30 / 30
第30話 「もう二度と離れません」完
しおりを挟む
春が過ぎ、夏が訪れた。
辺境の丘には一面の緑が広がり、風に花の香りが混ざっていた。
レティシアが目を覚ますと、窓から吹き込む風が頬を撫でた。
まだ建てられて間もない家の中には、木の香りと新しい生活の匂いが満ちている。
隣で寝ているエドガーは、いつものように早朝から村の見回りに出かけて帰ってきたばかりのようだった。
鎧に代わって軽いシャツを着ている姿は、もうあの「騎士」ではなく、ただの優しい村の男の顔をしていた。
「おはよう。」
「もう起きたのか。今日はもう少し寝ていろ。」
「駄目です。今日は大切な日ですから。」
レティシアは微笑み、テーブルの上に布を敷く。
その上には、マーサ女将からもらったハーブと、自分で焼いたパンが並んでいた。
今日は、ふたりが結婚してちょうど一年――彼女が「辺境の花嫁」になった日だった。
「一年か……信じられんな。」
「私もです。いろいろありすぎて、まるで夢みたい。」
エドガーはパンを取り、静かに言う。
「夢みたいじゃない。現実だ。しかも、俺が生涯で一番誇らしい現実だ。」
その言葉に、レティシアの胸が熱くなった。
かつて誰かに褒められることなどなかった彼女にとって、その一言はどんな宝石よりも価値がある。
「そういうことを、いつもさらっと言うんですから。」
「事実だからな。」
「ずるい人。」
そう言いながら笑う彼女の笑顔に、エドガーは心の底から安堵の息を吐いた。
王都を離れてから、彼はずっとこの村を守り、村人たちと共に過ごしてきた。
レティシアは風見亭の手伝いを続けながら、時折子どもたちに読み書きを教えた。
ふたりの小さな家は、丘の上にある。どこからでも村の灯りが見え、星が一番綺麗に見える場所だった。
季節の移り変わりと共に、彼らの生活は穏やかに流れていった。
***
その日、村の広場では祭りの準備が行われていた。
一年に一度の「収穫祭」。
麦の穂を束ね、音楽を奏で、踊り、神々に豊穣を感謝する日だ。
今年はその祭りの中心に、エドガーとレティシアが訪れた。
「お前もすっかり村の人気者だな。」
「人気者なのはあなたの方です。子供たち、みんなあなたに懐いてるじゃないですか。」
「それは……まあ、いいことか。」
「照れていますね」
「していない。」
そんな他愛もない会話に、周囲の村人たちは温かな笑い声をこぼしていた。
太鼓が鳴り、祭りの音楽が広場を満たした。
子どもたちは花飾りを頭に乗せ、大人たちは酒を酌み交わし、空気に笑い声が溶けていく。
レティシアは踊りの輪に引き込まれ、花を編んだ冠を頭にかぶせられた。
「女神みたいだ!」と誰かが叫び、彼女は頬を染めながら笑った。
少し離れた場所から、その姿を見つめる男がいた。
エドガーだ。
彼は微笑んだまま、胸の奥にあたたかなものを感じていた。
戦場でも、王都でも、剣の音の中でも得られなかった平穏。
それが今、自分のすぐ近くにある。
ふと、レティシアと目が合う。
彼女は微笑み、そっと彼のもとへ歩いてきた。
「ねえエドガー、踊りましょう?」
「俺が? 無理だ、昔から踊りは苦手だ。」
「でも、去年は一緒に踊ってくれましたよ。」
「去年は、お前が泣きそうだったからだ。」
「今年は泣きません。だから踊ってください。」
「……仕方ないな。」
手を取られると、レティシアの指が彼の指に静かに絡む。
その軽い温もりに、心臓の鼓動が小さく跳ねた。
唇に笑みが浮かび、音楽に合わせて二人はゆっくりと歩き始める。
周囲のざわめきが遠のいていく。
音も光も、すべてが二人だけの世界に変わっていくようだった。
レティシアがそっと囁く。
「この瞬間を、覚えていてくださいね。」
「忘れられると思うか?」
「ふふ、ええ、そうですよね。」
「お前こそ、何を思い出していた?」
「いろいろ。でも一番は……王都で泣いていた私に、あなたが手を差し伸べてくれたこと。」
「俺の方こそ、救われたのはあの日からだ。」
彼女の瞳は夜の星よりも柔らかく光っていた。
「エドガー。」
「ん?」
「私はもう、何も怖くありません。あなたがいるから。」
「……俺もだ。」
言葉を重ね、彼はレティシアを抱き寄せた。
長い戦いも、過去の影も、二人の胸の中では静かに消えていく。
残るのは互いの体温だけ。
耳元でエドガーの声が低く響く。
「俺は二度と、この手を離さない。たとえ何があっても、お前を守る。」
「……約束ですよ?」
「誓いだ。命ある限り、俺のすべてをお前に捧げる。」
彼の額が彼女の額に触れ、そして唇が重なった。
世界の時間が、ゆっくりと止まる。
やがて二人が顔を離すと、レティシアは小さく笑った。
「あなたがいてくれるなら、それだけで生きていけます。」
「それじゃ、もうどこへも行けないな。俺もお前も、ずっとここに留まる。」
「ええ。それでいいんです。」
夜空の中で花火が打ち上がり、橙と金の光が村を照らした。
人々の歓声が聞こえ、子供の笑い声が風に乗る。
エドガーは小さく息を吐き、彼女の耳元に囁く。
「お前に出会えて、本当に良かった。」
「私もです。あなたが生きていてくれたから、私の世界は始まりました。」
二人はそのまま夜空を見上げた。
花火の煙の向こうに、無数の星が瞬いている。
レティシアがぽつりと呟く。
「ねえ、私たちの物語は、これで終わりですか?」
「終わりじゃない。」
エドガーは彼女の手を強く握った。
「これは“始まり”の続きだ。これから先も、ずっと共にある。」
「なら……」
レティシアは彼の胸に顔を寄せ、静かに囁いた。
「もう二度と離れませんね。」
「永遠に、だ。」
風が二人の間を渡り、花火の光が最後の閃光を描く。
辺境の夜は穏やかに、そして祝福に満ちていた。
新しい季節が、二人の未来を静かに照らしていく。
完
辺境の丘には一面の緑が広がり、風に花の香りが混ざっていた。
レティシアが目を覚ますと、窓から吹き込む風が頬を撫でた。
まだ建てられて間もない家の中には、木の香りと新しい生活の匂いが満ちている。
隣で寝ているエドガーは、いつものように早朝から村の見回りに出かけて帰ってきたばかりのようだった。
鎧に代わって軽いシャツを着ている姿は、もうあの「騎士」ではなく、ただの優しい村の男の顔をしていた。
「おはよう。」
「もう起きたのか。今日はもう少し寝ていろ。」
「駄目です。今日は大切な日ですから。」
レティシアは微笑み、テーブルの上に布を敷く。
その上には、マーサ女将からもらったハーブと、自分で焼いたパンが並んでいた。
今日は、ふたりが結婚してちょうど一年――彼女が「辺境の花嫁」になった日だった。
「一年か……信じられんな。」
「私もです。いろいろありすぎて、まるで夢みたい。」
エドガーはパンを取り、静かに言う。
「夢みたいじゃない。現実だ。しかも、俺が生涯で一番誇らしい現実だ。」
その言葉に、レティシアの胸が熱くなった。
かつて誰かに褒められることなどなかった彼女にとって、その一言はどんな宝石よりも価値がある。
「そういうことを、いつもさらっと言うんですから。」
「事実だからな。」
「ずるい人。」
そう言いながら笑う彼女の笑顔に、エドガーは心の底から安堵の息を吐いた。
王都を離れてから、彼はずっとこの村を守り、村人たちと共に過ごしてきた。
レティシアは風見亭の手伝いを続けながら、時折子どもたちに読み書きを教えた。
ふたりの小さな家は、丘の上にある。どこからでも村の灯りが見え、星が一番綺麗に見える場所だった。
季節の移り変わりと共に、彼らの生活は穏やかに流れていった。
***
その日、村の広場では祭りの準備が行われていた。
一年に一度の「収穫祭」。
麦の穂を束ね、音楽を奏で、踊り、神々に豊穣を感謝する日だ。
今年はその祭りの中心に、エドガーとレティシアが訪れた。
「お前もすっかり村の人気者だな。」
「人気者なのはあなたの方です。子供たち、みんなあなたに懐いてるじゃないですか。」
「それは……まあ、いいことか。」
「照れていますね」
「していない。」
そんな他愛もない会話に、周囲の村人たちは温かな笑い声をこぼしていた。
太鼓が鳴り、祭りの音楽が広場を満たした。
子どもたちは花飾りを頭に乗せ、大人たちは酒を酌み交わし、空気に笑い声が溶けていく。
レティシアは踊りの輪に引き込まれ、花を編んだ冠を頭にかぶせられた。
「女神みたいだ!」と誰かが叫び、彼女は頬を染めながら笑った。
少し離れた場所から、その姿を見つめる男がいた。
エドガーだ。
彼は微笑んだまま、胸の奥にあたたかなものを感じていた。
戦場でも、王都でも、剣の音の中でも得られなかった平穏。
それが今、自分のすぐ近くにある。
ふと、レティシアと目が合う。
彼女は微笑み、そっと彼のもとへ歩いてきた。
「ねえエドガー、踊りましょう?」
「俺が? 無理だ、昔から踊りは苦手だ。」
「でも、去年は一緒に踊ってくれましたよ。」
「去年は、お前が泣きそうだったからだ。」
「今年は泣きません。だから踊ってください。」
「……仕方ないな。」
手を取られると、レティシアの指が彼の指に静かに絡む。
その軽い温もりに、心臓の鼓動が小さく跳ねた。
唇に笑みが浮かび、音楽に合わせて二人はゆっくりと歩き始める。
周囲のざわめきが遠のいていく。
音も光も、すべてが二人だけの世界に変わっていくようだった。
レティシアがそっと囁く。
「この瞬間を、覚えていてくださいね。」
「忘れられると思うか?」
「ふふ、ええ、そうですよね。」
「お前こそ、何を思い出していた?」
「いろいろ。でも一番は……王都で泣いていた私に、あなたが手を差し伸べてくれたこと。」
「俺の方こそ、救われたのはあの日からだ。」
彼女の瞳は夜の星よりも柔らかく光っていた。
「エドガー。」
「ん?」
「私はもう、何も怖くありません。あなたがいるから。」
「……俺もだ。」
言葉を重ね、彼はレティシアを抱き寄せた。
長い戦いも、過去の影も、二人の胸の中では静かに消えていく。
残るのは互いの体温だけ。
耳元でエドガーの声が低く響く。
「俺は二度と、この手を離さない。たとえ何があっても、お前を守る。」
「……約束ですよ?」
「誓いだ。命ある限り、俺のすべてをお前に捧げる。」
彼の額が彼女の額に触れ、そして唇が重なった。
世界の時間が、ゆっくりと止まる。
やがて二人が顔を離すと、レティシアは小さく笑った。
「あなたがいてくれるなら、それだけで生きていけます。」
「それじゃ、もうどこへも行けないな。俺もお前も、ずっとここに留まる。」
「ええ。それでいいんです。」
夜空の中で花火が打ち上がり、橙と金の光が村を照らした。
人々の歓声が聞こえ、子供の笑い声が風に乗る。
エドガーは小さく息を吐き、彼女の耳元に囁く。
「お前に出会えて、本当に良かった。」
「私もです。あなたが生きていてくれたから、私の世界は始まりました。」
二人はそのまま夜空を見上げた。
花火の煙の向こうに、無数の星が瞬いている。
レティシアがぽつりと呟く。
「ねえ、私たちの物語は、これで終わりですか?」
「終わりじゃない。」
エドガーは彼女の手を強く握った。
「これは“始まり”の続きだ。これから先も、ずっと共にある。」
「なら……」
レティシアは彼の胸に顔を寄せ、静かに囁いた。
「もう二度と離れませんね。」
「永遠に、だ。」
風が二人の間を渡り、花火の光が最後の閃光を描く。
辺境の夜は穏やかに、そして祝福に満ちていた。
新しい季節が、二人の未来を静かに照らしていく。
完
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
冷徹婚約者に追放された令嬢、異国の辺境で最強公爵に見初められ、今さら「帰ってきて」と泣かれてももう遅い
nacat
恋愛
婚約者である王太子に濡れ衣を着せられ、断罪の末に国外追放された伯爵令嬢レティシア。
絶望の果てにたどり着いた辺境の国で、孤高と噂の公爵に助けられる。
彼は彼女に穏やかに微笑み、たった一言「ここにいなさい」と囁いた。
やがてレティシアは、その地で新しい居場所と愛を見つける。
だが、彼女を見捨てた王太子が、後悔と未練を胸に彼女を追って現れて――。
「どうか許してくれ、レティシア……!」
もう遅い。彼女は優しく強くなって、誰より愛される人生を歩き始めていた。
『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』
鷹 綾
恋愛
内容紹介
王太子に「可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄された公爵令嬢エヴァントラ。
涙を流して見せた彼女だったが──
内心では「これで自由よ!」と小さくガッツポーズ。
実は王国の政務の大半を支えていたのは彼女だった。
エヴァントラが去った途端、王宮は大混乱に陥り、元婚約者とその恋人は国中から総スカンに。
そんな彼女を拾ったのは、隣国の宰相補佐アイオン。
彼はエヴァントラの安全と立場を守るため、
**「恋愛感情を持たない白い結婚」**を提案する。
「干渉しない? 恋愛不要? 最高ですわ」
利害一致の契約婚が始まった……はずが、
有能すぎるエヴァントラは隣国で一気に評価され、
気づけば彼女を庇い、支え、惹かれていく男がひとり。
――白い結婚、どこへ?
「君が笑ってくれるなら、それでいい」
不器用な宰相補佐の溺愛が、静かに始まっていた。
一方、王国では元婚約者が転落し、真実が暴かれていく――。
婚約破棄ざまぁから始まる、
天才令嬢の自由と恋と大逆転のラブストーリー!
---
婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』
鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
--
婚約破棄されて去ったら、私がいなくても世界は回り始めました
鷹 綾
恋愛
「君との婚約は破棄する。聖女フロンこそが、真に王国を導く存在だ」
王太子アントナン・ドームにそう告げられ、
公爵令嬢エミー・マイセンは、王都を去った。
彼女が担ってきたのは、判断、調整、責任――
国が回るために必要なすべて。
だが、それは「有能」ではなく、「依存」だった。
隣国へ渡ったエミーは、
一人で背負わない仕組みを選び、
名前が残らない判断の在り方を築いていく。
一方、彼女を失った王都は混乱し、
やがて気づく――
必要だったのは彼女ではなく、
彼女が手放そうとしていた“仕組み”だったのだと。
偽聖女フロンの化けの皮が剥がれ、
王太子アントナンは、
「決めた後に立ち続ける重さ」と向き合い始める。
だが、もうエミーは戻らない。
これは、
捨てられた令嬢が復讐する物語ではない。
溺愛で救われる物語でもない。
「いなくても回る世界」を完成させた女性と、
彼女を必要としなくなった国の、
静かで誇り高い別れの物語。
英雄が消えても、世界は続いていく――
アルファポリス女子読者向け
〈静かな婚約破棄ざまぁ〉×〈大人の再生譚〉。
貧乏人とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の英雄と結婚しました
ゆっこ
恋愛
――あの日、私は確かに笑われた。
「貧乏人とでも結婚すれば? 君にはそれくらいがお似合いだ」
王太子であるエドワード殿下の冷たい言葉が、まるで氷の刃のように胸に突き刺さった。
その場には取り巻きの貴族令嬢たちがいて、皆そろって私を見下ろし、くすくすと笑っていた。
――婚約破棄。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
婚約破棄と暗殺で死んだはずの公爵令嬢ですが、前に出ずに全てを崩壊させます
鷹 綾
恋愛
フォールス・アキュゼーション。お前に全ての罪がある」
王太子フレイム・ファブリケイト・ロイヤル・ロードは、自らの失策を公爵令嬢フォールスに押し付け、婚約を破棄。
さらに証拠隠滅のため、彼女を追放し、暗殺まで差し向ける。
――彼女は、死んだことにされた。
だがフォールスは、生き延びた。
剣も魔法も持たず、復讐に燃えることもない。
選んだのは、前に出ないという生き方。
隣国で身を潜めながら、王弟エクイティ・フェアネス・ロイヤル・ロードのもと、
彼女は“構造の隣”に立つ。
暴かず、裁かず、叫ばない。
ただ、歪んだ仕組みを静かに照らし、
「選ばなかった者たち」を、自ら説明の場へと追い込んでいく。
切れない証人。
使えない駒。
しかし、消すこともできない存在。
これは、力で叩き潰すザマアではない。
沈黙と距離で因果を完成させる、知的で冷静な因果応報の物語。
――前に出ない令嬢が、すべての答えを置いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる