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聖剣に仇なす者たち
カイナ兄が許してくれないと移動できない
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ラノイの言葉の意味がわからず、カイナは聞き返した。
一兵士に過ぎないラノイには追い出される謂れがあろうと、王子であるカイナには無い。不公平と言われようとも、そもそもラノイとカイナでは立場が異なるのだから不公平も何もない。
「私とカイナ様は対立した意見を持っております。そんな中で私だけが居なくなっては、カイナ様がごり押しでご自分の案を通すこともできてしまうではないですか! そんな理不尽は許されません!」
ラノイの声にも、瞳にも、嘘や誤魔化しは宿っていなかった。ただカイナを道連れにするための理由付けではなく、本心から理不尽と不公平をラノイは訴えていた。
「……わかった」
誰の同意も得ないままに2択を迫った口で、よくもそのような言葉を吐けたものだ。そんな文句を吞み込んで、カイナはラノイに同意を示した。誰が何を言おうとも、カイナが従わない限りラノイは退室を拒むであろう。
ラノイに引きずり出された形ではあったが、裏切り者に対するカイナの考えは述べた。後のことは王と元老院に任せ、その決定に従う他ないだろう。民を傷つけずにすむ結論になることを願うばかりだった。
元老院の面々とフートラ王に断りを入れて、ラノイと共に退室するカイナ。その背に、無言で視線を突き刺し続ける人物が居た。
「…………」
「……チェルも出るか?」
「うん、そうする」
その言葉を待っていたと言わんばかりに、チェルはカイナよりも先んでて会議室を出た。
「では、私はこれにて失礼いたします。まだ仕事も残っていますので」
部屋から出るや否や、ぶっきらぼうにそれだけ言い放ちラノイは歩き去ってしまった。あの様子では、ラノイの中のカイナの評価は地に落ちていることだろう。
王子であるカイナと若い兵士であるラノイは、共にイクスガルドの未来を背負う仲間である。そんなラノイとの間にわだかまりを残してしまっては、後々支障が出かねない。カイナとしてはフォローの機会が欲しいところではあったが、しばらくは難しいだろう。
「カイナ兄、部屋までおんぶして」
「城に帰ってくるまでにもずっと寝てたんだ。墓地まで歩いて消耗した体力なんて、とっくに回復しているだろう」
「体力はね。筋肉がもう限界……痛みで張り裂けそう……」
若く虚弱な身体には筋肉痛が数時間でやってくるらしい。そんなどうでもいい知識を頭の片隅に置きながら、カイナはチェルを放置してラノイとは反対方向へと歩き出した。
おんぶをせがむほどに疲れているのなら、チェルは今日はもう街には出ないだろう。カイナがチェルのお目付けをする必要は無く、城の中でチェルを放っておいたところで大した問題は無い。そう判断したカイナであったが、後に後悔することになるのであった。
「ふーん……そういうことするんだ……」
1時間後、カイナは城のメイドに言われ会議室へと戻ることになる。まだ会議が行われている部屋の前にはチェルが寝転がっており、曰く「カイナ兄に床で寝てろって言われたから寝てるだけ。カイナ兄が許してくれないと移動できない」とのことで、事情を知らない者たちがどうすることもできず困り果てていた。
「……これが楽しいのか?」
「別に……」
荷物を扱うようにチェルを小脇に抱えて問うと、言葉通り無感情な声でチェルは応えた。
いったいこの駄々に何の意味があったのだろうか。誰の得にもなっていないのではないか。そんな疑問とやりきれなさを心の奥底に留めながらチェルの自室に向かい、チェルをベッドに放り投げるカイナであった。
一兵士に過ぎないラノイには追い出される謂れがあろうと、王子であるカイナには無い。不公平と言われようとも、そもそもラノイとカイナでは立場が異なるのだから不公平も何もない。
「私とカイナ様は対立した意見を持っております。そんな中で私だけが居なくなっては、カイナ様がごり押しでご自分の案を通すこともできてしまうではないですか! そんな理不尽は許されません!」
ラノイの声にも、瞳にも、嘘や誤魔化しは宿っていなかった。ただカイナを道連れにするための理由付けではなく、本心から理不尽と不公平をラノイは訴えていた。
「……わかった」
誰の同意も得ないままに2択を迫った口で、よくもそのような言葉を吐けたものだ。そんな文句を吞み込んで、カイナはラノイに同意を示した。誰が何を言おうとも、カイナが従わない限りラノイは退室を拒むであろう。
ラノイに引きずり出された形ではあったが、裏切り者に対するカイナの考えは述べた。後のことは王と元老院に任せ、その決定に従う他ないだろう。民を傷つけずにすむ結論になることを願うばかりだった。
元老院の面々とフートラ王に断りを入れて、ラノイと共に退室するカイナ。その背に、無言で視線を突き刺し続ける人物が居た。
「…………」
「……チェルも出るか?」
「うん、そうする」
その言葉を待っていたと言わんばかりに、チェルはカイナよりも先んでて会議室を出た。
「では、私はこれにて失礼いたします。まだ仕事も残っていますので」
部屋から出るや否や、ぶっきらぼうにそれだけ言い放ちラノイは歩き去ってしまった。あの様子では、ラノイの中のカイナの評価は地に落ちていることだろう。
王子であるカイナと若い兵士であるラノイは、共にイクスガルドの未来を背負う仲間である。そんなラノイとの間にわだかまりを残してしまっては、後々支障が出かねない。カイナとしてはフォローの機会が欲しいところではあったが、しばらくは難しいだろう。
「カイナ兄、部屋までおんぶして」
「城に帰ってくるまでにもずっと寝てたんだ。墓地まで歩いて消耗した体力なんて、とっくに回復しているだろう」
「体力はね。筋肉がもう限界……痛みで張り裂けそう……」
若く虚弱な身体には筋肉痛が数時間でやってくるらしい。そんなどうでもいい知識を頭の片隅に置きながら、カイナはチェルを放置してラノイとは反対方向へと歩き出した。
おんぶをせがむほどに疲れているのなら、チェルは今日はもう街には出ないだろう。カイナがチェルのお目付けをする必要は無く、城の中でチェルを放っておいたところで大した問題は無い。そう判断したカイナであったが、後に後悔することになるのであった。
「ふーん……そういうことするんだ……」
1時間後、カイナは城のメイドに言われ会議室へと戻ることになる。まだ会議が行われている部屋の前にはチェルが寝転がっており、曰く「カイナ兄に床で寝てろって言われたから寝てるだけ。カイナ兄が許してくれないと移動できない」とのことで、事情を知らない者たちがどうすることもできず困り果てていた。
「……これが楽しいのか?」
「別に……」
荷物を扱うようにチェルを小脇に抱えて問うと、言葉通り無感情な声でチェルは応えた。
いったいこの駄々に何の意味があったのだろうか。誰の得にもなっていないのではないか。そんな疑問とやりきれなさを心の奥底に留めながらチェルの自室に向かい、チェルをベッドに放り投げるカイナであった。
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