カーネーション

坂田火魯志

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第三章

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 今度は宮城を自分の部屋に呼んだ、宮城は丸々と太っている小柄な男だ、脂肪率は三十に達していて不健康さを雑誌や単行本の後書き、ブログ等でいつも自嘲して言っている。髪の毛は短く刈り目は細い。水守と正反対の外見だ。
  その彼にだ、水守はそのビー玉を見せて話すのだった。
 「今日はこれがあったよ」
 「ビー玉か」
 「カーネーションじゃなくてな」
 「急展開だな」
 「何でビー玉だと思う?」
  首を傾げながらだった、水守は宮城にそのビー玉を右手の親指と人差し指で持って見せながら問うた。
 「今日はな」
 「さてな、これはな」
 「御前もわからないか」
 「本当に何でなんだろうな」
  宮城も首を傾げさせつつ言う。
 「これは」
 「訳がわからないよな」
 「俺もそう思う、それでな」
 「それで?」
 「御前そろそろだろ」
 「ああ、仕事か」
 「またはじめないといけないだろ」
 「そうだな、もうな」
  そのだ、暇で仕方がない時が終わるというのだ。このことは水守自身が一番よくわかっていた。
 「そっちもな」
 「まあそっちはわからないからな」
  だからだというのだ、今は。
 「仕事優先で考えていったらどうだ」
 「ビー玉のことは忘れてか」
 「ああ、カーネーションとかな」
 「わかった、それじゃあな」
  水守は宮城の言葉に頷いた、そして。
  仕事を再開した、ビー玉のことは不思議に思いながら。
  それで仕事をして夜に寝て朝のランニングとシャワーを終えてベランダを見てみると今度はビー玉にそれに加えてだった。
  ガラスの破片があった、今度は余計にわからなかった。
  このことも宮城に話したが彼も余計にわからなくなっていた。しかもその次の日にはネックレスだのがあった、これには。
  また部屋に来た宮城がだ、まさかと思いこう言った。
 「御前さ、普段ベランダ見てるか?」
 「いや、最近はな」
 「見てるか、流石に」
 「毎日一度や二度はな」
  見ているというのだ、最近は。
 「けれどな」
 「それでもだよな」
 「一度や二度だよ」
  気にはなっていてもだ、水守はそうしょっちゅう一つの場所を見るタイプではない。それで今もだというのである。
 「そんなにな」
 「それならな」
 「それなら?」
 「ちょっとベランダのところに監視カメラ付けてみるか?」
  宮城はここでこう水守に提案したのだった。
 「そうしてみるか?」
 「それでベランダで何が起こっているのは見るのか」
 「ああ、そうしたらどうだ?」
  これが宮城の今の解決案だった。
 「このままだと何があるか気になって仕方ないだろ」
 「まあな」
  例えだ、一日に一度や二度しか見ないベランダでもだ。毎日何かが置かれている状況は気にならない筈がない。
  それでだ、水守も頷いて言うのだった。 
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