94 / 228
レミレニア編
94話 事のコスト①
しおりを挟む
気が付いた時には、どこかの室内だった。
差し込む夕日に釣られ、近くの窓を覗く。
レミレニアの建物の上層階…というか、酒場のすぐ近くだ。
仕切りを挟んで空きベッドが並んでいる。ギルド管轄の救護施設といったとこだろう。
「…気が付いた?」
ついたての向こう側、に待合の席でもあるのだろう、エンが様子を見にやってくる。
「あぁ、多分大丈夫だ。」
「色々と話すべき事はあるけど、まずは言わなきゃね。
…ありがと、力を貸してくれて。」
「いや、僕は僕の冒険者としてやるべき事を、やっただけだよ。
それで、ディエルの方はどうなった?」
「ディエル…というか『魔力の根源』は討伐に指定されてたけど、今は要監視になった。
直ちに脅威にはならず、一度『魔王化』を経験した貴重な例として、研究も兼ねた検査。
終わって大丈夫と判断したら解放だって。」
「そうか、よかった。」
まだ少し気が張っていたのだろう。目的を果たした安心感で、疲れが一気に来る。
聞きたい事はあったが、どう切り出したものか、そもそも聞いて大丈夫なものなのかと迷う。
そんな沈黙の時間を破ったのは、エンの方だった。
「憧れ、だったんだね。ああいう冒険が。
遺跡を探索したり、強い魔物と戦ったりっていう。」
静かな口調だが、見透かした言葉にどきっとする。
アスレィの「竜討伐」を想起してしてたのがバレた? 確かにモチベーションには繋がったけど、重ねるつもりはなかったし、討伐しようなんて事も全然──
「いや、別にそういう訳じゃ──」
「ううん、もっと本質的なところ。」
エンが何か覚悟を決めたように言葉を続ける。
「…言わない方が不誠実だと思うから、言うね。
あの術の時、ついでで見えてしまったの。そういう冒険を求めてた事、今回のはまさにそういう冒険だったって事。
動機はどうだっていいの。悪意があった訳でもないし、現にそれで助けてもらったんだし。
ただ…その左腕は、納得ずくって事でいいんだよね…?」
受け入れる覚悟ができるまで、考えを反らし見ないようにしていた。けどエンの言葉に不思議と勇気が湧き、左腕の方に目をやる。
左肘があった所には包帯が巻いてあり、その先はなくなっていた。
「ま、まぁね。
片腕を犠牲にってほら、英雄譚としてはよくできてるだろ?
それにほら、片腕でも名を残す剣豪とかだって……。」
元々片手剣1本でやってた訳だし、魔術の補助道具でもあればまだやれる。
だが、二刀流も悪くないと思い始めてただけに、やりきれない想いもある。
「ごめん、私が無茶な頼みをしたせいで。」
「…リスクは承知した上で、自分で選んだやり方だ。エンが気にする事じゃないよ。」
「……分かった。そう思う事にする。」
エンのその言葉には、複雑な心境がこもっていた。
差し込む夕日に釣られ、近くの窓を覗く。
レミレニアの建物の上層階…というか、酒場のすぐ近くだ。
仕切りを挟んで空きベッドが並んでいる。ギルド管轄の救護施設といったとこだろう。
「…気が付いた?」
ついたての向こう側、に待合の席でもあるのだろう、エンが様子を見にやってくる。
「あぁ、多分大丈夫だ。」
「色々と話すべき事はあるけど、まずは言わなきゃね。
…ありがと、力を貸してくれて。」
「いや、僕は僕の冒険者としてやるべき事を、やっただけだよ。
それで、ディエルの方はどうなった?」
「ディエル…というか『魔力の根源』は討伐に指定されてたけど、今は要監視になった。
直ちに脅威にはならず、一度『魔王化』を経験した貴重な例として、研究も兼ねた検査。
終わって大丈夫と判断したら解放だって。」
「そうか、よかった。」
まだ少し気が張っていたのだろう。目的を果たした安心感で、疲れが一気に来る。
聞きたい事はあったが、どう切り出したものか、そもそも聞いて大丈夫なものなのかと迷う。
そんな沈黙の時間を破ったのは、エンの方だった。
「憧れ、だったんだね。ああいう冒険が。
遺跡を探索したり、強い魔物と戦ったりっていう。」
静かな口調だが、見透かした言葉にどきっとする。
アスレィの「竜討伐」を想起してしてたのがバレた? 確かにモチベーションには繋がったけど、重ねるつもりはなかったし、討伐しようなんて事も全然──
「いや、別にそういう訳じゃ──」
「ううん、もっと本質的なところ。」
エンが何か覚悟を決めたように言葉を続ける。
「…言わない方が不誠実だと思うから、言うね。
あの術の時、ついでで見えてしまったの。そういう冒険を求めてた事、今回のはまさにそういう冒険だったって事。
動機はどうだっていいの。悪意があった訳でもないし、現にそれで助けてもらったんだし。
ただ…その左腕は、納得ずくって事でいいんだよね…?」
受け入れる覚悟ができるまで、考えを反らし見ないようにしていた。けどエンの言葉に不思議と勇気が湧き、左腕の方に目をやる。
左肘があった所には包帯が巻いてあり、その先はなくなっていた。
「ま、まぁね。
片腕を犠牲にってほら、英雄譚としてはよくできてるだろ?
それにほら、片腕でも名を残す剣豪とかだって……。」
元々片手剣1本でやってた訳だし、魔術の補助道具でもあればまだやれる。
だが、二刀流も悪くないと思い始めてただけに、やりきれない想いもある。
「ごめん、私が無茶な頼みをしたせいで。」
「…リスクは承知した上で、自分で選んだやり方だ。エンが気にする事じゃないよ。」
「……分かった。そう思う事にする。」
エンのその言葉には、複雑な心境がこもっていた。
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる