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男だらけの異世界転生〜俺たち勇者一行編!〜

拷問担当

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 ベッドにぐったりとした大柄な男が横たわっている。
 宿はそれなりに広く、マットは沈むほど柔らかい。
 商人が泊まるにも、少々値の張る宿。

「ふぅ…。さて、そろそろ良いかな。」

 パンパンと手を払い、汗を拭った青年は窓を開け、魔鳩クーリィと呼ばれる魔獣を招く。そして、小さな紙切れを持たせ羽ばたかせた。しばらくすると、コンコンと宿の扉を叩く音が聞こえてきた。青年は、躊躇すること無く扉を開け、客人を招き入れるとすぐに扉を閉める。

「早かったね、さぁ、渡してくれるかな?」

 桃色のふんわりとした髪の美しい男、リリーがそう言って白く長い手を伸ばす。青年、フランドールは念のため隠していた目立つ黒髪をフードの下から露にし、頷く。そして、手の中に握りしめていた魔石のネックレスを手渡した。

「うん…、これが噂の魔導具のようだ。数分前に使用された痕跡があるけれど、身体は大丈夫かな?」
「身体? 別に何ともありません。強いて言えば、少し疲れたような気がするくらいです。」
「……本当に魔法を使わず、この男を眠らせたのか。」
「ちょっと気絶させただけで…、大したことじゃないですよ。」

 魔力を奪う魔導具を所持していたのはブルボだけ。手強いと聞いていた部下も、案外すぐに捕らえることができたらしい。あの酒屋に残った部下3人はドラルクが一人で絞め上げ、フランドールとブルボの行く先を尾行していた2人の男はレオンが伸して、娼館(に見せかけた牢獄)に連行。全てが滞り無く一瞬にして完了していた。

 お、俺たち最強じゃねぇか…?
 魔王とか倒せちゃう勢いじゃん。
 魔王、いないけど。

「さぁ、おいで。」

 そう言えば、先程から気になっていた。リリーの腕に巻かれた手綱のような縄。良く見れば縄の先は扉の下から外に繋がっている。リリーに呼ばれ、扉が開き、部屋の中に人が入ってくる。一体なんだと、視線をやれば縄にぐるぐると巻かれた見覚えのある少年が居た…。

 ア、アシュル…⁉
 え…っ、アシュル?
 背の高さ、絹のような銀髪、白い肌。
 確かにアシュルに間違いない!
 何故、なぜ、俺のかわいい弟がミノムシみたいになっているんだ!

「ああ、これね。貴方の弟くんが暴れるものだからこうするしか無かったんだ。お兄さんを大切にするのは良いことだけれど、今回の仕事を台無しにされちゃあ困るもの。」

「ウウゥー!ウゥ~!」

 アシュルはぐるぐると縄に巻かれたまま捉えられた獣のように暴れている。

「はいはい。縄を解いてあげるからいい子にしなさい。」

 そう言われ、アシュルの動きが止まる。
 完全に手懐けられている…。

「にっ、兄さんっ‼」

 縄を解かれたアシュルは、叫びながら飛びついてきた。
 俺は慌てて抱きとめて、可哀想なアシュルを撫で撫でする。

「はぁ、兄弟揃ってブラコンですか。まったく、面倒くさい。」

 リリーの小言は、二人の耳には届かなかった。

「兄さん、怪我はない?何されたの?卑猥なことを言われた?あの店でこの男、兄さんにベタベタくっついてたよね。見てたよ、我慢できずに殺しそうになったもん。部屋に入ってから見えなくなって、怖かった。ねぇ、どんなことされたの?どこまで触られたの?どこを触られたの?まさか、触れって言われたりしてないよね?触ってないよね?えっ、挿れられたりなんてしてないよね?兄さん?兄さん!兄さんっ!」

 俺の両肩を掴みガクガクと揺さぶりながらアシュルが怒涛の質問攻めをする。
 心配してくれるかわいい弟に俺は喜びを感じた。
 お兄ちゃん、アシュルに反抗期が来るのがちょっと怖いよ。
 ずっとそのままでいてくれよ、アシュル。
 さて、いよいよ呼吸の荒いアシュルが心配になってきた。

「お、落ち着け、落ち着くんだアシュル。深呼吸だぞ、スーーーハーーー。」
「スーーハーー。」

 俺に合わせてアシュルが素直に深呼吸をする。アシュルが落ち着いたのを確認すると、ブルボの転がるベッドにいつの間にか腰を掛けていたリリーが口を開いた。

「さぁ、アシュルくん、ここからがあなたの出番ですよ。」

 不敵な笑みを浮かべたリリーが、ブルボの頬をピチピチと叩く。それから立ち上がると、ヒールの高いブーツで踏みつけた。眠っているブルボから「ぐぅっ」と鈍い声が漏れる。

「この男に全ての情報を吐かせなさい。リアゼルの居場所と教会、それからこの魔導具について、何もかも全て吐かせてね。どんなやり方でも構わない…、ただし殺しちゃあダメだよ。」

「殺さなきゃ良いんですよね…?」

「うん、できる?」
「はい、任せて下さい。」

 アシュルは、とびっきりの笑顔で答えた。
 










(☆拷問シーンに入ります。苦手な方はお気を付け下さい。)






 ブルボは真っ暗な牢獄の中で目を覚ました。
 状況が分からず、きょろょろと辺りを見回した。
 目の前に恐ろしい鬼がいるとも知らずに。

「お前、兄さんに触っていたよな…。」
「あ?」
「その汚い手で兄さんに触っただろう。」

 キラリと何かが光り、振り下ろされた。
 同時にゴロンっと重たいものが床に落ちる音がする。
 ぐちゃっと嫌な感触がした。

「うあああああっ!!」

 男の汚い声が地下牢に響く。
 だが、残念ながら外までは聞こえない。
 
「お前のことは、殺しちゃいけないって言われているんだ。だから、まずは兄さんに触った忌々しい手首だけ…。血が流れると簡単に死ぬんでしょ、焼いて止血しないとね。ああ、そうだ、お前、リアゼルって知ってる?」

 恐ろしい悲鳴や呻き声は、朝まで続いた。
 だが、誰一人としてブルボの悲鳴に気がつく者はいない。
 逃げようと藻掻くが身体に魔力が感じられない…、それはブルボの最も恐れていたこと。
 そして残念ながら、その予想は当たっている。

「知ってることを全て吐くんだよ? 報告して、兄さんにうんと褒めてもらわなくちゃならないんだから…♡」

 狂気じみた少年は、嬉しそうに笑みを浮かべ、うっとりと視線を空中に漂わせた。

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