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後日談 マイヤール辺境伯家の婿入り事情
④
***
父とセルジュが屋敷に戻る頃には、すっかり陽も傾いていた。夕焼けに紅く染まる針葉樹の森を背に、ふたりは揃って黒塗りの馬車を降りてきた。
「お父様、セルジュさん、おかえりなさい」
コレットはいつものように父の側に駆け寄ると、軽くつま先立って頬におかえりのキスをして、それからちらりとセルジュに目を向けた。赤褐色の瞳と目が合って、みるみるうちに頬が紅く染まってしまう。
一緒に出迎えに立った母が父の気を引いてくれている、今がチャンスだ。
念じるようにセルジュの顔をじっとみつめると、コレットの考えを察したのか、セルジュはちらりと父の様子を確認し、軽く身を屈めてコレットに右の頬を差し出した。
――そこは遠慮せずに唇でするところでしょ!
脳内で軽く突っ込みを入れると、コレットはうんと背伸びをしてセルジュの両頬に手のひらを添えて、セルジュの顔を引き寄せた。
唇が微かに触れ合った、そのとき。鋭い視線を背中に感じ、コレットは咄嗟に後ろを振り返った。わたわたと慌てふためきながら、背筋が凍るほどの殺気の出所に目を向ける。
予想どおりと言うべきか、心臓を射抜くような鋭利な視線は、鬼の形相でセルジュを威嚇する父のものだった。
「せっ……セルジュさんも家族だもの。おかえりなさいのキスくらい良いでしょう!」
「まだ家族じゃない!」
真っ赤な顔で肩を怒らせて父が子供のように声を荒げる。
コレットが父と言い合っているすぐそばで、セルジュはふたりぶんの手荷物を抱えたまま、困ったように苦笑いを浮かべていた。
父とセルジュが屋敷に戻る頃には、すっかり陽も傾いていた。夕焼けに紅く染まる針葉樹の森を背に、ふたりは揃って黒塗りの馬車を降りてきた。
「お父様、セルジュさん、おかえりなさい」
コレットはいつものように父の側に駆け寄ると、軽くつま先立って頬におかえりのキスをして、それからちらりとセルジュに目を向けた。赤褐色の瞳と目が合って、みるみるうちに頬が紅く染まってしまう。
一緒に出迎えに立った母が父の気を引いてくれている、今がチャンスだ。
念じるようにセルジュの顔をじっとみつめると、コレットの考えを察したのか、セルジュはちらりと父の様子を確認し、軽く身を屈めてコレットに右の頬を差し出した。
――そこは遠慮せずに唇でするところでしょ!
脳内で軽く突っ込みを入れると、コレットはうんと背伸びをしてセルジュの両頬に手のひらを添えて、セルジュの顔を引き寄せた。
唇が微かに触れ合った、そのとき。鋭い視線を背中に感じ、コレットは咄嗟に後ろを振り返った。わたわたと慌てふためきながら、背筋が凍るほどの殺気の出所に目を向ける。
予想どおりと言うべきか、心臓を射抜くような鋭利な視線は、鬼の形相でセルジュを威嚇する父のものだった。
「せっ……セルジュさんも家族だもの。おかえりなさいのキスくらい良いでしょう!」
「まだ家族じゃない!」
真っ赤な顔で肩を怒らせて父が子供のように声を荒げる。
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