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6. 予期せぬ接近にはご注意を
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どうする!? どうする!! どうする?? どーするーっ!?
「お、お嬢様? ど、ドウシマスカ?」
「……」
コン! コン! コン!
「ちっ! しょうがないわね。マリ、少しだけ開けて誰か確認してちょうだい。私は真っ直ぐ前を向いているから。令嬢と侍女になるわよ」(本物の令嬢と侍女ですけどね)
「判りました。令嬢と侍女ですね?」
令嬢と侍女は、私達の演じるスタイルの1つです。貴族のお嬢様の高貴からの、品位ある落ち着きのエッセンスを纏い、マリはそんなお嬢様に付き従う侍女ですから、デキルオンナを演じるわけです。
マリが慎重に小窓を開けました。私からは彼女の後頭部しか見えません。
「……何か御用でしょうか?」
随分と低い声で抑揚の無い声ですけど、マリにとってそれがデキルオンナのイメージでしょうか。
「失礼致します。大変申し訳ございませんが、急ぎの用事がありまして、こちらの馬車を先に通して頂けませんでしょうか?」
うん? この声は誰? まさか王子? 顔は見れば判るけど、声は覚えていないわ。覚えていても5年も経った今では声変わりもしているでしょう。
「マリ? どうかしたのですか? ありましたの?」
私は、マリの後ろで声を掛けました。すると、マリが向こうの馬車の窓が見えるように、振り向いて少し身体をずらしてくれました。
「お嬢様、こちらの方が先に馬車を通して欲しいとおっしゃっています」
誰が言ってんのよ? と、顔だけチラッと向けて声の主を見ました。
(---知らんっ!!)
(誰よコイツ? 王子の取り巻きかしら? でも、奥にはヤツがいるはずよね)
まあ、ここは譲って印象付けときましょう。ついでにコイツの名前も聞いときましょうか。今後会う機会も多いかもしれませんもの。
マリを後ろに下がらせると、私は少しだけ小窓に近寄り、相手から顔が見える位置に座りました。そして頬に片手を添えて小首をかしげながら、ほんの少し眉根を寄せて気の毒そうな表情を作りました。
「そうですの。お急ぎなのですね? それはお困りでしょう。えっと? ……」
「あっ。失礼致しました。私はロイ・ジルド・カリノと申します」
「カリノ様……カリノ侯爵家の方ですのね。私達は急ぎませんから、どうぞ? 先にお通り下さいな」
ちょっと、はにかみを滲ませてふんわり目を細めて見詰めます。(あっ。顔が真っ赤になった)
「あ、ありがとうございます。あの、あ、貴方は? お、お名前をっ! うっ、うっわ!」
馬車が急に動いて、ロイ様が体勢を崩したのが見えました。ちょっとこの方、ドン臭いのかしら? そして、彼の後ろには二人程の人影が。
進む馬車の小窓に縋りつくようにロイ様が見えます。何か言っているのか口をパクパクさせていますけど。
私は彼に向かって、というか後ろにいる人物に会釈をします。天使90%の微笑みに載せてですよ。この位にしておきますか。あら、まだパクパクしてる。何言ってるか判んないわよ?
王子が乗った馬車は、私達の馬車の前に入ると、スムーズに守衛所を抜けて去って行きました。まったく、もしかしたらヤツの乗った馬車が列を乱していたんじゃないの?
やっと学園から出て屋敷に向かって進みます。私は元通りの位置に座り直し、腕組みをして考え事をしていました。
「それで、お嬢様、馬車の中は見れましたか?」
「うーん。はっきりとは見えなかったけど、ロイ様の他に二人ぐらいはいたわね。ヤツがいたのは確かよ。最初に見えたのはアイツの顔だったもの。後の一人は、ヤツの従兄弟のオーランド様かしらね? 会ったこと無いから判らないけど」
「そうですか。でもお嬢様、よくカリノ侯爵様をご存じでしたね?」
「あたぼーよ! この国の貴族系譜と領地事情はすべて暗記済よ」
「お嬢様---あたぼーって、どこの言葉ですか? まったくテレジア学院の悪影響が出ていますよ。あそこは貴族も平民も優秀であれば一緒に生活できますからね。下品な口調が移っていますから、気を付けてください」
「……ギャップ萌えとか?」
「ありませんから!!」
そうですか。マリがそう言うなら気を付けましょう。
しかし、ロイ様ね? 思いの外いい物件に近づけたかしら。明るい栗色のくるくる巻き毛の可愛らしい感じ。まるで子犬のような目で私を見ていたもの。カリノ家の次男がヤツと一緒にいるということは……
「マリ、屋敷に帰ったらロイ様のことをもう少し調べてみましょう。それから派閥勢力図を見直すわよ」
さあ、やる気が出てきましたわ。編入まではあと、一週間ありますから!!
「お、お嬢様? ど、ドウシマスカ?」
「……」
コン! コン! コン!
「ちっ! しょうがないわね。マリ、少しだけ開けて誰か確認してちょうだい。私は真っ直ぐ前を向いているから。令嬢と侍女になるわよ」(本物の令嬢と侍女ですけどね)
「判りました。令嬢と侍女ですね?」
令嬢と侍女は、私達の演じるスタイルの1つです。貴族のお嬢様の高貴からの、品位ある落ち着きのエッセンスを纏い、マリはそんなお嬢様に付き従う侍女ですから、デキルオンナを演じるわけです。
マリが慎重に小窓を開けました。私からは彼女の後頭部しか見えません。
「……何か御用でしょうか?」
随分と低い声で抑揚の無い声ですけど、マリにとってそれがデキルオンナのイメージでしょうか。
「失礼致します。大変申し訳ございませんが、急ぎの用事がありまして、こちらの馬車を先に通して頂けませんでしょうか?」
うん? この声は誰? まさか王子? 顔は見れば判るけど、声は覚えていないわ。覚えていても5年も経った今では声変わりもしているでしょう。
「マリ? どうかしたのですか? ありましたの?」
私は、マリの後ろで声を掛けました。すると、マリが向こうの馬車の窓が見えるように、振り向いて少し身体をずらしてくれました。
「お嬢様、こちらの方が先に馬車を通して欲しいとおっしゃっています」
誰が言ってんのよ? と、顔だけチラッと向けて声の主を見ました。
(---知らんっ!!)
(誰よコイツ? 王子の取り巻きかしら? でも、奥にはヤツがいるはずよね)
まあ、ここは譲って印象付けときましょう。ついでにコイツの名前も聞いときましょうか。今後会う機会も多いかもしれませんもの。
マリを後ろに下がらせると、私は少しだけ小窓に近寄り、相手から顔が見える位置に座りました。そして頬に片手を添えて小首をかしげながら、ほんの少し眉根を寄せて気の毒そうな表情を作りました。
「そうですの。お急ぎなのですね? それはお困りでしょう。えっと? ……」
「あっ。失礼致しました。私はロイ・ジルド・カリノと申します」
「カリノ様……カリノ侯爵家の方ですのね。私達は急ぎませんから、どうぞ? 先にお通り下さいな」
ちょっと、はにかみを滲ませてふんわり目を細めて見詰めます。(あっ。顔が真っ赤になった)
「あ、ありがとうございます。あの、あ、貴方は? お、お名前をっ! うっ、うっわ!」
馬車が急に動いて、ロイ様が体勢を崩したのが見えました。ちょっとこの方、ドン臭いのかしら? そして、彼の後ろには二人程の人影が。
進む馬車の小窓に縋りつくようにロイ様が見えます。何か言っているのか口をパクパクさせていますけど。
私は彼に向かって、というか後ろにいる人物に会釈をします。天使90%の微笑みに載せてですよ。この位にしておきますか。あら、まだパクパクしてる。何言ってるか判んないわよ?
王子が乗った馬車は、私達の馬車の前に入ると、スムーズに守衛所を抜けて去って行きました。まったく、もしかしたらヤツの乗った馬車が列を乱していたんじゃないの?
やっと学園から出て屋敷に向かって進みます。私は元通りの位置に座り直し、腕組みをして考え事をしていました。
「それで、お嬢様、馬車の中は見れましたか?」
「うーん。はっきりとは見えなかったけど、ロイ様の他に二人ぐらいはいたわね。ヤツがいたのは確かよ。最初に見えたのはアイツの顔だったもの。後の一人は、ヤツの従兄弟のオーランド様かしらね? 会ったこと無いから判らないけど」
「そうですか。でもお嬢様、よくカリノ侯爵様をご存じでしたね?」
「あたぼーよ! この国の貴族系譜と領地事情はすべて暗記済よ」
「お嬢様---あたぼーって、どこの言葉ですか? まったくテレジア学院の悪影響が出ていますよ。あそこは貴族も平民も優秀であれば一緒に生活できますからね。下品な口調が移っていますから、気を付けてください」
「……ギャップ萌えとか?」
「ありませんから!!」
そうですか。マリがそう言うなら気を付けましょう。
しかし、ロイ様ね? 思いの外いい物件に近づけたかしら。明るい栗色のくるくる巻き毛の可愛らしい感じ。まるで子犬のような目で私を見ていたもの。カリノ家の次男がヤツと一緒にいるということは……
「マリ、屋敷に帰ったらロイ様のことをもう少し調べてみましょう。それから派閥勢力図を見直すわよ」
さあ、やる気が出てきましたわ。編入まではあと、一週間ありますから!!
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