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第二章 寝言の強制力と魔法使い
メレノス島の暴動
しおりを挟む「──悪いね、楽しい新婚旅行中に」
「本当に」
ものすごく申し訳なさそうにそう口にしたのは、王太子殿下。
私たちは今、王都にあるローザニア城の応接室にいる。
殿下の隣には、難しい顔をした騎士団長様。
以前お会いした時には豪快な笑みを浮かべられていたけれど、今はそれがない。
それほどまでに状況がひっ迫しているのだろう。
メレの町の宿で朝食を頂いて、さぁいよいよシレシアの泉へ、というところで、王都からの使者が現れた。
『メレから海を渡った先のメレノス島で民族間の争いが起きた。急ぎ騎士を率いて鎮めよ』と──。
シリウスは次期公爵ではあるが副騎士団長だ。
有事の際には出ていかなければならない。
だけど、『せっかくの旅行なのに行きたくないから聞かなかったことにする』と駄々をこねるシリウスを、私が必死で説得した。
シレシアの泉はまた二人で来よう。
そう約束をして、私たちは早馬で王都へと舞い戻ったのだ。
こんな騎士団のお話し合いの場に私なんかがいても大丈夫なんだろうか。
旅行から直接呼び出されて来たから仕方がないのだけれど……邪魔、じゃないかしら?
そう思いながらちらりと殿下を見ると、殿下と視線がぶつかって、にっこりと笑顔を返された。
「本当、すまなかったね。セレンシアもごめんね。少し急ぎだったから……」
「いえ。シリウスは副騎士団長ですもの。仕方がありません」
国の為、民のために動くのが騎士。
仕方のないことだ。
シリウスは皆の──大切な副騎士団長なのだから……。
「うん。本当、ごめんね。……さて、シリウス。実は、メレの町から海を隔てた先──この国の最南端メレノス島で、先住民たちが武器を取って本土に攻め入ろうとする動きがあるようなんだ」
「メレノス族が?」
メレノス族──。
メレの町の管轄でありながらも、閉鎖的な離島であり独特な部族特徴から、領地として属しながらも国からほぼ独立した民族島。
彼らは基本島から出ることはなく、独自の文化を大切に生きる部族で、温厚な人々だと聞く。
なのになぜ……。
「武器を取って本土に攻め入ろうとする強硬派と、それを阻止しようとする穏健派が衝突し、一触即発状態だという。強硬派が多いようだから、攻め入られるのも時間の問題だ。その前に急ぎ島へ行き、彼らを鎮めてきてほしい」
「すまんな。俺は各方面への指示があるからここを離れられんから、現場指揮はお前に任せることになる」
申し訳なさそうに、悔しそうに、騎士団長様が言う。
騎士団長は国の要。
いろんな隊への指示をおこなわなければならないから、基本ここからは離れられない。
その歯がゆさが、表情から伝わってくる。
「ちっ……わかりました。秒で終わらせます」
舌打ちした!?
仮にも殿下と騎士団長様相手に!?
ものすごく不敬なのに責められないのは、シリウスだからなのだろう。
「あぁそうだ、殿下。メレの町ですが、孤児院が膨大な金額の借地料を取られたり、経費を与えられず貧困状態が続いているようです。領主による横領と職務怠慢が疑われるため、早急に対処をお願いします」
「メレの? あぁ……あの領地か……。うん、わかったよ。いろいろ噂の範囲では聞いていたから、早急になんとかさせよう」
よかった……。
これで院長や子ども達が少しでも過ごしやすくなってくれたら……。
私が安堵に表情を緩めると、シリウスは私に向き直り、膝の上の私の手を取った。
「セレン。すぐに帰るから。いい子で待っててね。。終わったら新婚旅行の続きをしよう。シレシアの泉、二人で見に行くの楽しみにしてるよ」
「!! えぇ……っ!! 気を付けてね、シリウス」
二人で【小鳥姫と騎士】の聖地を見に行く。
その約束を胸に、私はシリウスの手を握り返した。
きっとすぐに帰ってきて、二人でシレシアの泉を見に行ける。
そう信じて、私はシリウスを送り出すのだった。
その期待が裏切られることも知らずに──。
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