1 / 5
第一章
しおりを挟む
カーネーション
暇だった、ただひたすら。
水守青蔵は漫画家である。月刊誌に連載を持っておりライトノベルのイラストも手がけている、ついでに言えば同人誌も描いている。
本来は多忙だ、だが今は暇だった。それは何故かというと。
「終わったんだよ、全部」
「今月の仕事はか」
「ああ、全部な」
飲みながらだ、スマートフォンで仕事仲間の宮城幹雄に話す。ゲームをしつつ酒を飲み彼に話しているのである。
「終わったしな。同人誌も描いたしな」
「じゃあ暫くはか」
「暇だよ」
何もすることがなくなったというのだ。
「幸いにな」
「それはいいな。けれどな」
「時間があればあれでな」
どうしたものかと、彼は自分の部屋でゲームをして飲みつつ言うのだった。
「何もすることがないな」
「飲みに行けばいいだろ」
「飲んでるよ、今」
実際に缶のチューハイを飲みながら言う。
「美味いぜ」
「何だよ、飲んでるのかよ」
「ついでに言えばゲームもしてるよ」
このことも言うのだった。
「もっと言えばサイトの更新も終わったよ、ブログもツイッターもフェイスブックも更新したさ」
「全部終わったんだな」
「綺麗にな」
「ラノベのイラストもか」
「そっちも終わったよ」
本当にだ、やるべきことは全部終わったというのだ。
「何もかもな」
「風俗にでも行ったらどうだよ」
「ああ、飲んだからもうそっちもな」
飲んで風俗に行くのはよくあることだ、だがそれはだというのだ。
「もう飲み過ぎてな」
「遊べる状況じゃないんだな」
「外に行くのも面倒臭いしな」
「何だよ、本当に何もすることがないんだな」
「そうなんだよ、飲んでゲームをしてもな」
「じゃあ後は風呂入って寝るだけか」
「本当にな」
もう夜の十二時だ、実は水守は漫画家にしては珍しく朝型なのだ。ついでに言えば元バスケ部で日課のランニングと健康的な食事を忘れずにしている。こうした漫画家もいるのだ。
「それだけだよ」
「何かそういうのはかえってな」
「ぼうっとして飲んでゲームするだけの日常ってな」
「かえって嫌か」
「こんなのだったら気合入れて締切よりずっと前に終わらせるんじゃなかったよ」
今持っている全部の仕事をだというのだ。
「参ったよ」
「そうか。俺も今な」
宮城もだ、ここで言うのだった。
「仕事全部終わってな」
「暇か」
「滅茶苦茶な」
そうだというのだ。
「だからもう寝るさ」
「お互い仕事が全部終わるとそれはそれで困るな」
「ないと余計にな」
仕事がないと食べてすらいけなくなる、この辺り漫画家というものは公務員やサラリーマンよりも過酷である。
「あるだけずっとましだろうな」
「そうだよな、じゃあな」
「ああ、今はな」
寝ようという話になった、それでだった。
暇だった、ただひたすら。
水守青蔵は漫画家である。月刊誌に連載を持っておりライトノベルのイラストも手がけている、ついでに言えば同人誌も描いている。
本来は多忙だ、だが今は暇だった。それは何故かというと。
「終わったんだよ、全部」
「今月の仕事はか」
「ああ、全部な」
飲みながらだ、スマートフォンで仕事仲間の宮城幹雄に話す。ゲームをしつつ酒を飲み彼に話しているのである。
「終わったしな。同人誌も描いたしな」
「じゃあ暫くはか」
「暇だよ」
何もすることがなくなったというのだ。
「幸いにな」
「それはいいな。けれどな」
「時間があればあれでな」
どうしたものかと、彼は自分の部屋でゲームをして飲みつつ言うのだった。
「何もすることがないな」
「飲みに行けばいいだろ」
「飲んでるよ、今」
実際に缶のチューハイを飲みながら言う。
「美味いぜ」
「何だよ、飲んでるのかよ」
「ついでに言えばゲームもしてるよ」
このことも言うのだった。
「もっと言えばサイトの更新も終わったよ、ブログもツイッターもフェイスブックも更新したさ」
「全部終わったんだな」
「綺麗にな」
「ラノベのイラストもか」
「そっちも終わったよ」
本当にだ、やるべきことは全部終わったというのだ。
「何もかもな」
「風俗にでも行ったらどうだよ」
「ああ、飲んだからもうそっちもな」
飲んで風俗に行くのはよくあることだ、だがそれはだというのだ。
「もう飲み過ぎてな」
「遊べる状況じゃないんだな」
「外に行くのも面倒臭いしな」
「何だよ、本当に何もすることがないんだな」
「そうなんだよ、飲んでゲームをしてもな」
「じゃあ後は風呂入って寝るだけか」
「本当にな」
もう夜の十二時だ、実は水守は漫画家にしては珍しく朝型なのだ。ついでに言えば元バスケ部で日課のランニングと健康的な食事を忘れずにしている。こうした漫画家もいるのだ。
「それだけだよ」
「何かそういうのはかえってな」
「ぼうっとして飲んでゲームするだけの日常ってな」
「かえって嫌か」
「こんなのだったら気合入れて締切よりずっと前に終わらせるんじゃなかったよ」
今持っている全部の仕事をだというのだ。
「参ったよ」
「そうか。俺も今な」
宮城もだ、ここで言うのだった。
「仕事全部終わってな」
「暇か」
「滅茶苦茶な」
そうだというのだ。
「だからもう寝るさ」
「お互い仕事が全部終わるとそれはそれで困るな」
「ないと余計にな」
仕事がないと食べてすらいけなくなる、この辺り漫画家というものは公務員やサラリーマンよりも過酷である。
「あるだけずっとましだろうな」
「そうだよな、じゃあな」
「ああ、今はな」
寝ようという話になった、それでだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?
鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。
先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
睿国怪奇伝〜オカルトマニアの皇妃様は怪異がお好き〜
猫とろ
キャラ文芸
大国。睿(えい)国。 先帝が急逝したため、二十五歳の若さで皇帝の玉座に座ることになった俊朗(ジュンラン)。
その妻も政略結婚で選ばれた幽麗(ユウリー)十八歳。 そんな二人は皇帝はリアリスト。皇妃はオカルトマニアだった。
まるで正反対の二人だが、お互いに政略結婚と割り切っている。
そんなとき、街にキョンシーが出たと言う噂が広がる。
「陛下キョンシーを捕まえたいです」
「幽麗。キョンシーの存在は俺は認めはしない」
幽麗の言葉を真っ向否定する俊朗帝。
だが、キョンシーだけではなく、街全体に何か怪しい怪異の噂が──。 俊朗帝と幽麗妃。二人は怪異を払う為に協力するが果たして……。
皇帝夫婦×中華ミステリーです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる