甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー

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一章 私の居場所

9 永遠に焦がれて

「長くて100」
桃の言葉が、豪華絢爛な食堂に、重く響き渡った。
ベン、ロウ、フィンの三人は、一瞬で石のように固まった。それまで和やかだった空気が凍りつき、ロウが魔法で作り出した天井の星々さえ、その光を失ったように見える。

最初に沈黙を破ったのは、ロウだった。彼の妖艶な笑みは消え去り、その整った顔には、深い動揺と、底知れぬ恐怖が浮かんでいた。

「……100? 桃ちゃん、冗談だよね? 我々獣人族の歴史で言えば、100年なんて、赤子のハイハイ期間にも満たない時間だよ」

「本当です。私のいた世界では、100年も生きれば大往生って言われてました」

「馬鹿な!」

ベンが、テーブルを叩きつけた。彼が怒りのために感情を露わにするのは、盗賊を撃退した時以来だった。

「そんなはずはない! 人間は**『神様の姿』**を持つ、我らの祖が最初に出会った種族だ! 伝説では、人間種は永遠に近い時を生き、この大陸に知恵をもたらしたと……!」

「でも弱くて絶滅したんですよね?」

「そ、それは…」

フィンは、その若さゆえか、絶望的な事実を前に、ただ尻尾を力なく垂らしていた。

「……ベンとロウは1500歳。俺だって112歳……桃はもう17歳だから…あと83年しか一緒にいれないってこと……?」

「桃ちゃんは人間だけど、僕達が知ってる人間とは違う存在なのかもしれないね…」

桃の頭の中では、この人たちを愛したいという願いと、獣人たちの途方もない寿命が、矛盾となってぶつかり合っていた。

「ごめんなさい……黙っていて……」
「謝るな」

ベンは立ち上がり、桃に近づくと、彼女のローブの上からでも伝わる熱量で、その身体を抱きしめた。

「謝る必要はない。知らなかったのは、我々の傲慢さだ。お前を永遠の存在だと、勝手に決めつけていた」

フィンも桃に近づき抱きしめた。目からは滝のように涙が溢れかえっている。
「ふふっ…フィンくんそんなに泣いたら喉乾いちゃうよ?」
「お前……こんっなとき…に!ゔゔーー」
しゃくりあげながら、桃の肩に顔を埋めたままぽかぽかするフィンに桃はシリアスな空気から少し和んだ。

ロウは、椅子に深く沈み込んだまま、虚ろな目を桃に向けた。

「……100年で、この甘い匂いが消えてしまうのか。この穢れのない瞳が、僕の人生からいなくなってしまうのか……」

ロウは、自分の手を固く握りしめた。彼の「愛」は、永遠の美と快楽の独占に基づいていた。故に、色んな雌達と色恋で遊んできたのだ。それが、たった100年で終わるという事実は、彼にとって耐え難い敗北だった。

「……僕の愛は、百年単位でしか続かない。たった数十年で終わる愛なんて……愛ではない」

ロウの言葉は、残酷な真実を突きつけた。獣人にとっての「愛」とは、人間のそれとはスケールが全く違うのだ。
桃は唇を噛みしめた。しかし、彼女の瞳には、諦めの色はなかった。

「ロウさん、私は、愛ってどれだけ短くても、心の中で想い続けている限り…永遠だと思うんです。だから短い時間でも1億年分私は貴方達を愛したい。」

桃は、ベンとフィンの腕から身を離し、3人の正面に立った。
桃のまっすぐな言葉は、三人の獣人の心に、静かに響いた。

「誰かを全力で愛して、その人にとって、かけがえのない存在になりたい。それが、私の願いです」

3人は、桃のその決意の強さに、再び心を奪われた。彼の瞳は、もはや恐怖ではなく、深い慈愛に満ちていた。


フィンは顔を上げ、涙ぐんでいた。

「バカだろ、お前……そんなこと言われたら、俺たちだって……」
ぐずぐず泣きながら今度は泣き顔を見られたくないのか後ろから背中にぐりぐりと顔を埋めていた。

ロウは、しばしの沈黙の後、ゆっくりと立ち上がった。彼の表情は、先ほどまでの絶望から一転、歪んだ、しかし強い決意に満ちていた。

「……ふふ、面白いね、桃ちゃん」

ロウは、桃の顎を掬い上げるように指先で触れた。

「たった数十年で、僕の千年の愛を上書きしようっていうのかい? いいよ。この館で、僕が君に、最上の快楽と、獣人の愛の深さを教えてあげよう。でも賢者の僕は愛の力で君の寿命を伸ばす事も諦めないからね」

「どけ、ロウ」

「おっと…!そうだね。1番桃ちゃんの側にいたのは君だもんね。さぁ、どうぞ?」
そう言ってロウは桃をベンに譲った。

「桃…」
「ベンさん…」

「俺は絶対にお前の寿命を伸ばす。先に死ぬなんて許さない。死ぬ時は1人で逝かせない。俺も死ぬ生まれ変わっても一緒だ。」

「べ、ベンさん…ちょ、ちょっと重いですぅ…」

「ぷっ、」桃の背中に顔を埋めていたフィンが笑った。

「おい!フィン…泣いてるふりして笑ってもバレてるからな!」

「…う、うわーんえーんえーん」

「フィンくん…それは私の演技くらい無理があるよ。」

「てへっ!」

泣き腫らした顔でおちゃらけた顔をするフィンくん。めちゃくちゃ可愛い、112歳になんて見えない…うん…百の位はなかったことにしよう。


「よし、みんな泣き腫らして顔がぐちゃぐちゃだし、お風呂にでも入ろっか!」
「え?お風呂?」
「うちのお風呂すーんごいよ!」
「す、すーんごい…?」




そんなこんなでお風呂好きの日本人。
誘惑に勝てず、今お風呂にいます。

「ほ、ほんとにみんなでハイルンデスカ…」

「勿論♡」
「俺も泣きすぎて風呂でさっぱりしたい…」
「警備が…」

「ベンさん!警備とか言って、ここより危険な宿でそんなことしてなかったじゃないですか!!」
「ゔっっ…」

「まぁまぁ♡ベンちゃんも桃ちゃんと一緒にお風呂入りたいだけだから…ね?愛してくれるんでしょ?…」
「うっ…それとこれとは…ゴニョゴニョ」
「はい、じゃあ決まりだね。僕達が先に入ってるから、心の準備ができたら入ってきてね?よし、じゃあベン、フィンついてきて。桃ちゃんは精霊が案内してくれるから~」

「…」
「お、ふ、ろ!!お、ふ、ろ!!豪華なおふろ♪」(ふりふり尻尾)

うん、上機嫌なフィンくんのおかげで和んだ。
…よし、女は度胸…ひっひっふー、ひっひっふー、………と、とにかく!心を落ち着けよう。よし、覚悟決まった。

桃は3人が浴場に行ってから5分くらいたったところで覚悟を決めた。

「よし!精霊さん。案内をお願いします!」

ふよふよ浮いてる精霊さんについて行くと、豪華な…可愛い、女の子専用?の脱衣所があった。化粧品からスキンケア用品…ドライヤー、美顔器、スチーマーまで、全て揃っている。なにこれ…天国???
桃はうっきうきで服を脱ぎ、タオルをぐるぐる巻きにして、これから戦場に向かう武士の面持ちで、風呂のドアに手をかけた。

ーー頑張れ!桃!お前ならやれる!思い出せ。大和魂!!!

いざ!ガラガラガラとドアを開けると

浴場は、泉のように広く、湯の表面が七色に輝いていたり、大きな海の絵があったり、壁に魚が泳いでいたり…

ーーwowファンタジー!

「ここ、天国みたい……」

「でしょ?魔力の浄化効果もある。明日には肌ツヤツヤになっちゃうよ」

「えっ、ほんとに!?(キラキラ)」

「……お前そういうとこほんと守備力低い」

フィンが呟くと、ロウが小悪魔の笑みで返す。
「この隙がいいんじゃない。ほんっと可愛いね、桃ちゃん…食べちゃいたい♡」
「「ロウ!!!」」
「はいはい~怒らない怒らない」

桃は苦笑いながら湯に浸かり、目を閉じた。この、豪華なお湯の心地良さを堪能する為に…決して目を開けると美男子が3人マッパで熱い視線を向けてくる状況から現実逃避したかったわけではない。ええ、決して…

ーーーなんだか賑やかになってきたなぁ。
思えば、最初は盗賊に襲われて怖い思いをしたところから始まった。それが、たった3日で3人も夫ができて…や、やばいな。この世界の貞操観念やばい。ほんとにやばい。私超ビッチちゃんだよ!しかもこんな人外レベルの美形な上に、スパダリ甘々ヤンデレ、ツンデレメロかわショタ、ハイスペ色気爆弾…
私…世界かなんか救った…?こんなに幸せでいいの?

桃はお湯に浸かりながら目を閉じ、冷や汗を流したり、赤くなったり、青くなったり百面相をしていた。

それを3人は面白そうに、愛しそうに眺めていた。

そして、ロウはベンにささやいた。

「……ねぇ、ベン、あの子、ほんとに“選ばれし者”だよ」
「どういう意味だ」
「この森の加護が、彼女に反応してる。君が思ってるより、ずっと特別な子だ」

ベンの表情が一瞬だけ硬くなる。
ロウの金色の瞳が、どこか深く光った。

「それって…あれが使えるかもしれないってことか…?」
「まだ調べてみないとわかんないけどね…希望はあるよ」

その声は、湯気の中でゆらりと溶けて消えた。

その間フィンはのぼせそうな桃にオロオロしつつ、桃の豊満な体から目が離せなかったり、鼻血が出たり、可愛い思春期男子になっていた…
それを見つけた桃が、フィンを虐めて、襲った……

「うわぁぁぁ!!!ちょ、やめっ、んああっ…ももーーー!!!!やめろ!おい、んっあっ、ちょ、ろう、べん…助けてーーー!!うわっやめっ…あーーーーん」

(それに気づいたロウとベンに桃は回収され、フィンの貞操は守られたのだった。)




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