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男だらけの異世界転生〜学園編・第一部〜
ルームメイト
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生徒会役員に選ばれてしまった俺は速攻で断った。
そう、断ったのだ。
「俺、生徒会には入りません。」
「……フランドールくん、何を言っているんだい?」
「すみません、生徒会には入れません。」
再度、同じことを告げると、先生は目を見開き驚いた。教室も少しザワつく。だが、俺は生徒会に入るわけにはいかないんだ。『生徒会』それは腐女子の楽園、つまり俺の地獄…。生徒会は元来、主人公がチヤホヤされるためにある。いわばハーレムの箱庭。俺の断固たる拒否に先生はたじろいでいた。
「あー、えっと、生徒会役員に選ばれるということは、とても名誉なことなんだよ? 今後、王家の側近にだってなり得るかもしれない、将来を保証されたようなもの。よく考えなさい、もう一度…。」
「俺、進級したら騎士科志望だからあまり関係ないっちゃなくて、それに荷が重いっていうか…。いい加減な俺には向いてないと思います。」
先生は頭痛がするのか眉間を抑える。
ごめん、先生。
それから少し待っていてくれと、教室を出て戻ってきた。
「今日は取りあえず部屋で休みなさい。この話は後日、生徒会で君から直接するように。新入生を含めた生徒会は3日後の放課後行われます。忘れないように。」
生徒会役員に選ばれたものに拒否権は無いのかもしれない。
直談判……ね。
▼
俺は何だかぐったりしながら、自分に与えられた部屋に入った。結構、広い。風呂トイレ付き、ベッドはダブルサイズが2つ。元々一人部屋、二人でも贅沢すぎる気がする。部屋は区切られていない。俺は取りあえず窓際のベッドに飛び込んだ。先に来たんだ、窓際は俺が貰う! ゴロゴロしていると、ガチャと音がした。同居人が来たようだ。
「もう、部屋にいたんだね。フランドールくん。」
「……えっ?」
聞いたことのない声、相手は明らかに知らない人物。
だが、相手は俺を知っているようだ。
その相手を確認するべく、俺はベッドから降りた。
「は…? 誰……?」
俺が言ったんじゃない。
俺を知っているはずの男がそう言った。
橙色のウェーブの掛かった髪。
初対面の人にこんなこと思うのは失礼だが、なんかチャラい。
彼は明らかに不愉快な表情をした。
「君、誰? ここは僕とフランドールくんの部屋なんだけど。」
「あ、いや、俺がフランドールだ。」
「はぁ? 何言ってんの、フランドールがこんな雄くさいデカブツなわけないだろう。早く出て行ってくれない?」
初対面だというのにやたらと攻撃的だ。
俺、こいつ嫌い……。
これから6年、コイツと同室…?
「何度も言うが俺がフランドールだ。」
「そんなわけないだろう。僕を誰だと思っているの? 国一番の情報網を持つウィチルダ家のキルト・ウィチルダだぞ。」
「…悪いが、知らない。」
「なんだ性格まで可愛くないね。君に一致するのはその短い黒髪だけ。とにかくウィチルダの情報では、フランドールくんは、あのルルーシュ殿の第一子であり美しく華奢で長く揺蕩う黒髪の傲慢だが美しい少年だと聞いている。そして、ウェルギリウス第一皇太子殿下の婚約者だと。でなければ、同室なんてありえない。」
ウェルと婚約していることは一部の人間しか知らない。お披露目は成人の儀を終えてから、情報は古いが確かにその人物はフランドールだ。俺は貴族情報に疎い、このキルト・ウィチルダは確かに情報に強いらしい。
「だとすれば、お前の情報は少し古いな。俺は確かにフランドール・メディチだ。君の理想の少年でなくて申し訳ない。」
キルトを見下ろしながら、そう告げる。
自分はフランドールだと言い切る俺にキルトは深い溜息を吐き、ベッドへぼすっと仰向けに転がった。
「こんなはずじゃ…。僕を騙したな……クソジジィ。また情報のために僕を使いやがって…っ。」
小さく悪態を付くキルト。
ぶつぶつ言ってるからあまり聞き取れない。
「フランドールくん、悪いけど君みたいな男、僕はちっとも食指が動かない。間違っても僕に惚れたりしないでよね。泣いて頼まれても抱けないし、正直言って迷惑だから。僕は華奢で美しい子が好きなんだ。」
は、はぁ⁉
そんなんこっちから願い下げだわ!
だっれが、お前なんかと…っ!
い、いかんいかん。
相手は子ども、相手は子ども。
俺は大人、俺は大人…。
俺は苛立ちに震える声を必死に抑え、拳を握った。数回の深呼吸で冷静さを取り戻していく。感情が身体の方の年齢に引っ張られることがしばしばある。
「あ、安心してくれよ、こう見えて一途なんだ。」
「ふぅん…? ウェギリウス殿下もハズレを引かされて可哀想だな。」
「そ、うだ、な……。」
どうせ婚約は破棄だから心配はない。親友としてウェルには本当に愛する人と結ばれて欲しい。今日、入学式で視線を逸らされたことを思い出し、喉の辺りがモヤ付いて、俺は喉元を擦った。ウェルの立場やあの空間は理解している、気にすることじゃない。だが…。
「ま、とりあえず僕に惚れないって約束してくれ、干渉もしないでよ。できれば存在感消してくれる? ああ、でもデカいから無理かな? 一応これから同居人になるんだからさ、よろしく。」
マ、ジ、でっ、いい性格してるなコイツ。
差し出された手を返すか迷って、しばし俺は固まった。
俺は額に青筋を浮かべ、ぎこちない笑顔で無理矢理に手を伸ばし、握り返した。
「よ、よろしくぅ?」
そう、断ったのだ。
「俺、生徒会には入りません。」
「……フランドールくん、何を言っているんだい?」
「すみません、生徒会には入れません。」
再度、同じことを告げると、先生は目を見開き驚いた。教室も少しザワつく。だが、俺は生徒会に入るわけにはいかないんだ。『生徒会』それは腐女子の楽園、つまり俺の地獄…。生徒会は元来、主人公がチヤホヤされるためにある。いわばハーレムの箱庭。俺の断固たる拒否に先生はたじろいでいた。
「あー、えっと、生徒会役員に選ばれるということは、とても名誉なことなんだよ? 今後、王家の側近にだってなり得るかもしれない、将来を保証されたようなもの。よく考えなさい、もう一度…。」
「俺、進級したら騎士科志望だからあまり関係ないっちゃなくて、それに荷が重いっていうか…。いい加減な俺には向いてないと思います。」
先生は頭痛がするのか眉間を抑える。
ごめん、先生。
それから少し待っていてくれと、教室を出て戻ってきた。
「今日は取りあえず部屋で休みなさい。この話は後日、生徒会で君から直接するように。新入生を含めた生徒会は3日後の放課後行われます。忘れないように。」
生徒会役員に選ばれたものに拒否権は無いのかもしれない。
直談判……ね。
▼
俺は何だかぐったりしながら、自分に与えられた部屋に入った。結構、広い。風呂トイレ付き、ベッドはダブルサイズが2つ。元々一人部屋、二人でも贅沢すぎる気がする。部屋は区切られていない。俺は取りあえず窓際のベッドに飛び込んだ。先に来たんだ、窓際は俺が貰う! ゴロゴロしていると、ガチャと音がした。同居人が来たようだ。
「もう、部屋にいたんだね。フランドールくん。」
「……えっ?」
聞いたことのない声、相手は明らかに知らない人物。
だが、相手は俺を知っているようだ。
その相手を確認するべく、俺はベッドから降りた。
「は…? 誰……?」
俺が言ったんじゃない。
俺を知っているはずの男がそう言った。
橙色のウェーブの掛かった髪。
初対面の人にこんなこと思うのは失礼だが、なんかチャラい。
彼は明らかに不愉快な表情をした。
「君、誰? ここは僕とフランドールくんの部屋なんだけど。」
「あ、いや、俺がフランドールだ。」
「はぁ? 何言ってんの、フランドールがこんな雄くさいデカブツなわけないだろう。早く出て行ってくれない?」
初対面だというのにやたらと攻撃的だ。
俺、こいつ嫌い……。
これから6年、コイツと同室…?
「何度も言うが俺がフランドールだ。」
「そんなわけないだろう。僕を誰だと思っているの? 国一番の情報網を持つウィチルダ家のキルト・ウィチルダだぞ。」
「…悪いが、知らない。」
「なんだ性格まで可愛くないね。君に一致するのはその短い黒髪だけ。とにかくウィチルダの情報では、フランドールくんは、あのルルーシュ殿の第一子であり美しく華奢で長く揺蕩う黒髪の傲慢だが美しい少年だと聞いている。そして、ウェルギリウス第一皇太子殿下の婚約者だと。でなければ、同室なんてありえない。」
ウェルと婚約していることは一部の人間しか知らない。お披露目は成人の儀を終えてから、情報は古いが確かにその人物はフランドールだ。俺は貴族情報に疎い、このキルト・ウィチルダは確かに情報に強いらしい。
「だとすれば、お前の情報は少し古いな。俺は確かにフランドール・メディチだ。君の理想の少年でなくて申し訳ない。」
キルトを見下ろしながら、そう告げる。
自分はフランドールだと言い切る俺にキルトは深い溜息を吐き、ベッドへぼすっと仰向けに転がった。
「こんなはずじゃ…。僕を騙したな……クソジジィ。また情報のために僕を使いやがって…っ。」
小さく悪態を付くキルト。
ぶつぶつ言ってるからあまり聞き取れない。
「フランドールくん、悪いけど君みたいな男、僕はちっとも食指が動かない。間違っても僕に惚れたりしないでよね。泣いて頼まれても抱けないし、正直言って迷惑だから。僕は華奢で美しい子が好きなんだ。」
は、はぁ⁉
そんなんこっちから願い下げだわ!
だっれが、お前なんかと…っ!
い、いかんいかん。
相手は子ども、相手は子ども。
俺は大人、俺は大人…。
俺は苛立ちに震える声を必死に抑え、拳を握った。数回の深呼吸で冷静さを取り戻していく。感情が身体の方の年齢に引っ張られることがしばしばある。
「あ、安心してくれよ、こう見えて一途なんだ。」
「ふぅん…? ウェギリウス殿下もハズレを引かされて可哀想だな。」
「そ、うだ、な……。」
どうせ婚約は破棄だから心配はない。親友としてウェルには本当に愛する人と結ばれて欲しい。今日、入学式で視線を逸らされたことを思い出し、喉の辺りがモヤ付いて、俺は喉元を擦った。ウェルの立場やあの空間は理解している、気にすることじゃない。だが…。
「ま、とりあえず僕に惚れないって約束してくれ、干渉もしないでよ。できれば存在感消してくれる? ああ、でもデカいから無理かな? 一応これから同居人になるんだからさ、よろしく。」
マ、ジ、でっ、いい性格してるなコイツ。
差し出された手を返すか迷って、しばし俺は固まった。
俺は額に青筋を浮かべ、ぎこちない笑顔で無理矢理に手を伸ばし、握り返した。
「よ、よろしくぅ?」
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