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一章 私の居場所
7 狼さん
桃はフード付きのローブを深く被り、ベンの背中にしっかりと手を回す。フィンもその後ろをついていく。
宿を出てしばらく移動していると、道は徐々に荒れ、森の気配が濃くなる。木々の間から差す光は幻想的で、風に乗って香る木の匂いや湿った土の匂いが、異世界の森の神秘を強く感じさせた。
「賢者の森に入った。このまま行くと、昼前には着けるな。」
「半日どころじゃねぇな!どんだけ飛ばしてんだよ」
「……なんだか、昨日より森が生きているみたい……」
桃の呟きに、フィンが少し首を傾げる。
「森が……生きてるって……お前、変なこと言うなよ」
「変じゃない、見て……光の差し方とか、葉の揺れ方……すべてが呼吸しているみたい」
「……ま、まあ、そうかもしれねぇけどな」
ベンはそのやり取りを聞きつつ、前方を警戒しながら歩く。
するとだんだん開けた道が見えてくる。
「ここが『賢者の森』……」
桃が思わず声を漏らすと、ベンは桃を地面に下ろした。
「ここからは、俺も全力で走れない。あいつの領域だ」
「あいつって……狼の獣人さん?」
「ああ。奴は、俺の次にこのグランツ大陸で力を持つ男だ。俺たちは互いに縄張りを侵さない協定を結んでいるが、桃を連れてきたとなると話は別だ」
「ヤバいぜ、モモ。あの狼は、狂犬の異名を持つ男だ。力が強すぎて誰も制御できない。ベンがいなけりゃ、この森に来ることすら誰もできねぇ」
フィンが焦ったように桃の腕を引いた。
桃は恐怖に立ちすくむ。狂犬?
ベンは桃の顔を両手で挟み、じっと見つめた。
「モモ、聞け。もし、あいつがお前を奪おうとしたら、全力で抵抗しろ。俺はあいつと殺し合いになるかもしれない。だが、俺はお前を渡さない」
その瞬間、ベンが殺気を纏った。それは、桃がこれまで見たどの姿よりも、獰猛で、雄々しく、そして美しいものだった。
その時、森の奥から、低く、重い笑い声が響いた。
突然、枝の陰からスラリとした影が現れた。銀灰色の毛皮、鋭い瞳、そしてどこか軽やかな動き。
「久しぶりだな、白虎…何しにきた?……おやおや、それに…ずいぶん可愛い雌を連れてるね」
声の主は一人の狼型獣人だった。チャラついた笑みと色気を振りまくその姿に、桃はなんだか拍子抜けしてしまった。
ーーみんな、狂犬とか脅すからどんだけ危険な人なのかと思ったら、良い人そうじゃない…?
「……ロウ」
ベンが名前を低く吐き出す。
「ふふ、久しぶりだね、白虎くん。今回は何の用かな?」
「ロウ…この雌は、俺の妻だ」
「へぇ…」
ロウは桃に視線を滑らせ、舌をチラリと出して軽く笑う。桃は思わず身をすくめる。
「……こ、こいつ、なんか色っぽい……!桃!負けるな!!」
「油断するな、モモ!負けるな!」
ベンはすぐに桃を守る姿勢を取る。フィンもすぐ横に立ち、ロウを威嚇している。
そしてなぜか2人に応援される桃。
その桃もまた、ロウの妖艶な姿に顔を真っ赤にしてプルプルと震えていた。
「恐ろしい狂犬だ!こいつの色気は狂ってやがる!」
「わかったか、フィン…こいつは色恋に狂って、雌だとわかれば片っ端からたぶらかしてやがるんだ…それで狂犬と呼ばれている…」
「ちょっと!白虎くん!久々に会ってそれはちょっと酷くない?強いから狂犬って呼ばれてるし!ま、まぁ、女の子好きなのは否定しないけどね」
ロウは軽く肩を揺らして笑い、桃に近づこうとする。
「やめろ!近づくな!!」
ベンの低い咆哮が森に響き、ロウは軽く手を上げて挑発的に笑った。
「ふふ、いいね、その目つき。君、をそんな風にしちゃうなんて…桃ちゃんいったいどんな子なのかな~?」
その横でフィンは顔を赤くしてベンの背中に隠れながらキャンキャン威嚇していた。桃は思わず小さな声で笑ってしまう。
「……フィンくん、可愛い……」
「っ、なっ……お前……!」
ロウはその光景を見て、口元に薄く笑みを浮かべた。
「ま、とにかく…僕に用があるんでしょ?ほら、入りなよ…」
パチっ
ロウが指を鳴らすと目の前に豪華な屋敷が現れた。
「ようこそ、賢者の館へ」
森の奥、重く漂う香りと静謐な空気の中で、ロウの存在は、ベン・フィン・桃の関係性に微妙な緊張を与えつつも、桃にとっては新しい刺激の始まりを告げていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロウ登場しましたー!!個人的に1番好きです。
次回はもっと狼さんのことが知れちゃいますよ!お楽しみに~
お気に入りといいねもお願いします✨
宿を出てしばらく移動していると、道は徐々に荒れ、森の気配が濃くなる。木々の間から差す光は幻想的で、風に乗って香る木の匂いや湿った土の匂いが、異世界の森の神秘を強く感じさせた。
「賢者の森に入った。このまま行くと、昼前には着けるな。」
「半日どころじゃねぇな!どんだけ飛ばしてんだよ」
「……なんだか、昨日より森が生きているみたい……」
桃の呟きに、フィンが少し首を傾げる。
「森が……生きてるって……お前、変なこと言うなよ」
「変じゃない、見て……光の差し方とか、葉の揺れ方……すべてが呼吸しているみたい」
「……ま、まあ、そうかもしれねぇけどな」
ベンはそのやり取りを聞きつつ、前方を警戒しながら歩く。
するとだんだん開けた道が見えてくる。
「ここが『賢者の森』……」
桃が思わず声を漏らすと、ベンは桃を地面に下ろした。
「ここからは、俺も全力で走れない。あいつの領域だ」
「あいつって……狼の獣人さん?」
「ああ。奴は、俺の次にこのグランツ大陸で力を持つ男だ。俺たちは互いに縄張りを侵さない協定を結んでいるが、桃を連れてきたとなると話は別だ」
「ヤバいぜ、モモ。あの狼は、狂犬の異名を持つ男だ。力が強すぎて誰も制御できない。ベンがいなけりゃ、この森に来ることすら誰もできねぇ」
フィンが焦ったように桃の腕を引いた。
桃は恐怖に立ちすくむ。狂犬?
ベンは桃の顔を両手で挟み、じっと見つめた。
「モモ、聞け。もし、あいつがお前を奪おうとしたら、全力で抵抗しろ。俺はあいつと殺し合いになるかもしれない。だが、俺はお前を渡さない」
その瞬間、ベンが殺気を纏った。それは、桃がこれまで見たどの姿よりも、獰猛で、雄々しく、そして美しいものだった。
その時、森の奥から、低く、重い笑い声が響いた。
突然、枝の陰からスラリとした影が現れた。銀灰色の毛皮、鋭い瞳、そしてどこか軽やかな動き。
「久しぶりだな、白虎…何しにきた?……おやおや、それに…ずいぶん可愛い雌を連れてるね」
声の主は一人の狼型獣人だった。チャラついた笑みと色気を振りまくその姿に、桃はなんだか拍子抜けしてしまった。
ーーみんな、狂犬とか脅すからどんだけ危険な人なのかと思ったら、良い人そうじゃない…?
「……ロウ」
ベンが名前を低く吐き出す。
「ふふ、久しぶりだね、白虎くん。今回は何の用かな?」
「ロウ…この雌は、俺の妻だ」
「へぇ…」
ロウは桃に視線を滑らせ、舌をチラリと出して軽く笑う。桃は思わず身をすくめる。
「……こ、こいつ、なんか色っぽい……!桃!負けるな!!」
「油断するな、モモ!負けるな!」
ベンはすぐに桃を守る姿勢を取る。フィンもすぐ横に立ち、ロウを威嚇している。
そしてなぜか2人に応援される桃。
その桃もまた、ロウの妖艶な姿に顔を真っ赤にしてプルプルと震えていた。
「恐ろしい狂犬だ!こいつの色気は狂ってやがる!」
「わかったか、フィン…こいつは色恋に狂って、雌だとわかれば片っ端からたぶらかしてやがるんだ…それで狂犬と呼ばれている…」
「ちょっと!白虎くん!久々に会ってそれはちょっと酷くない?強いから狂犬って呼ばれてるし!ま、まぁ、女の子好きなのは否定しないけどね」
ロウは軽く肩を揺らして笑い、桃に近づこうとする。
「やめろ!近づくな!!」
ベンの低い咆哮が森に響き、ロウは軽く手を上げて挑発的に笑った。
「ふふ、いいね、その目つき。君、をそんな風にしちゃうなんて…桃ちゃんいったいどんな子なのかな~?」
その横でフィンは顔を赤くしてベンの背中に隠れながらキャンキャン威嚇していた。桃は思わず小さな声で笑ってしまう。
「……フィンくん、可愛い……」
「っ、なっ……お前……!」
ロウはその光景を見て、口元に薄く笑みを浮かべた。
「ま、とにかく…僕に用があるんでしょ?ほら、入りなよ…」
パチっ
ロウが指を鳴らすと目の前に豪華な屋敷が現れた。
「ようこそ、賢者の館へ」
森の奥、重く漂う香りと静謐な空気の中で、ロウの存在は、ベン・フィン・桃の関係性に微妙な緊張を与えつつも、桃にとっては新しい刺激の始まりを告げていた。
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