むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~

景華

文字の大きさ
1 / 50
第一章 寝言の強制力で結婚しました

sideシリウス~寝言で求婚されたんだが~

しおりを挟む
 
   ローザニア王国。
 自然豊かなこの国は、精霊が守る国として平和を築いて来た。
 暖かな日差しに色とりどりの花々が咲き誇る暖季は、鳥たちを大空へと誘うと共に、人を眠りにも誘うようで……。

「ふへ……むにゃむにゃ……パンケーキらぁ~」
「…………」

 ローザニア騎士団の副騎士団長である私、シリウス・カルバンは考えていた。
 ソファでのんびりとヨダレを垂らしながら平和ボケした寝言を口にする幼なじみをどうすべきか。

 あぁ……またこんなところで無防備に……。

 ──私の幼なじみであるセレンシア・ピエラは無防備すぎる。
 天然、というか、ぼーっとしているというか……何にしても、目が離せない危なっかしさをもつ伯爵令嬢だ。

 親同士が学園時代からの親友だった私たちは、公爵家と伯爵家という身分差はあれど、昔はよく一緒に遊んでいた。
 一緒にピクニックに行ったり、川で釣りをしたり、本を読んだりメイドに教えてもらいながらお菓子を作ったり。
 なんなら一緒に風呂にも入ったし、一緒に寝たことだってある。
 さすがに小さい頃の話だけれど。

 だが成長するにつれて、セレンとの関係は拗れてしまった。
 私が原因で……。

 私はセレンが好きだ。
 幼い頃から彼女だけを想っているし、誰にも渡したくなくてセレンに近づこうとする男を陰で一掃してきたくらい、ただひたすら彼女が好きだ。
 が、こじらせた初恋故か、セレンに対して素直に優しくできず、いつもセレンにだけ素っ気ない態度を取ってしまう。

 そんな態度でいればセレン自身も私に苦手意識をもつのは当然な話で──。

 素直になれないまま、いつしかセレンは私を避けるようになった。
 そして私を苦手なセレンが私を見てくれるはずもないという変な自身の無さが、それならば嫌われたままで良いかという甘えをもたらし、関係はこじれたまま今に至る。

 だが今も時折、ところ構わず眠る彼女を見つけては叩き起こし、小言をお見舞いする。
 そりゃ言いたくもなるだろう。
 今だって無防備に、うちのロビーのソファでぐっすりなのだから。

 彼女のピンクゴールドの綺麗な髪によく映える薄水色のドレス。
 その胸元で、はち切れんばかりにソファに押し付けられている2つの山に思わず目がいきそうになるのを必死で堪え、私は自分のマントを取り外すと彼女の肌が見えないようにそっと上から掛けてやった。

 くそっ、可愛いな……!!
 しかもそのドレスの色は私の目の色だし、何なんだ……!! 意図的か!?
 そう思っていても本人を前にしては何も言えなくなる自分のヘタレさが憎い。
 だがそろそろ起こさねば。

 今は父が趣味で描いた絵画のお披露目に開いたガーデンパーティの最中。
 絵画の紹介が終わればガーデンテラスからホールに来る者もいるだろう。
 こんな可愛いセレンの姿、他の男に見せるわけにはいかない。

 いやそれ以上に、セレンの特別な力の方が危険だ。

 セレンは昔から特別な力を持っている。
 ──【寝言の強制実行】だ。

 彼女の寝言で発せられた言葉には強制力があるのだ。

 セレンの寝言は絶対で、私も騎士団の遠征から帰ってすぐお菓子を作らされたり、女性向け恋愛小説を買いに行かされたり、学生時代は学園の送り迎えもさせられた。
 そして恐ろしいのはこの寝言は誰にでも強制力を発動するということ。

 以前「ケーキ買ってきて……むにゃむにゃ……」という寝言を聞いた、たまたまセレンの居眠り現場に居合わせたこの国の王太子フィル・テスタ・ローザニア殿下は、その強制実行力に抗うことも出来ず、自腹で街までケーキを買いに行ったという。

 このローザニア王国は精霊が作った国で、王族はその精霊の子孫であるとも言われ、その手の甲には精霊の紋様と呼ばれる美しい模様が浮かび上がっている。
 生まれながらにして精霊に愛される王族は、精霊の祝福を与えられ、国を繁栄に導く。まさに絶対的な存在だ。
 
 そんな王太子をもいとも簡単に動かしてしまうほどの強制力を持つ寝言。
 無論、これが公になればセレンの身が危険なので、知るのはセレンの父母と兄と兄嫁、そしてセレンの専属侍女一人と、私、私の両親、王家の人間のみ。
 その力はほぼ国家機密と化している。

 さて、誰か来て犠牲者が出ないうちに、さっさと起こさねば。

 私は1度ふぅ、と息を吐くと、邪な意識を切りかえてから眠る乙女に声をかけた。

「セレン、セレン起きて」
「むにゃ……」
「………」
 起きない、か。
 せっかく人が優しく起こしてるのに……。

 セレンは寝起きが悪い。
 優しく起こしても起きはしない。
 例え起きたとしてもまた寝てしまうのがオチだ。
 はぁ、やっぱりまた、手荒に──「シリウシュ……むにゃむにゃ……」──!?

 今、私の名を?
 シリウシュなんて舌ったらずに……。可愛すぎる……。

「シリウス・カルバン……むにゃ……」
 再び、今度ははっきりと私の名を紡いだその唇から次に紡がれた言葉に、私の人生は大きく変わることになった──。

「むにゃぁ……私と結婚、してぇ……むにゃむにゃ」

 は──?????



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

冷淡姫の恋心

玉響なつめ
恋愛
冷淡姫、そうあだ名される貴族令嬢のイリアネと、平民の生まれだがその実力から貴族家の養子になったアリオスは縁あって婚約した。 そんな二人にアリオスと同じように才能を見込まれて貴族家の養子になったというマリアンナの存在が加わり、一見仲良く過ごす彼らだが次第に貴族たちの慣習や矜持に翻弄される。 我慢すれば済む、それは本当に? 貴族らしくある、そればかりに目を向けていない? 不器用な二人と、そんな二人を振り回す周囲の人々が織りなすなんでもない日常。 ※カクヨム・小説家になろう・Talesにも載せています

私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~

marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」 「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」 私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。 暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。 彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。 それなのに……。 やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。 ※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。 ※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください

楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。 ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。 ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……! 「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」 「エリサ、愛してる!」 ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。

【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。

たろ
恋愛
幼馴染のロード。 学校を卒業してロードは村から街へ。 街の警備隊の騎士になり、気がつけば人気者に。 ダリアは大好きなロードの近くにいたくて街に出て子爵家のメイドとして働き出した。 なかなか会うことはなくても同じ街にいるだけでも幸せだと思っていた。いつかは終わらせないといけない片思い。 ロードが恋人を作るまで、夢を見ていようと思っていたのに……何故か自分がロードの恋人になってしまった。 それも女避けのための(仮)の恋人に。 そしてとうとうロードには愛する女性が現れた。 ダリアは、静かに身を引く決意をして……… ★ 短編から長編に変更させていただきます。 すみません。いつものように話が長くなってしまいました。

処理中です...