幼馴染みに初めてを奪われた騎士はトラウマを克服したい

柴咲もも

文字の大きさ
35 / 67
第13話 好きな人とするべきだと、思うから

しおりを挟む
***


「……セルジュさん、セルジュさんてば」

 はっと我に返ったセルジュの瞳に、ぷくっと頬を膨らませたコレットの顔が映り込む。慌てて周囲を見回すと、既にピアノは円舞曲を奏でており、ヴィルジールとリュシエンヌがいつものように優雅に踊りを合わせていた。

「もう、リュシーが相手じゃないからって上の空なんて酷いです。ちゃんと練習に集中してください!」
「す、すまん……」

 軽く頭を下げつつ、慌てて下腹部へと視線を落とす。股間が落ち着いているのを確認すると、セルジュはほっと息をついた。
 ダンスを踊るのにもだいぶ慣れた。とはいえ、直前まで如何わしい妄想に描いていた本人が目の前にいる現状で、気不味い思いを拭えるはずもなく。
 セルジュは落ち着かない気分のまま軽く腕を広げ、一歩前に進み出た。
 コレットがセルジュの手を握り、もう一方の手で腰に触れて身体を引き寄せる。密着した身体から、ほのかにあまい香りがした。
 気が付けば視線はコレットへと向けられて、紅く色付いた唇に、ほっそりとした首筋に、曝け出された胸元に、図らずも眼が奪われていた。心臓が早鐘を打ち、頬が、身体が、かあっと熱を上げた。

「……あれ? お腹に何か当たって……」
「すまん、急用を思い出した!」

 小首を傾げたコレットから素早く身を退ける。繋いだ手を振り解くと、セルジュは一目散に舞踏室を飛び出した。
 手のひらで口を覆い、前屈みのまま廊下を走り抜ける。

 ――すべては今朝の淫夢のせいだ。

 妙に生々しくて、酷く淫らで。汗だくで目が覚めたとき、セルジュの股間は完全に反り勃っていて、直前の夢を想いながら朝から自慰行為に勤しむ羽目になったのだ。
 情けない日常の一コマではあるけれど、いつもならそれだけで済むはずだった。
 しかしながら、今日のセルジュは明らかに異常だった。何度振り払ってもあの夢が繰り返しセルジュの脳裏をよぎり、身体が熱を持つのを止められない。
 念のため、舞踏室に来る前にもう一度抜いてきたというのに、仄かにあまいコレットの匂いを嗅いだだけで、柔らかな身体に触れただけで、セルジュの股間は奮い立ち、欲望を訴えたのだ。

「まさか、こんな……本当に、俺はコレットあいつを……?」

 にやにやと笑うロランの顔が、セルジュの頭を掠めて消える。
 言われなくてもわかっていた。ただ、認めたくなかっただけだ。
 遠い昔に置き去りにした甘やかな感情が、軽い敗北感を押し流していく。上着の襟元を握り締め、セルジュはぐっと顔を上げた。

 ――制服の上着に感謝だ。これがなければ、昼間からおっ勃てていたことが瞬時にバレるところだった。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

処理中です...