63 / 89
【2】ざわめく森は何を知る。
EX02)ウィスプさんの世界樹探索。
しおりを挟むうっス!おいらウィスプっス。
ザックの旦那に召喚されている使い魔みたいなモノっス。
今はザックの旦那の命令で世界樹の中の怪しい所を捜索中。身体が分散するのでどこでもくまなく探すっス!
ところが出発して早々に分散した一部が即霧散しちゃったんス!ふら~っと立ち寄った部屋の奥、怪しい感じがしたっスから覗き込んだっス。そしたらそこにいたのはまさかの大精霊っス。
『ほう、光の眷属……では無いな!貴様、光と見せかけて闇属性とは!!散れっ!!』
『ひぃぃぃっス!』
しかも相手は聖属性、闇属性のおいらとは正反対どころかその上位だったのが運の尽きっス。
捜し物とか案内は得意なんスけど、戦闘力は皆無なんス。おかげで為す術なくおいらの身体(一部)はファサーっと消えちゃったっス。こういうのはザックの旦那も感知しちゃうんスよね。ごめんス旦那、とりあえずあの場所は近づけないっス。旦那に頼んで他を探すっス!
ふらふらと漂ってると目立つっスからね。次は見つからないようになるべく小さくなって壁沿いとか天井付近を行くっス。
大きな扉を見つけたっス。中では会議中みたいっスね。えーっと、女帝蜂と暗殺蜂と剣兵、槍兵、弓兵、投擲兵、盾兵、近衛兵……えーっと、なんかてんこもりっスね!色々いすぎてわからないっス!
会議の内容はもちろん今後の対策っス。偵察に行くのは高速機動が得意な高速蜂、特に速い蜂は韋駄天蜂って呼ばれてるみたいっスね。暗殺蜂も動くかと思ったっスけど、別でやることがあるみたいっスね。
あとは各部隊の周辺巡回の報告や交代タイミング、被害状況の確認ってとこみたいっス。とりあえずここには魔力溜りはなさそうっスね。次に行くっス。
会議室とは別の場所っス。やたらと従者蜂が多い階層だと思ったら、幼子の育成部屋だったみたいっス。警戒も強いっスね~。ここには幼子育成専用の厨房も用意されていて、ローヤルゼリーもこの厨房で作られてるみたいっス。ここでの育成を経て色んな役職に就くんスね。とりあえず不思議な場所は見つからないっスし、別の場所に行くっス。
こっちには兵士達の訓練場があちこちにあったっス。主力はやはり『突いて刺す』なのか槍が多めっスね!打ち合いしてたり、手入れしてたり様々っス。昨日、ザックの旦那が負傷者をたくさん治したらしいっスからね、戦力はバッチリっス。それと若い兵士も多いっス。育成部屋から兵士見習いになるとここに来るみたいっス。これからの成長が楽しみっスね!この辺りも怪しい感じはしないっス。
霊脈。世界を巡る魔力や生命力の流れは霊脈と呼ばれる大きな流れに乗ってあちこちに流れているっス。要は血管みたいな感じっスね。太い霊脈から枝分かれして徐々に細く細く、そうして各地に満遍なく巡っているわけっス。今探しているのはその霊脈の太い部分。世界樹の生命線が傷ついてるって話っスから、その霊脈の力を利用して修復と森の浄化を行うってとこっスかね。
こっちは厨房っスね。さっきの場所とは違い、育成用ではなく一般用のっス。ハチミツの貯蔵庫も発見!ただ、量は半分位になってるっス。採取があまり出来てないんスね。これは早めに解決したいところっス!
あ、おいらはつまみ食いとかしないっスよ。魔力や生命力が食事なんス。元々は霊魂を運ぶ、導く存在っスからね。最近は専ら魔力で満たされてるっスし、そう簡単に生命力は奪わないっス。でも、もしザックの旦那にとんでもないことをした輩がいたらやっちゃうかもしれないっスけど。
おいらにとってザックの旦那はいいご主人なんス!優しいし、面白いし、戦闘力がないおいらをとっても大事にしてくれるっス。
そういえば……ザックの旦那の魔力が……な、何かあったっスかね??おいらが近づけないところに行ったから巻き込まれたっスかね??
結局魔力溜りや怪しい場所はそこか女帝蜂の謁見の間の奥ぐらいしかなかったっス。
さっきのアイツのせいっスかね……スラリーの兄貴も一緒だったし、無事だと思いたいんスけど……
こ、怖いけどザックの旦那の為ならおいら頑張るっス!!!!
腹を括って例の部屋に行ったら眩しさ7割増してたっス。なんか更に眩しい大きな人が増えてたっス。『ああ、これはおいら終わったっスわー……』と思ったらこちらは味方だったみたいで、さっきの大精霊は大人しくなってたから助かったっス。いや、しかし精霊王が2人もいるとかどういう状況っスか。
で、その奥でザックの旦那もスラリーの兄貴も倒れていたっス。ひぃぃぃっと思ったけどアリオット少年が手当てしてくれてたっス。助かったっス。
あ、これから大事な話をするんスね。要所への案内なら後でおいらにおまかせっスよ!
でもその前に調べられなかった小部屋を大精霊が大人しいうちに確認してみたっス。やはりここが霊脈の太い場所、要になってたみたいっス。それにアリオット少年の聖属性魔法の残滓を発見。更にこの辺一帯の世界樹の修復がされていたこともあり、大精霊とか精霊王が現れたのかもしれないっスね。ふむ、アリオット少年は只者じゃないっスね。
……はっ!!
妙な視線を察知したと思ったら、パチリと大精霊と目が合ってしまったっス……!!!!
思わずズササーっと引いてしまったんスけど、大精霊がおいらに向けて頭を下げてきたっス。
『先程は済まなかった。お前の主にも申し訳ない事をした。身体への影響は出ていないだろうか』
『あ、いや、おいらは大丈夫っス。あれは分身した部分っスし、そのうち魔力が戻れば復活するっス』
『そうか、それなら良かった。気が昂ってしまっていてな、本当に申し訳なかった』
お前は悪しき者では無かったのにな、と理解はしてくれたみたいっス。
闇属性、呪属性でも良い奴はちゃんといるっス。呪属性なんて名前だけで忌み嫌われやすいんスけど、みんな大好き『おまじない』は呪属性だったりするんスよ。使い方次第で良くも悪くもなるのはどの属性もどんな力も同じ事っス。
とりあえず聖属性の大精霊とは何とか和解?出来たし、ザックの旦那もスラリーの兄貴も早く目覚めてくれないっスかねー。
ってことで、おいらの世界樹調査報告っス!おいらはしばらくアリオット少年の近くにいるっス。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,945
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる