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ある日、伯爵令嬢のデルフィーヌは、前世の自分が養豚場を営むおっさんだったことを思い出した。 (あああぁあ……。むしろ、今のわたしの記憶を持
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自分の前世が、ブランド豚を扱う養豚農家のおっさんであったことを思い出したとき、アルナルディ伯爵令嬢デルフィーヌは十八歳だった。
そのきっかけは、といえば、彼女の婚約者が決まったことだろうか。
貴族の婚姻に、当人同士の意思がまるで反映されないなどよくあることだ。
デルフィーヌ自身、そんなことは重々承知していたし、両親から愛されていることも充分知っていたため、特に不安を抱くこともなく、顔も知らない相手との婚約をあっさりと受け入れた。
婚約者は、ミュレル侯爵家の嫡男フェリクス・ミュレル。一歳年下の十七歳だという。
貴族の子女が通う聖マリオン学園の後輩らしい。
もっとも、武門貴族の娘であるデルフィーヌは騎士科の学生で、代々優秀な文官を輩出してきたミュレル侯爵家のフェリクスは普通科であったため、まるで接点というものはなかった。
縁談をまとめてきた父が、にこにこと笑いながらデルフィーヌに言う。
「おまえの剣の腕前も、魔術の練度も、どこに出しても恥ずかしくない立派なものだ。フェリクスくんは幼い頃から、少々体が弱かったようでな。そんな彼を支えるために、美しいだけでなく強く立派な令嬢を妻に迎えたい、と懇願されてしまったのだよ」
まあまあ、と母が嬉しそうに顔を綻ばせる。
「それはそれは……。さきさまは、デルフィーヌの勇ましく逞しく図太いところを見初めてくださったのですね。なんてありがたいお話でしょう」
「お母さま。図太いはよけいですわ」
思わず半目になってツッコんでしまったけれど、話の通りであれば、たしかにバランスの取れた縁組かもしれない。
貴族の家に生まれた娘にとって、結婚相手は基本的に親が決めるものなのだ。その相手が、十も二十も年の離れた男性でなかったことは、ありがたいと思うべきなのだろう――と考えながら眠ったのがよくなかったのだろうか。
次の朝目覚めたとき、デルフィーヌの頭の中には前世のおっさんだった頃の記憶が、頼んでもいないのに「ハァイ」と甦っていたのである。
そのとき、混乱しながらも彼女が思ったのは、「この記憶が甦ったのが、思春期真っ只中のときじゃなくて本当によかった……!」だった。
学生の身分であるとはいえ、ギリギリ成人年齢に達しているデルフィーヌは、基本的に男所帯である騎士科に在籍していることもあり、もはや男性に対してふわふわとした夢を見ることはない。
幼い頃にはどれほど無垢で天使のような美少年であっても、十四、五歳にもなれば色っぽい女性の静止画を収めた雑誌を回し読みするようになるし、胸派か尻派か、はたまた太腿派かで、大いに盛り上がるようになるものなのだ。
むしろ、ごく平凡なニッポンのおっさんであった身からすれば、この世界の青少年たちはびっくりするほど紳士的である。
女性のいる場で粗野な振る舞いをすることはないし、声を荒らげることはない。婚約者がいればエスコートは当たり前、折に触れて美しい花やちょっとした装飾品を贈るなど、パートナーに対する気遣いを当然のようにしてしまう。
すごい。本当に、すごい。
前世の自分が愛した女性に、土下座で謝りたいくらいにすごい。
もちろん、彼女のことは心から愛していたし、できる限り大切にしていた。
だが、美味しい豚の飼育に人生を捧げていたおっさんは、よく言えば大らかで楽天的、悪く言えば大雑把で無神経と、周囲の人間から口を揃えて言われていたのである。
妻に対してかなり無神経なことをしていたし、ニッポンジン特有の恥の文化を背負ってもいたため、愛情表現なんてものも滅多にしたことはなかった。
――今ならわかる。
おっさんの妻が疲れた顔で「ちょっと聞いてよー」というときは、本当にただ話を聞いてほしいだけだったのだと。
脳筋なおっさんのよけいなアドバイスなんぞ、それこそよけいなお世話だったのだ。
弱気になった彼女が夫に対して求めていたのは、共感とよりそい。そして、小さな労い。
ただそれだけであったのだと。
(あああぁあ……。むしろ、今のわたしの記憶を持ったまま、おっさんの人生をやり直したい……。おっさんの奥方が、年子の三兄弟の育児でノイローゼになりかけていたとき、もっと全力でお助けして差し上げたい……!)
衝撃のあまり、若干わけのわからないことを考えてしまったデルフィーヌだったが、幸いなことに今の彼女は十八歳。
すでに『デルフィーヌ・アルナルディ』という人格がしっかり確立した状態であったため、前世がおっさんであった記憶に侵蝕されることもなく、以前と同じ日々を送っている。
……学園の男子学生たちが、パートナーへの贈り物に頭を悩ませている姿を見るたび、「女の子のために、そんなに悩めるキミは本当にすごいよ! 尊敬しちゃうッ!」というおっさんの感動する声が聞こえるようになったのは、きっと気のせいだろう。
だが、父から婚約者について教えられてから、一週間後。
先方の屋敷でのはじめての顔合わせのあと、お決まりの『あとは若いおふたりで』と立派な庭園を散策することになった際に、それは起こった。
「……デルフィーヌ嬢。僕はあなたに、謝罪しなければなりません」
「はい?」
顔合わせの間、ほとんど口を開かなかった婚約者――フェリクスは、ひょろりと背ばかりが高くなったような、薄く頼りない体つきの少年だった。
手足は充分すぎるほど長いのに、いつも自信なさげな猫背になっているため、どうにも風采がぱっとしないのだ。あまり手入れされていなさそうな黒髪が中途半端に伸びているせいで、その顔立ちも判然としない。
前髪の隙間から見える瞳は、父の侯爵とよく似た新緑だろうか。
首を傾げて見上げるデルフィーヌに、彼はその瞳を歪めて言った。
「僕は……あなたを妻としてお迎えしても、あなたを愛せることは、ないと思います」
ひどく辛そうな声でそんなことを言われ、デルフィーヌは思わず目を瞬かせる。
少し考え、彼女は問うた。
「それは、もしや……ほかに好いた女性がいらっしゃるから、わたしのことを妻と認めるつもりはない、ということでございますか?」
最近、巷に溢れている物語にそんなシーンがあったな、と思いながら尋ねてみると、フェリクスはぽかんと口を開いたあと、ぶんぶんと勢いよく首を横に振る。
「そ、そんな、僕なんかが女性をお慕いするだなんて、そんなことあるわけありません……!」
まるで怯えた子どものような反応に、デルフィーヌはますます面食らった。
(ミュレル侯爵家の嫡男ともあろう方が、『僕なんか』だなんて……)
この体の細さから見ても、彼の体があまり頑健ではないのはおそらく事実なのだろう。
しかし、ミュレル侯爵家といえば、先々代の当主が宰相を務めたこともある名家だ。そして、当代当主の嫡子はフェリクスだけ。彼は、侯爵家の所有する広大な領地と莫大な資産、そして権力のすべてを、いずれ必ず手に入れる少年なのである。
条件だけを見るならば、彼は間違いなく最上級の結婚相手だ。
いくら本人が装いに無頓着なタイプであろうと、彼と懇意になりたい人間など男女を問わずいくらでも寄ってくるに違いない。
しかし今、きゅっと唇を噛みしめて両手の指を握りしめている彼は、十七歳という年齢よりもずっと幼い子どもに見える。
デルフィーヌは、ここはゆっくりと詳しい事情を聞いてみるべきだろうと判断した。
「フェリクスさま。あちらの四阿で、少しお話をいたしませんか? わたしは、あなたの婚約者なのですもの。何かご事情があるのでしたら、お聞かせいただければ嬉しく思います」
できるだけ柔らかな声でそう言うと、フェリクスは体を震わせたあと、小さく頷く。
よく手入れされた四阿に設えられていたベンチに、並んで腰掛ける。
落ち着かなく何度も両手を組み替えた彼は、やがて掠れた声で口を開いた。
「僕が、この家の唯一の嫡子であることは、デルフィーヌさんもご存じかと思います。ですが……僕には、姉と妹と弟が、合わせて四人いるんです」
「……四人?」
思わず復唱したデルフィーヌに、フェリクスは頷く。
「僕の両親には、結婚前からそれぞれ好きあった相手がいたんです。父の愛人が産んだのは、姉がひとりと妹がふたり。そして母は、弟――愛人の息子をひとり産んでいます。……だから、なのでしょうね。僕は物心ついたときから、先日あなたとの婚約を命じられるまで、両親と言葉を交わしたことが一度もなかったんです」
「そんな……」
デルフィーヌは、絶句した。
政略結婚で結ばれた貴族の夫婦が、それぞれ愛人を抱えることは、決して珍しいことではないのだ。後継者を確保したうえで、愛する相手との子どもを望むことだって、よくあることかもしれない。
しかしそれは、嫡男を蔑ろにしていい理由には、決してならないはずである。
「……もし、父の愛人の産んだ誰かが男子であれば、僕は適当な理由をつけて廃嫡されていたと思います。昔、僕を育ててくれた執事が、そんなことが許されるわけがないと、父を強く諫めていたので」
(はぁあー!?)
淑女らしからぬ裏返った大声を出しそうになり、デルフィーヌは慌てて口を噤む。
れっきとした嫡男であるフェリクスをもうけておきながら、それでもなお愛人の子に後を継がせようとするなど、貴族家の当主にあるまじき愚かしさだ。
デルフィーヌの脳内で、しょんぼりしたおっさんが「そんなに愛人が好きなら、最初からそっちと結婚すればいいじゃんかよぅ……。この坊主が可哀相過ぎるじゃねーかぁ……」と涙を拭っている。心の底から、全面的に同意だ。
俯いたフェリクスの握りしめた手に力が入り、ますます白くなる。
「それで、その……たまに父が、愛人と娘たちを連れて、屋敷に戻ってくることがあるのですけれど……。そういうときは、僕は彼らの団らんの邪魔にならないよう、自室から出ることを許されないものですから」
すみません、と言うフェリクスの手に、雫が落ちた。
「僕……夫婦関係とか、家族や女性を愛する気持ちとか……。そういうものが、本当にわからないんです」
(あああぁああっっ!! そりゃあそうですわよね! そんなろくでもない家庭環境で、むしろ対人恐怖症に陥っていないあなたというか、おそらくあなたを養育されていたのだろう使用人の方々が凄すぎますわね!?)
本当に、よくもまあこれほど劣悪な家庭環境で、同年代の女性も多く在籍している学園に通える程度の、まっとうな人間性を身につけられたものだ。
そもそも、正式な婚姻関係にない愛人とその子どもたちを、貴族家の本邸に入れるなど非常識にもほどがある。
本来ならば、そんな暴挙を断じて許さないのが本妻の役目なのだろうが、その本妻もまた愛人と別の家庭を築いている。こうなると、未成年のフェリクスは黙って従うしか道がない。
「だから……あなたのような、素敵な女性が……こんな僕の婚約者にされてしまったことが、本当に申し訳なくて。あなたなら、どんな立派な家にでも嫁ぐことができるのでしょうに……」
「過分な評価はありがたく存じますが、フェリクスさま。わたしはあなたとのご縁を、大変嬉しく思っておりますわ」
グスグスと泣きながらのフェリクスの言葉を、スパッと切り返す。デルフィーヌは、己の判断の早さを自画自賛しつつ、にっこりと彼に笑ってみせた。
自分が前世のような脳筋マッチョなおっさんであれば、問答無用で抱きしめて頭をぐりんぐりんに撫で回してやったところだが、今の自分がそれをやってはただの痴女である。世知辛い。
だが、ここは断じて迷ってはいけない場面だ。
乙女の直感と、おっさんの勘がそう言っている。
「フェリクスさまは、とても誠実でお優しい方ですのね。家同士の関係で、勝手に定められた婚約者であるわたしにまで、これほどお気遣いくださるのですもの。本当に口にしにくいことでしたでしょうに、ご家族のことを語ってくださったこと、心から感謝いたします。ありがとうございます、フェリクスさま」
「え……いえ、僕は……」
すっと立ち上がったデルフィーヌは、何か言いかけたフェリクスの前に膝をつき、涙に濡れた彼の手に自分のそれを重ねた。
「ねえ、フェリクスさま。わたしたちは、今日はじめてお会いしたのですもの。まずは、お互いのことをよく知って、お友達になることからはじめませんか?」
「お友達……?」
幼い口調で繰り返す彼に、笑って頷く。
「ええ。わたしも、貴族の娘です。親の定めた婚約者に愛されない覚悟など、とうにしておりますもの。あなたに、無理に愛していただきたいなどとは申しません。ですが、これだけはお約束いたします」
彼の手に重ねた指に、そっと力をこめる。
「わたしは今後何があろうと、あなたを裏切るような真似はいたしません。実はわたし、大変面倒くさがりな質ですの。あなたという婚約者を得ておきながら、ほかの殿方に目を向けるような面倒な真似など、心の底から御免被りますわ」
面倒、と呟くフェリクスに、デルフィーヌはにこりとほほえむ。
(まあ、本当のところは面倒というか、わたしの中のおっさんが「俺はゲイじゃないんよ……」としょんぼりしているだけなのですけれど。フェリクスさまが女性を愛せないということでしたら、侯爵家の縁戚の子どもを養子にすればいいことですし。……あら、これってものすごくWin-Winな関係ではないかしら?)
今の彼女は、華やかな金茶色の髪に澄み切った青空を映した瞳の、大抵の人間に美しいと褒めてもらえる容姿をしている。
だがなんというかこう、将来フェリクスと結婚することになったときに、脳内のおっさんが「え……俺が、坊主に抱かれるの? それ、犯罪じゃね?」と、蒼白になってガクブルし出す未来しか見えないのだ。
幸い、今のデルフィーヌには、数え切れないほどの豚と、三人もの男の子を育て上げたおっさんの記憶がある。
将来迎えるだろう養子だけでなく、今目の前で泣いている少年だって、立派に育ててみせようではないか。
気合いを入れ直したデルフィーヌは、できるだけゆっくりとフェリクスに言う。
「愛情を無理矢理構築することは不可能ですが、信頼関係は互いの努力と歩み寄りで必ず築くことができるはずです。――フェリクスさま。本当に、少しずつで構いませんの。婚約者としてでなくとも構いません。わたしに……デルフィーヌ・アルナルディという人間に、歩み寄るお気持ちには、なっていただけませんでしょうか?」
その問いかけに、フェリクスが答えを返してくるまで、少しの時間が必要だった。
やがてゆるゆると瞬きをした彼が、ぎこちなく頷いてくれる。
「……はい。よろしくお願い、いたします。デルフィーヌさん」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします。フェリクスさま」
それからというもの、デルフィーヌは徹底的にフェリクスを構い倒した。
今まで食事を美味しいと思ったことがない、という彼のために、食べやすさを最優先にしたサンドイッチからはじめて餌付け――ではなく、手作りのランチボックスで昼食をともにする。
少しずつ食べられる量が増えていき、前世の知識を活用しまくった美味しい豚肉料理を、フェリクスが目を輝かせて食べてくれたときには、密かに完全勝利のポーズを決めたものだ。
また、ろくに運動をしたことがなかった彼のために、騎士科の友人たちに相談して無理のないトレーニングメニューを作成し、放課後毎日のようにそれに付き合う。
自宅で頑張って自主トレをしすぎたために、筋肉痛になってしまった彼が泣きそうな顔になっていたときは、美味しいお菓子で甘やかした。
トレーニングと並行して姿勢の悪さを矯正し、流行のヘアサロンでボサボサだった髪をさっぱりと整えてもらったときには、「え……なにこの坊ちゃん、こんな美少年だったの!? どんな勝ち組だよ羨ましい!」と脳内のおっさんが絶叫していたものだ。
そんなこんなで、半年後。
デルフィーヌとおっさんが手塩に掛けて育てたフェリクスは、どこに出しても恥ずかしくない、立派な細マッチョ――もとい、爽やか系美少年になっていた。
元々高かった身長にバランスよく筋肉がつき、非常に見栄えがよくなっている。
青白かった肌は健康的に日焼けして、何よりその顔に浮かぶ明るい表情が、以前とはまるで別人のようだ。
「おはようございます、デルフィーヌさん! あの、お好きだと伺った舞台のチケットが手に入ったのですけれど、次の休みにご一緒していただけますか?」
「おはようございます、フェリクスさま。ありがとうございます。とても嬉しいですわ、ぜひご一緒させてくださいませ」
デルフィーヌの姿を見つけるなり、全力で尻尾を振った仔犬のように飛んでくるフェリクスを、周囲の人々もとてもほほえましく眺めている。
彼と並んで歩きながら、デルフィーヌは密かにぐっと拳を握った。
(なんっっって、可愛らしいのでしょう! みなさま、見てくださいませ! うちのフェリクスさまが、こんなに可愛いのですわー!)
なんという素晴らしきビフォーアフター。
元々しっかりした骨格をしているとは思っていたが、ここまで立派に育ってくれるとは実に感無量である。
やはり、栄養バランスのとれた食事と適度な運動、そして充分な睡眠時間の確保は、青少年の育成には欠かせない。
前世のおっさんは、自分の息子たちについてはかなりの放任主義だったが、豚の飼育には間違いなく真剣に取り組んでいた。
イタリアブランド豚の養豚場へ視察に行ったときには、ドングリを与えた豚の美味しさに感動し、それを自分の農場でも再現できないか試行錯誤していたものである。
残念ながら、ドングリを継続的に収集するにはクマ対策などの問題もあり諦めるしかなかったが、幸い今のデルフィーヌは、未来の侯爵夫人。
領内の養豚場で、前世ではできなかったことをいろいろ試してみたいものだ。
(養子についても、侯爵家の縁戚でしたら、もしかしたらフェリクスさまに似た可愛らしい子どもをお迎えできるかもしれないですわね! とてもとても楽しみですわ!)
十七歳のフェリクスを育てるのも楽しかったが、幼い子どもを育てる楽しみというのは、また別の喜びがあるだろう。
そんな薔薇色の未来を思い描いているデルフィーヌに、随分前からフェリクスが熱のこもった視線を向けるようになっているのだが――そのことに気付いていないのは、本人ばかりなのであった。
そのきっかけは、といえば、彼女の婚約者が決まったことだろうか。
貴族の婚姻に、当人同士の意思がまるで反映されないなどよくあることだ。
デルフィーヌ自身、そんなことは重々承知していたし、両親から愛されていることも充分知っていたため、特に不安を抱くこともなく、顔も知らない相手との婚約をあっさりと受け入れた。
婚約者は、ミュレル侯爵家の嫡男フェリクス・ミュレル。一歳年下の十七歳だという。
貴族の子女が通う聖マリオン学園の後輩らしい。
もっとも、武門貴族の娘であるデルフィーヌは騎士科の学生で、代々優秀な文官を輩出してきたミュレル侯爵家のフェリクスは普通科であったため、まるで接点というものはなかった。
縁談をまとめてきた父が、にこにこと笑いながらデルフィーヌに言う。
「おまえの剣の腕前も、魔術の練度も、どこに出しても恥ずかしくない立派なものだ。フェリクスくんは幼い頃から、少々体が弱かったようでな。そんな彼を支えるために、美しいだけでなく強く立派な令嬢を妻に迎えたい、と懇願されてしまったのだよ」
まあまあ、と母が嬉しそうに顔を綻ばせる。
「それはそれは……。さきさまは、デルフィーヌの勇ましく逞しく図太いところを見初めてくださったのですね。なんてありがたいお話でしょう」
「お母さま。図太いはよけいですわ」
思わず半目になってツッコんでしまったけれど、話の通りであれば、たしかにバランスの取れた縁組かもしれない。
貴族の家に生まれた娘にとって、結婚相手は基本的に親が決めるものなのだ。その相手が、十も二十も年の離れた男性でなかったことは、ありがたいと思うべきなのだろう――と考えながら眠ったのがよくなかったのだろうか。
次の朝目覚めたとき、デルフィーヌの頭の中には前世のおっさんだった頃の記憶が、頼んでもいないのに「ハァイ」と甦っていたのである。
そのとき、混乱しながらも彼女が思ったのは、「この記憶が甦ったのが、思春期真っ只中のときじゃなくて本当によかった……!」だった。
学生の身分であるとはいえ、ギリギリ成人年齢に達しているデルフィーヌは、基本的に男所帯である騎士科に在籍していることもあり、もはや男性に対してふわふわとした夢を見ることはない。
幼い頃にはどれほど無垢で天使のような美少年であっても、十四、五歳にもなれば色っぽい女性の静止画を収めた雑誌を回し読みするようになるし、胸派か尻派か、はたまた太腿派かで、大いに盛り上がるようになるものなのだ。
むしろ、ごく平凡なニッポンのおっさんであった身からすれば、この世界の青少年たちはびっくりするほど紳士的である。
女性のいる場で粗野な振る舞いをすることはないし、声を荒らげることはない。婚約者がいればエスコートは当たり前、折に触れて美しい花やちょっとした装飾品を贈るなど、パートナーに対する気遣いを当然のようにしてしまう。
すごい。本当に、すごい。
前世の自分が愛した女性に、土下座で謝りたいくらいにすごい。
もちろん、彼女のことは心から愛していたし、できる限り大切にしていた。
だが、美味しい豚の飼育に人生を捧げていたおっさんは、よく言えば大らかで楽天的、悪く言えば大雑把で無神経と、周囲の人間から口を揃えて言われていたのである。
妻に対してかなり無神経なことをしていたし、ニッポンジン特有の恥の文化を背負ってもいたため、愛情表現なんてものも滅多にしたことはなかった。
――今ならわかる。
おっさんの妻が疲れた顔で「ちょっと聞いてよー」というときは、本当にただ話を聞いてほしいだけだったのだと。
脳筋なおっさんのよけいなアドバイスなんぞ、それこそよけいなお世話だったのだ。
弱気になった彼女が夫に対して求めていたのは、共感とよりそい。そして、小さな労い。
ただそれだけであったのだと。
(あああぁあ……。むしろ、今のわたしの記憶を持ったまま、おっさんの人生をやり直したい……。おっさんの奥方が、年子の三兄弟の育児でノイローゼになりかけていたとき、もっと全力でお助けして差し上げたい……!)
衝撃のあまり、若干わけのわからないことを考えてしまったデルフィーヌだったが、幸いなことに今の彼女は十八歳。
すでに『デルフィーヌ・アルナルディ』という人格がしっかり確立した状態であったため、前世がおっさんであった記憶に侵蝕されることもなく、以前と同じ日々を送っている。
……学園の男子学生たちが、パートナーへの贈り物に頭を悩ませている姿を見るたび、「女の子のために、そんなに悩めるキミは本当にすごいよ! 尊敬しちゃうッ!」というおっさんの感動する声が聞こえるようになったのは、きっと気のせいだろう。
だが、父から婚約者について教えられてから、一週間後。
先方の屋敷でのはじめての顔合わせのあと、お決まりの『あとは若いおふたりで』と立派な庭園を散策することになった際に、それは起こった。
「……デルフィーヌ嬢。僕はあなたに、謝罪しなければなりません」
「はい?」
顔合わせの間、ほとんど口を開かなかった婚約者――フェリクスは、ひょろりと背ばかりが高くなったような、薄く頼りない体つきの少年だった。
手足は充分すぎるほど長いのに、いつも自信なさげな猫背になっているため、どうにも風采がぱっとしないのだ。あまり手入れされていなさそうな黒髪が中途半端に伸びているせいで、その顔立ちも判然としない。
前髪の隙間から見える瞳は、父の侯爵とよく似た新緑だろうか。
首を傾げて見上げるデルフィーヌに、彼はその瞳を歪めて言った。
「僕は……あなたを妻としてお迎えしても、あなたを愛せることは、ないと思います」
ひどく辛そうな声でそんなことを言われ、デルフィーヌは思わず目を瞬かせる。
少し考え、彼女は問うた。
「それは、もしや……ほかに好いた女性がいらっしゃるから、わたしのことを妻と認めるつもりはない、ということでございますか?」
最近、巷に溢れている物語にそんなシーンがあったな、と思いながら尋ねてみると、フェリクスはぽかんと口を開いたあと、ぶんぶんと勢いよく首を横に振る。
「そ、そんな、僕なんかが女性をお慕いするだなんて、そんなことあるわけありません……!」
まるで怯えた子どものような反応に、デルフィーヌはますます面食らった。
(ミュレル侯爵家の嫡男ともあろう方が、『僕なんか』だなんて……)
この体の細さから見ても、彼の体があまり頑健ではないのはおそらく事実なのだろう。
しかし、ミュレル侯爵家といえば、先々代の当主が宰相を務めたこともある名家だ。そして、当代当主の嫡子はフェリクスだけ。彼は、侯爵家の所有する広大な領地と莫大な資産、そして権力のすべてを、いずれ必ず手に入れる少年なのである。
条件だけを見るならば、彼は間違いなく最上級の結婚相手だ。
いくら本人が装いに無頓着なタイプであろうと、彼と懇意になりたい人間など男女を問わずいくらでも寄ってくるに違いない。
しかし今、きゅっと唇を噛みしめて両手の指を握りしめている彼は、十七歳という年齢よりもずっと幼い子どもに見える。
デルフィーヌは、ここはゆっくりと詳しい事情を聞いてみるべきだろうと判断した。
「フェリクスさま。あちらの四阿で、少しお話をいたしませんか? わたしは、あなたの婚約者なのですもの。何かご事情があるのでしたら、お聞かせいただければ嬉しく思います」
できるだけ柔らかな声でそう言うと、フェリクスは体を震わせたあと、小さく頷く。
よく手入れされた四阿に設えられていたベンチに、並んで腰掛ける。
落ち着かなく何度も両手を組み替えた彼は、やがて掠れた声で口を開いた。
「僕が、この家の唯一の嫡子であることは、デルフィーヌさんもご存じかと思います。ですが……僕には、姉と妹と弟が、合わせて四人いるんです」
「……四人?」
思わず復唱したデルフィーヌに、フェリクスは頷く。
「僕の両親には、結婚前からそれぞれ好きあった相手がいたんです。父の愛人が産んだのは、姉がひとりと妹がふたり。そして母は、弟――愛人の息子をひとり産んでいます。……だから、なのでしょうね。僕は物心ついたときから、先日あなたとの婚約を命じられるまで、両親と言葉を交わしたことが一度もなかったんです」
「そんな……」
デルフィーヌは、絶句した。
政略結婚で結ばれた貴族の夫婦が、それぞれ愛人を抱えることは、決して珍しいことではないのだ。後継者を確保したうえで、愛する相手との子どもを望むことだって、よくあることかもしれない。
しかしそれは、嫡男を蔑ろにしていい理由には、決してならないはずである。
「……もし、父の愛人の産んだ誰かが男子であれば、僕は適当な理由をつけて廃嫡されていたと思います。昔、僕を育ててくれた執事が、そんなことが許されるわけがないと、父を強く諫めていたので」
(はぁあー!?)
淑女らしからぬ裏返った大声を出しそうになり、デルフィーヌは慌てて口を噤む。
れっきとした嫡男であるフェリクスをもうけておきながら、それでもなお愛人の子に後を継がせようとするなど、貴族家の当主にあるまじき愚かしさだ。
デルフィーヌの脳内で、しょんぼりしたおっさんが「そんなに愛人が好きなら、最初からそっちと結婚すればいいじゃんかよぅ……。この坊主が可哀相過ぎるじゃねーかぁ……」と涙を拭っている。心の底から、全面的に同意だ。
俯いたフェリクスの握りしめた手に力が入り、ますます白くなる。
「それで、その……たまに父が、愛人と娘たちを連れて、屋敷に戻ってくることがあるのですけれど……。そういうときは、僕は彼らの団らんの邪魔にならないよう、自室から出ることを許されないものですから」
すみません、と言うフェリクスの手に、雫が落ちた。
「僕……夫婦関係とか、家族や女性を愛する気持ちとか……。そういうものが、本当にわからないんです」
(あああぁああっっ!! そりゃあそうですわよね! そんなろくでもない家庭環境で、むしろ対人恐怖症に陥っていないあなたというか、おそらくあなたを養育されていたのだろう使用人の方々が凄すぎますわね!?)
本当に、よくもまあこれほど劣悪な家庭環境で、同年代の女性も多く在籍している学園に通える程度の、まっとうな人間性を身につけられたものだ。
そもそも、正式な婚姻関係にない愛人とその子どもたちを、貴族家の本邸に入れるなど非常識にもほどがある。
本来ならば、そんな暴挙を断じて許さないのが本妻の役目なのだろうが、その本妻もまた愛人と別の家庭を築いている。こうなると、未成年のフェリクスは黙って従うしか道がない。
「だから……あなたのような、素敵な女性が……こんな僕の婚約者にされてしまったことが、本当に申し訳なくて。あなたなら、どんな立派な家にでも嫁ぐことができるのでしょうに……」
「過分な評価はありがたく存じますが、フェリクスさま。わたしはあなたとのご縁を、大変嬉しく思っておりますわ」
グスグスと泣きながらのフェリクスの言葉を、スパッと切り返す。デルフィーヌは、己の判断の早さを自画自賛しつつ、にっこりと彼に笑ってみせた。
自分が前世のような脳筋マッチョなおっさんであれば、問答無用で抱きしめて頭をぐりんぐりんに撫で回してやったところだが、今の自分がそれをやってはただの痴女である。世知辛い。
だが、ここは断じて迷ってはいけない場面だ。
乙女の直感と、おっさんの勘がそう言っている。
「フェリクスさまは、とても誠実でお優しい方ですのね。家同士の関係で、勝手に定められた婚約者であるわたしにまで、これほどお気遣いくださるのですもの。本当に口にしにくいことでしたでしょうに、ご家族のことを語ってくださったこと、心から感謝いたします。ありがとうございます、フェリクスさま」
「え……いえ、僕は……」
すっと立ち上がったデルフィーヌは、何か言いかけたフェリクスの前に膝をつき、涙に濡れた彼の手に自分のそれを重ねた。
「ねえ、フェリクスさま。わたしたちは、今日はじめてお会いしたのですもの。まずは、お互いのことをよく知って、お友達になることからはじめませんか?」
「お友達……?」
幼い口調で繰り返す彼に、笑って頷く。
「ええ。わたしも、貴族の娘です。親の定めた婚約者に愛されない覚悟など、とうにしておりますもの。あなたに、無理に愛していただきたいなどとは申しません。ですが、これだけはお約束いたします」
彼の手に重ねた指に、そっと力をこめる。
「わたしは今後何があろうと、あなたを裏切るような真似はいたしません。実はわたし、大変面倒くさがりな質ですの。あなたという婚約者を得ておきながら、ほかの殿方に目を向けるような面倒な真似など、心の底から御免被りますわ」
面倒、と呟くフェリクスに、デルフィーヌはにこりとほほえむ。
(まあ、本当のところは面倒というか、わたしの中のおっさんが「俺はゲイじゃないんよ……」としょんぼりしているだけなのですけれど。フェリクスさまが女性を愛せないということでしたら、侯爵家の縁戚の子どもを養子にすればいいことですし。……あら、これってものすごくWin-Winな関係ではないかしら?)
今の彼女は、華やかな金茶色の髪に澄み切った青空を映した瞳の、大抵の人間に美しいと褒めてもらえる容姿をしている。
だがなんというかこう、将来フェリクスと結婚することになったときに、脳内のおっさんが「え……俺が、坊主に抱かれるの? それ、犯罪じゃね?」と、蒼白になってガクブルし出す未来しか見えないのだ。
幸い、今のデルフィーヌには、数え切れないほどの豚と、三人もの男の子を育て上げたおっさんの記憶がある。
将来迎えるだろう養子だけでなく、今目の前で泣いている少年だって、立派に育ててみせようではないか。
気合いを入れ直したデルフィーヌは、できるだけゆっくりとフェリクスに言う。
「愛情を無理矢理構築することは不可能ですが、信頼関係は互いの努力と歩み寄りで必ず築くことができるはずです。――フェリクスさま。本当に、少しずつで構いませんの。婚約者としてでなくとも構いません。わたしに……デルフィーヌ・アルナルディという人間に、歩み寄るお気持ちには、なっていただけませんでしょうか?」
その問いかけに、フェリクスが答えを返してくるまで、少しの時間が必要だった。
やがてゆるゆると瞬きをした彼が、ぎこちなく頷いてくれる。
「……はい。よろしくお願い、いたします。デルフィーヌさん」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします。フェリクスさま」
それからというもの、デルフィーヌは徹底的にフェリクスを構い倒した。
今まで食事を美味しいと思ったことがない、という彼のために、食べやすさを最優先にしたサンドイッチからはじめて餌付け――ではなく、手作りのランチボックスで昼食をともにする。
少しずつ食べられる量が増えていき、前世の知識を活用しまくった美味しい豚肉料理を、フェリクスが目を輝かせて食べてくれたときには、密かに完全勝利のポーズを決めたものだ。
また、ろくに運動をしたことがなかった彼のために、騎士科の友人たちに相談して無理のないトレーニングメニューを作成し、放課後毎日のようにそれに付き合う。
自宅で頑張って自主トレをしすぎたために、筋肉痛になってしまった彼が泣きそうな顔になっていたときは、美味しいお菓子で甘やかした。
トレーニングと並行して姿勢の悪さを矯正し、流行のヘアサロンでボサボサだった髪をさっぱりと整えてもらったときには、「え……なにこの坊ちゃん、こんな美少年だったの!? どんな勝ち組だよ羨ましい!」と脳内のおっさんが絶叫していたものだ。
そんなこんなで、半年後。
デルフィーヌとおっさんが手塩に掛けて育てたフェリクスは、どこに出しても恥ずかしくない、立派な細マッチョ――もとい、爽やか系美少年になっていた。
元々高かった身長にバランスよく筋肉がつき、非常に見栄えがよくなっている。
青白かった肌は健康的に日焼けして、何よりその顔に浮かぶ明るい表情が、以前とはまるで別人のようだ。
「おはようございます、デルフィーヌさん! あの、お好きだと伺った舞台のチケットが手に入ったのですけれど、次の休みにご一緒していただけますか?」
「おはようございます、フェリクスさま。ありがとうございます。とても嬉しいですわ、ぜひご一緒させてくださいませ」
デルフィーヌの姿を見つけるなり、全力で尻尾を振った仔犬のように飛んでくるフェリクスを、周囲の人々もとてもほほえましく眺めている。
彼と並んで歩きながら、デルフィーヌは密かにぐっと拳を握った。
(なんっっって、可愛らしいのでしょう! みなさま、見てくださいませ! うちのフェリクスさまが、こんなに可愛いのですわー!)
なんという素晴らしきビフォーアフター。
元々しっかりした骨格をしているとは思っていたが、ここまで立派に育ってくれるとは実に感無量である。
やはり、栄養バランスのとれた食事と適度な運動、そして充分な睡眠時間の確保は、青少年の育成には欠かせない。
前世のおっさんは、自分の息子たちについてはかなりの放任主義だったが、豚の飼育には間違いなく真剣に取り組んでいた。
イタリアブランド豚の養豚場へ視察に行ったときには、ドングリを与えた豚の美味しさに感動し、それを自分の農場でも再現できないか試行錯誤していたものである。
残念ながら、ドングリを継続的に収集するにはクマ対策などの問題もあり諦めるしかなかったが、幸い今のデルフィーヌは、未来の侯爵夫人。
領内の養豚場で、前世ではできなかったことをいろいろ試してみたいものだ。
(養子についても、侯爵家の縁戚でしたら、もしかしたらフェリクスさまに似た可愛らしい子どもをお迎えできるかもしれないですわね! とてもとても楽しみですわ!)
十七歳のフェリクスを育てるのも楽しかったが、幼い子どもを育てる楽しみというのは、また別の喜びがあるだろう。
そんな薔薇色の未来を思い描いているデルフィーヌに、随分前からフェリクスが熱のこもった視線を向けるようになっているのだが――そのことに気付いていないのは、本人ばかりなのであった。
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