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17話:変わらぬ日常※
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奴隷紋を就けられて数日。俺の日常は殆ど変わらなかった。
朝食を作って、ギルドまでローレンスを見送って、家に帰ったら掃除洗濯を済ませ、夕飯を作る。最近は、弁当を作るようになったりして、益々奥様のようになっている。あとは、ローレンスが触れてくる…、夜のご奉仕が週に数回。それは、俺からすればむしろご褒美だし…。自分で言うのも何だが、本当に俺、ローレンスの奥様状態。正直、ローレンスにはメロメロというかなんというか。ローレンスの奴隷にしてもらえて幸せというか…、むしろ満足している自分に変態性を感じざる負えない。自分が奴隷だということを忘れるくらい甘やかされている。
ローレンスは毎日、俺の首に奴隷紋があることを確認する。外に出る時は首を覆うような服を着るか、首輪を着けさせられる。首輪はネックレスのようなもので、ミール曰く最近ではオシャレのひとつらしい。ローレンスから貰った初めてのプレゼント。俺はそれがお気に入りで、しょっちゅう身に着けた。今日もローレンスは俺の首に触れる。相変わらず無言な彼は、するりと首を撫でて満足気に尻尾を揺らすのだ。首輪には見えない鎖が繋がっていて、その先にはローレンスがいる。
「今夜は美味いものが喰いたい。」
ギルドに着くと、ローレンスは口元に三日月のよう笑みを浮かべて言った。この台詞を言われると、俺の身体は勝手に熱くなって耳まで紅くなる。これは奉仕をしろという命令なのだが、俺は勝手にお誘いだと思っている。まったく、俺の脳はお花畑。
「…おう」
反抗なんてしない。流されるまま流されて、それを悦んですらいる。
「おかえり」
「早く喰わせろ」
ちょっとだけ意地悪で優しいローレンスとのセックスは好き。
「わっ、ぁ…、は、んっ」
「ふっ、美味そうな匂いだ。オレの奴隷はたまらなく愛らしい。」
「ろ、れんす、ぁっ、あ…、ひぅっ」
「腰を下ろせ、ゼン。自分で挿れろ、教えたからできるよな?」
「…っ、……ふ、ふーっ、ぅ」
でも俺は、ローレンスの恋人じゃない。
忘れちゃいけない、勘違いしちゃいけない。俺は、ローレンスの恋人じゃなくて奴隷。
それでも、ローレンスがあんまりに甘ったるいから、間違えちゃいそうになるんだ。
まるで俺に執着してるみたいな…、俺を欲しがっているみたいな、そんな態度のせい。
まだ聞けない。『どうして俺を奴隷にしたんだ?』と問いたい。
返ってきた返事がもしも、満たされるものでなかったらと思うと怖くて聞けない。
このままで、いいじゃないか。
このままでいれば、俺は大好きなローレンスに抱いてもらえる。
恋する人の側に居られるのなら、この関係を壊したくない。
「ローレンスっ、んっ、ぁあっ…!」
「ゼン…っ、気持ち良いか?」
「ぁ、あっ、いいっ、いい、んっ。イクッ、イクぅっ、ーーーーっ!」
それでも、やっぱり俺はちょっとだけ勘違いをする。
気がつけば、ギルドの掲示板で見かけた貼り紙を思わず手に取っていた。ローレンスのためになると思って、良い考えだと上機嫌にそれを渡した。
「家庭教師…? なんだこれは」
「ローレンス、勉強してみないか!」
「あ?」
「ローレンスは文字も読めるし、頭が良いだろ! 勉強したら、やりたいこともっと色々できるんじゃねぇかなぁって考えてさっ。ああ、金のことは心配ないぞ、俺が出す! だからっ」
「必要ない」
バッサリと切るように言い放たれ、俺は呆気に取られた。
あ、間違った。俺、偉そうに何してんだろ。
自分の立場も忘れて、勝手に舞い上がって馬鹿なことを…。
「ご、ごめん。俺さ、ガキの頃から働いてたから学校とか勉強する場所に行ったことなくて…文章だって、まともに読めない。勉強ができたらもっと良い仕事を見つけられるんじゃないかって何度も思った。魔法が使えなくても文字の読み書きができれば仕事がある。だから、勉強というものに憧れてた…。」
ローレンスは、俺の話を静かに聞いている。止めることも頷く無く、ただジッと俺を見つめた。
その視線に緊張しながらも早口に言葉が溢れ出して止まらなかった。
「生憎、俺は馬鹿だから勉強しても仕方が無いだろ…。でも、ローレンスは頭が良いし、若い?から、きっと勉強すれば将来が広がるんじゃないかって思った。」
尻窄みになっていく声と、いつの間にか自分の足先を見る視線。その視線の端でローレンスが足を組み替えるのが見えた。
「ゼンが勉強すればいいだろう。」
「へっ?」
予想していなかった言葉に素っ頓狂な声が出る。
少しだけ、興味はある。でも、俺が俺に金を使うのは勿体無い。
「いや、俺はいいよ。ローレンスにどうかって思ったんだ。必要なかったらいいんだ。ただ、ローレンスには希望があるからさ。」
もうこのチラシはいらないと、ローレンスの手から回収するため手を伸ばすが、紙は引っ込められ掴めない。代わりに顔を上げたローレンスが、まじまじとチラシを読んだ。
「……試してみてもいい。」
「えっ…、本当!」
「試すだけだ」
「も、もちろん! わかんねぇけど、きっとすげぇ良いと思う!」
そうして俺達は、この家にはじめて他人を招き入れることになった。
朝食を作って、ギルドまでローレンスを見送って、家に帰ったら掃除洗濯を済ませ、夕飯を作る。最近は、弁当を作るようになったりして、益々奥様のようになっている。あとは、ローレンスが触れてくる…、夜のご奉仕が週に数回。それは、俺からすればむしろご褒美だし…。自分で言うのも何だが、本当に俺、ローレンスの奥様状態。正直、ローレンスにはメロメロというかなんというか。ローレンスの奴隷にしてもらえて幸せというか…、むしろ満足している自分に変態性を感じざる負えない。自分が奴隷だということを忘れるくらい甘やかされている。
ローレンスは毎日、俺の首に奴隷紋があることを確認する。外に出る時は首を覆うような服を着るか、首輪を着けさせられる。首輪はネックレスのようなもので、ミール曰く最近ではオシャレのひとつらしい。ローレンスから貰った初めてのプレゼント。俺はそれがお気に入りで、しょっちゅう身に着けた。今日もローレンスは俺の首に触れる。相変わらず無言な彼は、するりと首を撫でて満足気に尻尾を揺らすのだ。首輪には見えない鎖が繋がっていて、その先にはローレンスがいる。
「今夜は美味いものが喰いたい。」
ギルドに着くと、ローレンスは口元に三日月のよう笑みを浮かべて言った。この台詞を言われると、俺の身体は勝手に熱くなって耳まで紅くなる。これは奉仕をしろという命令なのだが、俺は勝手にお誘いだと思っている。まったく、俺の脳はお花畑。
「…おう」
反抗なんてしない。流されるまま流されて、それを悦んですらいる。
「おかえり」
「早く喰わせろ」
ちょっとだけ意地悪で優しいローレンスとのセックスは好き。
「わっ、ぁ…、は、んっ」
「ふっ、美味そうな匂いだ。オレの奴隷はたまらなく愛らしい。」
「ろ、れんす、ぁっ、あ…、ひぅっ」
「腰を下ろせ、ゼン。自分で挿れろ、教えたからできるよな?」
「…っ、……ふ、ふーっ、ぅ」
でも俺は、ローレンスの恋人じゃない。
忘れちゃいけない、勘違いしちゃいけない。俺は、ローレンスの恋人じゃなくて奴隷。
それでも、ローレンスがあんまりに甘ったるいから、間違えちゃいそうになるんだ。
まるで俺に執着してるみたいな…、俺を欲しがっているみたいな、そんな態度のせい。
まだ聞けない。『どうして俺を奴隷にしたんだ?』と問いたい。
返ってきた返事がもしも、満たされるものでなかったらと思うと怖くて聞けない。
このままで、いいじゃないか。
このままでいれば、俺は大好きなローレンスに抱いてもらえる。
恋する人の側に居られるのなら、この関係を壊したくない。
「ローレンスっ、んっ、ぁあっ…!」
「ゼン…っ、気持ち良いか?」
「ぁ、あっ、いいっ、いい、んっ。イクッ、イクぅっ、ーーーーっ!」
それでも、やっぱり俺はちょっとだけ勘違いをする。
気がつけば、ギルドの掲示板で見かけた貼り紙を思わず手に取っていた。ローレンスのためになると思って、良い考えだと上機嫌にそれを渡した。
「家庭教師…? なんだこれは」
「ローレンス、勉強してみないか!」
「あ?」
「ローレンスは文字も読めるし、頭が良いだろ! 勉強したら、やりたいこともっと色々できるんじゃねぇかなぁって考えてさっ。ああ、金のことは心配ないぞ、俺が出す! だからっ」
「必要ない」
バッサリと切るように言い放たれ、俺は呆気に取られた。
あ、間違った。俺、偉そうに何してんだろ。
自分の立場も忘れて、勝手に舞い上がって馬鹿なことを…。
「ご、ごめん。俺さ、ガキの頃から働いてたから学校とか勉強する場所に行ったことなくて…文章だって、まともに読めない。勉強ができたらもっと良い仕事を見つけられるんじゃないかって何度も思った。魔法が使えなくても文字の読み書きができれば仕事がある。だから、勉強というものに憧れてた…。」
ローレンスは、俺の話を静かに聞いている。止めることも頷く無く、ただジッと俺を見つめた。
その視線に緊張しながらも早口に言葉が溢れ出して止まらなかった。
「生憎、俺は馬鹿だから勉強しても仕方が無いだろ…。でも、ローレンスは頭が良いし、若い?から、きっと勉強すれば将来が広がるんじゃないかって思った。」
尻窄みになっていく声と、いつの間にか自分の足先を見る視線。その視線の端でローレンスが足を組み替えるのが見えた。
「ゼンが勉強すればいいだろう。」
「へっ?」
予想していなかった言葉に素っ頓狂な声が出る。
少しだけ、興味はある。でも、俺が俺に金を使うのは勿体無い。
「いや、俺はいいよ。ローレンスにどうかって思ったんだ。必要なかったらいいんだ。ただ、ローレンスには希望があるからさ。」
もうこのチラシはいらないと、ローレンスの手から回収するため手を伸ばすが、紙は引っ込められ掴めない。代わりに顔を上げたローレンスが、まじまじとチラシを読んだ。
「……試してみてもいい。」
「えっ…、本当!」
「試すだけだ」
「も、もちろん! わかんねぇけど、きっとすげぇ良いと思う!」
そうして俺達は、この家にはじめて他人を招き入れることになった。
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