魔王に見初められる

うまチャン

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第27話 元聖帝vs現聖帝3

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「ティ、フィ……」

 コウキが発動させた魔法陣が消えて残ったのは、全身大量の血だらけで仰向けに倒れたティフィーだった。
弱々しく開いた眼は生気がなく、顔もガクリと横を向いてしまった。
ティフィーは、コウキに命を奪われてしまったのだ……。

「ははは……! 案外大したことなかったな。七帝で2番目に強いやつだったから、どこまで良い勝負出来るかと思ったけど……このザマか」

「お前……よくもティフィーを……!」

 コウキに対する怒りと、ティフィーを助けられなかった悔しさが入り混じって、俺はギリギリと歯ぎしりをする。

「今度こそ本当に許さんぞ……。俺の大事な友人を殺したことに……俺は許さんぞ!」

「やめてルーカス……! その姿で戦ったら……」

「いや、ここは行かせてくれアンラ」

「―――! だってこれ以上動いたらルーカスの体が本当に壊れちゃうよ!」

 何とかして俺を止めたいらしく、袖を引っ張るアンラ。
俺はしゃがみ、アンラの頭に手を置いた。

「ルーカス?」

「大丈夫だアンラ。この姿になっても、俺はまだ戦えるよ」

「そ、そんなの嘘よ! どんどんルーカスの体を蝕んでいってるのよ―――! ルーカス後ろ!」

「心配いらないさ」

 俺は背後から俺を狙ってくるコウキの攻撃を止めた。

「なっ!」

「えっ……?」

「よしよし、いい感じだ……」

 俺の右手には細くて長い、どす黒い剣が握られていた。
七帝の頃からずっと魔法について独学で学んできたことが、やはりここでも役に立った。
俺と属性が真逆だから調整は難しいけど、感覚的に魔法の構造がわかってくると制御も簡単なものだ。

「―――ルーカス、その剣は何……?」

「これ? 何となく感覚わかってきたから作った」

「は? つ、作った?」

「ああ、これならまだあいつと戦える」

 俺はアンラを抱きしめた。

「ル、ルーカス?」

「何も心配するなアンラ。俺は安々とここで諦めるわけにはいかない。俺はこれからティフィーの敵を討ってくる。アンラはその間に、フィルたちの手助けをしてほしいんだ」

「で、でも……」

「アンラ、俺はあいつを倒さなきゃここに来た意味がなくなる。リベンジを果たしてスッキリしたいんだよ」

 アンラはしばらく考え込んだ挙げ句、いきなり俺に唇を重ねた。

「―――!?」

「わかったわ……そこまで言うならルーカスの言う通りにする。でも、絶対に死んじゃ嫌だから、ね?」

「わかった、肝に銘じておくよ」

 俺とアンラはお互いコクリと頷き、立ち上がった。
フィールドはもう完全に崩壊し、アーリア王国内の景色に戻っている。
アンラは爆撃音が聞こえる方へと駆けていった。

「良いのか? 彼女を1人にさせておいて」

「アンラは簡単にやられたりしない。だって彼女は魔王なんだからな」

 俺は黒くて禍々しい剣を両手で持ち、コウキに向かって構える。
もうあまり時間をかけたくない。
いち早く国王のところへ向かい、殺すことが必要だからだ。

「最後の一撃で行く! 覚悟すると良い!」

「はんっ! 俺に簡単に止めを刺せると思うなルーカス。それなら俺も最後の一撃とする!」

 お互い最大限の力を発揮したことにより、周りの魔素が渦巻き始めた。
強い風が俺とコウキを囲むように吹き荒れる。

(俺の……リベンジを!)

 俺は自分にそう言い聞かし、士気を高める。
コウキも覚悟を決めたのか、目付きがさっきと全く違う。

「「行くぞ!」」

 お互い向かっていき、剣と剣がぶつかりあった。
剣との衝突とともに、魔素も荒れ狂ったようにさらに風が強くなった。

「ぐっ……ははっ、こんなもんかルーカス!」

「くっ……」

 コウキに押され、少しずつ俺は仰け反っていく。
このままでは負けてしまう。
 でも、こんなところで負けるわけにはいかない!
俺にはアンラがいる、そしてティフィーがいる!

「あああああああ!!!」

「―――!?」

 俺の剣はさらに大きく、厚くなっていき、頑丈な剣へと姿を変えた。
どんどん力がみなぎっていくように感じていき、コウキを押し返していく。

「俺はお前なんかに負けるもんかあ!」

「なっ! あっが……」

 コウキの聖剣にヒビが入り始め、バキンッ! という音が鳴ると、その聖剣は割れてしまった。
そして、そのまま俺の剣が、コウキの体を斜めに切り裂いた。
大量の血しぶきが飛び散り、コウキはそのまま倒れてしまった。

「はあ、はあ……ふう……」

「はあ、はあ……」

 俺は血がついた剣を振り下ろして血を払い、仰向けに倒れたコウキの元へ歩み寄った。
コウキは俺の顔から眼を離さず、俺を見上げている。
諦めたのか、もう戦う気力も抵抗する様子もなかった。
俺はしゃがむと、コウキの傷口に手をかざす。

「な、お前何してるんだ!?」

「別にお前を殺そうなんて最初から思ってなかったしな」

「なんで俺に回復魔法をかけるんだ!? お前の敵だろ? リベンジしてきたんだろ? 俺が憎いんだろ? なら俺を殺せばいいだろ!?」

「確かにお前のことは憎い。七帝に入って早々、俺を見下してこき使って来たのは俺は許さない」

「なら! 俺を殺すことが出来る理由があるじゃねえかよ!」

「コウキ、俺はある計画をアンラと立てているんだ」

「なんだ、七帝を全員排除するのか?」

「いや、違う」

 ある程度回復出来たところで俺は立ち上がり、急いでティフィーのところへ駆け寄った。
体はもう冷たくなっている。
ティフィーの生命が感じられない姿に、俺は目頭が熱くなった。

「ごめんなティフィー……。もし生きていたら、コウキが改心するところを一緒に見られたのにな……。でも、大丈夫だ。ティフィーにはもう少し居てもらわないと、俺とアンラの計画がなくなってしまうんだ」

 俺はティフィーに向かって両手をかざすと、巨大な魔法陣を形成した。
俺が七帝にいた頃からずっと探してきた究極の光属性の魔法。
それが……

「『イイニーシュ』!」

 そう唱えると、光属性の魔素がティフィーの体内へと入っていく。
これこそが俺が探し求めた魔法、蘇生魔法だ。
ほぼ禁忌の領域に入るこの魔法はかなりの力と精神を使う。

「くっ……もうちょっと、もうちょっとで生き返るぞ……」

 戦いでだいぶ魔力を消費しているため、体が耐えきれなくなっている前兆で腕が震え始めている。
でもここでやめてしまったらティフィーは二度と助からない。
死亡した人を蘇生できるからと言って、いつでも生き返らせることはできない。
すぐに蘇生魔法をかけないと100パーセント助からない。

「ん……あれ? ルーカス、なの?」

「はあ、はあ……良かった生き返って……」

「―――! ルーカス!?」

 ティフィーの意識が戻ったことがわかったところで、俺はよろけてばたりと倒れた。
もう魔力が限界を迎えたことで力が抜け、立てることができなくなってしまったのだ。
ティフィーは俺の頭を持ち上げて膝の上に乗せた。

「わたし……死んじゃったかと思って……」

「実際死んだよティフィーは。だけどコウキとの戦いが終わって、ティフィーに蘇生魔法をかけたんだ。だからティフィーは今生きてるだろ?」

「そんな……ルーカスって本当にすごい人だよね。ますます尊敬するし、もっとルーカスのこと好きになっちゃいそう」

「―――は?」

「実はねわたし……ルーカスが七帝にいたときから好きだったの。男の人として……」

「―――!?」

 俺は思いもよらない言葉に固まってしまった。
あのティフィーが、俺のこと好きだって?
しかも男としてって言ったよな?
これは困ったなあ……。

「これからもずっとルーカスの傍に居る気だよ?」

「―――ティフィー、ごめん。気持ちは嬉しいけど、俺はアンラがいる。アンラと出会ってから俺の生活が一気に変わったし、毎日が楽しいし、それに何より……アンラと婚約もしてるんだ。だから……」

 心苦しいが、この世界ではハーレムというものがないせいで、妻を何人も持つことが許されていない。
それはティフィーだってわかっているはずだ。
 ただ、これで縁を切られることが一番怖いせいで内心ビクビクしている。
見つめられるティフィーの眼がめちゃくちゃ怖い……。
 引っ叩いたりしないでくれよ……?
今この体で叩かれたらシャレにならないくらい痛いからな……。

「―――まあそうだよね」

「―――ん?」

「ルーカスはそう返してくるだろうなって思ってたし」

 えっ……どういうこと?
俺が思っていた答えとは全く違う答えが帰ってきた。
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