嘘つき

simonn

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潜入捜査開始

店長に相談する時

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高橋恭子は、迷っていた。
あのお客様が働きたいといっていたが、あまり良い職場でもない。
毎日が、サバイバルのような感じなのである。
誰かが成果を出せば、成果を出せない人が止めらされる。
そんな職場は、決して少なくない。この世界は、実力主義なのだから。
そう思い切ったように扉を出て休憩室を後にした。店長がいる部屋は、三階にあるのでそこまで階段を使いのぼった。エレベーターもあるのだが、お客様の迷惑になるからあまり乗らないよう心掛けている。
三階につくと、まず店長室に向かった。普段足を踏み入れることは少ないので、
心臓の音が聞こえるくらい緊張した。
「失礼します店長、少しお時間よろしいでしょうか。」
中に入ると、さらに緊張が増した。
右側にソファーがあり、左側には本棚が置いてあった。本棚の本は、難しそうな本ばかりでなく、様々な用途に応用できるものもおいてある。
例えば、幼児本である。このデパートで子育てしながら働いている人は、たくさんいる。その人達の子供の面倒を見るためにおかれたのである。
うちのデパートの店長は、人柄が非常に良いという噂である。
初めてデパートに来た人でも優しく対応するらしい。
他にも、人の子供を自分の子供のように面倒を見るらしい。
そんなことを考えていると、店長が笑顔で答える。
「時間ならたくさんあるよ。忙しい時が欲しいぐらいだ。」
いかにも良いおじさん風な口調だった。
「はい、あの、お客様の一人がここで働きたいとお願いしてきたんですけど。」
「その人は、仕事が出来ると思うか。君から見ての正直な感想でいい。」
「私から見てですか。」
戸惑ってしまった。ここで仕事ができなさそうと答えると、あのお客様は、働けなくなってしまうにちがいない。しかし、こんな重要なことを自分が決めていいのだろうかとも思う。
「私が思うに、仕事をするのに問題はないと思います。」
出来る限り考え出した答えがこれだった。
「なら、いいんじゃないかな。新しく期待を持つことも大切だ。私の座右の銘は
古きを改め新しきを学ぶ。なんだ、どうでもいいかもしれないが、だから最新の物を用意しているんだ。例えば、幼児本なんか何処の会社にもないだろう。うちだけだよ。」
笑いながら答えていた。
店長室を後にして、休憩室から電話をかけようとしたが、電話番号を書いた紙を店長に出したままなのを思い出し、踵を返した。
幸い店長は、中に居なかった。すぐに紙をとり、帰ろうとしたとき、ある紙が目についた。その紙には、リストラ表と書かれており、名前に赤丸がつけられている人がいた。そんなことまでしているのか怖いな。だが、それを見て目を丸くした。
そこには、恭子の親友松子の名前にだけ赤丸がついていた。
店長の噂が嘘であることに気付くのが、こんなに、はやいとは思わなかった。
雨がやみ、窓から漆黒の空を見上げ、座右の銘の意味を深く理解することができたように思えた。
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