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68. 閑話 編入生が来るって? -1-
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ダリナス王国、テレジア学院。中等部、1年生クラス。
「エーリック様、お聞きになりましたか?」
隣の席から話しかけてきたのは、マラカイト公爵家のセドリックだ。
「何を?」
彼との付き合いは長い。物心ついた時には傍にいた? と思う。
「さっき教員室で聞いてきたのですけど、近々編入生が来るらしいです」
どんな情報かと思えば、そう言う事か。
このテレジア学院は、学力優先で身分や出自、国籍にも拘らずに優秀な人材が集められている。だから、時季外れや、学年に合わない飛び級する者など結構いる。余り珍しいとも思わないけど。
「そうなんだ。入学の時期からは半年遅れか。何か事情があったのかな?」
折角セドリックが教えてくれたのだからと、相槌を打って話を広げる。
「そうですね。僕としたら、やっぱり切磋琢磨できるような、優秀な人材であれば嬉しいですね。エーリック様と僕でいつでもトップを競っていますからね! 変化が欲しいです」
中等部に入学してから行われた試験では、自分とセドリックが大体1位か2位だった。セドリックは勉強好きで、面倒な数式の問題を楽しそうに解いている。それは嬉しそうな顔で。
(ヘンタイだ……)
多分、セドリックが取り組んでいるのは高等部レベルの数学だろう。ニコニコの嬉しそうな顔でいつまでもやっている。
セドリックが言うには、
「数字は世界中で一番簡潔で、一番秀逸なデザインです! 数式は、簡潔で効率的な数式こそが美しいのです!!」
で、とにかく数字と数式に並々ならぬ愛着を感じているらしい。
(変わってる。普通にしていればイイのに)
「ところで、編入生っていうのは男なの? 女の子なの?」
あっ。とセドリックが顔を上げた。
「聞いていませんでした。でも、コレール王国からの編入生みたいです」
「そうか。コレールから……どんな人だろうね?」
普通は、男か女かを聞かないか? 出身はその後だろ? でもまあ、セドリックだし?
「例え、女の子であろうとも僕の辞書には、手加減と言う言葉はありませんからね! エーリック様もそのおつもりでいて下さいね!」
セドリックは鼻息荒くそう言った。
女の子にも容赦しないってことか。そう言えば、セドリックの好きなタイプの女の子ってどんなんだ? 聞いたことも無いけど。
「なあ、セドリックの好きな女の子のタイプって、どういう子なんだ?」
「な、な、何で急にそんなことを聞くのですか?」
「いや、何となく……知らないなぁと思って。そんな話したこと無かったから。ほら、婚約者もいないって言ってたろ?」
「そ、それは!」
何だ? 顔が真っ赤になったぞ。もしかして気になる女の子でもいるのか? もしいるのなら、協力してやるのもやぶさかでは無いけど。もう一押しか? なら質問を変えよう。
「お前の初恋って何時? どんな子だったの? 教えて?」
頬杖をついたまま、セドリックの顔を覗き込んでみた。これ以上無い位に顔が赤いぞ。大丈夫か?
「っはつこいっ!?」
アクアマリンの瞳が真ん丸になって、それからツイっと逸らさせた。でも、頬は真っ赤だし、いや額まで真っ赤になって汗が滲んでいるけど……どうした?
「……ぁぇつ!」
ナニ焦っているんだ?
「い、言えません!! 幾らエーリック殿下でも! それとも、め、命令ですか!?」
物凄い焦り様だ。何でこんなに焦っているんだ。こんな事をいちいち命令するか。
「そんなに言いたくないなら別にいいよ。お前を困らせたいわけでもないしね」
もうこの話は終わりとばかりに、セドリックのアッシュブロンドの髪をくしゃくしゃにかき回した。
「ああうっ! エーリック様! 止めて下さい! もう!!」
頭を押さえて、涙目で見上げてくる。何がそんなに恥ずかしかったのか。
「知っているわよ。セドリックの初恋相手」
いきなりそう言ってきたのは、隣のクラスに在籍している従姉妹のカテリーナだ。
授業が終わって王宮に帰る為、カテリーナと一緒に馬車に乗っている。カテリーナとはクラスが違っているので、今日あった出来事を報告し合っている時に、セドリックとのやり取りを教えた。
「えっ? 何でカテリーナが知っているの?」
「だってセドリックが、初恋に堕ちた瞬間を見ちゃったんですもの。でもね、ソッコー失恋してたわよ?」
思い出すように目を細めている。アーモンド形の釣り目気味の眼が、まるで猫のようだ。
「ナニソレ? 知らないよ? 誰に?」
カテリーナにそう尋ねると、にんまりした笑顔で見詰められた。そして、笑顔のままで却下された。
「本人の知らない所で、エーリックに教えちゃうのはフェアじゃないわ。だからここでは教えなーい。セドリックが良いと言うか、貴方の初恋の事も教えるというのならイイケド? 私、公平な人間なのよ?」
そうか。カテリーナの言うことも尤もだ。とかく暴走しがちな彼女ではあるけど、その判断基準や矜持は正義感に溢れてひどく真っ当な感じなんだ。ただ、色々もう少しだけ、抑えるところを抑えれば良いのだけど。
「そう言う、エーリックはどうなの? 初恋話はイイから、今はどうなの? 気になる方がいらっしゃるのかしら?」
逆質問されて、はたと考えた。
「イナイかも。好きな子って、考えてみたこと無かった」
「やっぱり。エーリックってそんな感じよね? 貴方、余り女の子に興味無さそう」
酷い言われようだ。自分だって可愛い女の子がいればカワイイと思う。綺麗な人を見れば、キレイだと思う。でも、好きかと聞かれると判らない。
「でも、好きなタイプっているでしょう? 髪は金髪が良いとか、瞳は緑がいいとか」
「うーん。その子に合っていれば何でもいいけどな」
そう答えると、カテリーナは思いっきり眉を顰めた。
「エーリックに好きな子が出来たら、どうなるのかしらね? 意外とセドリックと好みが似ていたりして? 貴方達、案外女の子に厳しいと思うわ。ただカワイイ子なんて駄目なタイプだもの」
大人ぶった言い方に、少しだけ感心してしまった。
女の子は、僕等より少し大人になるのが早いのかもしれない。なんて、思った。
「エーリック様、お聞きになりましたか?」
隣の席から話しかけてきたのは、マラカイト公爵家のセドリックだ。
「何を?」
彼との付き合いは長い。物心ついた時には傍にいた? と思う。
「さっき教員室で聞いてきたのですけど、近々編入生が来るらしいです」
どんな情報かと思えば、そう言う事か。
このテレジア学院は、学力優先で身分や出自、国籍にも拘らずに優秀な人材が集められている。だから、時季外れや、学年に合わない飛び級する者など結構いる。余り珍しいとも思わないけど。
「そうなんだ。入学の時期からは半年遅れか。何か事情があったのかな?」
折角セドリックが教えてくれたのだからと、相槌を打って話を広げる。
「そうですね。僕としたら、やっぱり切磋琢磨できるような、優秀な人材であれば嬉しいですね。エーリック様と僕でいつでもトップを競っていますからね! 変化が欲しいです」
中等部に入学してから行われた試験では、自分とセドリックが大体1位か2位だった。セドリックは勉強好きで、面倒な数式の問題を楽しそうに解いている。それは嬉しそうな顔で。
(ヘンタイだ……)
多分、セドリックが取り組んでいるのは高等部レベルの数学だろう。ニコニコの嬉しそうな顔でいつまでもやっている。
セドリックが言うには、
「数字は世界中で一番簡潔で、一番秀逸なデザインです! 数式は、簡潔で効率的な数式こそが美しいのです!!」
で、とにかく数字と数式に並々ならぬ愛着を感じているらしい。
(変わってる。普通にしていればイイのに)
「ところで、編入生っていうのは男なの? 女の子なの?」
あっ。とセドリックが顔を上げた。
「聞いていませんでした。でも、コレール王国からの編入生みたいです」
「そうか。コレールから……どんな人だろうね?」
普通は、男か女かを聞かないか? 出身はその後だろ? でもまあ、セドリックだし?
「例え、女の子であろうとも僕の辞書には、手加減と言う言葉はありませんからね! エーリック様もそのおつもりでいて下さいね!」
セドリックは鼻息荒くそう言った。
女の子にも容赦しないってことか。そう言えば、セドリックの好きなタイプの女の子ってどんなんだ? 聞いたことも無いけど。
「なあ、セドリックの好きな女の子のタイプって、どういう子なんだ?」
「な、な、何で急にそんなことを聞くのですか?」
「いや、何となく……知らないなぁと思って。そんな話したこと無かったから。ほら、婚約者もいないって言ってたろ?」
「そ、それは!」
何だ? 顔が真っ赤になったぞ。もしかして気になる女の子でもいるのか? もしいるのなら、協力してやるのもやぶさかでは無いけど。もう一押しか? なら質問を変えよう。
「お前の初恋って何時? どんな子だったの? 教えて?」
頬杖をついたまま、セドリックの顔を覗き込んでみた。これ以上無い位に顔が赤いぞ。大丈夫か?
「っはつこいっ!?」
アクアマリンの瞳が真ん丸になって、それからツイっと逸らさせた。でも、頬は真っ赤だし、いや額まで真っ赤になって汗が滲んでいるけど……どうした?
「……ぁぇつ!」
ナニ焦っているんだ?
「い、言えません!! 幾らエーリック殿下でも! それとも、め、命令ですか!?」
物凄い焦り様だ。何でこんなに焦っているんだ。こんな事をいちいち命令するか。
「そんなに言いたくないなら別にいいよ。お前を困らせたいわけでもないしね」
もうこの話は終わりとばかりに、セドリックのアッシュブロンドの髪をくしゃくしゃにかき回した。
「ああうっ! エーリック様! 止めて下さい! もう!!」
頭を押さえて、涙目で見上げてくる。何がそんなに恥ずかしかったのか。
「知っているわよ。セドリックの初恋相手」
いきなりそう言ってきたのは、隣のクラスに在籍している従姉妹のカテリーナだ。
授業が終わって王宮に帰る為、カテリーナと一緒に馬車に乗っている。カテリーナとはクラスが違っているので、今日あった出来事を報告し合っている時に、セドリックとのやり取りを教えた。
「えっ? 何でカテリーナが知っているの?」
「だってセドリックが、初恋に堕ちた瞬間を見ちゃったんですもの。でもね、ソッコー失恋してたわよ?」
思い出すように目を細めている。アーモンド形の釣り目気味の眼が、まるで猫のようだ。
「ナニソレ? 知らないよ? 誰に?」
カテリーナにそう尋ねると、にんまりした笑顔で見詰められた。そして、笑顔のままで却下された。
「本人の知らない所で、エーリックに教えちゃうのはフェアじゃないわ。だからここでは教えなーい。セドリックが良いと言うか、貴方の初恋の事も教えるというのならイイケド? 私、公平な人間なのよ?」
そうか。カテリーナの言うことも尤もだ。とかく暴走しがちな彼女ではあるけど、その判断基準や矜持は正義感に溢れてひどく真っ当な感じなんだ。ただ、色々もう少しだけ、抑えるところを抑えれば良いのだけど。
「そう言う、エーリックはどうなの? 初恋話はイイから、今はどうなの? 気になる方がいらっしゃるのかしら?」
逆質問されて、はたと考えた。
「イナイかも。好きな子って、考えてみたこと無かった」
「やっぱり。エーリックってそんな感じよね? 貴方、余り女の子に興味無さそう」
酷い言われようだ。自分だって可愛い女の子がいればカワイイと思う。綺麗な人を見れば、キレイだと思う。でも、好きかと聞かれると判らない。
「でも、好きなタイプっているでしょう? 髪は金髪が良いとか、瞳は緑がいいとか」
「うーん。その子に合っていれば何でもいいけどな」
そう答えると、カテリーナは思いっきり眉を顰めた。
「エーリックに好きな子が出来たら、どうなるのかしらね? 意外とセドリックと好みが似ていたりして? 貴方達、案外女の子に厳しいと思うわ。ただカワイイ子なんて駄目なタイプだもの」
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