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第三夜 伝説の贋作
病室での問答
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時刻を白谷が完全復活する9時間ほど前に戻そう。
彼と大津は白谷の義兄、烏丸宗吾が務める病院に来ていた。ここら辺では比較的大きめな病院であること、住宅街のすぐ近くに立ってることが起因しているのか、診察時間が始まってすぐにもかかわらず中は診察を待つ患者が、受付のナースに名前を呼ばれる時を今か今かと待ち受けている。
「これは話を聞くのは無理かもしれんな」
「まあ、そうかもしれませんねえ」
そう会話しながらも2人は受付の方へと歩いていく。
「あのー」
大津が声をかけると、黒髪に眼鏡をかけた30代ほどのナースが目を向けてくる。患者と認識してか、問診票を引き出しから出そうとするのを大津は手で制し、警察手帳を胸ポケットから出す。案の定、ナースの目に警戒の光が灯った。
「烏丸宗吾さんにお話が合ってきたのですが……」
大津がかまわずここに来た趣旨を伝えると、ナースは眉を寄せ、少し困ったような表情になる。何か理由があるようだ。
「烏丸先生ですか? えーと今は多分巡回の診察に行っていると思うんですけど……。すいません、場所までは少し……」
「あーじゃあ、自分たちで探します。すいませんね、ありがとうございます」
「さーて、どこにいるかな~?」
彼はいつものコートのポケットに手を突っ込みながら病院を練り歩く。その風貌は、年相応でありながらも少しかっこつけたくて背伸びした服装の男子そのものだ。師匠からこのコートを貰った時はひざ下ぐらいだったが、今の灰色のコートの丈は彼の膝の少し上になっており、彼の成長が感じられる。
刑事局に長く在籍し、殺人事件を多く取り扱うようになると刑事の雰囲気は、妙に落ち着いたり、妙に明るくなったりするなど、入ったばかりに比べてなにかしら変化するのだ。遺体そのものや犯人の動機、複雑な人間関係に影響を受けることが大きな原因かもしれない。
彼も同様でA級協力者の弟子として小学3年生から6年生までの約3年、協力者になるまで約1年、そして協力者になってからの約半年。大津はこの間の彼を見てきたが、師匠がいたころと比べると、彼は年不相応に落ち着いている。これは彼の人格が分裂したことが原因となっており、師匠といたころのまま成長した彼が中学生としての人格だとすると、刑事局のA級協力者として動いている彼の人格は、中学生としての彼に比べて、合理的で冷徹な面が目立つようになった。ただ、こうして普通にしている分にはこの人格の彼も中学生相応に見えるのだが。
そして、嘉村匠という少年は、どこに立っていても違和感がない。殺人事件の血なまぐさい凄惨な現場でも、学校の教室でも、今いる病院でも。まるで誰かの影のように、その場の風景の一つとして溶け込んでいる。これを利点と呼んでいいのか正直、大津はよく分からなかった。
「あ、診察室ですよ」
彼の声で大津は授業中、教師に突然当てられた生徒のように我に返る。見ると、なんと彼は、大津が止める前に診察室の扉の鍵をピッキングし、開けていた。
「ちょおおい!? ……失礼します」
大津も彼に続いて、軽く礼をしながら入る。
中には誰もおらず、電気がつけっぱなしだった。本棚、机といすが置かれている。
机の上には様々な資料が置かれており、机と接している壁には予定表が張られていた。烏丸は古くなった予定表の上から新しい予定表を画鋲でつけるタイプの人間らしい。
彼は本棚を見たり、予定表を眺めていた。
「勝手に触っていいものなのかねえ?」
「まあ、いいんじゃないんですか? 診察室にあるものだし。烏丸さんの担当の脳神経外科はまだ診察開始時刻まで時間ありますし、人も入ってこないでしょう」
彼は予定表をじっくり眺めている。途中、彼が目を細め、数秒間考えに耽ったように見えた。
「しかし、肝心の烏丸宗吾さんはどこかねえ」
「ああ、それなら120番病室じゃないですか?」
「なんで分かるんだ?」
彼は予定表から目を離し、大津に向き直る。そして、机の上の資料の一番上に置かれていたカルテを手に取った。
「机に置かれている資料は大体今日の朝に配布されたであろうものが多いです。日付も新しいですし。でもこれだけは3週間ほど前からの物です。それなのに一番上にあるということは時系列的に……」
「今日の朝、それもさっき確認した可能性が高いと」
「そういうことです。このカルテに120番病室とあるので多分そこにいるのではないでしょうか?」
彼はそのカルテもじっくり眺め始めた。患者の来歴の所に目を通している。
「時間は有限だ。行くぞ」
彼がまた考えこみ始めたので、大津は彼を半分引っ張り出すようにして、診察室を出て、120番病室へと向かう。この時大津は彼の反応が少しずつ小さくなり、自分の世界に入り始めていることに気づかなかった。
彼の推測通り、烏丸宗吾は診察室に程近い、120番病室にいた。ベットで眠っている患者の横で薬品の調節を行っていた。
彼と大津の気配を背で感じたのか、烏丸がはじかれたように振り返る。が、烏丸は驚きを一瞬で感情の裏に隠し、いつもの物腰柔らかな好青年然とした表情になる。
「あ、刑事さんですか?」
「ご無沙汰しております」
烏丸は椅子に座り、今度は計器のメンテナンスをし始めた。
「話せることはこの前話しましたが? まああの時は正直混乱していたので証言らしい証言はできなかったのですが……。なにかあるならどうぞ」
「じゃあ、質問させていただきます。オンラインの学会はどこで受けたのですか? 診察室?」
「はい。パソコンがあるのがあそこなので。まあ、正直通信はそこまでよくはないですが」
大津と彼は烏丸に質問を重ねていった。とはいっても最近不審な人を見かけなかったのか、などという普通なことだ。烏丸には絶対的なアリバイがある以上、犯人として見ることは不可能だ。
刑事達の推測だと、犯人は現在行方知らずのひも男にして3件目の被害者の交際相手の悠木誠之助、それから怜理の元彼で中国系マフィアの構成員、周皓然。悠木誠之助は3件目の被害者への復讐以外で殺人を重ねる動機がないため、もっぱら刑事達の疑いは周皓然の方へと向いている。
だが、切り裂きジャックは警察へ挑発の手紙を出すなど、好戦的な面があることは刑事達の周知の事実。だから警察への嫌がらせ的ニュアンスとして白谷の後を付け、姉の怜理を殺害した線も考えられている。
なんであれ現場付近の防犯カメラの見直しと以上の2人を重要参考人として引っ張る以外手段はない。要は手詰まりだ。
「あの、それと白谷はどうです?」
話題が現在、心神喪失状態の抜け殻状態の白谷の方に向く。この話題は双方にとってデリケートなものであるため、両者は言葉を選ぶのに時間を要した。
「……僕がどんなに声をかけても……もう頷いたりしかしません。ご飯もカップラーメンを部屋で食べてて……栄養失調寸前です」
「辛いのは、貴方も同じでしょうに」
烏丸は自嘲的に笑う。後悔の匂いが胸を突き破って、全身に広がっていくのが見て取れる。
「彼女が殺されたのは、あれは……あれは僕のせいです。僕がもう少し早く帰っていれば、透君はこんな思いをしなくて……済んだのに」
場にしんみりとした悲しみの霜が降りる。その霜に凍えて、大津は烏丸への悔やみの言葉、犯人逮捕への決意の言葉を口に出すことができなかった。
そして、その状況を振り出しに戻すように院内放送がこだまする。
『烏丸先生ー。烏丸先生ー。院長先生がお呼びです』
その間延びした女性の声は、きんきんとその部屋に響き渡り、それを聞いた烏丸は立ち上がり、「失礼します」と彼らに礼をして病室を出ていった。
「透、早く元に戻れねえかなー……匠君?」
「この患者さん、カルテだと3週間前にバイク事故で頭を打って昏睡状態らしいですよ」
彼は患者を観察し始めた。事件に関係がないものでも、こういうところに好奇心が向く当たり、かつての師匠から「好奇心の怪物」、「知識のブラックホール」と称されていただけあるなと大津は思った。
すると彼は、昏睡状態にある患者の手を持ち上げ、患者の額に包帯がまかれた顔の上に持っていく。そして、手を離した。
……果たしてその手は患者の腹あたりに落ちた。
「え……」
この結果に彼は驚いたように目を見開く。それどころか動揺している様子も見られた。大津は一体彼が何をしているのか気になり、声を上げようとしたが、携帯電話の着信音が邪魔をした。病室で携帯電話を使うのは本来非常識なことなため、大津は病室のすぐ近くにあった携帯電話使用可能スペースに行く。
電話の相手は国本からで、曰く、外国組織対策局が大金星を挙げたらしい。
――マフィアの構成員、周皓然を事情聴取するための交渉が成立した、と。
彼と大津は白谷の義兄、烏丸宗吾が務める病院に来ていた。ここら辺では比較的大きめな病院であること、住宅街のすぐ近くに立ってることが起因しているのか、診察時間が始まってすぐにもかかわらず中は診察を待つ患者が、受付のナースに名前を呼ばれる時を今か今かと待ち受けている。
「これは話を聞くのは無理かもしれんな」
「まあ、そうかもしれませんねえ」
そう会話しながらも2人は受付の方へと歩いていく。
「あのー」
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「烏丸先生ですか? えーと今は多分巡回の診察に行っていると思うんですけど……。すいません、場所までは少し……」
「あーじゃあ、自分たちで探します。すいませんね、ありがとうございます」
「さーて、どこにいるかな~?」
彼はいつものコートのポケットに手を突っ込みながら病院を練り歩く。その風貌は、年相応でありながらも少しかっこつけたくて背伸びした服装の男子そのものだ。師匠からこのコートを貰った時はひざ下ぐらいだったが、今の灰色のコートの丈は彼の膝の少し上になっており、彼の成長が感じられる。
刑事局に長く在籍し、殺人事件を多く取り扱うようになると刑事の雰囲気は、妙に落ち着いたり、妙に明るくなったりするなど、入ったばかりに比べてなにかしら変化するのだ。遺体そのものや犯人の動機、複雑な人間関係に影響を受けることが大きな原因かもしれない。
彼も同様でA級協力者の弟子として小学3年生から6年生までの約3年、協力者になるまで約1年、そして協力者になってからの約半年。大津はこの間の彼を見てきたが、師匠がいたころと比べると、彼は年不相応に落ち着いている。これは彼の人格が分裂したことが原因となっており、師匠といたころのまま成長した彼が中学生としての人格だとすると、刑事局のA級協力者として動いている彼の人格は、中学生としての彼に比べて、合理的で冷徹な面が目立つようになった。ただ、こうして普通にしている分にはこの人格の彼も中学生相応に見えるのだが。
そして、嘉村匠という少年は、どこに立っていても違和感がない。殺人事件の血なまぐさい凄惨な現場でも、学校の教室でも、今いる病院でも。まるで誰かの影のように、その場の風景の一つとして溶け込んでいる。これを利点と呼んでいいのか正直、大津はよく分からなかった。
「あ、診察室ですよ」
彼の声で大津は授業中、教師に突然当てられた生徒のように我に返る。見ると、なんと彼は、大津が止める前に診察室の扉の鍵をピッキングし、開けていた。
「ちょおおい!? ……失礼します」
大津も彼に続いて、軽く礼をしながら入る。
中には誰もおらず、電気がつけっぱなしだった。本棚、机といすが置かれている。
机の上には様々な資料が置かれており、机と接している壁には予定表が張られていた。烏丸は古くなった予定表の上から新しい予定表を画鋲でつけるタイプの人間らしい。
彼は本棚を見たり、予定表を眺めていた。
「勝手に触っていいものなのかねえ?」
「まあ、いいんじゃないんですか? 診察室にあるものだし。烏丸さんの担当の脳神経外科はまだ診察開始時刻まで時間ありますし、人も入ってこないでしょう」
彼は予定表をじっくり眺めている。途中、彼が目を細め、数秒間考えに耽ったように見えた。
「しかし、肝心の烏丸宗吾さんはどこかねえ」
「ああ、それなら120番病室じゃないですか?」
「なんで分かるんだ?」
彼は予定表から目を離し、大津に向き直る。そして、机の上の資料の一番上に置かれていたカルテを手に取った。
「机に置かれている資料は大体今日の朝に配布されたであろうものが多いです。日付も新しいですし。でもこれだけは3週間ほど前からの物です。それなのに一番上にあるということは時系列的に……」
「今日の朝、それもさっき確認した可能性が高いと」
「そういうことです。このカルテに120番病室とあるので多分そこにいるのではないでしょうか?」
彼はそのカルテもじっくり眺め始めた。患者の来歴の所に目を通している。
「時間は有限だ。行くぞ」
彼がまた考えこみ始めたので、大津は彼を半分引っ張り出すようにして、診察室を出て、120番病室へと向かう。この時大津は彼の反応が少しずつ小さくなり、自分の世界に入り始めていることに気づかなかった。
彼の推測通り、烏丸宗吾は診察室に程近い、120番病室にいた。ベットで眠っている患者の横で薬品の調節を行っていた。
彼と大津の気配を背で感じたのか、烏丸がはじかれたように振り返る。が、烏丸は驚きを一瞬で感情の裏に隠し、いつもの物腰柔らかな好青年然とした表情になる。
「あ、刑事さんですか?」
「ご無沙汰しております」
烏丸は椅子に座り、今度は計器のメンテナンスをし始めた。
「話せることはこの前話しましたが? まああの時は正直混乱していたので証言らしい証言はできなかったのですが……。なにかあるならどうぞ」
「じゃあ、質問させていただきます。オンラインの学会はどこで受けたのですか? 診察室?」
「はい。パソコンがあるのがあそこなので。まあ、正直通信はそこまでよくはないですが」
大津と彼は烏丸に質問を重ねていった。とはいっても最近不審な人を見かけなかったのか、などという普通なことだ。烏丸には絶対的なアリバイがある以上、犯人として見ることは不可能だ。
刑事達の推測だと、犯人は現在行方知らずのひも男にして3件目の被害者の交際相手の悠木誠之助、それから怜理の元彼で中国系マフィアの構成員、周皓然。悠木誠之助は3件目の被害者への復讐以外で殺人を重ねる動機がないため、もっぱら刑事達の疑いは周皓然の方へと向いている。
だが、切り裂きジャックは警察へ挑発の手紙を出すなど、好戦的な面があることは刑事達の周知の事実。だから警察への嫌がらせ的ニュアンスとして白谷の後を付け、姉の怜理を殺害した線も考えられている。
なんであれ現場付近の防犯カメラの見直しと以上の2人を重要参考人として引っ張る以外手段はない。要は手詰まりだ。
「あの、それと白谷はどうです?」
話題が現在、心神喪失状態の抜け殻状態の白谷の方に向く。この話題は双方にとってデリケートなものであるため、両者は言葉を選ぶのに時間を要した。
「……僕がどんなに声をかけても……もう頷いたりしかしません。ご飯もカップラーメンを部屋で食べてて……栄養失調寸前です」
「辛いのは、貴方も同じでしょうに」
烏丸は自嘲的に笑う。後悔の匂いが胸を突き破って、全身に広がっていくのが見て取れる。
「彼女が殺されたのは、あれは……あれは僕のせいです。僕がもう少し早く帰っていれば、透君はこんな思いをしなくて……済んだのに」
場にしんみりとした悲しみの霜が降りる。その霜に凍えて、大津は烏丸への悔やみの言葉、犯人逮捕への決意の言葉を口に出すことができなかった。
そして、その状況を振り出しに戻すように院内放送がこだまする。
『烏丸先生ー。烏丸先生ー。院長先生がお呼びです』
その間延びした女性の声は、きんきんとその部屋に響き渡り、それを聞いた烏丸は立ち上がり、「失礼します」と彼らに礼をして病室を出ていった。
「透、早く元に戻れねえかなー……匠君?」
「この患者さん、カルテだと3週間前にバイク事故で頭を打って昏睡状態らしいですよ」
彼は患者を観察し始めた。事件に関係がないものでも、こういうところに好奇心が向く当たり、かつての師匠から「好奇心の怪物」、「知識のブラックホール」と称されていただけあるなと大津は思った。
すると彼は、昏睡状態にある患者の手を持ち上げ、患者の額に包帯がまかれた顔の上に持っていく。そして、手を離した。
……果たしてその手は患者の腹あたりに落ちた。
「え……」
この結果に彼は驚いたように目を見開く。それどころか動揺している様子も見られた。大津は一体彼が何をしているのか気になり、声を上げようとしたが、携帯電話の着信音が邪魔をした。病室で携帯電話を使うのは本来非常識なことなため、大津は病室のすぐ近くにあった携帯電話使用可能スペースに行く。
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