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3. 編入試験はチョロいですけど?
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大きな門扉は鉄製で優美な曲線がデザインされて、広大な学舎が隙間から望めるようになっている。そして、高い煉瓦の塀は蔦が絡まり歴史を感じさせる佇まいだ。門の前には守衛所があり、厳めしい黒い制服の警備兵が二人立っているのが見える。
「広いわね」
シュゼットはそう言って、馬車のカーテンを少し開けて外を覗き見た。守衛所の手前で停まった馬車からは広葉樹の並木道が続いているようだ。青々とした芝生の上には葉っぱの一枚も落ちていない。
「掃除するのも大変そうですね?」
マリが感心したように呟く。
「本当。さすが王立学院ね。見た目は立派だけど、維持費だけでも大変そうだわ」
シュゼットは、正門から遠くに見える玄関を目を凝らして見詰めた。
国中の貴族の子女が学ぶ由緒正しい学院は、10歳から14歳までの中等部と15歳から17歳までの高等部に分かれている。
因みに、6歳から9歳の初等部は、通学が必須ではなく高位になればなるほど自宅で授業を受けることも可能だった。
勿論王族も例外では無く、高等部の1年に第一王子のフェリックス殿下と従兄弟のオーランド、3年生には第二王女のチェリアーナ殿下が通っている。中等部には双子の王子達、パリス殿下とカルン殿下がいるらしい。
らしいというのは、
「会ったこともないわ。そんな子たちいたかしら?」
くらいの印象しかない。いや全く記憶に残っていない。王族に対して興味も無ければ関心も無い。シュゼットにあるのは、あの失礼な第一王子と笑った奴らへのリベンジだけなのだ。
「さて、ここからが勝負よ。行きましょ!! いざ、出陣!」
正面玄関で馬車はゆっくりと停まり、馬車のドアが静かに開けられた。
「これは、グリーンフィールド公爵様、長きにわたる隣国でのご駐在、大変お疲れ様でございました」
「いや、随分ご無沙汰していました。トンバール学院長、お久し振りです。お元気でしたか?」
お父様とトンバール学院長様は顔見知りなんですって。何でも、お父様が就学していた頃、先生は今より少しお若くて、学院で王制学史の教鞭をお取りだったそうです。お二人は懐かしそうに握手をすると嬉しそうにお話を始めています。早く試験を始めて貰いたいのですけど。なぜなら!
(全試験が終わるのと、授業が終わるのが一緒にならないと私の目撃情報が無いでしょう?
いい塩梅で、私の姿を目撃させないと、噂にならないでしょうが。ちらりと効果的に見せないとダメじゃない?
お父様、そろそろ紹介して下さいな! お母様の陰に隠れるように立っている私は、お母様のドレスの袖をツンツンと引っ張ります。よし! お母様気付いてくれましたね?
「貴方、そろそろ私達もご紹介して下さいな?」
にっこりと微笑みながら(多分)お父様に声を掛けるお母様。おっとりとした口調ですけど、圧が感じられます。
「紹介が遅れて申し訳ありません。今日、編入試験を受けさせていただく娘のシュゼットです。シュゼット、ご挨拶を」
さあ、まずはこの学院長を味方につけておかないと。飛び切りの笑顔でご挨拶しましょう。
「学長様、お初にお目に掛かります。シュゼット・メレリア・グリーンフィールドでございます。編入試験の機会を与えて頂き、ありがとうございます。試験に合格できるよう頑張りますわ。よろしくお願い致します」
学院長を上目遣いに見ながら、目を細めて口角をゆっくりと上げます。あくまでも、儚く、優雅に慈愛に満ちた表情で。そう、天使の微笑みですわよ。
「なんとまあ、まるで天使の様ではないですか。こちらこそよろしくお願いします。シュゼット嬢、是非学院に編入できるように頑張って下さい」
「はい。学院長様。でも、ドキドキしてしまって、せっかく覚えた王制学史の年表を忘れてしまいそうです……(嘘)」
「おお、そうですね。早く学科を始めましょう。ずっと緊張していては身体にも悪いですからね」
トンバール学院長は、呼び鈴を鳴らすと二人の男性を呼ばれました。お一人は、背中までの長い黒髪に黒眼の背の高い方です。整ったお顔立ちですが、無表情で銀色のモノクルが神経質で知的な感じがします。もう一人は柔らかく微笑む、初老の執事のような風情の方です。
「それでは、ハート教授は学科試験の監督をお願いします。シーバスはシュゼット嬢のお付きの方を控室にご案内して下さい。それでは、ハート教授、後はお願いしますね」
「承知しました。試験室にご案内しましょう」
おお!黒髪黒目のこの方がハート教授デスカ。
「ハート先生? シュゼット・メレリア・グリーンフィールドです。よろしくお願いします」
この手の男性には、過剰な甘めの表情よりも常識的で、謙虚な方が良いと思イマス。ハート先生は目だけで頷くと、ドアを開けてくれました。
「ありがとうございます」
ちゃんとお礼は言いますよ! だって、この方も味方にしておいた方が良さそうですもの!
「ただいまぁぁぁあ」
「お帰りなさいませ。お嬢様、お疲れ様でございました」
午前の試験を終わらせたシュゼットお嬢様が控室に戻って来られました。朝から3教科を終えてようやくお昼の時間になったのですから、それはお疲れでしょう。ドアをしっかり閉めてから、お嬢様がソファに崩れ落ちました。少々はしたない格好ですが、それは許して差し上げましょう。
「お嬢様、お茶をどうぞ。調理長お勧めの疲れが取れるカモミールティーです。一休みしたらお昼にしましょう。次の試験は1時からですよね? たっぷり休めますよ」
「ありがとう、マリ。ああ、生き返るわ身体に染み渡りますわ」
「ようございました。お嬢様がそんなにお疲れになるなんて、試験はそんなに難しかったのですか?」
ティーカップに口を付けたまま、ボーっとしているお嬢様は大分お疲れの様です。普段はそんな姿を見ることはありません。
「試験はね~、簡単よ。余裕。時間余りまくり。でも、寝るわけいかないし、真剣に真面目に受けているふうは見せないとだめじゃない? 修行よ! 修行!」
「そうでしたか。さすがお嬢様。まあ、あと2教科と面接です。半分過ぎましたから頑張りましょう」
お嬢様を励ますと、キラキラの笑顔が返ってきました。
「そうよね! 美味しいランチを頂いて、エネルギーの補充をしましょう!!」
美味しい物を前にしたお嬢様は、本当に天使に見えます。腹黒いことを考えているなんてこれっポッチも思えませんよ?
「シュゼット嬢、午前中の試験では大分時間が余っていたようですね?」
「はいっ?」
ハート先生は、午後の試験が始まる前にいきなりそう言ってきた。なんで? 気づかれてた?
「貴方は優秀な学生ですね。テレジア学園の成績表からも判ります。この編入試験では貴方には簡単すぎるでしょう? 答案はでき次第で終わりにして、次の教科をしましょう。面接時間も少し早めることにします」
「えっ? それは、試験が早く終わるということですか?」
「ええ。その方が貴方も早く帰れますよ?」
「……」
ハート先生的には、ご親切のつもりで提案してくれたのでしょうが、終業時間前に終わると時間を潰す理由が必要になっちゃうんだけど……
「先生、試験が早く終わったら、学院内を見学することは出来るでしょうか? 素敵な建物なので是非見学したいのですけど」
真剣な表情で、お願いしてみます。ちょっと遠慮しながらの。ですわ。
「……いいですよ。少しであれば、私が案内しましょう」
なんと、ハート先生自らが案内して下さると。このドS属美形種の文系教授が案内してくれると?
「本当ですか? お忙しいでしょうに、ハート先生に甘えてしまって宜しいのですか?」
「ええ。少しなら大丈夫です。それでは午後の試験を始めましょう」
よっしゃっ!! 学院内の案内ゲットです! とっとと試験を終わらせますわよー!!
「広いわね」
シュゼットはそう言って、馬車のカーテンを少し開けて外を覗き見た。守衛所の手前で停まった馬車からは広葉樹の並木道が続いているようだ。青々とした芝生の上には葉っぱの一枚も落ちていない。
「掃除するのも大変そうですね?」
マリが感心したように呟く。
「本当。さすが王立学院ね。見た目は立派だけど、維持費だけでも大変そうだわ」
シュゼットは、正門から遠くに見える玄関を目を凝らして見詰めた。
国中の貴族の子女が学ぶ由緒正しい学院は、10歳から14歳までの中等部と15歳から17歳までの高等部に分かれている。
因みに、6歳から9歳の初等部は、通学が必須ではなく高位になればなるほど自宅で授業を受けることも可能だった。
勿論王族も例外では無く、高等部の1年に第一王子のフェリックス殿下と従兄弟のオーランド、3年生には第二王女のチェリアーナ殿下が通っている。中等部には双子の王子達、パリス殿下とカルン殿下がいるらしい。
らしいというのは、
「会ったこともないわ。そんな子たちいたかしら?」
くらいの印象しかない。いや全く記憶に残っていない。王族に対して興味も無ければ関心も無い。シュゼットにあるのは、あの失礼な第一王子と笑った奴らへのリベンジだけなのだ。
「さて、ここからが勝負よ。行きましょ!! いざ、出陣!」
正面玄関で馬車はゆっくりと停まり、馬車のドアが静かに開けられた。
「これは、グリーンフィールド公爵様、長きにわたる隣国でのご駐在、大変お疲れ様でございました」
「いや、随分ご無沙汰していました。トンバール学院長、お久し振りです。お元気でしたか?」
お父様とトンバール学院長様は顔見知りなんですって。何でも、お父様が就学していた頃、先生は今より少しお若くて、学院で王制学史の教鞭をお取りだったそうです。お二人は懐かしそうに握手をすると嬉しそうにお話を始めています。早く試験を始めて貰いたいのですけど。なぜなら!
(全試験が終わるのと、授業が終わるのが一緒にならないと私の目撃情報が無いでしょう?
いい塩梅で、私の姿を目撃させないと、噂にならないでしょうが。ちらりと効果的に見せないとダメじゃない?
お父様、そろそろ紹介して下さいな! お母様の陰に隠れるように立っている私は、お母様のドレスの袖をツンツンと引っ張ります。よし! お母様気付いてくれましたね?
「貴方、そろそろ私達もご紹介して下さいな?」
にっこりと微笑みながら(多分)お父様に声を掛けるお母様。おっとりとした口調ですけど、圧が感じられます。
「紹介が遅れて申し訳ありません。今日、編入試験を受けさせていただく娘のシュゼットです。シュゼット、ご挨拶を」
さあ、まずはこの学院長を味方につけておかないと。飛び切りの笑顔でご挨拶しましょう。
「学長様、お初にお目に掛かります。シュゼット・メレリア・グリーンフィールドでございます。編入試験の機会を与えて頂き、ありがとうございます。試験に合格できるよう頑張りますわ。よろしくお願い致します」
学院長を上目遣いに見ながら、目を細めて口角をゆっくりと上げます。あくまでも、儚く、優雅に慈愛に満ちた表情で。そう、天使の微笑みですわよ。
「なんとまあ、まるで天使の様ではないですか。こちらこそよろしくお願いします。シュゼット嬢、是非学院に編入できるように頑張って下さい」
「はい。学院長様。でも、ドキドキしてしまって、せっかく覚えた王制学史の年表を忘れてしまいそうです……(嘘)」
「おお、そうですね。早く学科を始めましょう。ずっと緊張していては身体にも悪いですからね」
トンバール学院長は、呼び鈴を鳴らすと二人の男性を呼ばれました。お一人は、背中までの長い黒髪に黒眼の背の高い方です。整ったお顔立ちですが、無表情で銀色のモノクルが神経質で知的な感じがします。もう一人は柔らかく微笑む、初老の執事のような風情の方です。
「それでは、ハート教授は学科試験の監督をお願いします。シーバスはシュゼット嬢のお付きの方を控室にご案内して下さい。それでは、ハート教授、後はお願いしますね」
「承知しました。試験室にご案内しましょう」
おお!黒髪黒目のこの方がハート教授デスカ。
「ハート先生? シュゼット・メレリア・グリーンフィールドです。よろしくお願いします」
この手の男性には、過剰な甘めの表情よりも常識的で、謙虚な方が良いと思イマス。ハート先生は目だけで頷くと、ドアを開けてくれました。
「ありがとうございます」
ちゃんとお礼は言いますよ! だって、この方も味方にしておいた方が良さそうですもの!
「ただいまぁぁぁあ」
「お帰りなさいませ。お嬢様、お疲れ様でございました」
午前の試験を終わらせたシュゼットお嬢様が控室に戻って来られました。朝から3教科を終えてようやくお昼の時間になったのですから、それはお疲れでしょう。ドアをしっかり閉めてから、お嬢様がソファに崩れ落ちました。少々はしたない格好ですが、それは許して差し上げましょう。
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お嬢様を励ますと、キラキラの笑顔が返ってきました。
「そうよね! 美味しいランチを頂いて、エネルギーの補充をしましょう!!」
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「はいっ?」
ハート先生は、午後の試験が始まる前にいきなりそう言ってきた。なんで? 気づかれてた?
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「……」
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真剣な表情で、お願いしてみます。ちょっと遠慮しながらの。ですわ。
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