両腕のない義弟との性事情

papporopueeee

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第六夜

義弟は義兄を求める

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 本当は、ケン君が二人を追い出してくれるのが一番良かった。一条夕美よりも、一条朝日よりも、オレの言葉を尊重するって宣言して欲しかった。

 でも、ケン君が側に居てくれるなら、そっちでもいいと思えた。
 傍に居てくれれば危険はない。傍に居てくれれば声も届く。

 オレに後ろめたいことなんてない。嘘なんて一つも言ってない。
 一条朝日が何を言ったとしても。最後にはケン君はオレを信じてくれるって、オレのことを一番に考えてくれるって確信してる。

 だから、だからいいよって。ケン君がそうしたいならいいよって、思ったのに。そう言おうとしたのに。

「な、に……それ……」

 見上げたケン君の顔。見慣れたその唇に、見慣れない色が彩られている。人工的な色が、ケン君を犯していている。

 思考よりも早く、体は動いていた。首を回して、瞳を動かして、その色の根源を、一条夕美の顔を、その鮮やかな唇を、視界に映していた。

 よく見なくたってわかる。問い質さなくたってわかる。その二つの色が同じだってことくらい。どうしてふたりの唇が同じ色で着色されているのかなんてことくらい。

 オレはそんな子供じゃないから。

「ケン君……あの女とふたりきりで、何してたの?」

 自分でもわかってしまうくらいに震えた声が、部屋の中に木霊した。

 ケン君が焦った手つきでその唇を隠した。できることならとぼけて欲しかった。なんのことだって、勘違いだって。もう覆せなくても、それでも否定してほしかった。

 昨日の一条夕美とのやり取りはなんだったの?
 オレはなんのために泣いてまで懇願したの?
 あの女は何を思ってあんな言葉を吐いていたの?

 ケン君はどうして今オレを抱きしめているの?
 何を思って一条朝日の言葉を聞こうなんて決めたの?
 あの女とふたりきりの時どんな気持ちだったの?

「ねえ、ケン君。教えてよ……どうして何も言わないの? なんで、どうして……そんな……っ」
「カオル……」

 ケン君の優しい声。いつものようにオレを気遣った柔らかい声。でも、その声がもう信じられない。その心の奥底で何を考えているのかわからない。

 一度疑ってしまったら、もう――

「……キスしてよ」

 もう、無理だった。こうでもしないと、今触れているケン君すら消えてしまいそうで。不安で、楔がないと全部なくなってしまいそうで――

「ねえ、いつもみたいにキスしてよ……してくれないなら、全部言っちゃうよ?」

 証明をしてほしいだけ。オレが一番大事なんだって、この場で示して欲しいだけ。
 ケン君を疑う心なんて溶かすような熱い気持ちを注ぎ込んで欲しくて。
 その行為がどんな結末を呼ぶかなんてどうでもよかった。

 オレはケン君がいればそれでいい。

 ケン君もそうだよね?
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