【更新中】悪役令嬢は天使の皮を被ってます!! -5年前「白パンダ」と私を嗤った皆様に今度は天使の姿でリベンジします! 覚悟は宜しくて?-

薪乃めのう

文字の大きさ
49 / 121

48. 馬車の中の二人

しおりを挟む
「まさか、光の識別者が出て来るとはね」



 専用の豪華な馬車の中で、何時になく表情を緩めているレイシルを、シルヴァが正面から見据えた。

「レイ。お前、余り突っ走るなよ? 希少識別者が発現出来て舞い上がっているのは判るが」

 シルヴァが形の良い眉を顰ひそめて言った。腕組みをして馬車に乗っているその表情は、明らかに不機嫌な様子だ。レイシルはグリーントルマリンの瞳を大きく開いて、驚いた様に口を開けた。

「俺が舞い上がってるって? それはそうだろう。100年振りの光の識別者だぞ? 生きている間に会えるなんて思わなかった。貴方だってそう思ったろ!?」

 確かにシルヴァも驚いた。鑑定石の干渉は強くあるのに、鑑定士の誰とも魔力交換ができなかった。あそこにいた鑑定士は、複数の識別を持っているため、現存している識別の種類は全て網羅されていたはずだった。

「光の識別者を保護し、育成するのは国の義務だ。その為に我ら魔法科学省がある。力に飲まれて精神を壊す者や、不当に束縛されて使役されるなどという事が無いように」

 レイシルが真正面からシルヴァを見据えながら言う。

「つまり、これは我が国コレールの問題という事だな」

 暗に、シルヴァには関係無いと言っているようなものだ。





 この男は自分と同じ立場と言われている。

 国王を兄に持つ。……王弟、と。




 シルヴァはいずれ自国に戻る時には臣籍に下る予定でいる。自分の望む研究生活を続けるつもりでいるからだ。今は気ままな王族の一人と言われていることは承知している。王族としての使命を放棄しているとは思っていない。

 しかし、早くから兄王を補佐すると思われていた自分が、他国に行ったきりになっていることを思えば、そう言われても仕方が無い。確かに、背負うモノが無いのが今の自分だ。

 しかし、レイシルは違う。同じ王弟と言われているが、彼には背負うモノがあった。
 レイシルは、魔法科学省の議員で、鑑定士団長、そして王宮神殿の神官長という立場にある。彼は国の要人として外を見ている。

「とにかく、貴方が何を思っているかは別にしても、魔法科学省としては、彼女を保護する必要がある」
「私は突っ走るな、と言っているだけだ」
「そう? ただ私は、彼女をのは困るんだ。光の識別者の最終最大の能力は、癒し効果だからね?」

 そう言うレイシルの顔は魔法科学省の鑑定士団長のものだ。

「まあ、貴方も協力して欲しいな? 魔法術の授業は貴方の担当だし。ダリナスにもいない光の識別者の研究は、良い土産にもなるんじゃない?」  



 まったく喰えないヤツだ。コイツのは無意識で人を診ていると思う。嫌なトコロをくすぐる時があるからだ。

「シュゼットを傷つけるモノから護るというところでは協力する。しかし、彼女の意志を尊重しろ」
「ふうん? ファーストネーム呼びなんだ? 珍しいね貴方がそんなことを言うの。もしかしてシルヴァ、貴方、彼女のこと気に入っているの? あの娘、フェリックスの婚約者候補だよ?」

 無表情でいるシルヴァに、好奇心ありありの顔で聞いてくる。はっきり言って煩うるさい。

「でもさ、エーリックも彼女のこと気にしてたな? 不味いんじゃないか? 仮にも留学先の王子の婚約者候補に横恋慕はさ?」
「レイシル。言い方に気を付けろ。まだ婚約者候補として公にもなっていない。まして、彼らはダリナスでも同じ学院で学んでいたクラスメートだ。親しくしていて何が悪い」

 肩を竦めたレイシルの様子に、肩書の影響は感じられなかった。ただ単に年の近い者への興味らしい。









「どうせなら、婚約者候補なんて辞めさせればいい。全く、当事者からしたら迷惑な話だろうな? 案外、彼女はそれを望んでいるんじゃないか?」



 少し真剣な目をしてシルヴァを見た。





「俺は、婚約者候補とか、側室候補とか、反対だから」







 静かな声でそう言った。彼なりの矜持があるのかもしれない。

「この制度、潰せるなら潰したい。いい機会だ。彼女が望まないのなら、こんな制度は廃止させる」
「出来るのか?」

 はっきり言って、制度には部外者となるシルヴァは、言い切るレイシルに不安を感じる。聞きようによっては不敬罪に当たりそうだから。

「フェリックスの相手に決まったら、宮廷内に囚われる様なものだ。自由に魔法術になど関わることなど無理だ」

 レイシルが唇に指を当てる。考えている時の癖だ。

「とにかく彼女に会って直接話をしないとな。それによって俺のも変わるし」
が変わる?」

 シルヴァの眉がピクンと上がった。

「ああ。だって、天使みたいな女の子じゃないか。もっと近づきたいと思うだろ? 

 そうだった。この男にも婚約者はいなかった。王宮神殿の神官長であっても妻帯できないことは無い。
 寧ろ、高名な魔法術士であれば、その血統を繋ぐことを重要視されているはずだ。

 魔法術は多くの場合、血統に左右される事が多い。シュゼットのようにグリーンフィールド公爵家に初めて発現したような場合は、母方の血統にがあったのかもしれない。グリーンフィールドの魔法術の能力のにぴったり合った今が、発現のタイミングだったのだ。

 シルヴァがダリナスに居たくなかった理由も、これが原因の一つでもあった。有益な婚姻関係。王弟である自分には自由な選択肢は無かった。年の離れた兄王は、シルヴァの気持ちを汲んで、早々に国外に留学させてくれた。幸い兄王の息子は世継ぎもいるため、こちらに来てからはそういった話は聞こえなくなっていた。

 レイシルもきっと同じようなものだと思われた。但し、彼の方は神官長として高位の肩書があるため、縁を結びたい家は多いはずだ。今まで聞いたことは無いが、女性の絡みの話もあるのだろう。

「お前が、そう思うのは勝手だ」
「そう? じゃあ、俺が彼女に近づいても良いってこと? 遠慮しなくて良いってこと?」
「……」
「ああ? でも、エーリックには言っておくか。真面目だからな」
「勝手にしろ。だが、シュゼットを泣かせるようなことは絶対するな」



 シルヴァがそう言うと、レイシルは目を細めて彼を見詰めた。
 グリーントルマリンの瞳が、じっと前に座る男の顔を捉とらえると、答える替わりに深く頷いた。


 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ

弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は今夜を持って破棄させて貰おう!』  学園卒業祝いの夜会の場に、凛と響いた王太子殿下の一声。  その瞬間、私は全てを思い出した。  私が前世ではただの手芸とゲームが好きなインドア派女子大生だったこと。そして、ゲーム世界に転生して尚も趣味は変わらず、ライバルキャラですらないモブになってしまっていたことを。  幼い頃に一度出会ったきりの初恋の彼と学園で再会出来たらなぁ、なんて淡い期待を抱いて通っていたのに、道理で卒業式までなんにも起きなかったわけだ。  ーーなんて、ひとり納得していたら。  何故だが私が悪役令嬢の断罪イベントの目撃者として名指しされ、一気に渦中の人物に!?  更に、王太子以外の男性陣は皆様悪役令嬢に骨抜き。なので自然と私には、彼女の潔白に繋がる証言が求められる。  しかしながら、私は肝心の事件の日の記憶が訳あって曖昧だったので、致し方なく記憶を呼び覚ます治療を受けさせられる羽目に。  タイムリミットは1年間。  その1年間の私への護衛につけられたのは、悪役令嬢に心奪われた初恋の彼でした。

処理中です...