幼馴染みに初めてを奪われた騎士はトラウマを克服したい

柴咲もも

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第6話 意外な一面

***


 荘厳な装飾の施された扉の前に立ち、金属製のドアノックを打ち鳴らす。広い廊下に心地良い鐘に似た音が響き、程なくして重い扉が開かれた。
 顔を覗かせた赤銅色の髪の青年は、セルジュの顔を見て灰色の瞳を細め、僅かに口の端を吊り上げると、怪訝な表情でセルジュの傍を見下ろした。

「遅かったですね。理由はなんとなく把握できましたが」
「……すまん、色々と試みたが無理だった」

 隣に立つコレットを一瞥し、セルジュはロランに頭を下げる。この部屋に至るまで、セルジュは入り組んだ廊下を速足で移動し、ときにはわざと道を違えたり身を隠したりと手を尽くしたものの、コレットの追跡能力は猟犬並みで、結局最後まで振り切ることができなかったのだ。
 がっくりと肩を項垂れたセルジュに小さく肩を竦めると、ロランは口元を手で隠し、さも不思議だと言いたげに疑問を口にした。

「前々から気になっていたのですが、貴方達は一体どういった関係なんですか?」
「セルジュさんはわたしのこんにゃ……」

 すかさず口を開いたコレットの両頬を、背後から伸びたセルジュの指がぐにっと摘まむ。呂律の回らない声を出しながら首を捻り、コレットは恨めしげにセルジュを見上げた。

「いひゃいれすしぇるじゅしゃん」

 頬肉を摘ままれたまま訴える顔が滑稽で、思わず吹き出しそうになる。込み上げる笑いをぐっと堪えると、セルジュはコレットを押し退けてロランに向き合った。ほんのりと紅く腫れた両頬をさすりながら、コレットが拗ねた子供のように唇を尖らせる。

「婚約……って、セルジュ、貴方以前、決まった相手はいないと言っていましたよね」
婚約者だ。今は何の関係もない」
「なるほど……『元』ですか」

 呟いて、ロランが再びちらりとコレットを見やる。訝しむような視線を受けて、コレットがにっこりと微笑んだ。

「書類整理するんですよね。お手伝いします」
「ふざけるな! 重要な書類もあるのに部外者を中に入れられるわけがないだろう」
「いえ、重要な物は昨日までに殿下と済ませてありますから、手伝いなら歓迎しますよ」

 穏やかな笑みとともにロランが応えると、コレットは「やった」と声をあげて、勝ち誇ったように両手で拳を握って見せた。セルジュのこめかみに血管が浮き上がる。先日の剣の稽古の時といい、コレットの肩を持つようなロランの言葉がいちいち気に障る。

「くそっ、邪魔になるようならすぐに放り出してやるからな。……ロラン、仕事の説明を頼む」

 苛立ちに任せて吐き捨てるように告げると、目を丸くするロランを促して、セルジュはずかずかと執務室に踏み込んだ。

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