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討伐
――生きていても良いのかもって――
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「恐縮です、レイス王。しかし、私はただこの国の安全を想い動いたにすぎません。ただほんの少しだけ、恩赦の気持ちをいただければそれで充分です」
恩赦。その罪を赦し、罰を軽減させること。ガルが言っているのは、もちろんギロチンを壊した罪のことではないだろう。
気遣ってくれているのか、ガルは以前のように僕をレイス王の前に差し出すことはしなかった。ただしっかりと抱き寄せ、頭を撫でてくれた。
「恩赦か……そいつは役に立ったか」
「命を救われました」
それは大げさな言葉ではあった。そもそも、ガルが一人であったのなら、火炎を吐くグリフォン相手でもあそこまで苦戦することもなかったのだから。
あの時のガルが逃げることもせずに炎を受け続けていたのは、きっと僕を確実に逃がすためだ。火炎を吐くグリフォン相手に逃げ回ったら、森に火の手が及びかねない。僕が隠れている森を燃やさせないために、ガルは犠牲になる覚悟をしていたにすぎない。
それはわかっている。ガルの言葉はあくまで誇張だと理解している。それでも、ガルの言葉で僕の身体は喜んでしまっていた。その手つきと声で、こんな僕でもガルの役に立てたのだと勘違いしてしまっていた。
「そうか……グリフォンを見事討伐せしめたお前の命を救ったとあっては、認める他ないのだろうな」
「え?」
またも、僕は声を漏らしていた。その言葉の意味がわからなかったから。あのレイス王がそんなことを言うはずが無いと思っていたから。
「その活躍と、その年齢と、罪人としての今までの態度を考慮し、ルカテの処刑は取りやめることとする」
レイス王は言った。最も僕のことを憎んでいるはずの人間が宣言した。
その罪を赦すと。息子を殺した僕に対し恩赦を与え、その罰を消滅させると、民衆たちにも聞こえるように。
「え? ……え?」
そんなはずが無い。だって、あのレイス王なのだから。父様が健在だった頃から、ずっと僕と母様を冷たく扱っていたレイス王だ。
そんなレイス王が僕のことを赦すわけがない。誰よりも処刑を望んでいた人が、こんな無感情に処刑の取りやめを宣言するなんて思えない。
でも――
「その寛大な処置に感謝いたします、レイス王!」
――でも、これもガルのおかげなのかもしれないと考えると、不思議と納得できる気がした。
レイス王にとってガルは恩人だ。ガルのことを好ましく思っていないように見えるけれども、その強さに対する評価は本物だ。
2頭ものグリフォンをほぼ単独で討伐する実力を持ち、見ず知らずの子供の為に命を張れる人間であるガルは正に武人だ。そんなガルのことを、レイス王は高く評価しているのかもしれない。
そして、そんなガルが僕のことを目にかけてくれている。だからこそ、レイス王も僕を赦すのだと決めてくれたのだとしたら。
「やったな! ルカテ!!」
王の御前だというのに、ガルは無邪気に喜んでいた。子供みたいな笑顔で、赤子をあやかのように僕のことをゆさゆさと揺さぶりながら。
「ガル……本当に、僕……」
「ああ! ルカテは生きていていいんだ!!」
「生きて……っ」
鼻の奥にツンとした痛みが走って、視界が涙で滲んだ。
生きてはいけない人間だと思っていた。人を殺した僕が、のうのうと生きていていいはずがないと思っていた。
でも、僕の生を望んでくれる人が現れた。その人があまりにも優しいものだから、僕の心にも生きたいなんてわがままが生まれてしまった。
そしてついには、王様までもが僕の生を認めてくれた。嫌われ、差別され、迫害されてきた僕のことを、赦してくれた。
だから――
――もしかしたら――
――僕は、本当に――
――生きていても良いのかもって――
――そう思ってしまった。
「ガルっ……っ! ガルっ、僕は……!」
ガルの瞳にも涙が浮かんでいるのを見て、涙が更に溢れ出した。
僕はまだこの人の傍に居てもいいんだって。また明日も、ガルに抱きしめてもらえるんだって。そのことが、とても嬉しくて――
――レイス王の顔に感情が無かった違和感なんて、僕はすぐに忘れてしまっていました。
恩赦。その罪を赦し、罰を軽減させること。ガルが言っているのは、もちろんギロチンを壊した罪のことではないだろう。
気遣ってくれているのか、ガルは以前のように僕をレイス王の前に差し出すことはしなかった。ただしっかりと抱き寄せ、頭を撫でてくれた。
「恩赦か……そいつは役に立ったか」
「命を救われました」
それは大げさな言葉ではあった。そもそも、ガルが一人であったのなら、火炎を吐くグリフォン相手でもあそこまで苦戦することもなかったのだから。
あの時のガルが逃げることもせずに炎を受け続けていたのは、きっと僕を確実に逃がすためだ。火炎を吐くグリフォン相手に逃げ回ったら、森に火の手が及びかねない。僕が隠れている森を燃やさせないために、ガルは犠牲になる覚悟をしていたにすぎない。
それはわかっている。ガルの言葉はあくまで誇張だと理解している。それでも、ガルの言葉で僕の身体は喜んでしまっていた。その手つきと声で、こんな僕でもガルの役に立てたのだと勘違いしてしまっていた。
「そうか……グリフォンを見事討伐せしめたお前の命を救ったとあっては、認める他ないのだろうな」
「え?」
またも、僕は声を漏らしていた。その言葉の意味がわからなかったから。あのレイス王がそんなことを言うはずが無いと思っていたから。
「その活躍と、その年齢と、罪人としての今までの態度を考慮し、ルカテの処刑は取りやめることとする」
レイス王は言った。最も僕のことを憎んでいるはずの人間が宣言した。
その罪を赦すと。息子を殺した僕に対し恩赦を与え、その罰を消滅させると、民衆たちにも聞こえるように。
「え? ……え?」
そんなはずが無い。だって、あのレイス王なのだから。父様が健在だった頃から、ずっと僕と母様を冷たく扱っていたレイス王だ。
そんなレイス王が僕のことを赦すわけがない。誰よりも処刑を望んでいた人が、こんな無感情に処刑の取りやめを宣言するなんて思えない。
でも――
「その寛大な処置に感謝いたします、レイス王!」
――でも、これもガルのおかげなのかもしれないと考えると、不思議と納得できる気がした。
レイス王にとってガルは恩人だ。ガルのことを好ましく思っていないように見えるけれども、その強さに対する評価は本物だ。
2頭ものグリフォンをほぼ単独で討伐する実力を持ち、見ず知らずの子供の為に命を張れる人間であるガルは正に武人だ。そんなガルのことを、レイス王は高く評価しているのかもしれない。
そして、そんなガルが僕のことを目にかけてくれている。だからこそ、レイス王も僕を赦すのだと決めてくれたのだとしたら。
「やったな! ルカテ!!」
王の御前だというのに、ガルは無邪気に喜んでいた。子供みたいな笑顔で、赤子をあやかのように僕のことをゆさゆさと揺さぶりながら。
「ガル……本当に、僕……」
「ああ! ルカテは生きていていいんだ!!」
「生きて……っ」
鼻の奥にツンとした痛みが走って、視界が涙で滲んだ。
生きてはいけない人間だと思っていた。人を殺した僕が、のうのうと生きていていいはずがないと思っていた。
でも、僕の生を望んでくれる人が現れた。その人があまりにも優しいものだから、僕の心にも生きたいなんてわがままが生まれてしまった。
そしてついには、王様までもが僕の生を認めてくれた。嫌われ、差別され、迫害されてきた僕のことを、赦してくれた。
だから――
――もしかしたら――
――僕は、本当に――
――生きていても良いのかもって――
――そう思ってしまった。
「ガルっ……っ! ガルっ、僕は……!」
ガルの瞳にも涙が浮かんでいるのを見て、涙が更に溢れ出した。
僕はまだこの人の傍に居てもいいんだって。また明日も、ガルに抱きしめてもらえるんだって。そのことが、とても嬉しくて――
――レイス王の顔に感情が無かった違和感なんて、僕はすぐに忘れてしまっていました。
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