むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~

景華

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第一章 寝言の強制力で結婚しました

溺愛キスとお預け

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 あれよあれよという間にシリウスと結婚の書類を交わし、その足で急ぎ陛下に謁見して結婚の了承も得た。

 事情を説明した時の陛下はその強制力の恐ろしさに身震いしていたけれど、シリウスの「強制力など関係なく、私はセレンを大切にしていくつもりです」という宣言に微笑み、祝いの言葉をくださった。
 そして放心状態のまま、シリウスと共に大司教様へ陛下の署名が入れられた結婚の書類を提出し、私は完全に、シリウス・カルバンの妻となってしまったのだ。

 その後すぐに、私はそのままシリウスと居を同じにすべく、カルバン公爵邸へと連れていかれた。
 昔は家族皆で王都の屋敷で暮らしていたシリウス一家は、『領地でのんびり暮らしたい』という奥様の願いで今はシリウスの両親だけカルバン公爵領の屋敷で暮らしているため、めったに王都の屋敷には訪れない。

 大切なパーティか今回のような絵画のお披露目ぐらいにしか来ていないから、気にせず好きに使うように言われてしまった。

 不安だったのは使用人達の反応だけど……主が突然結婚して帰ってきたと聞いて、驚きながらもたいそう賑やかに祝ってくれた。
 夕食なんて結婚おめでとうと書かれたプレート付きの3段ケーキまで出てきたし、使用人達の順応力の高さには驚かされた。

 そして今。
 お風呂の後に色々塗りたくられ、念入りにマッサージを受けて最強ボディを手に入れた私は、夫婦の寝室で夫の訪れを待っている。
 そう、最初の難関──初夜だ。

「すまないセレン、待たせ──た……っ」
 部屋に入って私を見るなりに顔を真っ赤にして固まってしまったシリウス。

「どうしたのシリウス?  熱でも……」
「い、いや。大丈夫だよ。セレンが可愛くて動揺してしまっただけだから」
「かっ……!?」

 未だかつてシリウスがこんな甘い言葉を私に吐いたことがあっただろうか。いや、ない。
 私に対してだけクールな彼からは想像できない甘さだ。
 本当に、一体何があったのかしら?

 それにしても──。
 ガウンからちらりと見える引き締まった胸板が眩しすぎて直視できない。
 部屋はベッドサイドの灯りだけで薄暗いというのに、何だこのまぶしさは。

 私は恥ずかしさと気まずさを隠すように、無理矢理言葉を紡ぎ出す。
「そ、それはそうと、本当によかったの?    いくら強制力があるとはいえ、寝言なんかで結婚しちゃって……」

 しかも20歳という若さで副騎士団長にまでなるくらい騎士団でも地位を確立しているうえ、顔も良いし、(私以外には)人当たりの良い、次期公爵のモテモテ人間が、こんな平凡で本を読むことと寝言の強制力という迷惑能力しか特筆する事のない女と結婚だなんて。

 釣り合いは確実に取れていないだろう。
 ただただ申し訳なさが込み上げる。
 するとシリウスは以外にも真剣な顔で足を進めると、ベッドに座る私の隣へ腰を下ろした。

 ギジリ、と音を立てて沈むベッドに、緊張で身体が強ばる。
 昔は同じベッドでお昼寝をしたこともあるけれど、今と昔とでは全然違う。
 心も、そして身体も。お互い色々と変わりすぎた。

「セレン。確かにきっかけは強制力のある寝言だけど、私はセレンなら良いと思っているよ。セレンとは幼なじみだからよく知ってるしね。セレンだって、私の事はよくわかってるだろうし」
「それは……」

 確かに昔であればそうだ。
 シリウスのことは私が一番わかっている。そんな自負があった。
 でも今は──いつの間にか遠くに行ってしまったように、シリウスのことがわからない。

 いつの間にか隣にいるのに距離が開いて。
 いつの間にか昇進して副騎士団長にまでなって。
 いつの間にか私にだけ、無感情になってしまった。

 だから私の中でよく知るシリウスは、幼い頃で止まっているのだ。

「でもシリウスには私よりもっとお似合いの人が──」
「いないよ」
 私の言葉をさえぎった否定の言葉へ返す言葉を見つけているうちに、シリウスが私への距離を詰めた。

 目と鼻の先。
 少し動けば触れてしまいそうなくらい近くに移動したシリウスの顔。
 こんなに近くにシリウスがいるのは何年ぶりだろう。

「っ、ち、近いわシリウスっ……!!」
「ふふ。近くでいいんだよ。私たちはもう夫婦なんだから」
「ふ──っ!!」

 間違ってない。
 婚約も結婚式もしていないけれど、書類上は結婚したのだから。
 間違ってないけれど……!!

 チュッ──「ひぁっ!?」
 突然私の左頬にリップ音と共に生暖かい熱が触れる。
 チュッ、チュッ──「んっ、ちょっ……!!」
 続いて首筋、おでこに軽いキスが落とされ、キャパオーバーになった私を見てシリウスがいたずらっぽく笑った。

「今日はこれだけ。ね、可愛い奥さん」
「~~~~~~っ!?」
 かっこよ過ぎて目が潰れる!!

「さて、今日は疲れただろうし、ゆっくりお眠り」
 そう言うとシリウスは私の手を取り布団の中へとエスコートすると、自分も隣に潜り込み私の頬を撫でた。

「おやすみ。私の可愛いお姫様」

 あぁ……私はまさか寝言で言ってしまったのだろうか。
『シリウス、私にも優しくして』と。
 だってこんな──こんな溺愛されるなんて展開、ありえない……!!

 寝言の強制力で愛されるなんて惨めなだけだ。
 シリウスにも悪いし、なんとかして解除する方法を探さないと……!!

 初恋の人にぴったりと添い寝されながら、私は1人はそう決意するのだった。
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