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第三夜 伝説の贋作
ダブルイベント
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未だ姿を見せぬ影の如き殺人鬼から、警察機関へ宣戦布告があってから2日経過した日の事。
大会議室の時計は深夜2時を指そうとしている。会議室には数人の刑事たちが残り、監視カメラのチェックや警備交代の時間まで椅子を並べて簡易ベットを作り、寝込んでいた。ただ、椅子を並べただけでマットなどを敷いていないため寝心地はよくないのか、眠っている刑事の顔にはしわが寄っている。
現在、警察は犯人逮捕と交代での新宿とその近辺(中野区や杉並区など)の警戒に当たっている。
中でも、刑事局と新宿警察署の刑事達の仕事は捜査と警備、警備案の作成の他、監視カメラを使っての街の監視など、他の局より若干仕事の比重が重く、監視カメラの確認に至っては交代制で夜を徹しての作業だった。
新宿警察署捜査一係の刑事、業平鉄平と唯我新は段々と焦燥と疲れの色が濃くなっていく刑事局の刑事達を見送り、今日も監視の任務に就く。
ただパソコンを眺めるだけの作業なので唯我は少し退屈そうだ。
「しかし、サイバー犯罪対策局のなんて言ったけか? A級協力者の……」と暇を持て余しているのか、それとも単なる興味か、唯我が業平に聞く。
唯我はオールバックで金髪という何ともチンピラじみた格好をした20代前半の刑事で、昔の癖が抜けていないのか少しけだるげで飄々としたしゃべり方をしている。
「機章さんね。あの人のおかげで監視カメラの映像が一気に見やすくなった」
そう答える業平は眼鏡をかけた少し癖毛の刑事で既婚者。年は唯我と同じ。まじめな性格でなにかと頼られることが多い。
どう考えてもタイプが真逆なこの2人だが、なぜか仲は良く、よく一緒にご飯を食べに行ったり、事件の時はよく行動を共にして捜査に当たっている。
「そうなんだけどよお~なんで俺たちがこんなことを……てかお前もよくそんなまじめにノーパソの画面見てられるよな」とうなだれながら唯我が言う。
この呆れを含んだぼやきに業平は答えなかった。どこか思いつめたような表情をしている。
この表情を見た唯我は瞬時にその理由を悟り、業平に励ますような声を送った。
「お前の奥さんならきっと大丈夫だよ。家も殺人事件の現場からは相当離れてるし、たしか合気道初段持ってたはずだろ。なんかあってもスパーンと犯人蹴り飛ばしちまうよ」
「ありがとう」ここは素直に礼を言っておく。なんだかんだ唯我は気の使える良い奴なのだ。
「ほら、しっかり画面見ろ」と照れ隠しからなのか、唯我が顎をしゃくってパソコンの画面を指す。
画面を突っ伏しながら見る唯我に、「お前もしっかり見ろよな……」と言いながら業平はパソコンの画面に視線を戻した。
眠りを知らぬ街、新宿歌舞伎町が画面には表示されていた。
画面には夜中の2時とはいえ、カップルや酔ったサラリーマンなどまだ多くの人がネオンに照らし出されて映っている。刑事たちはそんな人々の日常を厳戒態勢の警察署の会議室という非日常な場所から眺めていた。こう見てみると、ある意味、そのパソコンの画面は日常と非日常の絶対的な境界線と言えるかもしれない。
――なぜなら、いつだって日常と非日常はこのパソコンの薄い画面の境界線のように紙一重の表裏一体のものとして人間の生活の身の回りに存在しているからだ。
そして、日常に非日常の異物が混ざりこんだのは、そのすぐ後の事だった。
「おい!19番を表示しろ!!」突如として唯我が緊迫した声を張り上げる。
業平は言われた通り、キーボードをたたいて19番の監視カメラ、その映像を前の巨大スクリーンに表示する。唯我の一言で雰囲気が一変したのを肌で感じたのか眠りの浅かった刑事たちがもぞもぞと起きだし、前方のスクリーンに目を向ける。
そのスクリーンには腰を抜かしながら、路地裏を指さす一人のサラリーマンが映っており、口の動きからなにか叫んでいるかのように思えた。その声に反応したのか3~4人ほどが集まり、路地裏を覗く。そして、その3~4人も叫びながら路地裏から飛び出してきた。
場の空気が一変したことがカメラ越しでも分かるほど様子が慌ただしくなった。
「なんだ? 何があった?」と起きてきたばかりの刑事が目を凝らす。
そして、その集団の内の一人が切羽詰まったようにスマホを取り出し、どこかに電話をかけている様子が観察できた。
「電話? ……まさか」その声に被せるように突如として会議室にサイレンの音が鳴り響く。
その後に女性の無機質な声が続いた。
「新宿歌舞伎町11番通りにて女性の変死体発見。付近にいる警察職員は至急急行せよ。繰り返す……」
「おい、行くぞ!!」と業平が会議室にいる刑事たちに声をかけ、走って現場に向かって行った。
現場には付近の警備にあたっていた刑事と新宿警察署から向かってきた刑事たちの10名が集まった。
業平達は野次馬を下がらせ、進入禁止のテープを張り、懐中電灯で奥を照らした。
そこにはすでにこと切れた女性の死体がうつ伏せに転がっている。
ただ、今までのものとは異なり、目立った傷は首にある切り傷だけだった。
「邪魔が入ったのか? おい、本当だとどんな感じだったけ?」
「本当?」
「ああ、切り裂きジャックの三件目の殺人のことだ」怪訝に思ったのか唯我が業平に聞く。
「確か、エリザベス・ストライドの死体は……首を切られただけだった。途中で邪魔が入ったらしい……。……となると……まずいっ!!確かそのすぐあと…」
その業平の声に被せるようにまたしてもサイレンの音が鳴る。今度はパトカーの無線機からだった。
「花園神社の木陰にて女性の変死体を発見!!付近のものは至急急行せよ!!」と焦りと衝撃のあまり取り乱している男の声をその場にいる刑事たちは聞いたのだった。
『お知らせ』
近況ノートでも書いたことなのですが、拙作の章の一つである、夕暮れ時をキャラクター補完の章にしようと思います。ここでキャラクターの過去や日常などを書いていけたらと思います。
早速、一話追加しているので、ぜひのぞいてみてください。
それから、1日1話のペースで拙作の見直しと修正を行っていこうと思います。
(あまりに文章が下手だったので……)
大会議室の時計は深夜2時を指そうとしている。会議室には数人の刑事たちが残り、監視カメラのチェックや警備交代の時間まで椅子を並べて簡易ベットを作り、寝込んでいた。ただ、椅子を並べただけでマットなどを敷いていないため寝心地はよくないのか、眠っている刑事の顔にはしわが寄っている。
現在、警察は犯人逮捕と交代での新宿とその近辺(中野区や杉並区など)の警戒に当たっている。
中でも、刑事局と新宿警察署の刑事達の仕事は捜査と警備、警備案の作成の他、監視カメラを使っての街の監視など、他の局より若干仕事の比重が重く、監視カメラの確認に至っては交代制で夜を徹しての作業だった。
新宿警察署捜査一係の刑事、業平鉄平と唯我新は段々と焦燥と疲れの色が濃くなっていく刑事局の刑事達を見送り、今日も監視の任務に就く。
ただパソコンを眺めるだけの作業なので唯我は少し退屈そうだ。
「しかし、サイバー犯罪対策局のなんて言ったけか? A級協力者の……」と暇を持て余しているのか、それとも単なる興味か、唯我が業平に聞く。
唯我はオールバックで金髪という何ともチンピラじみた格好をした20代前半の刑事で、昔の癖が抜けていないのか少しけだるげで飄々としたしゃべり方をしている。
「機章さんね。あの人のおかげで監視カメラの映像が一気に見やすくなった」
そう答える業平は眼鏡をかけた少し癖毛の刑事で既婚者。年は唯我と同じ。まじめな性格でなにかと頼られることが多い。
どう考えてもタイプが真逆なこの2人だが、なぜか仲は良く、よく一緒にご飯を食べに行ったり、事件の時はよく行動を共にして捜査に当たっている。
「そうなんだけどよお~なんで俺たちがこんなことを……てかお前もよくそんなまじめにノーパソの画面見てられるよな」とうなだれながら唯我が言う。
この呆れを含んだぼやきに業平は答えなかった。どこか思いつめたような表情をしている。
この表情を見た唯我は瞬時にその理由を悟り、業平に励ますような声を送った。
「お前の奥さんならきっと大丈夫だよ。家も殺人事件の現場からは相当離れてるし、たしか合気道初段持ってたはずだろ。なんかあってもスパーンと犯人蹴り飛ばしちまうよ」
「ありがとう」ここは素直に礼を言っておく。なんだかんだ唯我は気の使える良い奴なのだ。
「ほら、しっかり画面見ろ」と照れ隠しからなのか、唯我が顎をしゃくってパソコンの画面を指す。
画面を突っ伏しながら見る唯我に、「お前もしっかり見ろよな……」と言いながら業平はパソコンの画面に視線を戻した。
眠りを知らぬ街、新宿歌舞伎町が画面には表示されていた。
画面には夜中の2時とはいえ、カップルや酔ったサラリーマンなどまだ多くの人がネオンに照らし出されて映っている。刑事たちはそんな人々の日常を厳戒態勢の警察署の会議室という非日常な場所から眺めていた。こう見てみると、ある意味、そのパソコンの画面は日常と非日常の絶対的な境界線と言えるかもしれない。
――なぜなら、いつだって日常と非日常はこのパソコンの薄い画面の境界線のように紙一重の表裏一体のものとして人間の生活の身の回りに存在しているからだ。
そして、日常に非日常の異物が混ざりこんだのは、そのすぐ後の事だった。
「おい!19番を表示しろ!!」突如として唯我が緊迫した声を張り上げる。
業平は言われた通り、キーボードをたたいて19番の監視カメラ、その映像を前の巨大スクリーンに表示する。唯我の一言で雰囲気が一変したのを肌で感じたのか眠りの浅かった刑事たちがもぞもぞと起きだし、前方のスクリーンに目を向ける。
そのスクリーンには腰を抜かしながら、路地裏を指さす一人のサラリーマンが映っており、口の動きからなにか叫んでいるかのように思えた。その声に反応したのか3~4人ほどが集まり、路地裏を覗く。そして、その3~4人も叫びながら路地裏から飛び出してきた。
場の空気が一変したことがカメラ越しでも分かるほど様子が慌ただしくなった。
「なんだ? 何があった?」と起きてきたばかりの刑事が目を凝らす。
そして、その集団の内の一人が切羽詰まったようにスマホを取り出し、どこかに電話をかけている様子が観察できた。
「電話? ……まさか」その声に被せるように突如として会議室にサイレンの音が鳴り響く。
その後に女性の無機質な声が続いた。
「新宿歌舞伎町11番通りにて女性の変死体発見。付近にいる警察職員は至急急行せよ。繰り返す……」
「おい、行くぞ!!」と業平が会議室にいる刑事たちに声をかけ、走って現場に向かって行った。
現場には付近の警備にあたっていた刑事と新宿警察署から向かってきた刑事たちの10名が集まった。
業平達は野次馬を下がらせ、進入禁止のテープを張り、懐中電灯で奥を照らした。
そこにはすでにこと切れた女性の死体がうつ伏せに転がっている。
ただ、今までのものとは異なり、目立った傷は首にある切り傷だけだった。
「邪魔が入ったのか? おい、本当だとどんな感じだったけ?」
「本当?」
「ああ、切り裂きジャックの三件目の殺人のことだ」怪訝に思ったのか唯我が業平に聞く。
「確か、エリザベス・ストライドの死体は……首を切られただけだった。途中で邪魔が入ったらしい……。……となると……まずいっ!!確かそのすぐあと…」
その業平の声に被せるようにまたしてもサイレンの音が鳴る。今度はパトカーの無線機からだった。
「花園神社の木陰にて女性の変死体を発見!!付近のものは至急急行せよ!!」と焦りと衝撃のあまり取り乱している男の声をその場にいる刑事たちは聞いたのだった。
『お知らせ』
近況ノートでも書いたことなのですが、拙作の章の一つである、夕暮れ時をキャラクター補完の章にしようと思います。ここでキャラクターの過去や日常などを書いていけたらと思います。
早速、一話追加しているので、ぜひのぞいてみてください。
それから、1日1話のペースで拙作の見直しと修正を行っていこうと思います。
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