18 / 67
聖剣に仇なす者たち
チェル・ユーリィ、並びにカイナ・ユーリィ御身の暗殺に助力した逆徒に間違いありません
しおりを挟む
城の地下にある牢獄。必要最低限の灯りしかなく、風通しが悪い閉塞感のある空間。チェルによる私刑が行われるようになってからは、人が収容されることも珍しくなった其処に、裏切り者は捕らわれていた。
「貴公がダズ・ブラウンで間違いないか?」
髪を剃り丸めた頭と、年齢がシワという形で表出し始めた顔。低めの身長ながらも、日々の鍛錬によって膨れ上がった筋肉がボロ布のような囚人着からはみ出している。
ダズは正に武人といった外見であり、カイナ自身も城で何度か見かけたことがあった。
「……まさか、こんなところに王子様が自ら来られるなんて思いもしませんでしたよ」
「まずは、こちらの質問に答えて欲しいものだ」
「如何にも。私の名前はダズ・ブラウン。イクスガルド兵団の第2小隊に20年近く所属した身でありながら、チェル・ユーリィ、並びにカイナ・ユーリィ御身の暗殺に助力した逆徒に間違いありません」
ダズは鉄格子越しに立つカイナに向けて膝をつき、頭を下げた。カイナよりも10歳以上年上でありながらも、その態度にはラノイよりもよっぽどカイナへの敬意が込められており、とても国を裏切った人間の所作には見えなかった。
「して、王子様が斯様な場所にて何の御用でしょうか?」
「わかっているだろう。貴公が裏切った理由、それを知るためにここまで来た」
「……」
頭を下げたまま口を噤むダズ。その頭部から足に至るまで、全身には拷問の痕が刻まれていた。足の指にまで拷問は及んでおり、赤黒く染まった爪ではもはや痛みでまともに歩くことも難しいだろう。
他国の捕虜に対する拷問は国際問題になりかねないが、自国の兵士の扱いまでは他国は干渉できない。ダズは裏切りが発覚してからずっと鞭打ちを受け続け、それでも裏切りの理由を吐露することはなかった。
裏切り者ではあるものの、カイナはダズの忍耐力に感服しており、同時に自国の兵士たちに対する恐怖も感じていた。
ダズは今朝までは仲間であった兵士だ。それにも関わらず、裏切りが発覚した途端にここまでの拷問をできるものだろうか。
「そこまで痛みつけられても尚、貴公は喋らなかった。自身の裏切りはあっさりと認めておきながらも、その理由はどれだけ拷問を受けようとも話さない。だから、わざわざ俺は此処まで来たんだ」
「……まさかとは思いますが、御身になら私が口を割るとお思いで?」
嘲るような物言いをしながら、ダズは頭を上げた。カイナを見上げるその瞳には、確かな敵意が宿っていた。
「違うな。そもそも、貴公が裏切った理由を知るのに拷問など必要無く、むしろ逆効果だ。素性を調べれば自ずと推測できる……よほどチェルに心酔した人間でもなければな」
ダズはしばらく押し黙った後、観念したように自嘲気味に息を漏らした。
報告を受けなくともわかる。ダズを拷問したのは、悪事を働いた人間であれば老若男女問わず殺すチェルの思想に感化された兵士だ。
「ダズ・ブラウン、貴公はその両親をチェルに殺されている。チェルによる犠牲者の数も合わせて考慮すれば、貴公の正義心に火をつけ、チェルの暗殺に協力する理由としては十分だと俺は判断している」
彼らにはわからないのだ。チェルに対して国を裏切るほどの恨みを持つ人間が居るなど露ほども思っていない。チェルの行いは絶対的な正義であり、例え家族であろうとも悪人なのだから殺されても仕方ないと本気で思っている。だからダズの真意に気づいた上で、ありえないと捨て置き、意味の無い拷問を続けてしまう。
仇であるチェルの信奉者からそんな拷問を続けたところでダズが口を割るはずも無く、その意思をより強固にするばかりだったことろう。
「貴公がダズ・ブラウンで間違いないか?」
髪を剃り丸めた頭と、年齢がシワという形で表出し始めた顔。低めの身長ながらも、日々の鍛錬によって膨れ上がった筋肉がボロ布のような囚人着からはみ出している。
ダズは正に武人といった外見であり、カイナ自身も城で何度か見かけたことがあった。
「……まさか、こんなところに王子様が自ら来られるなんて思いもしませんでしたよ」
「まずは、こちらの質問に答えて欲しいものだ」
「如何にも。私の名前はダズ・ブラウン。イクスガルド兵団の第2小隊に20年近く所属した身でありながら、チェル・ユーリィ、並びにカイナ・ユーリィ御身の暗殺に助力した逆徒に間違いありません」
ダズは鉄格子越しに立つカイナに向けて膝をつき、頭を下げた。カイナよりも10歳以上年上でありながらも、その態度にはラノイよりもよっぽどカイナへの敬意が込められており、とても国を裏切った人間の所作には見えなかった。
「して、王子様が斯様な場所にて何の御用でしょうか?」
「わかっているだろう。貴公が裏切った理由、それを知るためにここまで来た」
「……」
頭を下げたまま口を噤むダズ。その頭部から足に至るまで、全身には拷問の痕が刻まれていた。足の指にまで拷問は及んでおり、赤黒く染まった爪ではもはや痛みでまともに歩くことも難しいだろう。
他国の捕虜に対する拷問は国際問題になりかねないが、自国の兵士の扱いまでは他国は干渉できない。ダズは裏切りが発覚してからずっと鞭打ちを受け続け、それでも裏切りの理由を吐露することはなかった。
裏切り者ではあるものの、カイナはダズの忍耐力に感服しており、同時に自国の兵士たちに対する恐怖も感じていた。
ダズは今朝までは仲間であった兵士だ。それにも関わらず、裏切りが発覚した途端にここまでの拷問をできるものだろうか。
「そこまで痛みつけられても尚、貴公は喋らなかった。自身の裏切りはあっさりと認めておきながらも、その理由はどれだけ拷問を受けようとも話さない。だから、わざわざ俺は此処まで来たんだ」
「……まさかとは思いますが、御身になら私が口を割るとお思いで?」
嘲るような物言いをしながら、ダズは頭を上げた。カイナを見上げるその瞳には、確かな敵意が宿っていた。
「違うな。そもそも、貴公が裏切った理由を知るのに拷問など必要無く、むしろ逆効果だ。素性を調べれば自ずと推測できる……よほどチェルに心酔した人間でもなければな」
ダズはしばらく押し黙った後、観念したように自嘲気味に息を漏らした。
報告を受けなくともわかる。ダズを拷問したのは、悪事を働いた人間であれば老若男女問わず殺すチェルの思想に感化された兵士だ。
「ダズ・ブラウン、貴公はその両親をチェルに殺されている。チェルによる犠牲者の数も合わせて考慮すれば、貴公の正義心に火をつけ、チェルの暗殺に協力する理由としては十分だと俺は判断している」
彼らにはわからないのだ。チェルに対して国を裏切るほどの恨みを持つ人間が居るなど露ほども思っていない。チェルの行いは絶対的な正義であり、例え家族であろうとも悪人なのだから殺されても仕方ないと本気で思っている。だからダズの真意に気づいた上で、ありえないと捨て置き、意味の無い拷問を続けてしまう。
仇であるチェルの信奉者からそんな拷問を続けたところでダズが口を割るはずも無く、その意思をより強固にするばかりだったことろう。
0
あなたにおすすめの小説
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる