87 / 228
レミレニア編
87話 情報整理と③
しおりを挟む
竜。
伝承にはつきものな存在だ。
しかし今において実際に見れるかというと、そうでもない。個体数が少なく、偶然で出会う事はまずあり得ないだろう。
それに伝承になるような時代と異なり、人との棲み分けが整っている。干渉を好まない竜は人里に近寄ることは無く、さらに遭遇の機会は希になる。
「竜…とは?」
色々考えすぎてだんまりなってしまったところに来た、ラディからの質問に答える。
「あぁ、前に魔物とその他の区分について話したろ? その区分の1つになるくらい、強大な種族だよ。
伝承に残ってるような頃は、移動の余波で村が半壊したり、争う二国が休戦して警戒にあたったり。
当時は『竜災』とすら言われるくらい、抗うのが困難な存在だった。」
「魔物とはかくがちがう、というやつですか。」
「まぁ、それは昔の話だけどね。今は折り合い付いてて、わざわざ人里に敵意を持って攻め込むような竜なんて滅多にいない。
けど、もしも敵意を持たれたら、それくらい危険な存在って事だ。」
エンの方に向き直り、話を戻す。
「気になる事はあるが、それは追々として。
その上で『力を貸してほしい』というのは、具体的にどういう事だ? ギルドの調査が進んで誰かに討伐されるくらいなら自分が、というやつ?」
そういうタイプの熱量を持ってるタイプには見えなかっただけに、そうなら少し意外ではある。
「もちろん、それもある。けど、それは最悪の場合。
…あの時、やらずに後悔した事があるの。」
「後悔した事?」
重い口調で、エンが返答する。
「…前に、光魔法が探知に優れるって話はしたよね。あれはあくまで一般的なレベルの光魔法の話。
より高度なものとなると、もっと概念的なものを探知したり、干渉できたりするの。
音を感知・干渉して遠隔で連絡を繋げたり、時間を感知して未来を見たり。そういった術士が、記録にも残ってる。」
一息置き、言葉を続ける。
「…私の場合、精神干渉ができるの。
でも、好ましくない術だから使うの躊躇っちゃって、あの時ちゃんと対応してたら、こんな事にはならなかったのかなって……。」
深く一呼吸し、続ける。
「もちろん強制はできない。けど、その上で…お願い。」
厳しい話ではある。それは重々承知。
だが、普通に一般冒険者してたら、触れる事すらないような話なのも否めない。
ある種のチャンスとも言える、そんな冒険の誘い話。
…いや、まずは、だ。
「何でその話を僕らに?」
「あなた達なら行ける、そう思ったから。」
「他の冒険者じゃだめなのか?」
「術者というポジションの都合上、既にある3人パーティに混じっても、足手まといになりやすいの。
新人に対しては、前に図書館で聞かれた通りの察しの通り。」
自分達への高い評価はありがたい。が、それはそれとして期待相応の自信は無い。
「それにこんな話、乗ってくれるようなお人よし、セイル達くらいしか……。」
「濃度130エリアですら、最初苦戦したくらいだよ?」
「そこはまぁ…適性として仕方ないとこもあるし、挑む前に確かめる。
腕輪ありきとはいえ何度も行ってるから、許容濃度も挙がってるだろうし。」
実力的に厳しい話だとは思う。次々と言葉が湧くほど、不安もある。
だがそれ以上に、アスレィ伝記の「最後の竜討伐」を想起し、沸き立つ気を抑えきれない。
「すぐに答えをとは──」
「分かった、乗ろう、その話。」
それに、全てを打ち明けたエンの頼みを、自分には断れなかった。
伝承にはつきものな存在だ。
しかし今において実際に見れるかというと、そうでもない。個体数が少なく、偶然で出会う事はまずあり得ないだろう。
それに伝承になるような時代と異なり、人との棲み分けが整っている。干渉を好まない竜は人里に近寄ることは無く、さらに遭遇の機会は希になる。
「竜…とは?」
色々考えすぎてだんまりなってしまったところに来た、ラディからの質問に答える。
「あぁ、前に魔物とその他の区分について話したろ? その区分の1つになるくらい、強大な種族だよ。
伝承に残ってるような頃は、移動の余波で村が半壊したり、争う二国が休戦して警戒にあたったり。
当時は『竜災』とすら言われるくらい、抗うのが困難な存在だった。」
「魔物とはかくがちがう、というやつですか。」
「まぁ、それは昔の話だけどね。今は折り合い付いてて、わざわざ人里に敵意を持って攻め込むような竜なんて滅多にいない。
けど、もしも敵意を持たれたら、それくらい危険な存在って事だ。」
エンの方に向き直り、話を戻す。
「気になる事はあるが、それは追々として。
その上で『力を貸してほしい』というのは、具体的にどういう事だ? ギルドの調査が進んで誰かに討伐されるくらいなら自分が、というやつ?」
そういうタイプの熱量を持ってるタイプには見えなかっただけに、そうなら少し意外ではある。
「もちろん、それもある。けど、それは最悪の場合。
…あの時、やらずに後悔した事があるの。」
「後悔した事?」
重い口調で、エンが返答する。
「…前に、光魔法が探知に優れるって話はしたよね。あれはあくまで一般的なレベルの光魔法の話。
より高度なものとなると、もっと概念的なものを探知したり、干渉できたりするの。
音を感知・干渉して遠隔で連絡を繋げたり、時間を感知して未来を見たり。そういった術士が、記録にも残ってる。」
一息置き、言葉を続ける。
「…私の場合、精神干渉ができるの。
でも、好ましくない術だから使うの躊躇っちゃって、あの時ちゃんと対応してたら、こんな事にはならなかったのかなって……。」
深く一呼吸し、続ける。
「もちろん強制はできない。けど、その上で…お願い。」
厳しい話ではある。それは重々承知。
だが、普通に一般冒険者してたら、触れる事すらないような話なのも否めない。
ある種のチャンスとも言える、そんな冒険の誘い話。
…いや、まずは、だ。
「何でその話を僕らに?」
「あなた達なら行ける、そう思ったから。」
「他の冒険者じゃだめなのか?」
「術者というポジションの都合上、既にある3人パーティに混じっても、足手まといになりやすいの。
新人に対しては、前に図書館で聞かれた通りの察しの通り。」
自分達への高い評価はありがたい。が、それはそれとして期待相応の自信は無い。
「それにこんな話、乗ってくれるようなお人よし、セイル達くらいしか……。」
「濃度130エリアですら、最初苦戦したくらいだよ?」
「そこはまぁ…適性として仕方ないとこもあるし、挑む前に確かめる。
腕輪ありきとはいえ何度も行ってるから、許容濃度も挙がってるだろうし。」
実力的に厳しい話だとは思う。次々と言葉が湧くほど、不安もある。
だがそれ以上に、アスレィ伝記の「最後の竜討伐」を想起し、沸き立つ気を抑えきれない。
「すぐに答えをとは──」
「分かった、乗ろう、その話。」
それに、全てを打ち明けたエンの頼みを、自分には断れなかった。
0
あなたにおすすめの小説
公爵家の次女ですが、静かに学園生活を送るつもりでした
佐伯かなた
恋愛
王国でも屈指の名門、公爵アルヴィス家。
その家には、誰もが称賛する完璧な令嬢がいた。
長女ソフィア。
美貌、知性、礼儀、すべてを備えた理想の公爵令嬢。
そして──もう一人。
妹、レーネ・アルヴィス。
社交界ではほとんど名前も出ない、影の薄い次女。
姉ほど目立つわけでもなく、社交の中心にいるわけでもない。
だが彼女は知っている。
貴族社会では、
誰が本当に優れているのかは、静かな場面でこそ分かるということを。
王立学園に入学したレーネは、
礼儀作法、社交、そして人間関係の中で、静かに周囲を観察していく。
やがて──
軽んじていた者たちは気づく。
「公爵家の妹」が、本当はどんな令嬢だったのかを。
これは、
静かな公爵令嬢が学園と貴族社会で評価を覆していく物語。
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?
里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。
そんな時、夫は陰でこう言った。
「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」
立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。
リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。
男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。
***************************
本編完結済み。番外編を不定期更新中。
追放された没落貴族、拾った通信水晶で神々の配信者になる〜規格外チートと温かいご飯で古代竜もテイムして無双〜
黒崎隼人
ファンタジー
名門アークライト家の三男リオンは、魔力がないという理由で二十歳の誕生日に理不尽に家を追放されてしまう。
行くあてもなく彷徨い込んだ辺境の森で、彼は落ち葉に埋もれていた古びた通信水晶を見つける。
なんとその水晶は、天上界で退屈していた神々の暇つぶし用ネットワークに繋がっていたのだ!
「あなたの姿、神様たちがみんな見てるわよ!」
少し抜けた女神アリアのうっかりミスにより、リオンの生き抜くための姿は神々に生配信されることに。
生きるために危険な迷宮へと足を踏み入れたリオンだったが、神々からのお詫びの「祝福」により、彼自身も驚くほどの規格外の身体能力を手に入れる。
魔物を圧倒的な力で討伐する華麗な身のこなし。
迷宮の片隅で火を熾し、温かく美味しそうな食事を作る素朴な風景。
天上界には存在しないその新鮮な光景に、神々はたちまち大熱狂!
「これ、神様たちからの贈り物よ!」
配信のコメント欄が盛り上がるたび、強力な武器や未知の魔法、そして温かいパンや新鮮な食材といった「投げ銭」が天上界から次々と降り注ぐ。
迷宮で危機に陥っていた誇り高きエルフの弓使いルミナを温かいスープで救い、
配信から漏れ出る神々しい光を感じ取った純白の聖女クレアからは「神の御使い様」と崇められ、
ついには迷宮最深部で数千年の眠りについていた伝説の古代竜の孤独な心をも、その優しさで溶かしていく。
これは、すべてを失った青年が、神々と仲間たちの温かい光に導かれ、新しい領地で笑顔あふれる日々を切り拓いていく――世界で一番温かい神話の始まりの物語。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる