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幼少期編
45 変装石の話なんです
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ちょっとしたハプニングがあったが、封印の腕輪の破壊に見事成功した事によって、再来年の入学が叶う事となった。
腕輪を破壊出来たことでストレスが大幅に減少し、そのお陰で肩の力が抜けた。
ぐっすり寝た翌朝。リフレッシュして気持ちが落ち着いたので、読めていなかった転写書を早速読んでみると。
レティシアに会えない事への懺悔、不満、後悔、懇願…… etc 、数ページに及ぶ物凄い長文が書いてあった。
昨日、返事を書かなかったのが原因かもしれない。
そして、来年は必ず死んでも帰る、と締めくくられていた。
「死んだら帰って来れないでしょうが。……ふふ、本当は帰りたかったんだ。良かった。……そうだ、魔術学園に通うことを決意したから、来年は必ず帰って来てってこちらからも催促しておこう」
他に何を書こうか考えて、魔力暴走しかけた件は書かないでおく事にした。
(心配させても悪いし、…… ○イヤ人に、なりかけたこと何か書きたくない)
当たり障りのない内容で書き終えた後、自分で冬用の鍛錬着に着替える。
日課になりつつある、朝食前の軽いランニングに向かった。
冬の朝は張り詰める様に寒い。顔や耳が寒さで痛くなるが、雲一つない快晴で空気が清々しい。
庭で軽くストレッチをして、いつものランニングコースを走り出した。
すれ違う警備兵や庭師らに朝の挨拶を走りながら交わしつつ、休むことなく走り続けて軽く汗を流した。
広い敷地内を一周して庭に戻って来ると、最近レティシアとの鍛錬が減ったお陰か、元気いっぱいのシシリーがタオルを持って待っていた。
「おはようございまーす。タオルどうぞー」
「おはようシシリー。ありがとう」
タオルを受け取り額の汗を拭う。以前から、朝のランニングは一人で走ると伝えていた。
「それにしても、よくもまあ飽きずに続きますねー。あ、レティシア様。旦那様からの伝言で、朝食後に執務室に来るようにとの事ですー」
「そう、わかった。じゃあ着替えに戻ろっか」
「はいー」
朝にランニングをする様になり、朝食が遅めになる事があるので最近は一人で食べる事もある。
今日も遅くなったので着替えを済ませた後、一人で朝食を食べてそのまますぐに執務室へ向かった。
***
応答を待って執務室に入ると、レオナルドはソファーに座っていた。隣にはルシータも華麗に座っていた。
「お待たせしました」
「大丈夫だ。座りなさい」
レティシアがソファーに座ると、今回呼び出された経緯をレオナルドが話し出した。
「レティが学園に入学する事が、決まっただろう。なので、事前に少しだけ魔術学園の説明をしておこうと思う。レティは色々と規格外な事が多いからな。気を付けなければならない事が多い」
「気を付けなければならない事?」
「そう! 例えば変装石だ!!」
「お母様。変装石って、姿を変えることの出来る魔導具だよね? それが何か問題なの?」
「……来年届くであろう、入学案内にも記載されていることだが、変装石は優れた魔導具であるが、それゆえと言うべきか。使用中、ある副作用的な要素が現れる」
「ふっ副作用……」
レオナルドの何やら物騒な薬の様な言い回しに、緊張が走る。
ルシータが身を乗り出すと、続きを引き継いだ。
「変装石を使用している間、その者にとって一番強い感情、例えば願い、想い、欲望など。本来、心の奥に仕まっておくべき感情が表面化してしまう。簡単に言うと、つまり! 性格が変わってしまう事があるんだ!!」
「……え?」
「シータの言う通り。……人によっては、全くの別人になると言っても良い」
「……ぅえええぇぇ?!」
(なんじゃそりゃーー!? それじゃあ誰が誰だか、本当に分からなくなるって事じゃないか!!)
「しかし、魔力の質は変化しない為、得意属性は意図的に隠すかしないと個人判別の材料になってしまう。レティシアの場合、世間では光と風の二属性と周知されている。この事を気に留める必要がある」
「お父様……。いつの間にかそんな設定にしてたんだ……」
「レティ! 正体を見破られると、即退学になるんだ!! 気を引き締めないと、卒業出来なくなってしまうぞ!!」
「え!? そうなの!?」
「まあ、入学初日に正体を晒してすぐ帰って来ても、勿論構わない」
「お父様……。しません、そんな事」
ルシータが呆れたように、レオナルドを見た。
「レオ、心配なのは分かるが、いい加減少しは子離れをしてはどうだ! いずれは私達のように、学園で好きな相手が出来るかもしれないだろう!!」
「……そんなモノ、レティはわざわざ作らなくても、いいだろう」
「全く!! 変装石のお陰で本音を知る事が出来たから、私達は結婚出来たことを忘れたのか? レティにだって、本音で話せる相手が必要だとは思わないのかい?」
「しかしだな……」
「ちょ、ちょっと待って二人共! 私の為に、色々と考えてくれてありがとう。コホン。……とりあえず、まずは二人の馴れ初めエピソードからお聞かせ下さい」
姿勢を正し真面目な顔で尋ねるレティシアに、ルシータは一瞬ポカンとした顔をしたが、思い出したように大声で笑い出した。
「……プッ、ハハハハ!! そ、そう言えば、以前から聞きたがって、いたな!!」
「却下だ。とりあえず、卒業する気があるのなら、正体を上手く隠す方法を模索してみなさい。詳しい内容は、入学案内に記載されているのを確認すればいい。話は以上だ」
レオナルドは、テーブルに置いてあるガラスのベルを鳴らした。
このベルは実は魔導具で、ベルの音の波長を魔力で変える事で、特定の従者だけに知られる事ができるらしい。
直ぐにシシリーがやってきた。一応扉から。
「話は終わった。レティシアを連れて行ってくれ」
「はいー、了解致しましたー! では参りましょうか、レティシア様ー!」
「ちょちょっと、シシリー! まだ二人に、聞きたいことが……!」
「ハイハイー、参りますよー!」
シシリーに急かされ、強制的に追い出された。
頑なにラブロマンスを隠したがるレオナルドを訝しむが、とりあえず変装石が、かなり特殊な魔導具である事が分かった。
(変装石に似た魔法を編み出せたら、変装魔法みたいなのが使えるかも。そうしたら気兼ねなく、こっそり外出とか出来そう! まあ、警備の厳しい我が家では無理だろうけど。でも学園でならイケるかもしれない!)
新たな可能性が見えて内心ほくそ笑んだ。学園入学までに、やはり鍛錬に集中しなければならない。
「シシリー、久しぶりに、一緒に鍛錬しようか!」
「ひいいいぃぃぃ?!」
その日から、再び萎びたシシリーを見る事が増えた。
やがてシシリーが『姉さん……私、燃え尽きたぜ……真っ白にな……』と言い残して、白い灰人と化した。
その為、念願だったルシータの直接鍛錬を受けられる事となり、レティシアは確実に剣技の腕を上げていった。
こうして、あっという間に一年が過ぎた。そして年末の朝。
転写書の内容によると、ユリウスは昼頃に帰って来るらしい。
寒さに強いルドルフは外で遊びたいと言ったので、昼食までの時間、庭で一緒に遊ぶ事にした。
元気いっぱいのルドルフは寒さで顔を赤らめながらも、時々落ちているドングリを拾ったり、ボールを蹴って追いかけたりと、常に走り回っている。
「みてねーね! どんぐり、いっぱいひろえた!」
「ホントだ、いっぱい拾えたねー。あ、そうだ。このドングリに絵を描いたり、コマにして遊んだり出来るよ?」
「え、おもしろそう! やってみたい!」
「じゃあ、ドングリの中に虫さん居ないか、調べる事から始めようかー?」
「えっ、どんぐりのなか、むしさんいるの!?」
驚いた様子でバケツに入れたドングリを眺めるルドルフが可愛くて、レティシアは優しく微笑んだ。
「二人共、楽しそうだね」
聞き慣れない男性の声が聞こえた。しかし、どこか懐かしい感じがした。
ルドルフが声がした方向に目を向けたので、レティシアも視線を上げ、横を向く。
庭の入り口に、一人の長身の男性が佇んでいた。
後ろ手に結ばれた美しい長髪の金髪が、陽の光を浴びて輝いて見える。
アメジストの瞳が美しい、眉目秀麗なその神々しい御姿に、レティシアは思わず見とれてしまった。
その人物は、ゆっくりと近づいてレティシアの前で立ち止まると、どこかで見たことのある優しい微笑みを浮かべた。
「会いたかった。久しぶりだね、レティ」
腕輪を破壊出来たことでストレスが大幅に減少し、そのお陰で肩の力が抜けた。
ぐっすり寝た翌朝。リフレッシュして気持ちが落ち着いたので、読めていなかった転写書を早速読んでみると。
レティシアに会えない事への懺悔、不満、後悔、懇願…… etc 、数ページに及ぶ物凄い長文が書いてあった。
昨日、返事を書かなかったのが原因かもしれない。
そして、来年は必ず死んでも帰る、と締めくくられていた。
「死んだら帰って来れないでしょうが。……ふふ、本当は帰りたかったんだ。良かった。……そうだ、魔術学園に通うことを決意したから、来年は必ず帰って来てってこちらからも催促しておこう」
他に何を書こうか考えて、魔力暴走しかけた件は書かないでおく事にした。
(心配させても悪いし、…… ○イヤ人に、なりかけたこと何か書きたくない)
当たり障りのない内容で書き終えた後、自分で冬用の鍛錬着に着替える。
日課になりつつある、朝食前の軽いランニングに向かった。
冬の朝は張り詰める様に寒い。顔や耳が寒さで痛くなるが、雲一つない快晴で空気が清々しい。
庭で軽くストレッチをして、いつものランニングコースを走り出した。
すれ違う警備兵や庭師らに朝の挨拶を走りながら交わしつつ、休むことなく走り続けて軽く汗を流した。
広い敷地内を一周して庭に戻って来ると、最近レティシアとの鍛錬が減ったお陰か、元気いっぱいのシシリーがタオルを持って待っていた。
「おはようございまーす。タオルどうぞー」
「おはようシシリー。ありがとう」
タオルを受け取り額の汗を拭う。以前から、朝のランニングは一人で走ると伝えていた。
「それにしても、よくもまあ飽きずに続きますねー。あ、レティシア様。旦那様からの伝言で、朝食後に執務室に来るようにとの事ですー」
「そう、わかった。じゃあ着替えに戻ろっか」
「はいー」
朝にランニングをする様になり、朝食が遅めになる事があるので最近は一人で食べる事もある。
今日も遅くなったので着替えを済ませた後、一人で朝食を食べてそのまますぐに執務室へ向かった。
***
応答を待って執務室に入ると、レオナルドはソファーに座っていた。隣にはルシータも華麗に座っていた。
「お待たせしました」
「大丈夫だ。座りなさい」
レティシアがソファーに座ると、今回呼び出された経緯をレオナルドが話し出した。
「レティが学園に入学する事が、決まっただろう。なので、事前に少しだけ魔術学園の説明をしておこうと思う。レティは色々と規格外な事が多いからな。気を付けなければならない事が多い」
「気を付けなければならない事?」
「そう! 例えば変装石だ!!」
「お母様。変装石って、姿を変えることの出来る魔導具だよね? それが何か問題なの?」
「……来年届くであろう、入学案内にも記載されていることだが、変装石は優れた魔導具であるが、それゆえと言うべきか。使用中、ある副作用的な要素が現れる」
「ふっ副作用……」
レオナルドの何やら物騒な薬の様な言い回しに、緊張が走る。
ルシータが身を乗り出すと、続きを引き継いだ。
「変装石を使用している間、その者にとって一番強い感情、例えば願い、想い、欲望など。本来、心の奥に仕まっておくべき感情が表面化してしまう。簡単に言うと、つまり! 性格が変わってしまう事があるんだ!!」
「……え?」
「シータの言う通り。……人によっては、全くの別人になると言っても良い」
「……ぅえええぇぇ?!」
(なんじゃそりゃーー!? それじゃあ誰が誰だか、本当に分からなくなるって事じゃないか!!)
「しかし、魔力の質は変化しない為、得意属性は意図的に隠すかしないと個人判別の材料になってしまう。レティシアの場合、世間では光と風の二属性と周知されている。この事を気に留める必要がある」
「お父様……。いつの間にかそんな設定にしてたんだ……」
「レティ! 正体を見破られると、即退学になるんだ!! 気を引き締めないと、卒業出来なくなってしまうぞ!!」
「え!? そうなの!?」
「まあ、入学初日に正体を晒してすぐ帰って来ても、勿論構わない」
「お父様……。しません、そんな事」
ルシータが呆れたように、レオナルドを見た。
「レオ、心配なのは分かるが、いい加減少しは子離れをしてはどうだ! いずれは私達のように、学園で好きな相手が出来るかもしれないだろう!!」
「……そんなモノ、レティはわざわざ作らなくても、いいだろう」
「全く!! 変装石のお陰で本音を知る事が出来たから、私達は結婚出来たことを忘れたのか? レティにだって、本音で話せる相手が必要だとは思わないのかい?」
「しかしだな……」
「ちょ、ちょっと待って二人共! 私の為に、色々と考えてくれてありがとう。コホン。……とりあえず、まずは二人の馴れ初めエピソードからお聞かせ下さい」
姿勢を正し真面目な顔で尋ねるレティシアに、ルシータは一瞬ポカンとした顔をしたが、思い出したように大声で笑い出した。
「……プッ、ハハハハ!! そ、そう言えば、以前から聞きたがって、いたな!!」
「却下だ。とりあえず、卒業する気があるのなら、正体を上手く隠す方法を模索してみなさい。詳しい内容は、入学案内に記載されているのを確認すればいい。話は以上だ」
レオナルドは、テーブルに置いてあるガラスのベルを鳴らした。
このベルは実は魔導具で、ベルの音の波長を魔力で変える事で、特定の従者だけに知られる事ができるらしい。
直ぐにシシリーがやってきた。一応扉から。
「話は終わった。レティシアを連れて行ってくれ」
「はいー、了解致しましたー! では参りましょうか、レティシア様ー!」
「ちょちょっと、シシリー! まだ二人に、聞きたいことが……!」
「ハイハイー、参りますよー!」
シシリーに急かされ、強制的に追い出された。
頑なにラブロマンスを隠したがるレオナルドを訝しむが、とりあえず変装石が、かなり特殊な魔導具である事が分かった。
(変装石に似た魔法を編み出せたら、変装魔法みたいなのが使えるかも。そうしたら気兼ねなく、こっそり外出とか出来そう! まあ、警備の厳しい我が家では無理だろうけど。でも学園でならイケるかもしれない!)
新たな可能性が見えて内心ほくそ笑んだ。学園入学までに、やはり鍛錬に集中しなければならない。
「シシリー、久しぶりに、一緒に鍛錬しようか!」
「ひいいいぃぃぃ?!」
その日から、再び萎びたシシリーを見る事が増えた。
やがてシシリーが『姉さん……私、燃え尽きたぜ……真っ白にな……』と言い残して、白い灰人と化した。
その為、念願だったルシータの直接鍛錬を受けられる事となり、レティシアは確実に剣技の腕を上げていった。
こうして、あっという間に一年が過ぎた。そして年末の朝。
転写書の内容によると、ユリウスは昼頃に帰って来るらしい。
寒さに強いルドルフは外で遊びたいと言ったので、昼食までの時間、庭で一緒に遊ぶ事にした。
元気いっぱいのルドルフは寒さで顔を赤らめながらも、時々落ちているドングリを拾ったり、ボールを蹴って追いかけたりと、常に走り回っている。
「みてねーね! どんぐり、いっぱいひろえた!」
「ホントだ、いっぱい拾えたねー。あ、そうだ。このドングリに絵を描いたり、コマにして遊んだり出来るよ?」
「え、おもしろそう! やってみたい!」
「じゃあ、ドングリの中に虫さん居ないか、調べる事から始めようかー?」
「えっ、どんぐりのなか、むしさんいるの!?」
驚いた様子でバケツに入れたドングリを眺めるルドルフが可愛くて、レティシアは優しく微笑んだ。
「二人共、楽しそうだね」
聞き慣れない男性の声が聞こえた。しかし、どこか懐かしい感じがした。
ルドルフが声がした方向に目を向けたので、レティシアも視線を上げ、横を向く。
庭の入り口に、一人の長身の男性が佇んでいた。
後ろ手に結ばれた美しい長髪の金髪が、陽の光を浴びて輝いて見える。
アメジストの瞳が美しい、眉目秀麗なその神々しい御姿に、レティシアは思わず見とれてしまった。
その人物は、ゆっくりと近づいてレティシアの前で立ち止まると、どこかで見たことのある優しい微笑みを浮かべた。
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