死の間際、あなたは親友ですか?

papporopueeee

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最終日:朝焼けの中、涙を拭って微笑んで

最後の朝

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「ん……」

 目を開けた直後には視界が滲んでいて。
 自分が泣いているのだと気づくまでにそう時間はかからなかった。

「……うわ、びちょびちょ」

 触らなくてもわかる目元の濡れ具合。
 涙で枕を濡らすだなんていつ振りだろうか。

 目が覚めた直後だというのに、もう夢の内容はほとんど覚えていない。
 ただ、あまり良い夢ではなかったような気がする。

 時刻を確認すると午前三時を少し過ぎたところだった。
 起きる時間にはまだ早い。
 しかし寝直すような気分でもない。

 人生最後かもしれない日だ。
 こんな時間に起きてしまったのも何か意味があるのかもしれない。
 ボクはこのまま起きていることにした。

「っ……つうっ……!」

 起き上がると少し体が痛んだ。
 連日ソファで寝ているせいだろう。
 背中の筋肉と腰が固まってしまっているのを感じる。

 以前は抄が家に泊まる時もベッドはボクが使用していたが、今は違う。
 体が少女なためにソファで寝かせることに気が引けてしまい、ボクがソファに甘んじている。

「こんなことなら、もっと良いソファを買っておくべきだったな……」

 元々ボクの家にはソファは無かった。
 しかし頻繁に遊びに来る抄が欲しがったため、割り勘で買ったのだ。

 こんなことになるならソファベッドを買っておくべきだったと後悔する。
 一日くらいならいいが、連日となるとそろそろ体も限界だ。

「……」

 無意識に、視線が寝室の扉へと吸い寄せられた。
 あの扉の先には、ベッドの上で眠っている少女がいる。

 少なからず揺れ動く心。
 同年代の異性と同じ屋根の下で過ごすなんてことはなかったから。
 中身が抄であっても、外見が少女だから。

 しかし、夜這いをしようなんて気はボクには微塵もない。
 このまま死ぬのだとしても、それだけはあってはならない。

 少女に女性としての魅力が無いわけじゃない。
 むしろ、抄の願望によって生まれた少女は魅力的すぎるくらいだ。

 けれど少女が夜這いを望んでいるはずがない。
 それは女性全般に言えることであり。
 何より彼女は抄の記憶を持っていて、抄と同一の人格を持ってしまっている。

 男性ならば誰だって入れられる側には抵抗を示すだろう。
 肉体の性が変わったとしても、そう簡単に精神が順応できるはずがない。

 それに加え、抄は処女にトラウマを持っている。
 セックスが好きだと公言する抄が処女を忌避する原因となった、処女喪失の痛みに苦しむ少女との睦事。
 少女はその記憶を引き継いでいる。

 ボクだって男なのだから性欲はある。
 少女の見目や振る舞いによってそれを刺激され、心乱されることはある。

 でも、彼女をそのはけ口にしたいとは思わない。
 レストランでトラウマを語る少女の顔。
 あの表情を思い出すだけで、ボクの中の男は途端に大人しくなる。

「そもそも、行為中にショウの喋り方されるのもな……」

 世の中には男勝りな話し方をする女性もいるのだろうが、あの少女の口調は抄そのものだ。

 セックスの最中に親友を想起させられるなんて……きっとそれは、あまりいい気分ではないだろう。

「……気分が悪くなってきた」

 気分転換に外に行こう。
 この時間だと少し寒いだろうが、考え事をするならそれくらいの方が丁度いい。

 静かに眠っているであろう少女に心の中で挨拶をして、ボクは自分の家を出た。
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