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精霊さんは便利みたいです

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私とセツはバルバラードと言う国に飛んできた

今はもう使われていない古い民家だけど、昔セツは転々と国々を渡って旅をしてたみたい
ここはその時に見つけたまともな住処の1つなんだとか

ちょっと埃臭いけど、ちゃんと掃除すればこのまま住めちゃいそう…


『それでらぶまじとやらの物語に転生か…』

「そうです…」


もう契約もしちゃったし、どうせ考えてる事も全部伝わっちゃうからセツに今までの事を全部話した

色々ぐちゃぐちゃで誰かに吐き出してしまいたかったのもある


『マナは神の加護がつくぐらい愛されているからな
何かあるだろうとは思っていたが、まさか転生とはな…
にしてもそのひろいんちゃんとか言う女も転生者と言うのはどう言う事だ?』

「私もそれはびっくりして…
色々聞きたかったのにまさかあんな事するなんて…」


今思い出してもゾッとするほど怖かった


『我のマナになんて事を…
あの女痛い目に合わせておけば良かった!!』


セツは色々と読み取ったのか、グルルッと牙を剥き出しにして怒っている


あのヒロインちゃんからはかなりの狂気を感じた

でも何でなんだろう…?

遠目からだから内容は聞こえなかったけど、なんだかアルディス様と王子様もヒロインちゃんと話てて良い感じみたいだったのに…

確かにちょっとお話と違う所もあって、ヒロインちゃんのとんでもない行動に冷や冷する場面もあったけど、結局何事もなかったようにダンスは終わったし、問題ないと思ってた

なのに何故かヒロインちゃんは私がメインヒーロー達と関わる事が気に食わなかったらしい

確かに私も転生者だけど唯の侍女だし、ヒロインちゃんの邪魔をしようなんて思った事は1度もないのに…


『泣くなマナ…』


いつの間にかこぼれ落ちた涙をペロペロと舐めてくれるセツ


『マナが望むなら我があの女の息の根を止めてやる』

「ひっ……
いやいや、そんな事望みません!
絶対やめて下さい!!」


精霊さんなのに恐ろしい事言わないでほしい


『だがあの女の言う通りにする必要があるのか!?
我がいるからにはあの女に報復する事もできる』

「報復なんてとんでもないです!
ラブマジをめちゃくちゃにしたい訳じゃないし…
今思えば確かにヒロインちゃんは怖かったけど、ラブマジの事は知ってて好きみたいでした
私が何故か転生者って分かったから勘違いしちゃったみたいですけど、流石に他の人達にはあんな酷い事しないとおもいます
それに私は居なくてもいいけど、ヒロインちゃんがいないとラブマジの皆んなはきっと困るから…」

『マナはそう思うんだな…』


セツはどこか納得してない様子だ

私も名残惜しい気持ちはあるけど…


「元々私なんかがモブとして転生できただけでもラッキーで、少しの間だけど本物の登場人物達とも関われただけで幸せだったなって…
本当転生させてくれたエロ神様には感謝しかないです」

『マナ……』

「あ……」


でもクロムハート家の契約とかどうしよう
やむ負えない事情を除いて1年間は働くって内容だったし…


『安心しろ、それは我がなんとかしてやろう』

「へ…?」

『あの屋敷には他にも精霊と契約している者がいるからな』

「えぇ!?」


他にも精霊と契約してる人なんてクロムハート家にいたの!?


『信用のおける物しか知らんようだが
セバスチャンと言う中々に話の分かる男だ』


せ、セバスチャンさんが!?

あまりの衝撃の事実に言葉が出てこない
  

『セバスチャンに我の使いをやる』


そう言ってセツは七色の光を放って突然分裂した


「えぇ!?
セツが2人!?」

『これは我の分身だ
こ奴にセバスチャンの所まで行かせる』


分裂した方のセツは指示を受けるとすぐに消えて行った


精霊さんって凄く便利…


『後はマナのその泥だらけの服もどうにかしないとな』


そうだ、せっかくドンフリーさんに仕立ててもらったのに…

転んでしまったことによってドレスが大分汚れてしまっていた


お湯と石鹸で手洗いすればなんとかなるかな…?


『風呂は洗えば使えるはずだから入るといい
その間に我が必要な物を買ってきてやる』

「へ…?
買ってきてやるってどうやって…」


見るとスゥッとセツの姿がどんどん変わっていく
   
そして白髪の短髪に黒目で青いピアスがついた美形の姿に変わった


えぇ…!?
確かに人化がどうのこうのは言ってたけど、まさかこんな簡単に人になれるなんて…
 

『どうした?
マナの鼓動がやけに早い気がするが…』

「や、気のせい…です」


近い近い近い!
人の姿でそんな風に近づかないでほしい…


「ひゃあっ!?」


いきなりペロッと頬を舐められた


『なるほどな
マナは我のこの姿に弱いのだな』

「なっ、なな何して…」

『くっくっくっ…
猿みたいに真っ赤だな…』


わ、笑うなんて…
私のこと揶揄ってる!?


『なんならここでマナと我の2人で暮らすのもいいかもしれんな』


セツは笑いながら、お湯は出るはずだからとさっさと行ってしまった

一応私がセツのご主人様なはずなのに…
なんだか逆転してる気がするけど、ここでセツと暮すのも有りなのかもと思った

とりあえずセツに任せてお風呂に入ろっと…
  
途中でセツが帰って来て、ドア越しにタオルや石鹸やらをくれた

洋服も買ってきてくれたみたいだけど…

シャツにサスペンダー付きの短パンって…
男の子みたいな服装だ


そういえばお金はどうしたんだろうと思っていたら…

どうやら昔に気まぐれで、力を使って人助けをしたらしい
その時は姿は見せてないものの、以来その場所に変な想像上の銅像と、供物やらお金やらが置かれていくようになったって…

なんだか簡易的な神社みたいだ


近くにパン屋さんがあったみたいで、食べ物も買ってきてくれた

もう何から何までセツには迷惑かけてて申し訳ない…


『我の事はマナの好きに使えばいい』


なんて言われたけど、流石に甘えっぱなしは駄目だ

今日のお金もちゃんと返さなきゃ… 

私が今まで稼いだお金は両親の所に行くようになってるけど、まだまだ家に入れなきゃいけないし、何も持たずに来ちゃったから所持金0円も流石にやばい…

とりあえずまた働く場所を探さないとだよね


『そう言えばそのパン屋は人手が足りなさそうだったな』

「え…本当ですか!?」


今は働けるなら何処でも良い…
さっそく明日雇ってもらいに行こう!


一先ず今日は狼に戻ったセツと一緒に眠りについた












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