幼馴染みに初めてを奪われた騎士はトラウマを克服したい

柴咲もも

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第3話 セルジュの失態

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 早朝の訓練を終えて自室へ向かう途中、ロランと廊下ですれ違った。

「ああ、セルジュ。ちょうど良いところに」

 そう言うと、ロランは一通の手紙を差し出した。
 真紅の封蝋に刻まれた紋章は、セルジュの生家であるヴァレス家のものだ。ぴくりと眉を顰めると、セルジュはその場で封を開けた。

 手紙は兄からのものだった。
 それといって重要なことは書かれておらず、両親や兄の妻子が変わりなく暮らしていることや、たまには顔を見せにくるようにといった社交辞令的な言葉が記されていた。

「ご実家で何かありましたか?」
「いや、いつもの近況報告だ。手間をかけさせたな」

 手紙をポケットに突っ込んでロランを労うと、セルジュはふたたび自室に向かって歩き出した。

 兄がセルジュの世話を焼くようになったのは、セルジュが屋敷に引き篭もるようになった頃からだ。辺境伯令嬢であるコレットに非礼を働き、彼女からの手紙にも目を通さないセルジュに対し、怒り心頭だった父を宥めてくれたのは、他でもない兄だった。
 部屋から出られないセルジュの話を親身になって聞いてくれたり、王国騎士団への志願書を取り寄せてくれたりと、随分と長いあいだセルジュが社会復帰する手助けをしてくれて。セルジュが城にあがってからも、兄はこうしてたびたび手紙を寄越していた。

 兄がいなければ、きっとセルジュは今でも屋敷に引き篭もって、自堕落で最低な人生を送っていたに違いなかった。

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