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42. 考えて動くと何かが起きます
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「---様? シュゼットお嬢様?」
ああ。考え事をしていました。
コントルー公爵家、ドロシア様のお茶会から帰って来てからずっと考えていました。あの、ドロシア様とイザベラ様のお話についてです。
「何かしら? マリ?」
マリが、心配そうな顔でお茶を差し出してくれます。昨日コントルー公爵家から帰って来てから口数も少なく、考え事をしている私を心配してくれているようです。
「お嬢様? 私が下がった後にお嬢様方でした会話というのは、お嬢様を糾弾する内容だったのですか!? 可愛すぎるとか! 美し過ぎるとか! それとも!」
「ナイナイ。それはナイわ。 落ち着いてちょうだい」
お二人とお話しした内容は、幾ら仲が良いとは言っても、侍女に聞かせて良い事ではありませんわ。聞けば逆にマリの悩みを増やしてしまいそうな家の事です。特に、カリノ家に対する共闘については、知らない方が良いと思います。まあ、マリは勘が良いですから、今以上にお付き合いを深めていけば、当然気付くかもしれません。それまでは内緒としましょう。
ただ、すでに私が5人目の婚約者候補であり、カテリーナ様がその候補者の中に、いらっしゃる事を知っていますから、本命と側室候補については判っています。だって、一般的に忘れられがちですけど、先代の国王陛下までは、側室と言われる方がいらしたのは隠しようも無い事実ですから。今の陛下、ヤツのお父上の国王陛下にはいらっしゃらないだけですもの。
マリは、このグリーンフィールド公爵に仕えている家政婦長の娘ですから。あら? ご存じありませんでしたか? マリの母親は、このグリーンフィールド公爵家の本邸を掌握している家政婦長です。なので、国に関わる情報も王家や王宮に関するゴシップネタも耳に入ることが多いと思います。まあ、それを言いふらすなどという下世話な事はしませんけどね。
「やはり、皆様もカテリーナ様が婚約者になるとお考えなのですね?」
「そうね。普通に考えれば一択よね。お二人もそう言ってらしたわ」
今日のお茶も、良い淹れ具合ですわ。
「シュゼット様が、お悩みになっている事は何なのですか? 私ではお役に立てませんか?」
真正面に立つマリの顔をじっと見ました。マリの真剣な瞳に目が合います。これだけは、言っておかないといけませんね。
「マリ。貴方がいてくれるから、私は今まで頑張れたのよ? 貴方の事が大好きだし、とても大切に思っているわ。でもね、昨日お二人とお話をしていて気付いたことがあるの」
「気付いたこと?」
「ええ。私が、コレールから離れていた5年間は、ヤツや笑った令嬢達に仕返しをするために頑張って来たでしょう? でも、お二人は違ったの。お家の為や、国の事も考えていた」
そこまで言うと、もう一口お茶を口に含みました。良い香りが喉を滑って行きます。
「そう。私が自分の事しか考えていなかった時に、あの方たちは、少し先を見ていらしたの。それは今も同じようにね」
そうなのです。王国の上位貴族としての立ち位置は、現状に甘んじて未来永劫、安穏としてはいられないのです。それは、国王の代替わりや、他国との外交問題、気候や疫病、多くの問題によって一変してしまうのです。だからこそ、国力を保ち正しい方向性で、国政を敷くために力の集中化を避けるべきなのです。一つの家に力が集中する事は、過去から見ても危険性を孕む方が多いのですから。
「申し訳ありません。お嬢様のおっしゃりたいことが、良く判りませんけど?」
「うふふ。私も良く判らなくなっちゃったわ! でもね、これだけは言えるの。マリがいなければヤツ対策も、ローナ様対策も出来ないってことよ! だから、よろしくお願いしますわ!」
肝心な事が言えないもどかしさがありますが、今思っていることはちゃんと言いましたわ。
「判りました。お嬢様がそうおっしゃるならば、全力でフェリックス殿下、ローナ様、(シルヴァ様)対策を致しましょう。ご安心くださいませ!」
やっぱりマリです。ん? でも、何でしょう。ローナ様の後に、どなたかの名前を言ったように思いますけど。小さくてむにゅにゅ言ったので良く聞こえませんでしたわ。
でも、マリの元気さは、私のパワーになるのです!
魔法科学省。
数多くある議会の一番王宮に近い場所に建立する魔法科学省。古くからコレール王国で重要な役割を担っている。限られた魔法術の使い手である議員の多くは貴族であったが、今はその血も多少薄れてきて一部の平民が執務職として勤務している。主な管轄業務は、希少となった魔法術の使い手の発見と、保護、そして研究と発展させる事となっている。当然、役人は全てコレール王国の国民だ。
長い廊下の先には、沢山の研究室が並んでいる。研究棟は省に勤務している魔法術師が、それぞれ専門の分野の研究に勤しんでいる。
黒塗りの大きな扉をノックする。
「……」
返事は無い。
もう一度、ノックをする。
「誰だ? 勝手に入ってくれ。手が離せないんだ」
やっと返事があった。シルヴァ・ハートラッド・ダリナスはため息をついて部屋に入った。
「ああ。シルヴァ、貴方か。少し待っていてくれ」
この部屋の主、レイシルが何枚もの紙に書きつけた魔法の術式を順番に並べ替えていた。
「よくこれで判るな」
ヒラリと足元の紙を一枚拾い上げて見た。几帳面な文字がびっしりと書き込まれていた。
「ああすまん、次はそれだ」
集め終わった書類を纏めると、ようやく床が現れた。
「悪かった。ソファに掛けてくれ。お茶にするか? それともカフェにするか?」
そう言いながら、すでにカフェの粉が入った瓶を持っている。
「……カフェで」
シルヴァはそう答えて、ソファに座った。
「それで? 休みにわざわざ来てくれたとは、この前に依頼した術式が完成したのか?」
レイシルがカフェをローテーブルに置くと、香ばしい良い香りが湧き立った。最近流行りのカフェはレイシルのお気に入りのようだ。
「ああ。それを持ってきた」
「何だ。連絡をくれれば行ったのに。わざわざ、王弟殿下にご足労頂くなど畏れ多い」
全くそんな事を思ってもいない癖に、良く言うものだと思う。
「いや。次回の魔法術鑑定式についても頼みに来たんだ」
「頼み?」
「ああ。編入生も追加して貰いたいのだ。今年15歳になる少女だ」
席に着いたレイシルが、カフェに口を付けた。
「承知した。王立学院で1名追加だな。それだけ言いに来たのか?」
ここで、ようやくシルヴァは、彼の事を真正面から見ることが出来た。
銀色の長い髪は、腰より下まで伸ばしている。今は緩く三つ編みにしているが、彼の別の仕事の時にはそのまま滑らかに背に流されることが多い。そして、グリーントルマリンの緑色の瞳。やっぱりよく似ている。細面の顔は、日に当たらないため少し蒼白く見える。そして、男にしては長い睫毛が頬に影を落とし、近視の為に眼を細める表情が必要以上に艶めいて見える。
「何だ? 何を見ている?」
「いや。良く似ているなと思っただけだ」
レイシルは、一瞬眉根を寄せたが、すぐに呆れた口調で言った。
「仕方ないだろう。血が繋がっているんだから。でも、貴方は一つ間違えているぞ? 良いか? 俺がフェリックスに似ているんじゃない。アイツが俺に似ているんだ」
見た目こそ、彼のもう一つの職業である王宮神官長に相応しい神秘的な美貌だが。粗野な物言いはワザとなのか、会った時から変わらない。
自分とは、一番年の近い19歳の魔法科学省の研究議員だった。
レイシルは、先代国王の側室腹の王子の一人だ。つまり、現国王とは異母兄弟に当たる。但し、随分と年の離れた兄弟であり、類い稀な魔力の持ち主であった。何と言っても、コレール王国随一の火、水、風、鑑定、錬金の5つの識別を持っている人物だ。
その魔法術の識別の多さから、生まれてすぐに王宮神殿の神官長の役職を拝受していた。しかし、その役割だけでは飽き足らず、成人となると同時に魔法科学省に入省した特異な経歴の持ち主だった。そのため、現在では国の祭事で必要となるときだけ、神官長として祭事を司るようだ。まあ、次回、彼が祭事を執り行うのは、国王の葬式かフェリックスの即位のどちらかになるだろう。
「今度の水曜日だな。久し振りの鑑定式だ。少しでも魔力持ちがいてくれればいいが。貴方はどう見ている?」
ソファに踏ん反り返って足を投げ出したその姿は、年相応に見えるがとても神官長サマには見えない。
「10歳の中等部組には、魔力持ちは2、3人はいるかと思うが、お前の眼鏡に叶うのはどうかな? 追加の15歳の少女は、家系には魔法術師はいないと言っていたから、こちらも望み薄か。尤も、私には鑑定が出来ないから直感だが」
「ふ……ん。まあ、そんなものか。ここ4、5年は厳しいな。貴方の所のエーリックが一番かな? 彼が入省してくれればいいけどねぇ。第三王子じゃ無理か? ねえ、シルヴァ王弟殿下貴方の力で何とかならない?」
何やら面白い事を考えた。と言うようにニコニコしながら言う。
自分以上に浮世離れしたこの人物は、数少ない友人の一人とも言える。王族として、国王となる人物の血を継承しながら王位とは離れた場所にいる。この境遇もよく似ているし、お互い魔法術に自分の価値を見出した研究者同志でもあるのだ。
「エーリックのことは私も思うことがあるが、あの子はダリナスにとても有用な人物だからね。簡単にはダリナスから出ることは出来ないだろう。でも、絶対無理かと言えばそうでは無いな」
「そう? どうすれば良いの? 教えてよ?」
キラキラした瞳は、部屋に差し込む光で色が変わって見える。神秘のグリーントルマリンの瞳が好奇心で溢れているようだ。
「それはまだ教えられない。でも、お前が表に出てくれば早く話が進むかもな?」
意味が判らない。と、レイシルが肩を竦めたが、その表情は変わらず目を細めて微笑んでいるように見えた。
(あ。コイツの好奇心を無駄に刺激してしまった……か?)
とにかく、水曜日に王立学院で魔法術鑑定式が行われる。
ああ。考え事をしていました。
コントルー公爵家、ドロシア様のお茶会から帰って来てからずっと考えていました。あの、ドロシア様とイザベラ様のお話についてです。
「何かしら? マリ?」
マリが、心配そうな顔でお茶を差し出してくれます。昨日コントルー公爵家から帰って来てから口数も少なく、考え事をしている私を心配してくれているようです。
「お嬢様? 私が下がった後にお嬢様方でした会話というのは、お嬢様を糾弾する内容だったのですか!? 可愛すぎるとか! 美し過ぎるとか! それとも!」
「ナイナイ。それはナイわ。 落ち着いてちょうだい」
お二人とお話しした内容は、幾ら仲が良いとは言っても、侍女に聞かせて良い事ではありませんわ。聞けば逆にマリの悩みを増やしてしまいそうな家の事です。特に、カリノ家に対する共闘については、知らない方が良いと思います。まあ、マリは勘が良いですから、今以上にお付き合いを深めていけば、当然気付くかもしれません。それまでは内緒としましょう。
ただ、すでに私が5人目の婚約者候補であり、カテリーナ様がその候補者の中に、いらっしゃる事を知っていますから、本命と側室候補については判っています。だって、一般的に忘れられがちですけど、先代の国王陛下までは、側室と言われる方がいらしたのは隠しようも無い事実ですから。今の陛下、ヤツのお父上の国王陛下にはいらっしゃらないだけですもの。
マリは、このグリーンフィールド公爵に仕えている家政婦長の娘ですから。あら? ご存じありませんでしたか? マリの母親は、このグリーンフィールド公爵家の本邸を掌握している家政婦長です。なので、国に関わる情報も王家や王宮に関するゴシップネタも耳に入ることが多いと思います。まあ、それを言いふらすなどという下世話な事はしませんけどね。
「やはり、皆様もカテリーナ様が婚約者になるとお考えなのですね?」
「そうね。普通に考えれば一択よね。お二人もそう言ってらしたわ」
今日のお茶も、良い淹れ具合ですわ。
「シュゼット様が、お悩みになっている事は何なのですか? 私ではお役に立てませんか?」
真正面に立つマリの顔をじっと見ました。マリの真剣な瞳に目が合います。これだけは、言っておかないといけませんね。
「マリ。貴方がいてくれるから、私は今まで頑張れたのよ? 貴方の事が大好きだし、とても大切に思っているわ。でもね、昨日お二人とお話をしていて気付いたことがあるの」
「気付いたこと?」
「ええ。私が、コレールから離れていた5年間は、ヤツや笑った令嬢達に仕返しをするために頑張って来たでしょう? でも、お二人は違ったの。お家の為や、国の事も考えていた」
そこまで言うと、もう一口お茶を口に含みました。良い香りが喉を滑って行きます。
「そう。私が自分の事しか考えていなかった時に、あの方たちは、少し先を見ていらしたの。それは今も同じようにね」
そうなのです。王国の上位貴族としての立ち位置は、現状に甘んじて未来永劫、安穏としてはいられないのです。それは、国王の代替わりや、他国との外交問題、気候や疫病、多くの問題によって一変してしまうのです。だからこそ、国力を保ち正しい方向性で、国政を敷くために力の集中化を避けるべきなのです。一つの家に力が集中する事は、過去から見ても危険性を孕む方が多いのですから。
「申し訳ありません。お嬢様のおっしゃりたいことが、良く判りませんけど?」
「うふふ。私も良く判らなくなっちゃったわ! でもね、これだけは言えるの。マリがいなければヤツ対策も、ローナ様対策も出来ないってことよ! だから、よろしくお願いしますわ!」
肝心な事が言えないもどかしさがありますが、今思っていることはちゃんと言いましたわ。
「判りました。お嬢様がそうおっしゃるならば、全力でフェリックス殿下、ローナ様、(シルヴァ様)対策を致しましょう。ご安心くださいませ!」
やっぱりマリです。ん? でも、何でしょう。ローナ様の後に、どなたかの名前を言ったように思いますけど。小さくてむにゅにゅ言ったので良く聞こえませんでしたわ。
でも、マリの元気さは、私のパワーになるのです!
魔法科学省。
数多くある議会の一番王宮に近い場所に建立する魔法科学省。古くからコレール王国で重要な役割を担っている。限られた魔法術の使い手である議員の多くは貴族であったが、今はその血も多少薄れてきて一部の平民が執務職として勤務している。主な管轄業務は、希少となった魔法術の使い手の発見と、保護、そして研究と発展させる事となっている。当然、役人は全てコレール王国の国民だ。
長い廊下の先には、沢山の研究室が並んでいる。研究棟は省に勤務している魔法術師が、それぞれ専門の分野の研究に勤しんでいる。
黒塗りの大きな扉をノックする。
「……」
返事は無い。
もう一度、ノックをする。
「誰だ? 勝手に入ってくれ。手が離せないんだ」
やっと返事があった。シルヴァ・ハートラッド・ダリナスはため息をついて部屋に入った。
「ああ。シルヴァ、貴方か。少し待っていてくれ」
この部屋の主、レイシルが何枚もの紙に書きつけた魔法の術式を順番に並べ替えていた。
「よくこれで判るな」
ヒラリと足元の紙を一枚拾い上げて見た。几帳面な文字がびっしりと書き込まれていた。
「ああすまん、次はそれだ」
集め終わった書類を纏めると、ようやく床が現れた。
「悪かった。ソファに掛けてくれ。お茶にするか? それともカフェにするか?」
そう言いながら、すでにカフェの粉が入った瓶を持っている。
「……カフェで」
シルヴァはそう答えて、ソファに座った。
「それで? 休みにわざわざ来てくれたとは、この前に依頼した術式が完成したのか?」
レイシルがカフェをローテーブルに置くと、香ばしい良い香りが湧き立った。最近流行りのカフェはレイシルのお気に入りのようだ。
「ああ。それを持ってきた」
「何だ。連絡をくれれば行ったのに。わざわざ、王弟殿下にご足労頂くなど畏れ多い」
全くそんな事を思ってもいない癖に、良く言うものだと思う。
「いや。次回の魔法術鑑定式についても頼みに来たんだ」
「頼み?」
「ああ。編入生も追加して貰いたいのだ。今年15歳になる少女だ」
席に着いたレイシルが、カフェに口を付けた。
「承知した。王立学院で1名追加だな。それだけ言いに来たのか?」
ここで、ようやくシルヴァは、彼の事を真正面から見ることが出来た。
銀色の長い髪は、腰より下まで伸ばしている。今は緩く三つ編みにしているが、彼の別の仕事の時にはそのまま滑らかに背に流されることが多い。そして、グリーントルマリンの緑色の瞳。やっぱりよく似ている。細面の顔は、日に当たらないため少し蒼白く見える。そして、男にしては長い睫毛が頬に影を落とし、近視の為に眼を細める表情が必要以上に艶めいて見える。
「何だ? 何を見ている?」
「いや。良く似ているなと思っただけだ」
レイシルは、一瞬眉根を寄せたが、すぐに呆れた口調で言った。
「仕方ないだろう。血が繋がっているんだから。でも、貴方は一つ間違えているぞ? 良いか? 俺がフェリックスに似ているんじゃない。アイツが俺に似ているんだ」
見た目こそ、彼のもう一つの職業である王宮神官長に相応しい神秘的な美貌だが。粗野な物言いはワザとなのか、会った時から変わらない。
自分とは、一番年の近い19歳の魔法科学省の研究議員だった。
レイシルは、先代国王の側室腹の王子の一人だ。つまり、現国王とは異母兄弟に当たる。但し、随分と年の離れた兄弟であり、類い稀な魔力の持ち主であった。何と言っても、コレール王国随一の火、水、風、鑑定、錬金の5つの識別を持っている人物だ。
その魔法術の識別の多さから、生まれてすぐに王宮神殿の神官長の役職を拝受していた。しかし、その役割だけでは飽き足らず、成人となると同時に魔法科学省に入省した特異な経歴の持ち主だった。そのため、現在では国の祭事で必要となるときだけ、神官長として祭事を司るようだ。まあ、次回、彼が祭事を執り行うのは、国王の葬式かフェリックスの即位のどちらかになるだろう。
「今度の水曜日だな。久し振りの鑑定式だ。少しでも魔力持ちがいてくれればいいが。貴方はどう見ている?」
ソファに踏ん反り返って足を投げ出したその姿は、年相応に見えるがとても神官長サマには見えない。
「10歳の中等部組には、魔力持ちは2、3人はいるかと思うが、お前の眼鏡に叶うのはどうかな? 追加の15歳の少女は、家系には魔法術師はいないと言っていたから、こちらも望み薄か。尤も、私には鑑定が出来ないから直感だが」
「ふ……ん。まあ、そんなものか。ここ4、5年は厳しいな。貴方の所のエーリックが一番かな? 彼が入省してくれればいいけどねぇ。第三王子じゃ無理か? ねえ、シルヴァ王弟殿下貴方の力で何とかならない?」
何やら面白い事を考えた。と言うようにニコニコしながら言う。
自分以上に浮世離れしたこの人物は、数少ない友人の一人とも言える。王族として、国王となる人物の血を継承しながら王位とは離れた場所にいる。この境遇もよく似ているし、お互い魔法術に自分の価値を見出した研究者同志でもあるのだ。
「エーリックのことは私も思うことがあるが、あの子はダリナスにとても有用な人物だからね。簡単にはダリナスから出ることは出来ないだろう。でも、絶対無理かと言えばそうでは無いな」
「そう? どうすれば良いの? 教えてよ?」
キラキラした瞳は、部屋に差し込む光で色が変わって見える。神秘のグリーントルマリンの瞳が好奇心で溢れているようだ。
「それはまだ教えられない。でも、お前が表に出てくれば早く話が進むかもな?」
意味が判らない。と、レイシルが肩を竦めたが、その表情は変わらず目を細めて微笑んでいるように見えた。
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