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レミレニア編
84話 ひと段落
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それから数日、魔物騒動はめっきり無くなった。
あの焚きつけに乗らなかったのか、1件だけあったという話は聞いた。それも作戦決行日の翌日の事。それより後は、騒ぎは起きていない。
けど、同時に水面下で事は動き始めていた。
新たに浮上した問題は、違法な魔物飼育や売買が平然と行われていたという前例が挙がった事。
これを機にと他の地域も捜査したところ、おびただしい数の魔物が違法飼育されていたんだとか。
一気に片付けるのは人員的に無理な程で、解決策を検討中だそうだ。
そこに追い打ちとなる抗議活動。
仕方なしといえど、街の中での虐殺とも言える戦闘は住民としては印象が悪く、元飼い主を中心として徒党を成した。そしてギルドへの窓口も兼ねる酒場に集まり、対応に人手を割かされていた。
事の翌日に酒場に行こうと思ったけど、遠目で騒動を見て引き返す程の大騒動だった。
昨日行った時には流石に現地は鎮まっていたが、陰りを残したのは間違いないだろう。
そんな感じで世間が騒がしい傍ら、自分は休暇だ。
腕の痛みはもう無いが、そもそもの原因が疲労だったって事で長めの休みだ。
まだ安全面の様子見で撤退継続してる屋台も目立つが、人通りは着実に増えてきている。活気が完全に戻る日はそう遠くはないだろう。
そして、いくらかの課題も残った。
あの後、剣の手入れをする余裕が無くて、刃全体に血の跡が残ってしまった。
手元の砥石は、あくまで小さい刃こぼれ等をメンテナンスできる程度。最初は自分で解決しようとしたが、完全に綺麗にするには気が遠くなりそうだった。下手に個人で解決しようとするより、専門家に任せた方がいいだろう。
元々使い古しを安く譲ってもらったのを、更に使い倒してるんだ。ついでに状態を見てもらって、場合によっちゃ新しく買い直すのも選択肢かもな。もしそうなったら名残り惜しくはあるが、感傷じゃ命は守れない。
いずれにせよ最終的に試し振りして感触を確かめたいから、万全と言えるまで回復してからだ。
ラディは着実に成長している。
精神面だけでない。最初は隙を狙って拘束の一辺倒だった戦闘も、今や氷の術を混ぜてオリジナリティまで出してきてる。
それも人の姿を保ったままので、まだまだ開拓の余地がある。人目を気にしない自由な戦闘となったら、もうラディにできない事の方が少ないだろう。
以前は悪かった射撃制度も、修練所に通って多少は良くなってきてるらしい。
…分かってる。本人が扱い方を知らなかっただけで、あれがラディの本来のポテンシャルだって。それでも置いて行かれてる気がして、ちょっと悔しい。
冒険して、歴史に名を残すのが夢。それは変わらない。けどラディを見て、銀板級の戦いを見て、遠い世界だと思わざるを得ない。
…名を残すにしても伝記なんて大がかりでなく、ひとつ大きな功績を挙げられたら? 普通なら実力不足でも、何らかの危険を伴うとか、そういう形での戦果なら?
いや、そんな都合のいい話なんて、早々出会えるものじゃないだろう。偶然遭遇するならともかく、狙えるような事じゃないし。
……。
そう焦る必要も無いんだよな。それも分かってるつもり。
本来何年もかけて戦闘経験や実績を積み重ねていくものなんだ。ラディが特殊な例なだけ。そう、分かってるつもり。
けど理屈では分かってても、実感はそうもいかない。
このまま大きな変化が無ければ、ラディの──
…やめよやめよ、悪い思考の流れ。
今やれることを精一杯やろう。情報を探って、利用できる物は無いか探して。
鎮圧に貢献した功もあって銀板級にはなれたんだ。まだまだこれからよ。
あの焚きつけに乗らなかったのか、1件だけあったという話は聞いた。それも作戦決行日の翌日の事。それより後は、騒ぎは起きていない。
けど、同時に水面下で事は動き始めていた。
新たに浮上した問題は、違法な魔物飼育や売買が平然と行われていたという前例が挙がった事。
これを機にと他の地域も捜査したところ、おびただしい数の魔物が違法飼育されていたんだとか。
一気に片付けるのは人員的に無理な程で、解決策を検討中だそうだ。
そこに追い打ちとなる抗議活動。
仕方なしといえど、街の中での虐殺とも言える戦闘は住民としては印象が悪く、元飼い主を中心として徒党を成した。そしてギルドへの窓口も兼ねる酒場に集まり、対応に人手を割かされていた。
事の翌日に酒場に行こうと思ったけど、遠目で騒動を見て引き返す程の大騒動だった。
昨日行った時には流石に現地は鎮まっていたが、陰りを残したのは間違いないだろう。
そんな感じで世間が騒がしい傍ら、自分は休暇だ。
腕の痛みはもう無いが、そもそもの原因が疲労だったって事で長めの休みだ。
まだ安全面の様子見で撤退継続してる屋台も目立つが、人通りは着実に増えてきている。活気が完全に戻る日はそう遠くはないだろう。
そして、いくらかの課題も残った。
あの後、剣の手入れをする余裕が無くて、刃全体に血の跡が残ってしまった。
手元の砥石は、あくまで小さい刃こぼれ等をメンテナンスできる程度。最初は自分で解決しようとしたが、完全に綺麗にするには気が遠くなりそうだった。下手に個人で解決しようとするより、専門家に任せた方がいいだろう。
元々使い古しを安く譲ってもらったのを、更に使い倒してるんだ。ついでに状態を見てもらって、場合によっちゃ新しく買い直すのも選択肢かもな。もしそうなったら名残り惜しくはあるが、感傷じゃ命は守れない。
いずれにせよ最終的に試し振りして感触を確かめたいから、万全と言えるまで回復してからだ。
ラディは着実に成長している。
精神面だけでない。最初は隙を狙って拘束の一辺倒だった戦闘も、今や氷の術を混ぜてオリジナリティまで出してきてる。
それも人の姿を保ったままので、まだまだ開拓の余地がある。人目を気にしない自由な戦闘となったら、もうラディにできない事の方が少ないだろう。
以前は悪かった射撃制度も、修練所に通って多少は良くなってきてるらしい。
…分かってる。本人が扱い方を知らなかっただけで、あれがラディの本来のポテンシャルだって。それでも置いて行かれてる気がして、ちょっと悔しい。
冒険して、歴史に名を残すのが夢。それは変わらない。けどラディを見て、銀板級の戦いを見て、遠い世界だと思わざるを得ない。
…名を残すにしても伝記なんて大がかりでなく、ひとつ大きな功績を挙げられたら? 普通なら実力不足でも、何らかの危険を伴うとか、そういう形での戦果なら?
いや、そんな都合のいい話なんて、早々出会えるものじゃないだろう。偶然遭遇するならともかく、狙えるような事じゃないし。
……。
そう焦る必要も無いんだよな。それも分かってるつもり。
本来何年もかけて戦闘経験や実績を積み重ねていくものなんだ。ラディが特殊な例なだけ。そう、分かってるつもり。
けど理屈では分かってても、実感はそうもいかない。
このまま大きな変化が無ければ、ラディの──
…やめよやめよ、悪い思考の流れ。
今やれることを精一杯やろう。情報を探って、利用できる物は無いか探して。
鎮圧に貢献した功もあって銀板級にはなれたんだ。まだまだこれからよ。
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