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聖剣に仇なす者たち
殺さないのには反対……でも、殺し方はどうでもいい
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「それは効率が悪いですよ! どうせ殺すのですから、最大の効果を狙うべきです! 裏切ったダズにはその命を持って償わせ、民を縛るための鎖になってもらうべきです! チェル様もそうは思いませんか?」
突然話を振られたチェルはパチクリと瞬きをした。しかし驚いたような反応をしたのも束の間、すぐに無表情に戻ると消え入りそうな声で無感情に言った。
「どっちでもいい。殺さないのには反対……でも、殺し方はどうでもいい」
その答えが意外だったようで、ラノイは狼狽して目を泳がせていた。ラノイはチェルを信奉しているからこそ、意見が食い違ったことに動揺しているのだろう。
しかし、ラノイは動揺で気づいていないがチェルはラノイに反対したわけではない。むしろ、明確に反対されたのはカイナの方だ。どんな理由があろうと、裏切り者を殺さないことだけはありえないと念を押されたのだから。チェルもラノイ側の人間であることは間違いない。
「で、でしたら多数決を採りましょう! 元老院の皆様とフートラ王の9名で、私とカイナ様のどちらの案が良いかを決めていただきたい! 裏切り者のダズを見せしめに使うのか、それともカイナ様の仰る無罪放免で許してしまうのか!」
「おい、そこまでは言っていないだろう」
興奮したラノイはカイナの言葉にも耳を貸さずにずかずかと円卓へと歩み寄った。もはや一兵士に許される範囲を超えた暴走ではあったが、その気迫に口を挟める者は一人も居なかった。今のラノイはまるで歩く地雷のようで、かける言葉を誤れば剣を抜きかねないと思わせる様子だった。
円卓に座る一人一人に指を突きつけながら、ラノイは2択を迫る。見せしめか、放免か。元老院の面々も仕方ないという様子で渋々口頭での投票に応じている。
本来であればこれは議論を重ねるべき重大な議案であり、極端な案だけで決を採るなどありえてはならない。しかしラノイは勢いのままに有無を言わさず票を集め、結果として見せしめが過半数である5票を集めたのだった。
「どうですか、カイナ様! これで決定ですね!」
「落ち着け、ラノイ。こんな無理矢理に多数決を採ったところで意味なんて無い。一度外に出て、頭を冷やしてくるんだ」
開いた五本の指を見せつけてくるラノイの背に手を添え、カイナはそれとなく退出を促した。しかしラノイはカイナの手を払い退け、今度は人差し指を突きつけながらカイナに迫った。
「私は冷静ですよ、カイナ様! そちらこそ、悔しいからといって誤魔化すなどしないでいただきたい!」
実際にカイナが悔しいと思っているかどうかに関わらず、議論においてはそのような感情論は持ち出すべきではない。吐露することも、指摘することも、ましてや決めつけるなど言語道断だ。議論は常に論理的に進めるべきであり、カイナを煽るライナこそが冷静さを失っていることは誰の目にも明らかだった。
感情で動く者を止めるにはそれを上回る感情をぶつけるのが手っ取り早い。普段から感情を抑えるよう努めているカイナは、その溜め込んだ感情をぶつけるかのようにラノイを一喝した。
「ラノイ・パーラー!」
カイナの一喝を受け、ラノイはビクっと身体を震わせながら直立した。部屋の外まで響かんばかりの声量を出してようやく、今まで素通りしていたカイナの声がラノイの心にまで響いた。
一方でカイナの視界の端に居るチェルは、いつものように気だるげな瞳をカイナに向けているだけだった。
「貴公の思いは良く伝わった。この先は元老院と国王に任せ、退室するんだ」
「し、しかしっ!」
「立場を弁えろと言っているんだ。これ以上王の前で狼藉を働くならば、俺は無理矢理にでも貴公を追い出さなければならなくなる」
「っ……な、なら、カイナ様もこの先この会議には参加されませぬようお願いします! 不公平ですから!」
「……なんだって?」
突然話を振られたチェルはパチクリと瞬きをした。しかし驚いたような反応をしたのも束の間、すぐに無表情に戻ると消え入りそうな声で無感情に言った。
「どっちでもいい。殺さないのには反対……でも、殺し方はどうでもいい」
その答えが意外だったようで、ラノイは狼狽して目を泳がせていた。ラノイはチェルを信奉しているからこそ、意見が食い違ったことに動揺しているのだろう。
しかし、ラノイは動揺で気づいていないがチェルはラノイに反対したわけではない。むしろ、明確に反対されたのはカイナの方だ。どんな理由があろうと、裏切り者を殺さないことだけはありえないと念を押されたのだから。チェルもラノイ側の人間であることは間違いない。
「で、でしたら多数決を採りましょう! 元老院の皆様とフートラ王の9名で、私とカイナ様のどちらの案が良いかを決めていただきたい! 裏切り者のダズを見せしめに使うのか、それともカイナ様の仰る無罪放免で許してしまうのか!」
「おい、そこまでは言っていないだろう」
興奮したラノイはカイナの言葉にも耳を貸さずにずかずかと円卓へと歩み寄った。もはや一兵士に許される範囲を超えた暴走ではあったが、その気迫に口を挟める者は一人も居なかった。今のラノイはまるで歩く地雷のようで、かける言葉を誤れば剣を抜きかねないと思わせる様子だった。
円卓に座る一人一人に指を突きつけながら、ラノイは2択を迫る。見せしめか、放免か。元老院の面々も仕方ないという様子で渋々口頭での投票に応じている。
本来であればこれは議論を重ねるべき重大な議案であり、極端な案だけで決を採るなどありえてはならない。しかしラノイは勢いのままに有無を言わさず票を集め、結果として見せしめが過半数である5票を集めたのだった。
「どうですか、カイナ様! これで決定ですね!」
「落ち着け、ラノイ。こんな無理矢理に多数決を採ったところで意味なんて無い。一度外に出て、頭を冷やしてくるんだ」
開いた五本の指を見せつけてくるラノイの背に手を添え、カイナはそれとなく退出を促した。しかしラノイはカイナの手を払い退け、今度は人差し指を突きつけながらカイナに迫った。
「私は冷静ですよ、カイナ様! そちらこそ、悔しいからといって誤魔化すなどしないでいただきたい!」
実際にカイナが悔しいと思っているかどうかに関わらず、議論においてはそのような感情論は持ち出すべきではない。吐露することも、指摘することも、ましてや決めつけるなど言語道断だ。議論は常に論理的に進めるべきであり、カイナを煽るライナこそが冷静さを失っていることは誰の目にも明らかだった。
感情で動く者を止めるにはそれを上回る感情をぶつけるのが手っ取り早い。普段から感情を抑えるよう努めているカイナは、その溜め込んだ感情をぶつけるかのようにラノイを一喝した。
「ラノイ・パーラー!」
カイナの一喝を受け、ラノイはビクっと身体を震わせながら直立した。部屋の外まで響かんばかりの声量を出してようやく、今まで素通りしていたカイナの声がラノイの心にまで響いた。
一方でカイナの視界の端に居るチェルは、いつものように気だるげな瞳をカイナに向けているだけだった。
「貴公の思いは良く伝わった。この先は元老院と国王に任せ、退室するんだ」
「し、しかしっ!」
「立場を弁えろと言っているんだ。これ以上王の前で狼藉を働くならば、俺は無理矢理にでも貴公を追い出さなければならなくなる」
「っ……な、なら、カイナ様もこの先この会議には参加されませぬようお願いします! 不公平ですから!」
「……なんだって?」
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