むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~

景華

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第一章 寝言の強制力で結婚しました

初夜お預け宣言

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 はい!!
 やってきました二度目の同衾タイム!!

 私は一足先にベッドの上で姿勢を正し、正座で夫であるシリウスを待つ。

 きちんと話をしなければ。
 私とシリウスの、これからのことを。
 心臓が激しく胸を打ち、意図せずして方が上下に動く。
 と、寝室の扉が小さな音を立ててゆっくりと開いた。

「セレン、おまた──って……何してるの?」
 部屋に入るなりシリウスは、ベッドの上で謎の臨戦態勢に入っている私を見て顔をひきつらせた。

「だ……大事な話が合って、シリウスを待ってました……!!」

 三年間の白い結婚の末、離縁をするという提案。
 果たして受け入れてもらえるだろうか。
 いや、受け入れてもらわねば!!
 だってこれは、ただの被害者であるシリウスにとっても良い提案なのだから。

 私は意を決して視線を上げると、シリウスをまっすぐに見つめて口を開いた。

「し、シリウス!!」
「ん? 何?」
「っ……その……私と……っ、私と初夜をしないでほしいの!!」
「なっ!?」

 何だ。
 そのものすごい衝撃を受けたような顔は。
 もっと嬉しそうな顔をしても良いと思うのに、今のシリウスからはその感情が見受けられない。
 予想していたのと違う反応に私も戸惑いを隠せない。

「えっと……もしもーし? シリウス? おーい」
 恐る恐る声をかけてみるも、呆然とした様子で微動だにしないシリウスに、だんだんと不安が募る。
 生きてる、わよね?

「シリウ──」
「はっ……!!」
 あ、気が付いたみたい。
 意識の戻ったらしいシリウスと視線がはっきり交わると、シリウスは私の両腕をがっしりと掴んで迫ってきた。

「!?」
「初夜をしない、っていうのは──? もしかして、そこまで私のことが嫌いだったとか……? それとも経験のない男には任せたくないっていう──?」
「待って待って待って待って!! 情報過多!! 一人で暴走しないでー!!」

 第一経験ないって何の冗談!?
 顔は美形、細マッチョで身体つきも良い。
 地位だって公爵令息でありながら若くして副騎士団長というハイスぺ具合。
 おまけに女性に親切で常に紳士的な振る舞いをするシリウスだ。
 女性と付き合うことも多かったろうに。

「そ、その、とりあえず話、聞いて?」
 私は両肩をつかむシリウスの手を、自分のそれを重ねてそっと解放させると、両手を膝の上に置き、あらたまって口を開いた。

「あのね? シリウスは私の寝言のせいで、私なんかと結婚しちゃったでしょう? 結婚したからには世継ぎが必要なのはわかってる。それが義務であることも。でも、そんなの嫌でしょう? その……どうせ抱くなら、もっと綺麗で色気のある女性の方が良いだろうし……」

 私はお世辞にも色気があるタイプの女ではないから、シリウスもその気にならないだろうし。なんてオープンには言えないので、遠回しに伝えてみると、シリウスは目を大きく見開いて声を上げた。

「は!? ちょ、セレン!?」
「三年!! 三年間白い結婚を貫けば、私たちは何のしがらみもなく離縁できるの。そうしたらシリウスも、安心して釣り合いのとれる自分好みの女性と結婚出来るわ。だから──」
「いやだ」

 私の決死の覚悟の提案は、たった三文字で早々に拒否されてしまった。
 しかも日中にメイリー様とエルヴァ様に見せたような、すんとした表情の抜け落ちたような顔で。

「あ、あの、シリウ──ひゃぁっ!?」
 無言でベッドへと押し倒された私の身体が、上に覆いかぶさるシリウスの身体と共にベッドに沈む。
 すぐ目の前にはシリウスの少しだけ苦しげな表情。

「セレン以外と結婚していたなら、子を生すことも義務だと諦めて、仕方なくでもしていたかもしれない。でも、私はセレンが良いんだよ。抱くなら、セレンが良い。セレン以外なんて考えられない。寝言なんて、関係ないよ」

 重なる身体からシリウスの熱が伝わる。
 その紳士な瞳からも、言葉一つ一つからも、私のことが本当に好きなんじゃないかと、私に都合の良いように感じられてしまうのだから困った。

 あぁ、これは……。
 きっとシリウスは私の寝言のせいで、“セレンが好きだ”と思い込んでしまっているんだわ。
 結婚して態度が変わったのもきっとそう。
 無表情なシリウスと結婚して一緒にいるよりはいいのだろうけれど、自分の本心とは関係のないところでの溺愛は申し訳ないし、ただただ虚しい。
 でもそうよね。
 今のシリウスに何を言ってもダメ、か……。

 なら──。

「ならシリウス。この寝言の強制力を何とか出来た時、まだシリウスが私で良いと思ってくれるなら、その時は、その……しょ、初夜、しましょう。私じゃ無理だと思ったら、三年間白い結婚をした後、離縁しましょう。どうかしら?」

 前者になる可能性は、これまでのシリウスの態度と、私に迷惑をかけられてきた量からして圧倒的に低い。
 どちらにしても、シリウスの意思に任せましょう。
 加害者である私がどうこう言うことではないわ。

「……わかったよ。それで私の気持ちを信じてもらえるのなら。問題はその能力をどう消すか、だね」
 そう言いながら私の上からゆっくりと退けたシリウスについて私も起き上がる。

「魔法使いにならなんとかなるんだろうけれど、今この世界にいるのかどうか……」

 魔法使いは特殊な魔法を使えたり、精霊をまとめる力を持つ存在。
 それゆえに各国の時の権力者たちが魔法使いを取り合い、争った。
 その結果、魔法使い達はどこかへ身を隠してしまった。

 王太子殿下の右手の甲には精霊の紋様がくっきりと浮かび上がっている。
 王族がもつ精霊の加護は失われていないということなのだから、精霊はまだこの世界に存在する。
 ということは、精霊をまとめる役割を果たす魔法使いも今まだどこかにいるのだろうけれど……。

「そうだなぁ……。精霊の末裔でもある王族なら、その存在を感じ取ることができるかもしれない。明日、王太子殿下に相談してみるよ」
「!! ありがとう、シリウス」

 王族の協力があれば望みが出てくるかもしれない。
 そうすればこんな力とはおさらばできる。
 シリウスにも……誰にも迷惑をかけずにいられる……!!

「うん、それでセレンの気が晴れるなら。私も全力で探すよ」
「シリウス……っ、ふぁぁ……」

 あぁ、安心したらなんだか眠くなってきた。
 とろんと瞼が重くなる。

「おねむかな? でも待って」
「へ? ひぁっ!?」
 ちゅっと音を立てて目尻に押し当てられるシリウスの唇。

「初夜はお預けだけど、スキンシップはさせてくれなきゃ。私の欲望が爆発しちゃうからね。これぐらいは許して」
 そう言って今度は頬に、そして首筋にキスが落とされていく。

「んっ、ぁっ、し、シリウスっ」
「かーわいい。あー駄目だ。これ逆効果で欲望爆発するやつ……」
「させちゃダメーっ!!」

 何言ってるのこの人!?
 スキンシップの域がギリギリなんですけど!?

「ふふ。そうだね。我慢するよ。長い間ずっと我慢してきたんだ。あと少しぐらい何とかできる。さ、もうおやすみ」
 そう言うとシリウスは私を布団の中へと誘い、まるで愛おしい子を寝かしつけるように上から布団をかけてくれる。

 温かく柔らかい布団に包まれた私は、吸い込まれるように夢の中へと落ちていくのだった。




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