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【1】きっかけは最初の街から。
02)さて、何からしたものか。
しおりを挟む「で、ではこちらの用紙に記入して、この水晶に両手を翳してください。それからちょっとだけ血液をいただきますね」
プツリと指先に針を刺され、プクッと血が出てくる。出されたカードの裏側に血を擦り付けると真っ新だったカードの雰囲気がガラリと変わった。カードの特殊性能で血液から個人情報を登録したという。そこから水晶に読み取った様々なスキルやステータスなど情報を書き加えていくという。
「ギルドの魔道具の一つです。これで君の情報が登録され、身元を証明するギルドカードが出来上がるのです」
他の街のギルドはもちろん、他国への通行証としても機能する。認証機能も高く、盗まれて他者がそれを使って入国しようとしてもそれは通じない。悪用防止も兼ねて血を記録しているという。ただし、再発行にはそれなりの対価が必要であるが。
不思議な光景に目を奪われていると、ふと刺された指先にフワリと温かい光を感じた。受付嬢による回復魔法の様だ。傷が小さかったとは言えどあっという間に元通りになる。
「痛いところはないですか?ギルドカードの完成までもう少し時間がかかりそうなので、あそこの席でお待ちくださいね!」
とりあえず登録は何とかなった。が、ギルドマスターからの承認が出るまでどうしようか。うむむと唸っていると先程の軽鎧の女性と目が合った。
「えっと、先程はみっともないところをお見せしてすみません」
「いやいや、せっかく意気込んで来たのにこれじゃあね。落ち込むのもわかるさ」
赤髪だけど毛先だけ漆黒という特殊な髪色。長い髪をポニーテールに結いているその髪留めから不思議な雰囲気が漂っている。よく見れば髪留め以外にもブレスレットやら指輪やら様々な装飾品からも同様に不思議な力を感じる。何か魔力が込められた装備なのだろうか。
「緊急事態って言ってましたもんね、仕方ないです。でもお姉さんは参加されないんですか??えっと……」
「私はツェリディア・ユグドレイン。ちょーっと理由ありでね、とある人からの指令待ちの為に今回の緊急クエストから除外なの。」
名前呼びづらいからツェリでいいよ、と差し出された手はがっちりとしていて並々ならぬ戦士であることが伺える。
「僕はアリオット・エルティスです。学校の校外自主課題と今後の為にと思ってここに来たんですけどね、これからどうしたものかと」
校外自主課題と言っても自由受講項目で、やるやらないは任意である。実際にギルドに登録し、様々なクエストを受けることで実技項目のプラス評価となり、卒業後の一部の進路にも影響力があるという。スキルや称号を得られる事も珍しくないし、ギルドのランク評価はもちろんのこと、その技術を買われて守衛部隊だの魔法局だのからスカウトされる事だってある。王都騎士団も然り。実際にこの体験から進むべき道を見出す者も多いのである。
狩猟系がしばらく出来ないということはその間は戦闘系評価がされないという事。これには頭を抱えるしかなかった。
「校外自主課題かー、懐かしいわー。アリオットくん、意欲満々なのね」
ツェリディアは「ふむふむ」と即時納得。校外自主課題にギルドのクエストはうってつけだからだ。
「ところでアリオットくん、キミは風とか木とか、回復魔法が得意だったりする??」
緑の髪色を持つ者は風や樹木に関する魔法に恵まれていると言われる。アリオットも例に漏れず風も樹木も、瞳の色である青から水も得意であったし、更に言えば光も使う事ができた。
「ええ、一応。あと光魔法も使えますけど」
返事を聞くや否やツェリディアが目を細め、ニンマリとしながら
「それは好都合!よかったらお手伝いしない?狩猟系ではないけれど、自主課題の評価対象になるのがあるよ!」
評価と聞いて思わず飛びつく。そうだ、こんなところで足踏みしている場合ではない。
「そうそう、キミにピッタリのお手伝いさ」
そんな適正が自分にあるのだろうか。ドキドキしつつ、ゴクリと唾を飲み込んだ。
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