでしょ笑」

私はジュリアンさんと話していてこの人ならって思いついたことがあった。
「ルシアンさん耳かして?」
「空ちゃん?」
こしょこしょこしょ
「うん、いいんじゃない?俺もジュリアンさんなら大丈夫だと思うよ?」
私はちらっと店員さんに目を向ける。
すると流石はプロ空気を読んで
「では、私は業務の続きがあるのでこれで失礼させていただきます。ごゆっくりどうぞ」
そう言ってスマートに退出してくれた。

目の前にはこちらを探るように警戒して見つめる調香師。
「で?人払いしてまで話したいことって?」
「あの、この香水なんですけど」
「!!??こんなガラス細工見たことない…」
「はい、こちらは私の世界の香水です。」
「異世界の香水…」
「この香りをジュリアンさんに再現してもらえないかなって思って…」
「ちょっと試香してもいい?」
「はい、どうぞ」
ジュリアンさんはムエットにサッと香水を一振りした。
何やら考え込むジュリアンさん。
「…これは………」


ジュリアンは言葉を紡げなかった。
嗅いだことのない香りだ……。
一瞬で空間が変わる。ふわりと広がるそれは、淡い花弁が夜風に舞うような、儚くも確かな甘さ。
甘すぎず、ほのかに青さを残して、けれどどこまでも優しい。
春の始まりを告げる風のようで、胸の奥を締めつけながらも、不思議と安らぎを与えてくる。調香師として数え切れないほどの香りを扱ってきたはずなのに、この一滴はまるで心に直接触れてくるようだった。

沈黙を破ったのは、空の小さな声だった。
「……お姉ちゃんが、くれたんです」

その言葉を聞いた瞬間、ジュリアンの胸に鋭い衝撃が走った。
そうだ、この少女は――突然異世界から、たったひとりで、誰も知らないこの地に連れて来られた被害者なのだ…
自分の知る女性たちは皆、与えられる立場にいて、望めば祝福を受けるのが当然のように笑っていた。
聖女と呼ばれる者たちも、ここに来ることを喜びとして語っていたはずなのに、今目の前にいる少女にそんな色は一片もない。
「唯一の繋がり」を抱いて、それを失わないように必死にもがいているのだ。
そんな様子に、胸の奥が締めつけられた。

この子を支えたい。孤独をひとりで背負わせたくない。

「君の力になりたい」
気づけばそう声に出ていた。
こうしてジュリアンは静かに陥落していた。

「ほ、本当ですか?ありがとうございます!」
「ただ、この主役の香りは…なんの花かわからないんだ。」
「主役は桜って花です。アルカナ王国にもありますか…?」
「サクラ…聞いたことがないな、どんな花なんだ?」
「桜は、木に咲いてて、ピンク色で…あ!そうだ!!ルシアンさん、さっきノエルさんのとこで買ったペンと…紙もらえますか?」
そういうとルシアンさんがスマートに渡してくれた。
私は燃え盛る大和魂で(笑)桜の儚さ、美しさを描いた。
夢中になってたらなんかお花見をしてる人や、花筏、川、大道芸なんかまで描いてて、結構時間が経っていた。申し訳ないなと思ってジュリアンさんを見ると図鑑なんかを開いて調べて待ってくれていた。
「できました。」
そういうとバルドお父様が実演してくれたみたいに私の絵が動き出した…にしても規模が違くないか…?
部屋…だったはずが私達は満開の桜公園の中だった。
周りには人がいて…あ、お姉ちゃんたちと私が仲良く花見をしている。あぁ、綺麗だなぁ…帰りたい、なぁ。
私はずっと閉じ込めていた帰りたいって思いが溢れてきて泣いてしまった。
ルシアンさんがそんな私をぽんぽんして慰めてくれる、なんかジュリアンさんまでないてる私をみてオロオロしていた。
するとパッと元いた部屋に戻ってしまった。わかっていたけど…寂しいな。

「桜…見事だった。花を見てこんなに切ない気持ちになったのははじめてだ。」
「桜の良さを知ってもらえて良かったです…この世界にも、ありそうですか?」
「…すまん、この世界に桜はない…」
「そ、そんなぁ…」
「いえ、あります。」
「え!?本当なの!!?ルシアンさん?」
「おい、お前、この世界にサクラがあるなんて聞いたことねぇぞ?」
「前に見た古い文献に精霊界の薄紅色の花がなる神木について少し書かれていたことを思い出しました。」
「さ、さすがエリート…」
「ですが、問題があります。精霊はここ100年、人間の前に姿を現していません。」
「そんなぁ…」
「でも、あなたなら…精霊と繋がることができますよね?ハイエルフのジュリアンさん?」
「うっっ、やっぱりハイエルフだってバレてたかぁ…流石魔塔のエリートだな。そうだなぁ…確かに俺は精霊様を呼び出すことはできる…でも人間の前には姿を現してくれないだろう。」
「まぁ…そこに関しては俺だけ席を外せば問題ない。空ちゃんは…トクベツ…だからね」
「ルシアンさん!?あの、本当に大丈夫なんですか?」
「そうだなぁ…空ちゃん、ジュリアンは気に入った?」
「え!気に入った…って?」
「結婚したいかどうかってこと」
「えぇええ!そんなっ、いきなり…ジュリアンさんのことは嫌いじゃないし、かっこいい…と思います。」
「よし、じゃあ決まりだね?ジュリアンもいいね?」
「あぁ。」
「えー!ほんとにいいんですか?後悔しますよ?こんな地味なちんちくりん…」
「「地味なちんちくりん!?」」
「いや、俺、お前より可憐な女性見たことねぇよ。」
「か、カレン!?」
「あぁ!とにかく俺はお前と話してて、側で支えてやりたい、守りたいと思った。一生幸せにするから結婚してください。」
「ひゃっ!!!!!???お、お願いします…」

前略れい姉…私に3人目の夫ができました…時間の間隔がおかしくなっているようです。
「おめでとう空ちゃん。てことで今日はジュリアンも一緒に帰って2人分の婚姻届かこうね?」
「は、はひ…」

「で?秘密ってなんなんだよ?」
「空ちゃん。ネックレス外して、消してた耳と尻尾だそっか?あぁ、安心してねこの部屋には防音と外から見えないような結界貼っといたから。」
「わかりました、」
私はネックレスを外して(このネックレスはつけている人にしか外せないようになっている。)ポンッと耳と尻尾を出した。(はっはっはー!恥ずかしい思いをしないように眠る前に必死に出し入れして習得したのだー!優秀すぎて自分が怖いぜ…フッ)

「白猫族…………」

ジュリアンさんは私を見て今日一番のポカーン顔を披露した。うむうむ、人外レベルの美形はどんな顔をしていても芸術的だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ツンデレ調香師回でした!どうでしたか?

実はこの回で書いてるうちに自分が考えていた、この小説全体のラストからめちゃくちゃ逸れてしまって、最初は短編にしようと思っていたんですが、カテゴリーを、長編に変更させてもらいました。
だらだらいちゃいちゃな日常系として続けていきたいと思います。

また、もう一つ新しい小説「猫なので、もう働きません」を投稿し始めました。
そっちはしっかり15話で完結するように設計してやってるのでよかったら見てほしいです。もちろん逆ハー、一妻多夫世界です。また猫かよ?って感じですがロシアンブルーのガチ猫と猫耳幼女をいったりきたりする…みたいな話(?)です。

ではまた会いましょう
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