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【2】ざわめく森は何を知る。

58)更に上位の者達。

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 アリオットの手に触れていたのはふわふわとしたミントグリーンの長い髪、色白の肌、目の色はビリジアンの女性。彼女の効果なのだろうか、頭も心も落ち着き始め、怒りのボルテージが徐々に下がっていく。


『大丈夫?怪我してない?』
「あ、はい。僕は何とも……でも……」
『彼らは大丈夫よ。スライムもちゃんと元に戻るわ』


 彼女が手をかざすと壁から出てきていた世界樹の根はスルスルと元に戻っていく。壁の穴も綺麗に元通りだ。無我夢中だったとは言えど戦闘蜂コンバットビーの拠点を壊してたかもしれないと思うと力の使い方はきちんと制御しなければ、と反省した。




 現れたもう1人の方は金糸の様な眩しい程の金髪、腰まであるストレートの長髪。そして同じく鋭く煌めく金色の瞳。男性の様だがこちらも肌の色が白い。白いを通り越して全体的に眩しい。その人?が聖属性の大精霊を押さえつけている。



『やり過ぎだ、馬鹿者!』


 大精霊から手を離したと思ったら脳天に拳骨を食らわせる。『ぎゃひん!』と小さな悲鳴が響く。



『協力しろ、と言った筈だよな。何故敵対する様な真似をしたんだ』
『あの、えっと。どんな反応する人間なのか気になったので試そうかと』
『……馬鹿者!木精霊まで拘束しおって!』



 大精霊は正座、真正面から高威圧を受けて萎縮している。金髪の人が手を払うと八面体の檻は壊れ、セラフィが飛び出してきた。



『うぁぁあん!ますたーーー!!』
「セラフィ!大丈夫?怪我は?何もされなかった!?」
『だいじょーぶ!ますたーは??』
「セラフィが無事で安心した!」


 嬉しさのあまりぎゅっと抱きしめる。何事もなくて本当に良かった。安心のあまり涙が滲み出てきてしまった。
 その様子を見ていた男性がアリオットへ近づき、深く頭を下げる。




『此度は我が眷属が申し訳ない。ここはどうか怒りを鎮めてもらえないだろうか』
「怒りの具合はかなり落ち着きましたが、許せる許せないは別問題です。それに僕よりも彼らにきちんと謝罪してもらいたいです」



 セラフィは一応無事に戻ってきたし、アリオットは現状を目の当たりにしただけだ。が、大精霊とはいえ悪い事をしたのなら謝罪は必要だと思っている。それでセラフィやザック、スラリーが許すのならアリオットも異議なく許すつもりだ。
 それに対して『寛大な心遣いに感謝を』と男性は答えた。



 ところで『我が眷属』と言っていた。この佇まいからして何となく予想はつくのだが……



(セラフィ、もしかしてこの人達って……)
(うん、おうさま!)



 聖属性の精霊王に怒りのあまり何という言い方をしてしまったのか……!後悔先に立たず。と、とりあえず平静を装おう。後にも引けないし、ここで動揺してしまっては先程の啖呵が無駄になってしまう。



『ふふ、自己紹介し忘れちゃってたからね、気にしないで。色々とこちらが悪いんだもの』

 が、残念ながら顔に全て出てしまっていた様でお見通しだった。少し恥ずかしいが仕方がない。洞察力と観察力不足だった、と諦めよう。



『そういえばこうして会うのは初めてよね!いつもこの子セラフィから話は聞いてたの。私は木精霊を統べる長、木精霊王のドリアード。よろしくね』


 木精霊王、世界のありとあらゆる植物を統べる者。大地を育み、癒しと豊穣を与える存在。
 いつか聞いた声の主で、アリオットの加護の主だ。


「加護を与えてくださってありがとうございます。僕の様な者が与えられるとは思ってもなくて……」
『ふふふ、いいのよ。こちらこそこの子セラフィと仲良くしてくれてありがとう!で、こっちの真面目なキリッと系眩しい男子が……』
『アングレウス=シャイナス。光属性の上位、聖属性の王だ。なんだそのキリッと系というのは』
『貴方のわかりやすい特徴よ。私はゆるふわ系お姉さんだから』



 アングレウスはムッとした様だが、ふんわりとしたドリアードの独特の雰囲気にピリピリとした周りの空気がほんわかした物に塗り替えられる。この場所が世界樹ということもあり、ドリアードの方が力が強いのだろうか。

(あれはいつものどりあーどさま!)

 あ、普段からこうなのね。



 このままでは真面目な話が流されると判断したのだろう。アングレウスがコホンと咳払いをして空気を戻す。

『本当に色々とすまない。お詫びは後程必ずさせる。大精霊には罰としてキミかこの者ザックと契約、協力者として以後仕えさせようかと考えている』
『精霊王アングレウス様!どうか発言をお許しください!』


 後方に控えていた大精霊が身を乗り出す。

『何だ。契約が不服と?』
『いえ、逆にございます!先程、私はザックの力に大変感服致しました。故に契約を望むのは自分の方なのです!ですからこのままでは処罰にはなりません!』



 それはとても意外だった。とても強い意志で『契約を望む』と発言したのだ。でもザックには精霊や妖精は見えない。どうやって申し出るつもりなのだろう。それに持ち合わせていない属性の精霊とも契約ができるのだろうか。


『ふむ、そうか。ならば受け入れて貰えるように尽力せよ。ひとまず処罰の件は彼の者の意識が戻り次第とする』
『ありがとうございます!』


 大精霊が深く頭を下げるとまた元の位置に戻り静観し始めた。彼なりのケジメだろうか。


『かなり話が逸れてしまった。我々がここに来た経緯を説明したい』


 我々には大精霊も含まれているらしい。アリオットがコクリと静かに頷くとこれからのことも含めて彼らは語り始めた。

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