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4. 面接試験もチョロかったですけど?
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「できました」
フッと小さく溜息を吐いてペンを置く。姿勢を正して試験用紙を裏返しにしてハート教授に顔を向けた。少し離れた教壇に座っている彼は、ゆっくりとシュゼットに眼を向けた。
「早いですね? 見直しは大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です。見直しも終わりました」
ハート教授はシュゼットの机の前まで来ると、頷いて答案を回収した。男性にしては細い指だが、手の甲に現れた筋が何とも男らしく、肘下まで捲られている黒いシャツから覗く腕とのラインが素晴らしく色っぽい。
「すてき……」(その腕から手の筋っぽさが!)
「あっ?」
「あ、いいえ。先生の着けていらっしゃる指輪が素敵だと(違いますけどー)」
「ああ。これですか? この指輪は魔法の識別章です」
「魔法の識別章?」
「ご存じありませんか? ああ、貴方は魔法鑑定を受ける前に隣国に行ってしまったのですね?」
この世界には魔法が使える人と、使えない人がいる。使える人は人口の極わずかで、国関係上級公務員の仕事というか、国の管理下にいて特殊な役割をこなすらしい。初めて見た。
「はい。初めて見ましたわ。ハート先生は、魔法を使えるのですね? 凄いですわ」
「凄くはありませんが、魔法鑑定は一度は受けて下さい。編入出来たら鑑定式を予定しましょう」
「編入できますでしょうか? 自信がありませんけど……(嘘デース)」
「全部はまだ見ていませんが、午前中の試験だけでも文句無しに合格になるでしょう。3教科とも99点で惜しいですね?」
あら? もう採点したのかしら? 99点って何か引っかかる言い方に聞こえたけど……気のせいかしら?
「まあ!! 99点ですか? 本当に惜しいですわ! 残念です。きっと緊張してしまったのですわね。学院に編入出来たらもっと頑張ります!」
ここは、嬉しそうに振る舞って、無邪気に残念がりましょう。まあ、作戦通りですけど。
「それでは、面接室に行きましょう。最後の試験です」
ハート教授に先導されて、面接場所に向かう。筆記をした部屋から少し離れた場所で行うようだ。中庭を通って、別館? に向かっているようだ。
無言だ。
「えっと、ハート先生? 先生の魔法の識別は何ですか? お伺いしても宜しくて?」
無言に耐え切れず、さっきの話題を振り返す。
「……水、氷、風……」
「3つもですか?」
「それに錬金の全部で4つですね」
「……4つも……」
(ちょっと、コノヒトはこんな学院で教授をしていてイイの? 錬金って確か国中探してもそんなにいない特殊で貴重な魔法でしょ?)
思わず、教授の後ろ姿をまじまじと見た。なんで。こんな所にいるんだろう。普通ならば、王宮の北翼の塔の研究室にいるはず。魔法科学省でエリートコースを歩む人じゃないの?
でも、それがどうした。私には関係ないもの。
(だって、リベンジのターゲットにハート先生は入っていないものね)
感心している風を装いながら、シュゼットは渡り廊下を優雅に進む。実は、あちこちから視線が向けられていたのを彼女は知らなかった。
「それでは、シュゼット嬢の面接試験を始めます」
正面にトンバール学院長、右にハート教授、左に1年生の学年主任をしているセントル教授、そして年配女性のルマーノ教授が面接官らしい。ハート教授以外は皆にこやかに微笑んでいる。
「シュゼット嬢、まあお掛けなさい。面接試験を始めると言いましたが、貴方の学科試験の結果は文句なく合格のレベルです。それに、公爵家で外交大使のグリーンフィールド公爵のご令嬢ですから不合格にする理由はありません。編入試験は合格です」
トンバール学院長が、喜色満面といった表情に両手を広げたオーバーアクションを付けてそう言った。
「本当でございますか? ありがとうございます! 先生方に感謝いたしますわ」
両手を頬に当てて嬉しそうに恥じらう。そして、椅子から立ち上がると貴族の令嬢らしくカーテシーをして感謝を伝えた。
「先生方、これからご指導のほどよろしくお願い致します」
面接らしい面接も無しに、家柄と身分、学力で合格した。思ったよりも早く終わりそうだ。まだ終業時刻には遠い。やっぱり、ハート教授に案内して貰いたい。そうと決まれば早く手を打って……
「学長、シュゼット嬢に学院内を案内してきます。周り終わったら直接お帰り頂いて良いですね?」
シュゼットが言う前にハート教授が学院長に言ってくれた。何か言いたそうな表情の学院長を見て、すかさず援護射撃をする。
「トンバール学院長様、そうして頂けるとありがたいですわ。父からも良く見てきなさいと言われましたの」
天使の微笑みで、おねだりすればこの年のおじさま? おじい様? おばあ様? はほぼイケるはず。でも、返事を聞く前に、ハート教授はさっさと部屋を横切って扉に手を掛け振り向いて言った。
「さあ、シュゼット・メレリア・グリーンフィールド。学院を案内しましょう」
明るい光が降り注ぐ、廊下を二人で歩く。授業はまだ行われていて、廊下を歩く人影は無い。大きな扉には金色のプレートで学年とクラスが書かれている。
「君の教室は、ここになるはずです」
コンコンと指でプレートを軽くノックすると少しだけ扉を開けた。見ていいと言わんばかりに彼は身体を斜めにして扉との空間を開けた。
小さく頷いて少し開いた扉の空間から中を覗く。
『あっ!?』
数人の学生がこちらを見ていた。一瞬目が合った気がした。
(チャーンス!!)
シュゼットは、彼らに向かって柔らかく、儚い天使の微笑みを向けた。そう、ほんの一瞬の出来事。
『えっ!?』
彼らが驚いたように目を見開いたのが判った。シュゼットはゆっくりと扉を閉めた。(よしっ!)
「先生? 授業中、扉を開けたらいけませんわ? 驚かれてしまいましたもの」
「確かにそうだ。学生達には悪いことをしてしまった」
ちっとも、悪いとは思っていないような感じだが、まあいい。まずは教室に足跡を残したから。
それから、図書室や音楽室、美術室、運動場や化学実験室など、主だった教室を見て回っていると結構な時間になっていた。広い学舎を隅々まで見ようとすれば、それなりに時間もかかるし体力も使われる。
(少し、疲れましたわ……)
シュゼットがそう思って、花壇の花に気を留める風に立ち止まった。まだ終業時間にはならない。もう少し粘らねば。
「学生食堂がすぐ傍にあります。今の時間は喫茶になっているから行ってみますか?」
行きたいです!!! 行きたいです!!! 連れてってー!! 心の叫びが響く。
「はい。よろしくお願いします。行ってみたいです」
背の高い先生を見上げ心から願った。
「では、行きましょう」
先生は、シュゼットに向けて手を差し出した。 戸惑うように小首をかしげて先生の顔を見詰める。
「どうぞ。疲れてしまったのでしょう?」
ドS属美形種の文系教授なんて言ってゴメンナサイ。この方魔法属美形種の天然系教授みたい。かも?
フッと小さく溜息を吐いてペンを置く。姿勢を正して試験用紙を裏返しにしてハート教授に顔を向けた。少し離れた教壇に座っている彼は、ゆっくりとシュゼットに眼を向けた。
「早いですね? 見直しは大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です。見直しも終わりました」
ハート教授はシュゼットの机の前まで来ると、頷いて答案を回収した。男性にしては細い指だが、手の甲に現れた筋が何とも男らしく、肘下まで捲られている黒いシャツから覗く腕とのラインが素晴らしく色っぽい。
「すてき……」(その腕から手の筋っぽさが!)
「あっ?」
「あ、いいえ。先生の着けていらっしゃる指輪が素敵だと(違いますけどー)」
「ああ。これですか? この指輪は魔法の識別章です」
「魔法の識別章?」
「ご存じありませんか? ああ、貴方は魔法鑑定を受ける前に隣国に行ってしまったのですね?」
この世界には魔法が使える人と、使えない人がいる。使える人は人口の極わずかで、国関係上級公務員の仕事というか、国の管理下にいて特殊な役割をこなすらしい。初めて見た。
「はい。初めて見ましたわ。ハート先生は、魔法を使えるのですね? 凄いですわ」
「凄くはありませんが、魔法鑑定は一度は受けて下さい。編入出来たら鑑定式を予定しましょう」
「編入できますでしょうか? 自信がありませんけど……(嘘デース)」
「全部はまだ見ていませんが、午前中の試験だけでも文句無しに合格になるでしょう。3教科とも99点で惜しいですね?」
あら? もう採点したのかしら? 99点って何か引っかかる言い方に聞こえたけど……気のせいかしら?
「まあ!! 99点ですか? 本当に惜しいですわ! 残念です。きっと緊張してしまったのですわね。学院に編入出来たらもっと頑張ります!」
ここは、嬉しそうに振る舞って、無邪気に残念がりましょう。まあ、作戦通りですけど。
「それでは、面接室に行きましょう。最後の試験です」
ハート教授に先導されて、面接場所に向かう。筆記をした部屋から少し離れた場所で行うようだ。中庭を通って、別館? に向かっているようだ。
無言だ。
「えっと、ハート先生? 先生の魔法の識別は何ですか? お伺いしても宜しくて?」
無言に耐え切れず、さっきの話題を振り返す。
「……水、氷、風……」
「3つもですか?」
「それに錬金の全部で4つですね」
「……4つも……」
(ちょっと、コノヒトはこんな学院で教授をしていてイイの? 錬金って確か国中探してもそんなにいない特殊で貴重な魔法でしょ?)
思わず、教授の後ろ姿をまじまじと見た。なんで。こんな所にいるんだろう。普通ならば、王宮の北翼の塔の研究室にいるはず。魔法科学省でエリートコースを歩む人じゃないの?
でも、それがどうした。私には関係ないもの。
(だって、リベンジのターゲットにハート先生は入っていないものね)
感心している風を装いながら、シュゼットは渡り廊下を優雅に進む。実は、あちこちから視線が向けられていたのを彼女は知らなかった。
「それでは、シュゼット嬢の面接試験を始めます」
正面にトンバール学院長、右にハート教授、左に1年生の学年主任をしているセントル教授、そして年配女性のルマーノ教授が面接官らしい。ハート教授以外は皆にこやかに微笑んでいる。
「シュゼット嬢、まあお掛けなさい。面接試験を始めると言いましたが、貴方の学科試験の結果は文句なく合格のレベルです。それに、公爵家で外交大使のグリーンフィールド公爵のご令嬢ですから不合格にする理由はありません。編入試験は合格です」
トンバール学院長が、喜色満面といった表情に両手を広げたオーバーアクションを付けてそう言った。
「本当でございますか? ありがとうございます! 先生方に感謝いたしますわ」
両手を頬に当てて嬉しそうに恥じらう。そして、椅子から立ち上がると貴族の令嬢らしくカーテシーをして感謝を伝えた。
「先生方、これからご指導のほどよろしくお願い致します」
面接らしい面接も無しに、家柄と身分、学力で合格した。思ったよりも早く終わりそうだ。まだ終業時刻には遠い。やっぱり、ハート教授に案内して貰いたい。そうと決まれば早く手を打って……
「学長、シュゼット嬢に学院内を案内してきます。周り終わったら直接お帰り頂いて良いですね?」
シュゼットが言う前にハート教授が学院長に言ってくれた。何か言いたそうな表情の学院長を見て、すかさず援護射撃をする。
「トンバール学院長様、そうして頂けるとありがたいですわ。父からも良く見てきなさいと言われましたの」
天使の微笑みで、おねだりすればこの年のおじさま? おじい様? おばあ様? はほぼイケるはず。でも、返事を聞く前に、ハート教授はさっさと部屋を横切って扉に手を掛け振り向いて言った。
「さあ、シュゼット・メレリア・グリーンフィールド。学院を案内しましょう」
明るい光が降り注ぐ、廊下を二人で歩く。授業はまだ行われていて、廊下を歩く人影は無い。大きな扉には金色のプレートで学年とクラスが書かれている。
「君の教室は、ここになるはずです」
コンコンと指でプレートを軽くノックすると少しだけ扉を開けた。見ていいと言わんばかりに彼は身体を斜めにして扉との空間を開けた。
小さく頷いて少し開いた扉の空間から中を覗く。
『あっ!?』
数人の学生がこちらを見ていた。一瞬目が合った気がした。
(チャーンス!!)
シュゼットは、彼らに向かって柔らかく、儚い天使の微笑みを向けた。そう、ほんの一瞬の出来事。
『えっ!?』
彼らが驚いたように目を見開いたのが判った。シュゼットはゆっくりと扉を閉めた。(よしっ!)
「先生? 授業中、扉を開けたらいけませんわ? 驚かれてしまいましたもの」
「確かにそうだ。学生達には悪いことをしてしまった」
ちっとも、悪いとは思っていないような感じだが、まあいい。まずは教室に足跡を残したから。
それから、図書室や音楽室、美術室、運動場や化学実験室など、主だった教室を見て回っていると結構な時間になっていた。広い学舎を隅々まで見ようとすれば、それなりに時間もかかるし体力も使われる。
(少し、疲れましたわ……)
シュゼットがそう思って、花壇の花に気を留める風に立ち止まった。まだ終業時間にはならない。もう少し粘らねば。
「学生食堂がすぐ傍にあります。今の時間は喫茶になっているから行ってみますか?」
行きたいです!!! 行きたいです!!! 連れてってー!! 心の叫びが響く。
「はい。よろしくお願いします。行ってみたいです」
背の高い先生を見上げ心から願った。
「では、行きましょう」
先生は、シュゼットに向けて手を差し出した。 戸惑うように小首をかしげて先生の顔を見詰める。
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