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建国祭(前半)
第8話ー8
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休息後、ヴェルターとペールは引き続き子供たちに剣術を教えていた。時折、ペールがヴェルターに熱視線を送っていて、ヴェルターは苦笑いで流していた。
「ペールったら、力が有り余っているのね。彼の体力を全部ヴェルターに引き受けてもらうわけにはいかないわね。どうしようかしら」
「ふふ、ペールは本当に剣が好きなのですね」
ペールはまだまだ体力が有り余っているといった感じだ。ペールに応対できるのはヴェルターしかいないのも事実で、衛兵を呼ぶわけにも行かないだろうとリティアが周りを見回した時だった。休暇とはいえ、急用があったのかマルティンがやって来た。そうなると、ヴェルターは席を外すことになるだろう。
ヴェルターは「補佐官のマルティン・アルデモートだ」とアンとペールに一応紹介した後、マルティンを頭の先からつま先まで見た。にっこりと笑うと
「いや、知っての通り彼もただの国民であるマルティン。実は彼は、剣術の天才だ」
と言い直した。マルティンがポカンとし、わくわくしたペールを見てサッと顔色を変えた。
「な、何の冗談ですか、殿下! 」
「殿下? まさかこんなところに王子が? 」
「こんな所って、王室の宮殿、別宅でしょうが。ああ、あああ! 私が体を動かすことは全て苦手としていることをご存じなくせに」
「はははは! 今日は祭りだ。意外なことをやって見るのも楽しいぞ、マルティン」
そうだろうか、と思ったのかマルティンはペールを見上げたが不穏な予感に顔を歪めた。マルティンはどれだけ否定しても受け入れて貰えず、嬉々としたペールに半ば引きずられるように修練場へと向かった。
「ヴェルター、アルデモート卿が来たという事は何か急ぎの事案があったのでは? 」
「いや、大したことはないよ。マルティンも、あの格好を見てわかるように仕事を終えて僕たちのように休暇に入ったってことだ。で、ここに合流しただけのこと。僕たちより短い貴重な休暇を僕たちと過ごそうというのだから彼って本当に、変わってる」
「仕事熱心なんでしょう。それか、会いたい人でもいるのかしら」
マルティンはアンに面識があったはず。と、勘ぐったけど、マルティンがアンにうっとりする素振りはなく、単にヴェルターに報告のためにこちらに合流しただけのようだった。
剣の激しくぶつかる音がして、そちらに目を向けた。ペールの高い位置から振り下ろされた剣をマルティンが何とか受け止めていた。次はペールの突き上げる剣を避け、それからもひぃひぃ言いながらもマルティンは全て受け流し、避け、ペールの剣は一度もマルティンに当たることは無かった。
「すごいだろう。マルティンは守りに限っては誰よりも長けている。体力さえ続けば永遠に逃げ切るんじゃないか? ただ一切攻撃出来ないから勝つことはないんだけどね」
「ヴェルター、文官に剣を握らせるなんてあなた面白がってるでしょう」
「そうだね、マルティンも気分転換になるだろう。なんせずっと室内にいる彼は白くって」
ヴェルターも白いが、とリティアは思ったが、何というかペールとマルティンの勝負はあまり緊迫感が無く、珍しい見世物のようだった。ほおっておいたら永遠に続きそうで、頃合いをみて止めてあげてねとリティアはヴェルターにお願いをした。
その後、やっと解放されたマルティンは恨めしくぐちぐち言っていたが、ペールは大変満足そうだった。
「初めて出会うタイプの剣士だ。この国に来たかいがありました」
「まぁ、そうでしょうね」
マルティンは肩で息をしながらすべての感情を失った表情で答えた。
「では、そろそろみんな準備をしましょうか」
アンが子供たちに声をかけるとみんな元気に返事をした。この後はお祭りモードになっている街に素性を隠していくつもりだった。
「でも……」
リティアはともかくヴェルターは容姿の特徴から明らかに王室の人間であることがわかる。マントを被ったところで隠しきれるものではないだろう。
「ヴェルター、リティア、あなたたちにも我が国の侍女を向かわせますからね」
アンはそう言って背をむけた。
「侍女ってラゥルウントから連れてきた者よね。わざわざなぜ? 」
リティアの疑問に、ヴェルターは楽しそうに笑った。
「今日のために、ラゥルウントの魔法をかけてくれるってさ。言っただろう? 」
「……魔法。 本当だったの? 」
リティアはアンたちと会ったことで頭の中からすっかり消えていたラゥルウントの噂を思い出した。稀代の悪女アン=ソフィ・ラゥルウントが統治する王国。大国をも蹴散らした小国は、特異な力を持つ……。
「ははは、楽しみにだね。では、あとでお迎えに上がるよ、僕のレディ」
ヴェルターは楽しみでたまらないといった様子でリティアに礼をした。
「……は? 」
“僕のレディ”ですって?ここには今だれもいないのに。
リティアはヴェルターの後ろ姿を見送ったまま驚きで動けなかった。遅れて、かぁ、っと頬が熱くなるのを感じた。
「どうしちゃったの、あの人」
ヴェルターが非日常に浮かれているのは確かだ。それだけだ、それだけの事。意味はない。リティアは息を整えようやく動き出すことができた。
「まぁ、リティア様、顔が赤いですわ。日焼けされたのかもしれません。大変だわ。直ぐに冷やすものをお持ち致します」
王室からの侍女は赤い顔のリティアを見て慌てた。
「ペールったら、力が有り余っているのね。彼の体力を全部ヴェルターに引き受けてもらうわけにはいかないわね。どうしようかしら」
「ふふ、ペールは本当に剣が好きなのですね」
ペールはまだまだ体力が有り余っているといった感じだ。ペールに応対できるのはヴェルターしかいないのも事実で、衛兵を呼ぶわけにも行かないだろうとリティアが周りを見回した時だった。休暇とはいえ、急用があったのかマルティンがやって来た。そうなると、ヴェルターは席を外すことになるだろう。
ヴェルターは「補佐官のマルティン・アルデモートだ」とアンとペールに一応紹介した後、マルティンを頭の先からつま先まで見た。にっこりと笑うと
「いや、知っての通り彼もただの国民であるマルティン。実は彼は、剣術の天才だ」
と言い直した。マルティンがポカンとし、わくわくしたペールを見てサッと顔色を変えた。
「な、何の冗談ですか、殿下! 」
「殿下? まさかこんなところに王子が? 」
「こんな所って、王室の宮殿、別宅でしょうが。ああ、あああ! 私が体を動かすことは全て苦手としていることをご存じなくせに」
「はははは! 今日は祭りだ。意外なことをやって見るのも楽しいぞ、マルティン」
そうだろうか、と思ったのかマルティンはペールを見上げたが不穏な予感に顔を歪めた。マルティンはどれだけ否定しても受け入れて貰えず、嬉々としたペールに半ば引きずられるように修練場へと向かった。
「ヴェルター、アルデモート卿が来たという事は何か急ぎの事案があったのでは? 」
「いや、大したことはないよ。マルティンも、あの格好を見てわかるように仕事を終えて僕たちのように休暇に入ったってことだ。で、ここに合流しただけのこと。僕たちより短い貴重な休暇を僕たちと過ごそうというのだから彼って本当に、変わってる」
「仕事熱心なんでしょう。それか、会いたい人でもいるのかしら」
マルティンはアンに面識があったはず。と、勘ぐったけど、マルティンがアンにうっとりする素振りはなく、単にヴェルターに報告のためにこちらに合流しただけのようだった。
剣の激しくぶつかる音がして、そちらに目を向けた。ペールの高い位置から振り下ろされた剣をマルティンが何とか受け止めていた。次はペールの突き上げる剣を避け、それからもひぃひぃ言いながらもマルティンは全て受け流し、避け、ペールの剣は一度もマルティンに当たることは無かった。
「すごいだろう。マルティンは守りに限っては誰よりも長けている。体力さえ続けば永遠に逃げ切るんじゃないか? ただ一切攻撃出来ないから勝つことはないんだけどね」
「ヴェルター、文官に剣を握らせるなんてあなた面白がってるでしょう」
「そうだね、マルティンも気分転換になるだろう。なんせずっと室内にいる彼は白くって」
ヴェルターも白いが、とリティアは思ったが、何というかペールとマルティンの勝負はあまり緊迫感が無く、珍しい見世物のようだった。ほおっておいたら永遠に続きそうで、頃合いをみて止めてあげてねとリティアはヴェルターにお願いをした。
その後、やっと解放されたマルティンは恨めしくぐちぐち言っていたが、ペールは大変満足そうだった。
「初めて出会うタイプの剣士だ。この国に来たかいがありました」
「まぁ、そうでしょうね」
マルティンは肩で息をしながらすべての感情を失った表情で答えた。
「では、そろそろみんな準備をしましょうか」
アンが子供たちに声をかけるとみんな元気に返事をした。この後はお祭りモードになっている街に素性を隠していくつもりだった。
「でも……」
リティアはともかくヴェルターは容姿の特徴から明らかに王室の人間であることがわかる。マントを被ったところで隠しきれるものではないだろう。
「ヴェルター、リティア、あなたたちにも我が国の侍女を向かわせますからね」
アンはそう言って背をむけた。
「侍女ってラゥルウントから連れてきた者よね。わざわざなぜ? 」
リティアの疑問に、ヴェルターは楽しそうに笑った。
「今日のために、ラゥルウントの魔法をかけてくれるってさ。言っただろう? 」
「……魔法。 本当だったの? 」
リティアはアンたちと会ったことで頭の中からすっかり消えていたラゥルウントの噂を思い出した。稀代の悪女アン=ソフィ・ラゥルウントが統治する王国。大国をも蹴散らした小国は、特異な力を持つ……。
「ははは、楽しみにだね。では、あとでお迎えに上がるよ、僕のレディ」
ヴェルターは楽しみでたまらないといった様子でリティアに礼をした。
「……は? 」
“僕のレディ”ですって?ここには今だれもいないのに。
リティアはヴェルターの後ろ姿を見送ったまま驚きで動けなかった。遅れて、かぁ、っと頬が熱くなるのを感じた。
「どうしちゃったの、あの人」
ヴェルターが非日常に浮かれているのは確かだ。それだけだ、それだけの事。意味はない。リティアは息を整えようやく動き出すことができた。
「まぁ、リティア様、顔が赤いですわ。日焼けされたのかもしれません。大変だわ。直ぐに冷やすものをお持ち致します」
王室からの侍女は赤い顔のリティアを見て慌てた。
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