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質問と先見
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1時間後、彼らは本部と合流し、猟師の妻である鹿野正枝の元へと向かった。
彼の顔はどことなく不機嫌に曇っている。というのも捜査員全員にアイリーンのインストールが義務付けられたからだ。こんな小生意気なAIを自分のスマホに入れたくなかったし、なにより自分より推理が速いのが気に入らない。
「はー……。ぷんすかぷんすかぷん」
『え、きっも……』
鹿野の家は昔のスキー場跡のすぐふもとにあった。庭からそのスキー場が見える。材木店も経営しており、細いのから太いのまで木材が大量に常備されている。家の隣には鍵付きの倉庫があった。
「お辛いでしょうが……犯人逮捕のため、ご協力願います」と中村が正座したまま平に願い出た。こういう場面では中村が適任だろう。
鹿野正枝は40代後半の少しパーマがかった髪の持ち主だった。精神が強いのだろう、今回の件があっても毅然とした態度をとっていた。
しかし、表に出した態度はそうでも表情は硬く、目は少し泳ぎ、体も震えている。ただ、彼にはその態度が何かにおびえているかのように見えた。
「犯人? 熊に襲われたのではなくて?」怪訝に思ったのだろう、鹿野が聞いてきた。
「ええ、実は……」と彼女が先ほど口にしたことをそのまま告げる。刑事の説明が進んでいくごとに明らかに鹿野の顔が曇っていった。
「そう……なのですね……」
「はい。我々が必ずご主人の無念を晴らします」
……その後、彼らは鹿野から当時の状況を聞くことになる。
鹿野曰く、亡くなった夫は当日、大雪にも関わらず朝6時から猟に出たという。その後、17時に突如として雪がやみそれでも帰ってこないことを不安に思った鹿野は警察に通報、自分でも探しに行ったらしい。
「え、でもご自身で探されたのですよね。ご主人が発見されたのは登山道でした。見つからないはずがないと思いますが」と神之目が聞く。中村は少し彼を睨みつけた。平気で人の敷地にずかずか入り込むのは彼のいいところでもあり、悪いところでもある。
「ああ、主人は普段、登山道は使わず脇道を使って猟をするんです。だから当日もいつもの道かと思って……」
少し右上を向きながら思い出すように言った。
やはり、その声は震えている。
「そもそもなぜ吹雪の日に猟なんて……」
鹿野正枝は頬をさすりながら夫について語った。
「私の主人は、まあなんというかその、少し自信過剰な面もありまして……。猟は冬の間の趣味兼副業みたいなものなのに……。それでももう何年も猟をしているので経験も豊富なんですが……。それで油断していたのでしょうね……。わき道から登山道に出たのも雪が強すぎてすぐに避難するためだったんだと思います。だからやめろと言ったのに……」
その後は神之目が「奥さんて何利きですか?」と聞いたところ右利きということが判明した。
この質問を怪訝に思ったのか『なんで利き手なんかを聞くんですか?』と彼女が彼に聞く。その口調はどうでもいいことを聞くなと暗に命令しているようだった。
「ま、多分後々重要になってくると思うよ」
彼は自分のスマホから聞こえてくる固い声をものともせずにそう答えただけだった。
彼の顔はどことなく不機嫌に曇っている。というのも捜査員全員にアイリーンのインストールが義務付けられたからだ。こんな小生意気なAIを自分のスマホに入れたくなかったし、なにより自分より推理が速いのが気に入らない。
「はー……。ぷんすかぷんすかぷん」
『え、きっも……』
鹿野の家は昔のスキー場跡のすぐふもとにあった。庭からそのスキー場が見える。材木店も経営しており、細いのから太いのまで木材が大量に常備されている。家の隣には鍵付きの倉庫があった。
「お辛いでしょうが……犯人逮捕のため、ご協力願います」と中村が正座したまま平に願い出た。こういう場面では中村が適任だろう。
鹿野正枝は40代後半の少しパーマがかった髪の持ち主だった。精神が強いのだろう、今回の件があっても毅然とした態度をとっていた。
しかし、表に出した態度はそうでも表情は硬く、目は少し泳ぎ、体も震えている。ただ、彼にはその態度が何かにおびえているかのように見えた。
「犯人? 熊に襲われたのではなくて?」怪訝に思ったのだろう、鹿野が聞いてきた。
「ええ、実は……」と彼女が先ほど口にしたことをそのまま告げる。刑事の説明が進んでいくごとに明らかに鹿野の顔が曇っていった。
「そう……なのですね……」
「はい。我々が必ずご主人の無念を晴らします」
……その後、彼らは鹿野から当時の状況を聞くことになる。
鹿野曰く、亡くなった夫は当日、大雪にも関わらず朝6時から猟に出たという。その後、17時に突如として雪がやみそれでも帰ってこないことを不安に思った鹿野は警察に通報、自分でも探しに行ったらしい。
「え、でもご自身で探されたのですよね。ご主人が発見されたのは登山道でした。見つからないはずがないと思いますが」と神之目が聞く。中村は少し彼を睨みつけた。平気で人の敷地にずかずか入り込むのは彼のいいところでもあり、悪いところでもある。
「ああ、主人は普段、登山道は使わず脇道を使って猟をするんです。だから当日もいつもの道かと思って……」
少し右上を向きながら思い出すように言った。
やはり、その声は震えている。
「そもそもなぜ吹雪の日に猟なんて……」
鹿野正枝は頬をさすりながら夫について語った。
「私の主人は、まあなんというかその、少し自信過剰な面もありまして……。猟は冬の間の趣味兼副業みたいなものなのに……。それでももう何年も猟をしているので経験も豊富なんですが……。それで油断していたのでしょうね……。わき道から登山道に出たのも雪が強すぎてすぐに避難するためだったんだと思います。だからやめろと言ったのに……」
その後は神之目が「奥さんて何利きですか?」と聞いたところ右利きということが判明した。
この質問を怪訝に思ったのか『なんで利き手なんかを聞くんですか?』と彼女が彼に聞く。その口調はどうでもいいことを聞くなと暗に命令しているようだった。
「ま、多分後々重要になってくると思うよ」
彼は自分のスマホから聞こえてくる固い声をものともせずにそう答えただけだった。
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