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第35話 ティフィー・ヒムロの想い
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俺とアンラは無事にシャイタンへと生還を果たした。
シャイタンは俺たちの姿を見た瞬間、歓喜に湧いた。
「「「「魔王様! ルーカス万歳!」」」」
アンラと俺の生還に大喜びするみんなだが、アンラは魔王様と慕われているのに対し、俺は呼び捨てで名前を叫ぶ魔族やモンスターたち。
疑問を抱く者も多いと思うが、実は俺がそうしてくれとお願いしたのだ。
アンラと婚約を結んだということは瞬く間に広がってしまい、位が上がるなら呼び方も変えたほうが良いのだろうかという相談が以前あった。
別に俺は元々はここの出身でアンラのように王家みたいな偉い地位にいるわけでもない。
呼び捨てでもいいから、今まで通りに名前を呼んでほしいと俺は言った。
あまり堅苦しいのは好きじゃないし、居心地が悪い。
それに、年や地位、種族が違くても気軽に接する事ができるという、この国ならではの良いところが俺は好きだ。
だからこそ、俺を特別扱いして欲しくなかったのだ。
「みんなありがとう!」
アンラは俺の隣で、城に続く大通りを歩きながら手を振って歓声に応える。
こんな風景もシャイタンの本当に良いところだ。
やっぱり、俺はこの国が大好きだ……。
「ほら、ルーカスも手を振って!」
「おっとごめんなアンラ。みんな! ありがとな!」
シャイタンは本当に良いところだなと物思いに耽っていると、アンラが俺の袖を引っ張ってそう言った。
俺は慌てて歓声に応えると、俺はぼそっと言った。
「この国はいつまでも続いてほしいな」
「いまさら何言ってるのよルーカス。わたしがいる限りは絶対に悪い方向には行かないし行かせない。だって、わたしが一番好きな国なんだから!」
「ふっ、そうだな!」
◇◇◇
歓声を浴びながら城に入ると、何だか懐かしい感じがした。
そんなに日が経ってない気がするが、やっぱりここにくると帰ってきたなっていう気持ちになる。
「なんか疲れたな今日は……。今日は早く寝るか」
「うん、そうだね。それに、久し振りにベットでルーカスと寝れるから、ね?」
「お、おう……。そうだな……」
アンラの誘ってくるような発言に、俺は顔が熱くなる。
そうだ、寝室でアンラとイチャコラするのは戦いの前以来か。
なんか楽しみだ。
ちょっと嬉しい気持ちになり、ドアノブに手をかけ開けると、
「だー! また負けたじゃねえか!」
「あっはははは! あんた本当に弱いわね……ふふふ……あっはははは……!」
「ホムラこれで何連敗っすか?」
「10連敗」
「ホムラって頭硬い?」
「うっせえ!」
何故か部屋には七帝たちがボードゲームをして騒いでいた。
おい、ここに案内したやつ誰だ?
「なんでお前らがこの部屋にいるんだ?」
「あ、ルーカス帰ってきたんだね」
「何で平然といられるんだ……?」
俺の声に最初に反応したのはティフィーだった。
椅子から立ち上がり、すぐに俺の目の前まで駆け寄って来て笑顔を見せると、手を叩いた。
「みんな! 2人が来たから場所譲らないと!」
「お、帰ってきたのか。お邪魔しました」
「「「「お邪魔しましたあ!」」」」
「何なんだお前ら!?」
ティフィーの合図で、ティフィー意外の七帝はぞろぞろと部屋から出ていく。
一体こいつらは何をしたかったんだ?
ティフィーはみんなが出て行ったのを見届けると、ティフィーは俺を見上げた。
「えっと……そういえば話があるって言ってたよな?」
「うん、アンラもいるから丁度良いね」
「なに? わたしも?」
「ああ、戦いが終わった直後にティフィーに話があるって言われて、アンラも連れてきて欲しいってお願いされたんだ」
「そうだったのね」
アンラは納得したように首を縦に振った。
すると、ティフィーはいきなり真剣な眼差しに変わる。
「あのねルーカス……。あの時ルーカスに言ったよね? わたしがルーカスのこと好きだって」
「あ、ああ、そう言ってたな」
「ルーカスに断られてわたしは内心納得してたんだけど……。でも、やっぱり諦めきれないの……!」
「―――!?」
ティフィーは手を胸に当てながら頬を赤くして視線をそらした。
勿論俺もそうで……。
まさか再度告白されるとは思いもしなかった。
アンラはというと……驚いているようで口を開けて目を大きく見開いていた。
「お願いルーカス! アンラの次で良いから……わたしのこともルーカスの傍に居させてほしいの!」
「―――っ! そ、そんなこと言われてもなあ……。1人に奥さんが2人いることは許されないし……」
「ルーカス知らないの? シャイタンは奥さんを何人持ってもいいのよ?」
「は?」
アンラの口から出たとんでもない発言に、俺は思わずアンラの方を振り向いた。
「別にこの国には規制なんてかけてないし、魔族やモンスターによっては4人とかそれ以上に居たりするわ」
アンラはそう説明してくれたが、どうやらちょっと不満げだった。
彼女はどうやら俺を独り占めしたいらしい。
「ということみたいだけど……。お願いルーカス!」
ティフィーは俺の手を両手で握ってそう言った。
俺はしばらく考え込んだ。
ティフィーに告白され、俺自身は悪くないかなと思った。
彼女とは付き合いが長いし、告白されて内心嬉しかった。
できるのならティフィーとも一緒にいても良いかなと思っている。
しかし、俺の傍にはすでにアンラがいる。
それに彼女とはすでに婚約も交わしているから、急にティフィーを受け入れるとなると、何だか俺がアンラを裏切っているような気がした。
だから……すぐに俺はティフィーのお願いに答えを出すことができなかった。
「「「―――」」」
周りには張り詰めた居心地の悪い空気が漂う。
俺の背中は汗でぐっしょりと濡れている。
俺は考えに考えた。
確かにティフィーと一緒にいるのは楽しい。
もし七帝から追放されないで残っていたとしたら、間違いなくティフィーの傍に居たかもしれない。
でも、追放されて偶然にもこの国に拾われて魔王であるアンラに出会えた。
間違いなく俺の人生に転機をかけてくれた、俺にとって感謝しても感謝しきれない恩人で俺にとってとても大切な存在……。
なら、答えは1つしかない!
「ティフィー。俺の答えを述べてもいいか?」
「う、うん……!」
ティフィーは待ってましたとでも言うように喜んでいる反面、かなり緊張しているような雰囲気だった。
俺の後ろにいるアンラも、恐らく緊張に張り詰めた顔になっているだろう。
「ティフィー、俺に対する想いを伝えてくれてありがとう。でも、やっぱりティフィーのお願いには応えられない……。ごめん……!」
「―――」
俺の答えを聞いた瞬間、ティフィーは一気に暗い顔に変わった。
そうなってしまうのも仕方ないだろう。
自分がずっと想っていた人に、なかなか言い出せないことを勇気を振り絞って伝えたとしても、振られてしまえば一気に心は沈んでいく……。
「確かにティフィーと一緒に居た日々はとても楽しかった。1人籠もって魔法の研究をしている時でも、ティフィーは俺に積極的に話してくれたし……ティフィーには感謝しかないんだ。でも、俺は初めて自分で大切にしたいって想える人ができたんだ。だから……本当にごめん……。でも、ティフィーと話すことは楽しいし、これからも今までみたいな関係でいたいと思っているんだ。だから、いつも通りに話してくれると嬉しいかな」
俺は少しだけ頭を下げた。
俺だってティフィーにこんなことはあまりにも重すぎて言いたくない。
でも、俺の考えを相手に伝えるのは口に出すしかないんだから、俺は重い口を開いてティフィーに伝えた。
彼女はしばらく視線を落として暗い表情をしていたが、何か自分で決めたことでもあったのか、小さくコクリと頷いた。
そして、目に涙を溜めて、ニコリと笑いながら俺を見た。
「ありがとうルーカス。ルーカスの想いを聞けてよかった……。うん、これからもよろしくねルーカス! またわたしのわがままに付き合ってね!」
「ああ、勿論だ!」
ティフィーは元気いっぱいの笑顔を見せると、そのまま立ち去ろうと出口まで駆け抜けると、急に立ち止まった。
そして、俺に向かって振り向いた。
「そうだ、今1つだけわがまま聞いてもらっても良い?」
「お、早速何だ?」
「ちょっとわたしの近くまで来てもらっても良い?」
「分かった」
俺はティフィーの傍まで歩み寄った。
何だか顔が赤いような……?
恐らく、泣いていたからかもしれないな。
「もうちょっと顔近づけて……」
「ん? こうか?」
「そうそう……。ん……」
「「―――!?」」
ティフィーは驚くような行動に出た。
俺が顔を近づけた瞬間、いきなり俺の顔を両手で添えると、俺の頬に唇を当ててきたのだ。
これには俺も、そしてアンラも驚いていた。
ティフィーはしばらくその状態でいた後、ゆっくりと顔を離した。
「ティ、ティフィー……?」
「うん、これで満足!」
その一言だけを残して、ティフィーは部屋を出て右に曲がっていってしまった。
一体満足したとは何のことだったんだろうか?
そんなことを考えていると、アンラが俺の傍にそっと寄り添った。
「良かったの?」
「ああ、これが俺の最終的な答えだ。俺はアンラが一番だから……」
「―――な、何嬉しいこと言ってくるのよ……」
アンラは困った顔をしながらも、なんだかんだ照れているようだ。
そんな表情が、俺にとってはとてつもなく可愛く見える。
だから、俺は彼女に近づいて唇を重ねた。
「―――今日は随分と積極的じゃないの?」
「だって、アンラがずるいくらいに可愛いから……」
「それはルーカスだってそうじゃないの。ずるいくらいにかっこいいんだからね?」
アンラは少し恥ずかしそうにしながらそう言った。
ああ、またこの雰囲気が漂ってきた気がする。
甘くて、眼の前の人しか見えていないこの感じ……。
ここから先は、もう2人だけの空間だ。
「ねえルーカス……。今日は良いでしょ……?」
「勿論だよ。というか、俺はいつでも良いよ」
「もう、ルーカスって結構エッチなんだから……」
「そうか? 男ならこれが普通だと思うぞ?」
「ふふっ……。今日は存分に満足しよう?」
「そうだな……」
俺たちはもう一度唇を重ねると、2人でベットへと向かう。
そしてベットに座ると、お互い顔を見つめ合った。
シャイタンは俺たちの姿を見た瞬間、歓喜に湧いた。
「「「「魔王様! ルーカス万歳!」」」」
アンラと俺の生還に大喜びするみんなだが、アンラは魔王様と慕われているのに対し、俺は呼び捨てで名前を叫ぶ魔族やモンスターたち。
疑問を抱く者も多いと思うが、実は俺がそうしてくれとお願いしたのだ。
アンラと婚約を結んだということは瞬く間に広がってしまい、位が上がるなら呼び方も変えたほうが良いのだろうかという相談が以前あった。
別に俺は元々はここの出身でアンラのように王家みたいな偉い地位にいるわけでもない。
呼び捨てでもいいから、今まで通りに名前を呼んでほしいと俺は言った。
あまり堅苦しいのは好きじゃないし、居心地が悪い。
それに、年や地位、種族が違くても気軽に接する事ができるという、この国ならではの良いところが俺は好きだ。
だからこそ、俺を特別扱いして欲しくなかったのだ。
「みんなありがとう!」
アンラは俺の隣で、城に続く大通りを歩きながら手を振って歓声に応える。
こんな風景もシャイタンの本当に良いところだ。
やっぱり、俺はこの国が大好きだ……。
「ほら、ルーカスも手を振って!」
「おっとごめんなアンラ。みんな! ありがとな!」
シャイタンは本当に良いところだなと物思いに耽っていると、アンラが俺の袖を引っ張ってそう言った。
俺は慌てて歓声に応えると、俺はぼそっと言った。
「この国はいつまでも続いてほしいな」
「いまさら何言ってるのよルーカス。わたしがいる限りは絶対に悪い方向には行かないし行かせない。だって、わたしが一番好きな国なんだから!」
「ふっ、そうだな!」
◇◇◇
歓声を浴びながら城に入ると、何だか懐かしい感じがした。
そんなに日が経ってない気がするが、やっぱりここにくると帰ってきたなっていう気持ちになる。
「なんか疲れたな今日は……。今日は早く寝るか」
「うん、そうだね。それに、久し振りにベットでルーカスと寝れるから、ね?」
「お、おう……。そうだな……」
アンラの誘ってくるような発言に、俺は顔が熱くなる。
そうだ、寝室でアンラとイチャコラするのは戦いの前以来か。
なんか楽しみだ。
ちょっと嬉しい気持ちになり、ドアノブに手をかけ開けると、
「だー! また負けたじゃねえか!」
「あっはははは! あんた本当に弱いわね……ふふふ……あっはははは……!」
「ホムラこれで何連敗っすか?」
「10連敗」
「ホムラって頭硬い?」
「うっせえ!」
何故か部屋には七帝たちがボードゲームをして騒いでいた。
おい、ここに案内したやつ誰だ?
「なんでお前らがこの部屋にいるんだ?」
「あ、ルーカス帰ってきたんだね」
「何で平然といられるんだ……?」
俺の声に最初に反応したのはティフィーだった。
椅子から立ち上がり、すぐに俺の目の前まで駆け寄って来て笑顔を見せると、手を叩いた。
「みんな! 2人が来たから場所譲らないと!」
「お、帰ってきたのか。お邪魔しました」
「「「「お邪魔しましたあ!」」」」
「何なんだお前ら!?」
ティフィーの合図で、ティフィー意外の七帝はぞろぞろと部屋から出ていく。
一体こいつらは何をしたかったんだ?
ティフィーはみんなが出て行ったのを見届けると、ティフィーは俺を見上げた。
「えっと……そういえば話があるって言ってたよな?」
「うん、アンラもいるから丁度良いね」
「なに? わたしも?」
「ああ、戦いが終わった直後にティフィーに話があるって言われて、アンラも連れてきて欲しいってお願いされたんだ」
「そうだったのね」
アンラは納得したように首を縦に振った。
すると、ティフィーはいきなり真剣な眼差しに変わる。
「あのねルーカス……。あの時ルーカスに言ったよね? わたしがルーカスのこと好きだって」
「あ、ああ、そう言ってたな」
「ルーカスに断られてわたしは内心納得してたんだけど……。でも、やっぱり諦めきれないの……!」
「―――!?」
ティフィーは手を胸に当てながら頬を赤くして視線をそらした。
勿論俺もそうで……。
まさか再度告白されるとは思いもしなかった。
アンラはというと……驚いているようで口を開けて目を大きく見開いていた。
「お願いルーカス! アンラの次で良いから……わたしのこともルーカスの傍に居させてほしいの!」
「―――っ! そ、そんなこと言われてもなあ……。1人に奥さんが2人いることは許されないし……」
「ルーカス知らないの? シャイタンは奥さんを何人持ってもいいのよ?」
「は?」
アンラの口から出たとんでもない発言に、俺は思わずアンラの方を振り向いた。
「別にこの国には規制なんてかけてないし、魔族やモンスターによっては4人とかそれ以上に居たりするわ」
アンラはそう説明してくれたが、どうやらちょっと不満げだった。
彼女はどうやら俺を独り占めしたいらしい。
「ということみたいだけど……。お願いルーカス!」
ティフィーは俺の手を両手で握ってそう言った。
俺はしばらく考え込んだ。
ティフィーに告白され、俺自身は悪くないかなと思った。
彼女とは付き合いが長いし、告白されて内心嬉しかった。
できるのならティフィーとも一緒にいても良いかなと思っている。
しかし、俺の傍にはすでにアンラがいる。
それに彼女とはすでに婚約も交わしているから、急にティフィーを受け入れるとなると、何だか俺がアンラを裏切っているような気がした。
だから……すぐに俺はティフィーのお願いに答えを出すことができなかった。
「「「―――」」」
周りには張り詰めた居心地の悪い空気が漂う。
俺の背中は汗でぐっしょりと濡れている。
俺は考えに考えた。
確かにティフィーと一緒にいるのは楽しい。
もし七帝から追放されないで残っていたとしたら、間違いなくティフィーの傍に居たかもしれない。
でも、追放されて偶然にもこの国に拾われて魔王であるアンラに出会えた。
間違いなく俺の人生に転機をかけてくれた、俺にとって感謝しても感謝しきれない恩人で俺にとってとても大切な存在……。
なら、答えは1つしかない!
「ティフィー。俺の答えを述べてもいいか?」
「う、うん……!」
ティフィーは待ってましたとでも言うように喜んでいる反面、かなり緊張しているような雰囲気だった。
俺の後ろにいるアンラも、恐らく緊張に張り詰めた顔になっているだろう。
「ティフィー、俺に対する想いを伝えてくれてありがとう。でも、やっぱりティフィーのお願いには応えられない……。ごめん……!」
「―――」
俺の答えを聞いた瞬間、ティフィーは一気に暗い顔に変わった。
そうなってしまうのも仕方ないだろう。
自分がずっと想っていた人に、なかなか言い出せないことを勇気を振り絞って伝えたとしても、振られてしまえば一気に心は沈んでいく……。
「確かにティフィーと一緒に居た日々はとても楽しかった。1人籠もって魔法の研究をしている時でも、ティフィーは俺に積極的に話してくれたし……ティフィーには感謝しかないんだ。でも、俺は初めて自分で大切にしたいって想える人ができたんだ。だから……本当にごめん……。でも、ティフィーと話すことは楽しいし、これからも今までみたいな関係でいたいと思っているんだ。だから、いつも通りに話してくれると嬉しいかな」
俺は少しだけ頭を下げた。
俺だってティフィーにこんなことはあまりにも重すぎて言いたくない。
でも、俺の考えを相手に伝えるのは口に出すしかないんだから、俺は重い口を開いてティフィーに伝えた。
彼女はしばらく視線を落として暗い表情をしていたが、何か自分で決めたことでもあったのか、小さくコクリと頷いた。
そして、目に涙を溜めて、ニコリと笑いながら俺を見た。
「ありがとうルーカス。ルーカスの想いを聞けてよかった……。うん、これからもよろしくねルーカス! またわたしのわがままに付き合ってね!」
「ああ、勿論だ!」
ティフィーは元気いっぱいの笑顔を見せると、そのまま立ち去ろうと出口まで駆け抜けると、急に立ち止まった。
そして、俺に向かって振り向いた。
「そうだ、今1つだけわがまま聞いてもらっても良い?」
「お、早速何だ?」
「ちょっとわたしの近くまで来てもらっても良い?」
「分かった」
俺はティフィーの傍まで歩み寄った。
何だか顔が赤いような……?
恐らく、泣いていたからかもしれないな。
「もうちょっと顔近づけて……」
「ん? こうか?」
「そうそう……。ん……」
「「―――!?」」
ティフィーは驚くような行動に出た。
俺が顔を近づけた瞬間、いきなり俺の顔を両手で添えると、俺の頬に唇を当ててきたのだ。
これには俺も、そしてアンラも驚いていた。
ティフィーはしばらくその状態でいた後、ゆっくりと顔を離した。
「ティ、ティフィー……?」
「うん、これで満足!」
その一言だけを残して、ティフィーは部屋を出て右に曲がっていってしまった。
一体満足したとは何のことだったんだろうか?
そんなことを考えていると、アンラが俺の傍にそっと寄り添った。
「良かったの?」
「ああ、これが俺の最終的な答えだ。俺はアンラが一番だから……」
「―――な、何嬉しいこと言ってくるのよ……」
アンラは困った顔をしながらも、なんだかんだ照れているようだ。
そんな表情が、俺にとってはとてつもなく可愛く見える。
だから、俺は彼女に近づいて唇を重ねた。
「―――今日は随分と積極的じゃないの?」
「だって、アンラがずるいくらいに可愛いから……」
「それはルーカスだってそうじゃないの。ずるいくらいにかっこいいんだからね?」
アンラは少し恥ずかしそうにしながらそう言った。
ああ、またこの雰囲気が漂ってきた気がする。
甘くて、眼の前の人しか見えていないこの感じ……。
ここから先は、もう2人だけの空間だ。
「ねえルーカス……。今日は良いでしょ……?」
「勿論だよ。というか、俺はいつでも良いよ」
「もう、ルーカスって結構エッチなんだから……」
「そうか? 男ならこれが普通だと思うぞ?」
「ふふっ……。今日は存分に満足しよう?」
「そうだな……」
俺たちはもう一度唇を重ねると、2人でベットへと向かう。
そしてベットに座ると、お互い顔を見つめ合った。
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